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特別編~クリスマスの思い出~

今回はクリスマス特別編、本編とは全く関係ありません。

読んでいただく皆様には、楽しんでいただきたいと思っています。

それではよい一日をメリークリスマス!


 これはスレイとユフィが、月城 ヒロと桜木 ミユとして地球で暮らしていた頃のお話ですが、始まりは今よりも少し前、スレイとユフィの十五才の誕生日にまで遡ります。


 毎年にように豪勢な料理を食べ、スレイの部屋でお茶を呑みながら話をしているユフィは、感慨深いようにうなずいて言った。


「今日で十五歳、この世界では成人かぁ~時が立つのは早いねぇ~」

「年より臭いぞユフィ」

「むぅ~、スレイくんだって同い年でしょ~」

「ごめんごめん………お!」

「あ!スレイくんどこ行く気!?」


 謝っていたスレイがふと窓の方に視線を向けると、何かに気がついたように声をあげると窓際まで向かってしまうが、ユフィの話はまだ終わってはいない。


「話し終わってないよ」

「いいから、こっち来て見てみなよ」

「?」


 なんだろう、そう思いながらスレイの近くに近寄ると、窓を開けているらしく風が入って少し寒いな、と感じながら近寄ると、黒い闇の中で真っ白い何かが舞っていた。


「雪だぁ~!」

「久しぶりに降ったな前に降ったのは三年くらい前だっけ?」

「う~んそうだったかも……ねぇ明日は積もるかな?」

「積もるかもね」


 実はこの国は日本に似た環境であるにも関わらず、雪は全くと言っていいほど降らないため、前に降ったのは確か四、五年ほど前で、その時もなのだがかなり積もった。

 窓際で二人そろって雪を見ていると、スレイがあることを思い出した。


「そう言えば、あの日も雪が降ってたっけ」

「あの日って、どの日?」

「あれ?忘れちゃった?地球で出掛けたとき」


 そういったが、今もそうだが地球にいた頃も二人でよく出掛けていたので、それがいつの日なのかがわからずにユフィは首をかしげていた。


「だからクリスマスだよ、ユフィが映画のチケットくれて一緒に見に行ったじゃん」


 それを聞いてユフィが思い出した。


「あぁ~!あの日かぁ~!」

「ようやく思い出したか」

「楽しかったねぇ~」

「ボクは大変だったけどね」

「あははっ、そう言えばそうだったねぇ~」

「そうでしたよ。誰かさんのせいでね?」


 ささっと視線を外すユフィと、いい笑顔でそんなユフィの横顔を見ているスレイ。


「ところで、今さらなんだけど、あのときのアレって狙ってやったの?」

「…………………………さ、さぁ~、なんのことかなぁ~」

「声震えてるし、異様な間があったけど?」

「…………………………」

「ユフィさん?」


 ついには無言になってしまったユフィをいい笑顔で見つめ続けるスレイ。


「いやぁ~、あの時は酷いことになったんだよなぁ~、今さらだけどあの時は疲れたなぁ~」

「ごめんなさい。みんなに相談してやりました。あの時は申し訳ありませんでした」


 見事なまでの土下座にさすがのスレイもちょっとやり過ぎた、そうおもって顔をひきつらせてしまった。


「ご、ごめん言い過ぎた」

