特別編 ~ ゴーストたちの叫び~
ハッピーハロウィン!
というわけで、今回はハロウィンのお話を投稿します。今のお話とは全く関連が無い特別編です。
よろしかったら読んでみてください。
そして、今日の昼の十二時にはミノタウロス編も投稿する予定なので、よかったら読んでください。
ブクマ登録ありがとうございました。
このお話はスレイとユフィが村を出る少し前にまで遡ります。
⚔⚔⚔
それはある秋の朝のことだった。
「秋の収穫祭?」
いつものように朝の訓練を終えて帰ってきたスレイは、玄関先で待ち構えていたフリードとジュリアに唐突に告げられた言葉を、おうむ返しで聞き返してしまった。
「そうなのよ」
「オレと母さん、いつもこの時期によく出掛けてただろ?」
「あぁ、仕事だって言ってたよね……でも今、祭り……って言ったね?つまり遊びに行ってたの?」
何をしていたのかは詳しく聞いていなかったけど、ただ仕事だ、とだけ言われていたのであまり深くは聞いていなかったけどスレイだったが、まさか、夫婦で祭りにいっていた等とは思わなかった。
「父さんと母さんは毎年毎年、仕事と言って息子に娘たちの世話を押し付けて遊びに言ってたの?」
答え次第では父さんの夕食を一品少なくするようにミーニャに頼もう、そう心に決めたスレイは二人のことを──主にフリードのことを、にらんでいた。
「おいおい、我が子よ。何を勘違いしているかは知らないが、父さんたち仕事に行っていたんだぞ?遊んでいる訳ないだろ?」
「なら、何してたのか吐いて。さぁ、遅れるごとに夕食を一品減らしてくからね」
「って、テメエ!」
「ハイ!十、九──」
「わぁーった!ってか仕事だって、秋になると魔物が活性化するだろ!そんなかでもアストラルが夜な夜な悪さをするからジュリアさんや他の魔法使いが浄化魔法で追い払うんだ!オレはそれの護衛で行ってたんだ!」
スレイがジュリアを見るとフリードの言葉に頷いていたので、フリードが嘘を言っていると言うことはないと思ったので、夕飯を減らすことは勘弁してあげることにした。
「それで、その収穫祭がどうしたの?」
「いやな。母さんは今年で冒険者を正式に引退しただろ?」
スレイはフリードの言葉に深く頷く。
前までは半ば引退状態であったジュリアだったが、今年の春にようやく正式な引退が決まったらしいのだが、どうも引退したとは言っても、どうも冒険者ギルドの重要な役目を担っているらしく何かあれば呼ばれると、引退が決まった日にジュリアがスレイに語っていた。
「だけどこの季節だけって、向こうから頭下げられてな。しかもメッチャ野菜や肉を持たされたから断るに断れなくなっちまってな」
「あぁ~それで」
前に二時間近く夫婦で王都に出掛けたと思ったら、手に高価な野菜やお肉等を空間収納一杯にもって帰ってきたのにはその理由だったのかと、スレイはようやく納得がいったのだった。
「じゃあ、ミーニャとリーシャの面倒は見ておくから、夫婦水入らずで楽しんできなよ」
ここは長男として両親への思いやりとして、妹たちの面倒をしっかり見ておこう。そう思っていたがこの話はそう言うわけでは無いらしい。
「それなんだけどね。今回はスレイちゃんとユフィちゃんにも来てもらいたいの」
「ハァ?」
「何でも今年のアストラルたちはかなり力を蓄えてるらしくてね。一人でも多くの魔法使いが必要らしいの」
「お前浄化魔法使えるだろ?」
浄化魔法とはアストラル系、アンデッド系の魔物を倒す魔法で、バニッシュという浄化の光で魔物を浄化する魔法のことだ。ついでにアンデッドやアストラルの魔物を倒す方法で、一番有名なのが太陽の光を浴びせることなのだが、こいつらは朝日が上る前に地中や空洞等の暗い場所に引っ込んでしまうため、太陽で死ぬアホは全く存在しないのだ。
「うん。死霊山行く前に先生に叩き込まれたから、確かユフィも使えるはずだよ」
「さすがルラ、じゃあ決まりね」
「よぉーし!アルファスタ家&メルレイク家、家族旅行に向けて準備するぞ!」
となんだか訳のわからないフリードのテンションで、急に家族旅行が決定したのだがその後もう話を通していたらしいユフィ宅では、大慌てでパーシーの旅衣装を用意していると話を聞いたスレイは、旅衣装を持っていないミーニャとリーシャのための衣装を準備をしたのだった。
⚔⚔⚔
ガラガラと音をたてて進んでいた馬車が止まると、御者が
「長旅お疲れ様でした。つきましたよ」
その声を聞いたスレイたちが馬車から降りていった。
「わぁ~ぃ!ついたぁー!」
「リーシャ!飛び降りちゃダメだよ!」
「こら!ミーニャちゃん、リーシャちゃん!御者のおじさんにお礼を言いなさい」
いの一番に飛び出したのはリーシャだった。
