毒の治療
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時間は少し戻る。
アルガラシアの港ではユフィがスレイとのコールを切りると、すぐにギルドマスターのアレクシスの元にまでやって来た。
「アレクさん、今よろしいですか?」
「なんだユフィ、スレイから連絡あったか?」
「はい。どうやら海賊船に襲われていた遊覧船を救助したらしく、そこで怪我人が出ているようです」
海賊の報を聞いたアレクシスの顔が強張る。
「そうか、それであいつはなんて言っていた?」
「海賊たちの引き渡しと、後は負傷者の治療のために回復魔法の使える冒険者を連れてきてほしいそうですか」
「わかった。すぐに用意させる。ちょっと待ってろ」
アレクシスが側に控えていた職員に話を伝えると、すぐに冒険者たちを連れてくるそうだ。ギルド側の準備が出来るまでの間に、ユフィはスレイのいる場所を確認するためにオウルを取り出した。
「オウル。スレイくんのレイヴンと視覚を繋げてね」
「ホォー」
オウルが声をあげて鳴いたのを聞いたユフィは、コネクトを使ってレイヴンと視覚の繋がっているオウルの目を覗いた。
「えぇっと……あれれ、何だかすごい遠くまで海が見えるような?」
オウルから送られてきた風景は当たり一面海一色だった。
いったいどこにいるのかとユフィが疑問に思っていると、急に視界が動いて忙しなく動き回る人の姿が見えた。
「あっ、なぁ~んだぁ~。マストの上にいるのかぁ~」
場所がわかったユフィはオウルとレイヴンの視覚共有を切ると、ちょうどそこにアレクシスが声をかけてきた。
「おい、ユフィ。連れてきたぞ」
「はい!」
返事を返しながらアレクシスの方に行くと、数人の冒険が集まっておりその中に見知った顔があった。
「あっ、マリナさん。こんにちわ、いらしてたんですね」
「えぇ。いましたがね」
ルードスしか呼ばれていないと聞いていたが、いったいどうしてだろうと思っているとマリナは、そういえばと口ずさんだ。
「あなたたち大活躍だったようですね。先程のルードスが話していましたよ」
「あぁ~あれ見られてたんですか。恥ずかしいですよぉ~」
やりすぎていた自覚があるので、すごいと言われてたユフィが複雑な顔をしている。
そんな感じで二人で話しているといつまでも終わらないことに嫌気が刺したアレクシスが告げた。
「おい、ユフィ。時間ないからさっさと行くぞ」
「あっ、はい。わかりました───ゲート!」
ユフィがゲートを開くとアレクシスたちが疑問を覚えた。
「お前、今どうやってゲート開いた?」
ゲートとは離れたところを繋げる魔法だが、発動には一度訪れたことがある場所あるいは見知った場所でなければならない。
それなのにどうやって船のど真ん中にゲートが開けたのかと思っていると、ユフィは当たり前のようにこう答えた。
「使い魔の目で場所を見ました」
それなら開けるのかと誰もが納得してくれたが、実際は少し違うのでユフィは納得してくれて良かったと胸をなでおろしていた。
開かれたゲートを前にしてユフィは一度アレクシスにことわりを入れる。
「あの、アレクさん。いきなり全員言っちゃうと驚かれると思うので、私が先に行ってもいいですか?」
「あぁ。頼む」
「じゃあ、少し待っていてくださいね」
先んじてゲートを潜ったユフィはバタバタと人々が忙しなく走り回っている船を見回していた。
海賊は捕まえたと聞いたが何かあったのだろうかと思っていたユフィは、誰でもいいので話を聞けそうな相手を探している。
「あんたが、スレイの言っていた仲間かい?」
声をかけられたユフィがビクッと肩を震わせてから振り返ると、そこには赤毛の女性が立っていた。
「どうなんだい?」
「はい。スレイの仲間のユフィです」
「そうかい。アタシはこの船の船長レベッカよ。よろしく」