「私も、あの時はちょっとなぁ~って」


 なんだか申し訳ない気持ちになってきた二人は、話を変えるために昔話しをすることにした。

 話の話題はもちろんクリスマスの思い出だ。




 今年最後の学校、外には木枯らしが舞う冬の何気ない昼休み、月城 ヒロは親友の本郷 ユキヤと一緒にすでに日課となったゲームをプレイしているときだった。


「なぁヒロ、お前クリスマスって予定あるのか?」


 そんなユキヤの問いかけが聞こえた瞬間、クラスの中から喧騒が消え静まり返り男子たちの目がヒロを睨み付けたが、そんなこと気にすることもなくヒロが考え込む。


「予定……予定……あ、あるな」


 ヒロの肯定に男子たちの目に怨念の黒い炎が宿る。


「なにすんだ?」

「なにって、クリスマス限定デュエルイベの限定装備取りに行く」


 真面目なヒロの答えにユキヤはずっこけ、男子たちの目からは怨みが消えとても穏やかな物へと変わった。


「お前、クリスマスくらいゲームから離れろよ」

「いやだってやることないし」

「やることないって……桜木と出掛けたりはしないのか?」

「ミユと……誘われてない」

「お前からは誘わないのかよ」

「あと四日でクリスマスだぞ?もう予定入ってるでしょ」


 そういってもう一度ゲームの中に入り込もうとするヒロにユキヤは、こいつマジか、見たいな顔をしている横で、クラスの男子たちの様子を見ると


「おい聴いたか、月城のやつ桜木さんを誘ってないらしいぞ!?」

「俺ちょっと桜木さん誘ってくる」

「てめぇ!抜け駆けすんな!」

「俺も行くぞ!」

「待てよ俺も行く!」


 意外とクラス男子の人気を獲ている桜木 ミユ、これからクラス男子からのお誘いを受けまくることになるようだが、目の前の幼馴染みのヒロくんそんなこと気にしていない様子。


「いいのか?」

「ミユのことだから家族と過ごすか友達と出掛けるんじゃない?毎年そんな感じだし」

「なるほどね、こりゃあいつらは玉砕されて帰ってくるな」

「そうなるだろうね、って、ミユ」


 ヒロの驚く声を聞いてユキヤは後ろを振り返ると、昼休みが始まってすぐにクラスの女子数人と食堂に行っていたはずの桜木 ミユが戻ってきていた。

 ついでに向かおうとしたら先に教室に戻ってきたせいで、出鼻を挫かれたのかクラスの男子どもはたじたじになってミユに話しかけるタイミングを見計らっていた。


「ねぇねぇヒロくん」

「ん?なに」

「クリスマスって暇?」

「暇っちゃ暇だけどなんで?」

「じゃあさ、これ見に行かない?」


 ミユはヒロの前に一枚のチケットを差し出すと、それを見たヒロの目の色が変わった。

 それはヒロが前々から見に行きたかったアメコミヒーロー映画のチケットで、なかなか時間が会わず見に行くのを諦めていた物だった。


「行く!一緒に行かせてください!」

「じゃあヒロくんよろしくね」

「うん!ミユありがと!!」


 珍しくテンションの上がっているヒロに優しく微笑みかけたミユは、他の女子に呼ばれて教室の外に出ていってしまったが、そんなことお構いなしにヒロは嬉しそうにチケットを見ていると、何やら視線を感じて顔を上げると、リアルに血涙って流れるんだな、何て思いながら血の涙を流しているクラスメートを見る。