村を出発してから丸一日、馬車の中で──たまにユフィがフライングボードで空の旅をしたりしたが、過ごしていたせいで、鬱憤が溜まり続けていたらしい。そんな妹を追うように降りたのはミーニャで、走っていってしまった二人を追うべくジュリアもでていった。
「さすがにリーシャには退屈だったみたいだな」
「そうだね。あ、パーシーくんも降りてきた見たいだ」
「ミーニャ姉ちゃん!リーシャちゃん!まってぇ~」
後ろに続いていたもう一台から降りてきたパーシーがミーニャとリーシャの方にかけていった。その後に続いてユフィとマリーも馬車を降りてきたが、ただ一人ゴードンだけはいなかった。その理由はちょうど旅行に日付けと仕事が重なってしまい、それが重要な仕事だったらしく──本人は休んで来ようとしたことろをマリーによって強制的にいかされ、今回は見送ることにした。
「んじゃ村長んとこ行くか」
「ボクたちも行った方がいいの?」
「そうね。スレイちゃんとユフィちゃんも一緒に行きましょうか」
「ならぁ~、私は子供たちを連れて宿にいってるわぁ~」
マリーに子供たちに預けたスレイたちは、そのままフリードの案内にしたがって村長の家へと向かっていった。
話を割愛すると、今日の夜にスレイとユフィそしてジュリアの三人で浄化魔法 バニッシュを使い、野菜や家畜に集ってくるレイスやアンデッドを一網打尽にする予定、と言うよりもそうすることによって被害がなくなるよ、と言うただの見世物、もって言うと祭りをする前のただの余興なのだ。
そして時間は進み夜、スレイたち一行は今日一日泊まる宿で準備をしていたのだが
「ねぇ父さん、一応確認なんだけど、この格好本当に必要なの?」
「似合ってるよスレイくん、いつもと違ってお揃いだしぃ~」
ユフィはスレイに格好を見ながら誉めているが、スレイからすれば少しだけ複雑な顔をしていたのだった。
「まぁそう言うなっての、今日のお前は剣士じゃなくて魔法使いとして来てんだからさ」
そう、今のスレイに格好は完全に魔法使いの格好だった。
この日のためにスレイが作ったローブは、絵本などで見るような物ではなくスレイがこに日のためだけに作ったオリジナルのローブだ。素材は死霊山の魔物の革をなめして作られた物で、去年のユフィの誕生日に送ったローブと同じ素材だ。
ついでに手にはクレイアルラから借り受けた杖を握っている。
「てかさぁ、今更なんだけどボク、杖で魔法使うの苦手なんだけど」
「私からしたら、銃で魔法を使う方が無理だよぉ~」
「慣れだよ、慣れ──うわって!?」
そんな話をしていたスレイとユフィだったが、突然スレイが変な声をあげて前に倒れかかったが、地面に倒れ混むことはなく踏ん張り、背中に視線を向けたスレイは頬を緩めながら、背中にいる小さな魔女に笑いかける。
「コラ、リーシャ。危ないからやめなさい」
「はぁ~い」
背中にいたのは魔女の格好をしたリーシャだ。
「うんうん、リーシャちゃん、とっても似合ってるわよ」
「さすがジュリアさんの娘だな。将来は立派な魔法使いになるだろう」
「ありがとー!」
今更だがこの祭り、何でも参加者には仮装が義務付けられているらしく、どうもお化けや魔女、他にも色々な仮装をしている人がいる。
ちなみに仮装をするのはリーシャだけではない。
「リーシャ待ちなさい!」
「お!ミーニャも似合ってるな」
「ホントだ。ミーニャちゃん可愛いよ」
「あ、ありがとうお兄ちゃん、お姉ちゃん」
スレイとユフィがリーシャの後を追ってやって来たミーニャの格好を褒めると、年頃なのか難しい年頃なのか、恥ずかしそうにモジモジとしていた。
そんなミーニャの格好は狼男ならぬ狼少女で、恥ずかしそうにモジモジする度に腰の辺りから伸びるフサフサのしっぽが揺れているところも可愛い。
恥ずかしそうなリーシャのことを、ニコニコしながら見ていたユフィのローブの裾が引っ張られてそちらを見ると、腰には剣が、全身には重要な部分だけを守る軽微な鎧姿のパーシーが立っていた。
「お姉ちゃん僕は?」
「パーシーちゃんはかっこいいよ!本物の騎士みたい!」
ユフィに誉められたパーシーは嬉しさのあまりユフィに抱きつくと、ユフィもパーシーの頭を撫でながら微笑んでいる。
その横でスレイは今まではツッコミをいれまいと思っていたフリードの方を見た。
「なぁ父さん、あえてツッコミはいれまいと思ってたけど言わせてくれ」
「なんだ改まって?」
「その鎧、威圧が凄いんだけど、後リーシャが怖がってるから兜くらいは外しててくれ」
フリードの格好はどういうつもりなのか全身フルプレートアーマーで、地球でやってたゲームで見たことのあるような鎧だった。しかも、頭につけてる兜に関しては、ツッコミ待ちなのではないかと思うほど威圧たっぷりの意匠の物で、幼いリーシャはさることながらパーシーも近づこうとはしない。ついでに言えばスレイとユフィ、そしてミーニャも少し引いていた。