この女性が船長なのかと驚いたユフィだったが、差し出された手を握り握手を交わしているとレベッカが不思議そうにユフィに背後に視線を向けていた。
「あの、何か?」
「いや。ゲートで来るとは聞いていたがどうやって開いたんだい?」
「あぁ~、それはこの子のお陰なんです」
ユフィが片手をあげるとマストの上に止まっていたレイヴンがバサッと羽ばたいてユフィの腕に止まった。
「そいつは使い魔かい?」
「そんなような物なので気にしないでください」
本当は無機物と有機物を混ぜたハイブリットゴーレムです、等とは言えない上に説明するにしても理解してもらえないと思った。
なのでそのまま肯定することにした。
安全が確認されたのを確認してからユフィがアレクシスたちを呼び寄せると、すぐにアレクシスがレベッカと対面を果たす。
「あんたがこの船の船長か?」
「あぁ。船長のレベッカだ」
「デイテルシア、ギルドマスターのアレクシスだ。早速だが、海賊の引き渡しを───」
アレクシスが仕事を済ませようとしたその時だったが、一人の船員が声を上げながらかけてきた。
「船長!大変です!」
「なんだい、どうした!?」
「船室に運び込まれた奴らが毒を受けていると」
「ホントかい!?」
毒と聞いてすぐにユフィがレベッカたちに話しかける
「あの、今の話は本当ですか?」
「えっ、あんたは……もしかしてあいつの仲間か?」
「スレイの仲間のユフィです。治療は彼が?」
「あぁそうだ。それと船長とあんたにすぐに来てほしいと」
ユフィはアレクシスの方に視線を向けると、コクリと頷いた。
「レベッカ船長。軽症者も症状が出ていないだけで毒をもらって可能性がある」
「わかっている。あんたは無事な奴らに声をかけて、すぐ怪我人を集めな!」
「ハッ、はい!」
船員が走って仲間に声をかけに行くのを見てユフィはマリナに声をかけた。
「マリナさん。こっちは任せてもいいですか?」
「構わないけど、そっちのほうが人手がいのではないかしら」
「大丈夫です。それよりも症状が出ていない人たちの治療をお願いします」
症状がないから、あるいは気づきにくい症状の場合、手遅れになることが多い。なのですでに症状が出ている人よりも出ていない人に人員を回してもらうほうがいい。
「レベッカさん。船室にはどう行けば?」
「そこの扉から入って、階段を下りて一番下の部屋だよ」
「ありがとうございます。先に行かせてもらいますね」
みんなに断りを入れて急いで走り出したユフィは、レベッカに言われた通り階段を下り一番奥の部屋の扉を開けた。
「スレイくん!来たよ!」
部屋の扉を開けて中に入ると、熱にうなされているのかはたまた別の原因化、苦しそうにもがいている船員に治療を施しているスレイと、もう一人黒髪の少女がユフィの方を見た。
「ユフィ……持ってる解毒ポーション全部だして!」
「わかったよ。他に必要なのはない?」
「ここに人たちの体力がもたないから、治癒魔法で体力の回復を頼む」
「うん。わかったよ!」
ユフィは空間収納を開くと解毒ポーションの手持ちを全て出し、加えて新しい新型のシェルを取り出した。
「二人共、回復は私がやるから変わって──ヒーリング・シェル!」
蝶々の形をした新型のヒーリング・シェルは、翅を羽ばたかせながらリン粉のような光の粒を降らせながら飛んでいる。
羽からヒールの光を降らし怪我人を治療するユフィ製作の治療専用シェルだ。
「すごい」
シェルを始めてみたノクトはただその言葉だけを呟いていた。
「ノクト、感心してないですぐに治療を始めるよ」
「あっ、はい!」
いけないと気を引き締めたノクトが、慌ててユフィの方に近づいていく。
シェルのお陰で船員の体力が回復して毒の進行を遅らせることが出来るはずだ。
「ユフィ、解毒ポーションのストックいくつある?」
「二十本くらいだけど……毒のせいで熱が出てるから解熱剤も飲またほうがいいけど、私持ってないんだよね」
「ボクも持ち合わせがないよ」