「えっと……どうしたのみんな?」


 原因がわからずに訊ねるヒロにクラスメートたちが吠えた。



『羨ましいんじゃボケがァアアア────ッ!!!』



 つまりそういうことだったらしい。

 嫉妬によって血の涙を流すまでに至ったらしいが、そんな理由は全く分からないヒロくん、頭の中には疑問符で一杯だった。

 そんな親友を見かねてかユキヤがヒロの肩を叩いた。


「察してやれヒロ、クリスマスを一人悲しく過ごすこいつらの気持ちをさ」


 何かを悟ったユキヤの顔にクラスメートの怒りの視線が集まった。


「……ミユと出掛けるって、いつものことだよね?」


 なにいってんの?みたいな顔で首をかしげると、再びクラスメートが吠えた。



『クタバレリア充!!!』



 見事なまでのシンクロ、どうやらこのクラスの男どもは聖夜の予定はないらしい。


「ケッ、俺にもかわいい幼馴染みがいれば今ごろ」

「今年も家族で過ごすのか」

「いいよなぁ~予定があるやつらは」

「おい、言うな殺したくなる」

「もう俺たちもクリスマスに集まって、リア充どもを呪うか」

「おい、呪うのはクリスマスだけじゃないぞ、次のバレンタインも呪わねば」


 なんだか怪しい話をしているなと思ったユキヤは、少し気になって教室に残っていた女子たちに視線を向けて見ると、全員が揃って引いた目をしていた。


「うっわ、男子キッモ」


 聞き耳を立ててみるとそんな声さえ聞こえてきたので、そこに自分は入っていないことを願うユキヤだった。

 そんなことに気付いていない男子どもは


「どうせ月城はバレンタインも桜木さんからチョコもらうんだろ?」

「羨ましいよな畜生め!!」


 もう呆れるしかないユキヤと、さらに引いている女子たちを尻目にヒロが口を開いた。


「ミユからチョコもらってないよ?」


 その言葉にユキヤと女子たちは目を丸くし、憤怒の炎を宿していた男たちの炎は消えた。


「おいヒロ、それマジか!?」

「うん、マジだけど」


 聞き間違いではなかった、その事に男子たちはとても優しい笑みを浮かべる。それはまるで同士を迎え入れるかのような……だが


「ってか、バレンタインはボクから渡してたし」

『……………………………………………』


 まさかの告白にクラスの全員が黙った。



『はぁあ──────────ッ!?』



 クラスに残っていた全員での声にヒロはうるさそうに耳をふさいだ。


「なんでそんなに驚くんだ?」

「いや驚くだろ!ってかヒロお前料理できたのか!?」

「月城くん調理実習全然だめじゃなかったっけ!?」

「ちゃんと食べれる物を渡してるの!?」


 もはや男子ども、なにも言わずに藁人形を作っていた。

 いやその藁どこにあったの?


「デザート限定でなら作れるよ。ってかユキヤは食べたことあるだろ?」

「はっ?いつだよ?」

「前に遊びに来た時に出したケーキ、アレ手作りって言ったじゃん」

「お前の手作りかよ!お袋さんかと思ってたわ!?あとめっちゃ美味しかったのでまた作ってください」

「ちょっと本郷くんそれホントなの!?」

「マジマジ、はじめ見たときはどっかの店で買ってきたにかと思ったくらいだ」

「なにそれヤバいんだけど」

「月城くんのケーキ見てみたいかも」

「今度ミユちゃんに写真ないか聞いてみようかな?」


 そんなことを話しているうちに先生が入ってきた。


「授業始めっから席つけよぉ~──ってお前ら血が出てるぞ!?後その藁人形どっから持ってきた!?待て待て!金づちとそれは五寸釘か?それでなにするつもりだ?やめろ!なに壁に打ち付けようとするなよ!?」


 その言葉でようやく予鈴がなっていたことと、血涙を流した男子たちが藁人形を壁に打ち付けようとしていることを知ったヒロたち。

 イヤだからその金槌と五寸釘どこから持ってきた!?