解熱剤など普段使いしないので二人共持ち合わせがない。船医室ならあるのではと思ったその時だった。
「あの、お兄さん。それならわたしが持ってます」
「ホント?」
「はい!全部だしますね」
ノクトが嬉しそうに空間収納から解熱剤を取り出している横で、ユフィがニコニコしながらスレイのことを見ていた。
「……ユフィさん、その目はなんですか?」
「ううん~、スレイくんもすみにおけないなぁ~っと思って」
「なにいってんだよ」
呆れて物が言えないスレイはノクトが出してくれた解熱剤を確認していると、扉が開く音が聞こえてきたので振り返った。
「レベッカさん。それにマリナさんも来てくれたんですか?」
「向こうをお願いしましたよね?」
「平気ですよ。人手は足りましたから」
「呼んだのはそっちよ。それよりもこれはどういう状況よ」
「ルードスの話にも驚きましたが、実際に目にすると言葉になりませんね」
驚きの声を上げるレベッカと苦笑いをするマリナを見ながら、スレイは現状のことを伝える。
「体力は回復させましたが、毒は完全に回復してません」
「わかりました。そこにある解毒ポーションを飲ませれば良いんですね」
「それと解熱剤も飲ませてください」
「任せて」
二人にも手伝ってもらいながら、ポーションと薬を船乗りたちに与えていった。
⚔⚔⚔
ポーションを飲ませてそれでもダメなら治癒魔法をかける。
全員を助けるために治療を続けたスレイたちは、ようやく全員の容態が安定してきたところでスレイは、レベッカを連れて部屋を出た。
「容態は落ち着いたので、全員助けられると思います」
「助かったよ。あんたら若いのに凄腕だね」
「魔法の師匠がスパルタでしてね。毒を体に慣らすために色々と、治療もその過程で覚えたんです」
実際に何度か治療はしたことがあったが、こうして助けられてよかった。
「レベッカさん。この船にある積み荷の中に砂糖と塩はありますか」
「あるが、なにするんだい?」
「脱水が酷いので彼らのための飲み物を用意したいんですけど」
「わかった、案内するからいくらでも使いな」
「助かります」
レベッカの案内で食料庫に行き塩と砂糖を手に入れたスレイは、調理場で口径補水液、簡単に言えばスポーツドリンクモドキを作ることにした。
詳しい製作法方はクレイアルラの元で教わっているので問題ない。
調理場でレベッカと別れたスレイは、出来たスポーツドリンクを持って船室に戻った。
そころには船員たちの毒も抜けており、軽く問診しても問題なく受け答えができるほど回復していた。
「ユフィ、後は任しても良いかな?」
「いいけど、スレイくんどこ行くの」
「レベッカさんに報告してくるよ」
「わかったよ。行ってらっしゃい」
部屋を出て甲板に上がるとすでに日は傾いていた。
試験からこっちずっと忙しくして休む暇もなかったと思ったスレイは、もう一息だと気合を入れて船員にレベッカの居場所をきいた。
船内の船長室にやって来たスレイはノックをして返答を待ってから部屋に入った。
「失礼しますよ」
「どうしたんだい?」
「経過報告にきたんですけど、ギルマスここにいたんですか」
「仕事の話をしてたんだ。それより早く話せよ」
部屋に入ったスレイはソファに座っているレベッカと、仕事をしていたというアレクシスに向け説明する。
「皆さんの意識もしっかりしてますし、後遺症も見受けられませんので山場は抜けたと思います」
「そうか……助かったよ」
「とは言え、しばらくは安静にお願いします。後はちゃんとした医者の診察を受けることをおすすめします」
「わかった。戻ったらすぐに連れて行くよ」
報告も終わったのでユフィたちのところに戻ろうとしたスレイだったが、それをアレクシスが呼び止めた。
「おいスレイ、ちょっと待ってくれ」
「なんでしょうか」
「冒険者、スレイ・アルファスタとユフィ・メルレ行くへ依頼の話が来ているぞ」
アレクシスの言葉を聞いてスレイは頭の中のシフトを切り替えた。
「内容を聞かせてください」
「依頼者はそこのレベッカ・コルネアさん。内容はアルガラシアにつくまでの五日間、遊覧船の護衛だ。報償金は金貨にして十五枚だ」
そう聞いてスレイは眉を潜める。
「報奨額はおかしくないですか?」
「額については依頼主が決めたことだ」
「それにしても駆け出しのEランク冒険者に払って良い金ではないですよ」
Eランク、そうスレイが口にした瞬間レベッカが怪訝な表情でアレクシスを見つめる。
「あぁ、そういやぁまだだった。おいスレイ、ギルドカード出せ」
「何ですか急に」
「良いから早く出せよ」
いったいなんだと思いながら懐からギルドカードを取り出し、アレクシスに手渡すとギルドカードに別のカード状の何かを重ねると、魔法陣が浮かび上がった。
以前に一度だけ見たギルドカードの更新だ。
浮かび上がった魔法陣がスレイのギルドカードに吸い込まれる。
「ほら、お前の新しいカードだ」
「ありがとうございます」
カードが更新されたということはランク試験は合格、取り敢えずは良かったと重いカードを確認したスレイはそこに書かれたものを見て眉を潜める。
「あのこれ、ランク間違ってますけど」
「いいや。間違っちゃいないさ」
うさんくさそうな目でアレクシスを見ていた。
スレイの受け取ったカードにはCランクと書かれていたのだ。
「何でEランク試験を受けたはずが、いきなりCランクになってるんですか。おかしいでしょ?」
「試験は合格だ。加えて、リヴァイアサンを討伐したんだ。これはその報酬の一部ってことだよ」
「リヴァイアサン?」
聞き覚えのない名前の魔物にスレイが首をかしげると、アレクシスがずっこけた。
「いやいや、お前が討伐した魔物だろ!?」
「あ!あいつリヴァイアサンて言うんですか?」
「知らないのかよ!?」
知りませんでした。
口には出さずにそう思っているとアレクシスが大きなため息を吐いてからもう一度告げた。
「本来ながらアレはAランク上位かそれ以上だ。それを相手にして討伐したやつをDランクになんざ出来ねぇの」
確かに巨大で魔法も効きづらかったが、苦戦と言うほど苦戦を強いられてはいなかった。それなのに本当にいいのかと思っていると、アレクシスが立ち上がるスレイの前に立った。
「それでどうする。Cランク冒険者スレイ・アルファスタへの指名依頼だぞ?」
「わかりました。謹んで受領いたします」
スレイは新しい依頼を受けたはいいが、結局休むのは難しそうだと思い心の中では大きなため息をついていたのだった。
⚔⚔⚔
ギルドから船の護衛依頼を受けた後、無事に怪我人の治療と海賊の引き渡しを終えた。
改めてスレイとユフィの仕事は遊覧船の護衛と、鹵獲した海賊船を無事に陸へと送り届けることであった。
「すまないね。客まで送り届けてもらっちゃって」
「良いですよぉ~、ついでなんですからぁ~」
レベッカとユフィの会話がこれだ。
ちなみに今は船の食堂での会話なのだが、他にも食堂にはたくさんの人がいるのはこの船に商品を乗せている商人や、目的地が違う人だったりする。
そんなことよりも会話をしている二人だけで、スレイの姿がない……そのわけは。
「はい!シェフの気まぐれ定食四人前お待ち!───ってか、シェフどこ行ったんですか!?」
「次A定食七人前ね!──シェフは病室だ!黙って働け新人!」
「誰が新人ですかッ!護衛依頼受けた冒険者ですよ!」
「良いから働け!お前の作る料理うまいって評判なんだよ!──悔しいぜチクショー!!」
「ハイハイわかりましたよ!」
文句を言いながら身体強化を無駄遣いしながら料理をするスレイの姿は、どこか狂気を感じるものがあった。
遠目で必死に剣ではなく包丁を振るうスレイを見ていたユフィは、良いのかといささかの申し訳無さを感じていた。
「あのぉ~……本当に手伝わなくて良いんですか?」
「いいんだよ、男なんて働かせてなんぼよ」