 五時間目の授業は大幅に遅れた。その理由は男子どもから理由を聞いたが、普通にスルーされて遅れた分を取り戻すべく早足で授業が進められたのだった。


 四日後、ヒロはいつもよりも少しだけおしゃれをしてミユの家に向かうために歩いていた。


「母さんも、こんな服用意しなくても……」


 ミユと出かけると言ったら次の日に大急ぎで買って来た新しい服に、ヒロはひきつった顔をしているが親の気遣いを無下にできる性格ではないので感謝している。

 隣の家の前で呼び鈴を鳴らしたヒロは、少し待っていると家の扉が開くと真っ白なコートを羽織ったミユが出てきた。


「おはようヒロくん、早かったね」

「おはようミユ。少し早いけど行こうか」

「うん、今日はエスコートよろしくねぇ~」

「したことないんだけど……?」

「いいからいいからぁ~」


 ミユがヒロの手を取って歩き出した。


 駅まで向かうヒロとミユにその後ろには憤怒の炎を燃やす集団がいた。

 ヒロとミユのクラスの男子たちだった。

 その中にはげんなりとした表情のユキヤもなぜかいた。


「なぁ、帰っていいか?」

「ダメだ」

「オレこのあと用事あんだけど」

「うるせぇ!てめえもリア充か!」

「裏切り者めが!」


 ユキヤは大きなため息をつきながら嫉妬に刈られたものたちの後をおっていくのだった。


 さらにその後ろでは、ミユにヒロを誘うことを提案した女子たちがいた。

 黒髪ツインテールの小さい女の子と、双眼鏡を覗くのは明るい栗色に髪を染めたショートカットの娘、そして眼鏡をした委員長っぽい娘の三人だった。


「ねぇねぇミカちゃん、ミユちゃんたちどう?」

「今のところは大丈夫そうよ、全く月城くんも鈍感すぎない?」

「仕方ないわよ月城くんだもの、昔っからアレだもの、それよりユイあんた周り見てなさいよ?」

「わかってるよぉ~、ってアカリちゃん、ミカちゃん……アレって本郷くん?」


 黒髪のちっさな娘は朝霧 ユイがユキヤたちに気がついた、それにともない栗色の髪の矢島 ミカと委員長っぽい娘三代 アカリがそちらを見て、何やらぞろぞろと二人の後をついていく集団に気がついたので、先程こっそり撮った手を繋いで出かけるヒロとミユの写真と一緒にクラスの女子一人一人にメールを送った。




 電車に揺られて二十分程で目的のショッピングモールへとやって来た。


「久しぶりに来たなここ」

「私はよく来るよ?アカリちゃんたちとショッピングに」

「ふぅ~ん。ボクはユキヤとゲームのデュアルイベントに参加しに来たときが最後だったかな?」

「あ!それでたの?」

「うん。準決でボクもユキヤも負けたけど」


 そんな他愛のない話をしているなかでも二人の後ろには、ユキヤたちクラスの男子がぞろぞろ続き、その後ろにはアカリ、ミカ、ユイの三人娘が続いていたが二人はまだ気づいていない。


「まだ時間もあるしどこかよる?」

「そうだねぇ~……本屋行かない?欲しいラノベがあるの」

「なら行こうか。ボクも欲しいラノベあるし」


 二人でラノベを物色したあと、映画を観るのに手荷物を持って行くのも面倒と言うことで買うのは後にした。

 上映の時間も近づいて来たので二人は映画館の方へと向かった。


「ミユ、ジュースとポップコーン食べる?」

「あ、ならお金払うね」

「いいよ。チケットもらったから奢るよ。オレンジジュースとポップコーンはキャラメルで良かった?」

「うん!さっすがヒロくん、私の好みわかってるねぇ~」

「何年も一緒にいるからねそれくらいは把握してるって」

「ふふふっ、じゃあお願いね。私、先に入ってるから」

「オッケー」


 ミユと別れてヒロは一人で売店の方に行くとき、視線の先で見慣れた者たちの姿を見つけた。


「ん?あれって、ユキヤ?あれクラスの奴らも……あれよく見ると他にも……えっ、なんで?」


 今更ながら気付いたクラスの男子たちは怪しいオーラを振り撒きながら、顔にはサングラスをかけて血の涙を流しながらジッとこちらを見ていた。

 ユキヤがヒロがこちらを見ていることに気がつき両手を合わせて頭を下げた。

 つまり無理やり連れてこられたという訳だ。

 だがそんなことは知らないが無視もできない、一度知ってしまえば知らないふりなどできないが、今はミユも待っているので買うものを買って映画観て忘れよう、そう頭の中を切り替えたヒロは売店の列に並んでジュースとポップコーンを買ってシアターの中に入っていく。

 ぞろぞろと前を歩くヒロの後ろをクラスの男子が付いてくる。

 後ろを振り向けばササッと隠れようとするがこんな場所で隠れる場所などないのでバレバレだ。


 ──え、なんなの怖いんだけど!?


 ヒロは少し小走りでシアターに入り、先に入っていたミユの隣の席へと腰を下ろした。


「遅かったね、何かあったの?」

「い、いや……なにもなかったよ」


 ヒロが後ろを気にすると血の涙を流す男子どもがヒロを睨み付ける。


「?後ろに誰かいるの?」


 ミユが後ろを振り向くとササッとパンフレットを呼んだり座席に深く座ったり、どうにかして顔を見られないように隠していた。いきなり人が増えたことに少し疑問を覚えたミユだったが、特に怪しい人もいないと思ったのでいったい何があったのかをヒロに聞こうとしたとき、上映開始の合図が聞こえてきた。


 映画を見終わったヒロとミユはかなり早い昼食を取っていた。


「映画、面白かったね」

「うん。面白かったね」


 なにかを警戒しているようなヒロ、実はずっと背後から何かに視られている気配を感じ映画をあまり楽しめなかったのだ。


「ヒロくん、もしかしてつまらなかった?」

「そ、そんなことないって!楽しかったよ!それあの映画ずっと見たかったって知ってるでしょ!?」


 必死になって弁解するヒロを見てミユがやっぱりどこかおかしいと思ったが、せっかく二人でデートしてるんだから気にしないようにしよ、と考えた。


「まだ十二時だし、次なにしようか?」

「そうだな……イベントまだだし、ってか今日は何時までいいの?」

「六時までには帰ってきなさいだって、お父さんがパーティーするって張り切ってたから」

「おじさん、年々クリスマスへかける情熱がスゴいもんね」


 そうミユの父親はクリスマスなどのイベントごとが大好きで、毎年、家族が喜ぶならと豪華な飾りに豪華な料理、そして豪華なプレゼントを用意するのだが、一年ごとに飾りが豪華になりすぎて家族総出でいい加減に止めなければと思っているらしい。

 ちなみにヒロの父親は、クリスマスなど時間の無駄だ、と言い当然のようにパーティーもやらないため、小さい頃はちょくちょく桜木家のクリスマスパーティーに呼ばれていた。


「そうだ!ヒロくんも来なよ、お父さんもお母さんも喜ぶよ?」

「あぁ~いいよ、その時間クリスマス限定デュエル大会にエントリーする予定だからね。今年こそ上位ランクにはいる」

「あ、忘れてた……う~ん、観戦したいけど、今年はムリかな」

「観戦もいいけど、たまには参加してみたら?前にサブアカ取ったって言ってなかったっけ?」

「まだ育成途中でぇ~す」

「じゃあこれからやる?」

「えぇ~遊びに来たんだしゲームはまた今度にしようよ」


 それもそうかと思ったヒロは、残っていたジュースのストローに口をつけようとしたとき、携帯の着信音が聞こえてきた。


「お母さんからだ、ちょっとごめんね。もしもしお母さん」


 ミユがスマホを耳に当てながら会話をはじめて少し、なんだか会話の流れがおかしい。


「えっ、ウソ……うん、わかった……うん………じゃあ」


 通話を切ったミユがヒロの方に向き直る。その顔はとても険しいものだった。


「何かあったの?」

「実は……お母さんがクリスマスケーキの予約を忘れたって」

「へぇー……ってそれ大事じゃん!今から買って、ってこの時期は予約で一杯か」

「うん……だから……ねっ」

「ん?…………まさか」


 ジッとヒロを見つめるミユ、その目の理由を察したヒロは自分に指を指すと大きく首をたてに降った。


「ヒロくんお願いします」

「やっぱりか……でもケーキか……それもクリスマスの」


 スマホを取り出したヒロはどんなものがいいか考え、時間もないので簡単に済ますことにしたが一人で作るにも時間がかかる。


「ミユ、今すぐ呼べる友達いる?」

「えぇっと……ユイちゃんたちならいいかも」

「ボクはユキヤに連絡するから、たしか朝霧さんだっけ、連絡して手伝ってもらえるか聞いて」

「わかったよ」


 同じ席で電話をかけるにもあれだったので少し席をはずして電話を掛けるヒロ。


『どうしたヒロ』

「今どこにいる?」

『駅のホーム、あいつらから逃げて帰ってきたところだ』

「そっか、ちょっと頼みがあるんだけどいいかな?」

『………迷惑かけたし何でも言え、その代わり四時までだ。俺も用事あるからな』

「それでいいよ。今から言うもの買ってミユの家に行ってて」


 ヒロは直ぐに買い物の内容を伝えると


『なんだ、ケーキでも作るのか?』

「そう、だからお願いね」

『あぁ~、そういやあお前菓子作り得意って言ってたな』

「それが?」

『その後でいいんだが、うちの妹のケーキ作り手伝ってもらってもいいか?』

「妹って、レナちゃんか?」