そうは言うが今日のスレイは流石に働きすぎな気がして、可哀想になってきたユフィだった。
「さぁ、女は女で楽しみましょうよ。アタシのおごりだから好きに呑みな」
「わっ。これいいお酒じゃないですか!ありがとうございます!」
グラスに注がれた酒を飲んでいい気分になってきたユフィは、食堂の入口でキョロキョロと当たりを回しているノクトの姿を見つけた。
「あぁ~、ノクトちゃんこっちこっちぃ~!」
ユフィが食堂に入ってきたばかりのノクトを呼び寄せると、レベッカから受け取ったグラスにボトルの液体を注いで渡した。
「はい。ノクトちゃんも飲んで、呑んでぇ~」
「あの……わたし、まだお酒は呑めませんよ」
「えぇ~、そうなのぉ~」
仕方ないかと自分でグラスを飲み干したユフィは、アルコールによって頬が急激に赤くなる。
「ねぇねぇ~。ノクトちゃんってぇ~、歳いくつなのぉ~?」
「私ですか?今年で十三です。お姉さんはおいくつですか?」
「今、十五だよ~」
思っていたがやっぱり若いなと、レベッカが思いながら酒を飲んでいる。
「ねぇねぇ、ノクトちゃん。一つ聞いていいかな~?」
「なんですか?」
「スレイくんのことどう思ってるのかな」
「ふへっ!?」
ユフィのそんな質問にノクトは顔を真っ赤にした。
「お、おおおおッ………お姉さん!?なななななッ、なにいってるんですかッ!?」
顔を真赤にしてうろたえるノクトを、ユフィはニコニコとした顔を向けている。
「わかるよぉ~、スレイくんを見てる目がぁ~私と同じ目だったからぁ~」
「お、お姉さん……お兄さんの……その恋人なんですよね?」
「そうだよぉ~、でもねぇ~お姉さん、スレイくんのことを本当に愛してくれる娘とだったらぁ~家族になっても良いなぁ~って思ってるんだぁ~」
「ホントにいんですか?」
「いいのいいのぉ~、私も家族増えるのはだぁ~い歓迎ぃ~!」
完全に出来上がってしまっているユフィにノクトはどう答えて良いものかと困惑していると、後ろから影がさした。
「おいおい。何変なこと口走ってるんだい?」
「あぁ~、スレイくんだぁ~」
ユフィが振り返るとそこにはお盆を片手に、顔をしかめるスレイの姿があった。
アハハハッと上機嫌な声をあげてユフィからグラスを取り上げたスレイは、ちょっぴり舐めたスレイは舌が痺れるほどの酒精に顔をしかめる。
「レベッカさん、いったいいくつの呑ましたんですか?」
「悪かったね。四十くらい軽いと思ったんだがな。こんなに酔うとは思わなかったわぁ~」
「この人ウワバミか、ノクトは呑んでない?」
「だ、大丈夫です」
「よかった。はい、これノクトの分ね」
「あ、ありがとうございます。お兄さん」
先程の話をしていたことを思い出して顔を真っ赤にしてうつむいているノクト。
スレイは顔を急に会わさなくなったノクトを不振に思ったが、ユフィが何か吹き込んだのだと思った。
「あぁ~、ユフィが言ったことは気にしなくていいって」
「は、はい……いただきます」
「召し上がれ」
スレイは船を漕ぎ始めているユフィを見かねてお姫様だっこの要領で抱き上げる。
「それじゃあボクたちはお先に休みますね」
「おう、お休み」
「お休みなさい、お兄さん」
「お休み」
そのままユフィを抱えて部屋に戻っていくスレイの背中を見送るノクトが一言
「羨ましいなぁ~」
「若いねぇ~」
ノクトの呟きにレベッカがそう呟いたのだった。
⚔⚔⚔
ユフィを抱き締めて船室へと歩いていくスレイは、ユフィが完全に眠る前に話をする。
「こんなに呑んで……ノクトになに言ったの?」
「ん~?ノクトちゃんにぃ~、スレイくんはカッコいいって話をしたのぉ~」
「なに吹き込んでるんだよ」
「えぇ~でもぉ~ノクトちゃん、スレイくんのことぜぇ~ったい好きだよぉ~」
「それはうれしいことですね。明日ちゃんとノクトに謝りなよ」
「はぁ~い、承知しましたぁ~」
ユフィを部屋に押し込んだスレイは、疲れた身体を休めるべく早々に眠ったのだった。