 ユキヤの七つ下の妹でヒロも何度かあっていた。


「なに、今度は料理にでも目覚めたの」

『うちの妹の悪い癖でな……』


 悪い癖というのは、いろんなものに手を出してすぐに飽きるというもので、一時期はヒロたちのやっているゲームにも手を出したが一週間でやめた。


「わかった、手伝うから買い出しよろしくな」

『おう、任された』


 電話を切ったヒロがミユの座る席に戻ると、いつの間にか見知った顔が三人増えていた。


「えっと……朝霧さんと矢島さんと三代さん……何でいるんですか?」

「月城くんこんちわぁ~」

「私たちも遊びに来てただけよ」

「何ですか、まさかあなたたちのデートを盗み見してたとでもいうんですか?」

「いや……そこまでは……ってかこれってデートなの?」


 ヒロ一言に三人娘が唖然とした。

 口には出さなかったが、心の中ではマジかこいつ、と思っていた。


「時間もないし駅、いきませんか?」


 ヒロが首をかしげながらも三人娘プラスミユが歩きだした。



 時間は一時前、ユキヤとの約束まで後三時間、人数は十分時間はギリギリといったところか。


「ヒロくんごめんなさい、せっかくのデートだったのに」

「いつもお世話になってますから、その恩返しですよ」


 ミユの母親にそんな言葉をかけながら準備を始めていく。


「ヒロくんこっち生地の準備終わったよ」

「ちょっと月城くん、こんなの何に使うわけ?」

「ケーキ作るんだよね~これじゃあプリンじゃん」

「ホントにケーキを作るんですか?」


 ぶつぶつと文句を言ユイ、アカリ、ミカの三人娘だがヒロが作ろうとしている物は注文通り豪華なケーキだ。

 今のはまだ一層目、作るのはこれからだ。


「お邪魔します!」

「あらユキヤくん、手伝いに来てくれたの?」

「いいすよ、あ、ヒロ頼まれてたの買ってきたぞ」

「ありがとう、早速だけどユキヤと三代さん、ボクの家来て手伝って、ミユたちはそのまま生地混ぜてて、出来たら連絡して」

「オッケー」



 ヒロが二人を連れて家に帰ると出迎えてくれた母親に事情を話しキッチンを借りる。


「前来たときも思ったがお前ん家って、キッチンメチャ豪華だよな」

「元々、母さんが料理好きでボクが女の子だったら一緒に料理したくて豪華にしたんだってさ」

「……それは、何とも残念だったんでしょうか?」

「まぁ使ってるんだし母さんも喜んでるし、って時間ないんだって!」


 ヒロが話しながらクッキーを砕いて溶かしたバターと一緒に混ぜ、先に作っておいたケーキの生地を流し、一緒に大きさの違う型をいくつも作ていると、エプロンを着けたヒロの母親がやって来た。


「ヒロ、お母さんも手伝いましょうか?」

「あぁ~どうしょう……生クリーム作ってもらってもいい?」

「任せて。ふふふ、今日は賑やかね」

「母さん笑ってないで手を動かして、あユキヤそれ終わったら次これ、三代さんはこれを混ぜて」


 それから二つの家を行来しなが両方に指示を出し続けたヒロの活躍により、何とか三時間でケーキを完成させた。


「ほぇ~、ホントに月城くんってお菓子作れたんだ~」

「ホントよね。人は見かけによらないわ」

「そうですね。私も中学から一緒でしたが知りませんでした」


 そんな感想を口にする三人娘たちの言葉を聞きながらヒロは最後のデコレーションをしている。


「失礼すぎないか君たち」

「まぁまぁ、ユイちゃんたちも悪気はないから」

「そうだぞヒロ、ってか誉められるだけいいだろ」

「嬉しくないんだが」


 そういいながらも最後のデコレーションを終えたヒロが大きな息をついて腰を下ろした。


「疲れた」

「お疲れ様~にしても月城くん、これ多くない?」


 ユイのいうとおり目の前には種類と大きさの違うケーキが四つよういされていた。一つはスタンダードなショートケーキ、少し小さめなチョキレートケーキ、さらに小さなストロベリーケーキ、そして一番小さなプリンケーキとなぜか四種類あった。


「これ四段重ねのケーキだから、みんなサイズちがうでしょ?」


 それを聞いてユキヤと三人娘が頭を押さえた、


「お前、マジでかよ」

「この短時間で四段ケーキを作るなんて」

「これってある意味、おうちがお隣同士だから出来ることだよね?」

「ねぇミユちゃん、これの写真撮ってもいいかな?みんなにも見せたいから」


 等と言う声が聞こえたがヒロはそれを無視してユキヤに訊ねる。


「ユキヤ、時間ないけどいいの?」

「そうだった!悪いけどヒロ頼む」


 慌ててコートを着だした二人を見てミユが


「どこか行くの?」

「これからユキヤの家でケーキ作り」

「あぁ~、レナちゃん?」

「そう、それじゃあお邪魔しました」

「あ、待って今送るから」


 ミユがヒロとユキヤを玄関の外にまで送ると、空から真っ白な雪が振りだしていた。


「あ、雪だ」

「寒いと思ったら降ってきたな」

「ホントだ。あぁ~今日はさんざんな一日だぜ」


 一人愚痴るユキヤを横目にヒロは同情の目を向けている。今回のことは確実に被害者なので仕方ない。


「おいヒロ走っぞ」

「はいはい、あぁ~疲れるな」


 雪が頭に乗らないようにコートのフードを被った二人を見てミユはあることを思い出した。


「あ、ヒロくんちょっと待って、ついでにユキヤくんも」


 呼び止められたヒロとユキヤは家の中に入って行った。


「はいこれ、メリークリスマス」


 二人は差し出された袋を手にとって開けてみると、中には毛糸のマフラーが入っていた。ヒロの手には黒いマフラー、ユキヤの手には濃い緑色のマフラーがそれぞれ握られていた。


「これ桜木の手作りか?」

「そうだよ。二人ともうれしい?」

「あぁ!なぁヒロ!ってなんて顔してんだよ?」

「いや、ちょっと待っててね」


 今度はヒロが自分の家に戻っていくと、すぐにミユが持ってきた物と似たような袋を持ってくると、それをミユに手渡した。


「これ、ボクからです。気に入るかはわからないけど」

「ヒロくんからのプレゼントだもん気に入らないわけないよ」


 ミユが嬉しそうに袋を開けて見ると中から出てきたのは、やけに手の込んだ作りの白いマフラーだった。


「うっわ、高そうなマフラー、お前結構奮発したんだな」

「いや、そんな高そうなもの買える金持ってないし」

「はぁ?いや、でもこんなもの買うんじゃなきゃいったい……いやまさか」

「作ったに決まってるだろ?」

「一度お前が出来ること全部見せてもらいたいは……いやマジでさぁどうなってんのお前、まさかと思うけど縫い物得意で服とかも簡単に縫えちゃうとか言わないよな?」

「さすがに服は縫ったことはないけど、小物くらいなら出来る」

「もういい、聞いたオレがバカだった……オレは先行くからな。じゃあまたな桜木」

「あ、ちょっと待てよ。ミユまた」

「うん。あ、ヒロくん帰ったらうち来てね、パーティーお母さんが絶対に来てって言ってたから!」

「いやでも」

「時間まででいいから、絶対だからね」

「…………分かった行くよ」


 ヒロがユキヤを追って雪のふる道を走っていく。


「ヒロくん!マフラーありがとうね!」


 それから新学期を迎えると同時にヒロのケーキ作りの腕がクラス中に知られ、今度のバレンタインに何か簡単に出来るの教えてほしいと、なぜか女子に囲まれてしまった。

 ちなみにその時も男子が血の涙を流し、女子からは別の理由で避けられることとなった。

 理由は察してもらおう。


 昔語りを終えたスレイとユフィ。


「楽しかったなあのときは」

「そうだねぇ~……ねぇ、またケーキ作って欲しいな」

「ケーキか……ならとびっきり美味しいの作ってやる」

「やったー、約束だからね!」

「うん!」


 そんな二人のいつものような誕生日の夜の語らいだった。

このあと十二時に本編の続きを投稿しますので、そちらもよろしくお願いします。


ブクマ登録ありがとうございました。


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