「そんな怖いかこれ?」
「うん。その証拠にリーシャが近づいてない、ほらリーシャ、こんな怖い格好の人に近づきたいと思うか?」
「思わない!」
「……マジか……オレの金貨一枚が」
フリードが鎧姿のまま四つん這いになって倒れたのを見たと同時に、その鎧一式で金貨一枚もしたのかとみんな思ったが、このままアホな格好で参加させて、この町の子供たちを怖がらせる訳にはいかないので、スレイが空間収納の中に入れてあった予備の衣装を渡した。
「死神の衣装使わないからあげるよ」
「すまん息子よ、お礼にこの鎧一式を」
「いらん、ってか村に帰ったら返品してきて」
「はい」
息子にしかられる父の図。
そんな横でユフィは自分の母であるマリーのことを見る。
「お母さんは何でドレスなの?」
「お母さんはぁ~、騎士さまに守られるぅ~お姫さま役なのよぉ~」
どうやらパーシーに頼まれてこの衣装にしたらしい。
ちなみに今更だがみんなが来ている衣装のほとんどは、スレイがアラクネを使い作ったオーダーメイド品で、特にリーシャとミーニャの衣装はスレイが手ずから作った物だ。
「そんじゃあ、会場に移るぞ」
フルプレート姿から死神姿に変わったフリードがそう言うと、みんなで移動を開始した。
祭りの会場は大きな畑の前の広場だった。
大きく開けた広場の中央には仮設のステージとキャンプファイヤーの日が辺りを照らし、その周りには長細いテーブルがいくつも置かれており、その上には沢山の料理と酒の注がれたジョッキがいくつもおいてあった。
「みな、今年も収穫の時期となった」
村長がステージの上で話し始めた。
長い話が終わったときがスレイたちの出番だが、正直今から恥ずかしい。
「それでは、今年も畑を荒らそうとするレイスを祓い、この村に平和をお与えください」
その言葉を聞いたスレイたちはゆっくりとステージの上へと登っていくと、広場に集まっている村人たちに背を向け杖を構える。
「「「聖ないなる輝きの光よ 悪しきを祓い 我らに命の恵みをお与えください───バニッシュ!」」」
スレイ、ユフィ、ジュリアの杖からまばゆい光が放たれ、この村の敷地を照らしあげると至るところから光の粒が空へと上っていく、どうやら本当にレイスが紛れ込んでいたようだ。
「さて、明日から始まる収穫を祝い、今宵はよく食べよく飲み鋭気を養ってくれ、それでは乾杯!」
村長がエールの入ったジョッキを掲げると村人全員が声を揃えてジョッキを掲げた。
⚔⚔⚔
楽しい祭りが始まり、火を囲うように村人たちによるダンスが始まった中、スレイとユフィは恥ずかしさから頭をテーブルに押し付けて倒れていた。
「大丈夫か?」
「父さんはこれが大丈夫に見えるの?」
「全然みえん」
「だろうね」
うつむいたままスレイが告げる。
「フリードさん、一緒に踊りましょ?」
名前を呼ばれたフリードの視線の先には、リーシャと同じ魔女の衣装に身を包んだジュリアだった。
「今行くよ。そんじゃあ早く復活しろよ」
「へぇーい」
こうなった理由は先程のバニッシュを使ったパフォーマンスの時、大きな声で告げたあの言葉のせいだった。
あれは、一応バニッシュの魔方陣の文字の言葉なのだが、完璧に中二病患者のようなものだ。
「もう絶対こんなこと受けない」
「賛成!スッゴい賛成!」
顔を上げたスレイとユフィは心の中で固く誓ったのだった。
精神的に回復したスレイとユフィは、遅れて祭りに参加したのだが、衣装について語っておこう。
スレイは黒いマントに長く鋭い牙の吸血鬼、ユフィは短い耳に二つに別れたしっぽを持つ猫又の仮装をして参加している。
「う~ん、あんまりこういう服着ないから落ち着かないかも」
「新鮮でいいんだけどねぇ~」
吸血鬼と言うことで紳士服に似せて作った服を来ているスレイだが、普段のラフな格好と違いかなり疲れる。
「ってか、ユフィのそれ猫又って日本の妖怪だよな?いるの?この世界に?」
「うん、先生から聞いたんだけど獣人の中に猫の獣人がいるみたいで、しっぽが二本ある種のもいるんだって」
「へぇー、知らなかった」
新たな事実にスレイは感心していると、ミーニャとリーシャ、そしてパーシーの三人が二人のことを呼びに来たので、せっかくの家族旅行なっんだから楽しもう、このときの二人はそう思っていた。
⚔⚔⚔
村の入り口では、数多くの影が灯りのある方へ集まっていった。
楽しい声が響いているなかで、突然叫び声が響いた。
「うわぁあああああっ!?」
突然の悲鳴に音楽は止まり、全員が悲鳴の聞こえた方を見ると、悲鳴が段々と大きくなっていきその数も増えてくる。
悲鳴を聞いた瞬間、空間収納から自分達の武器を出した。
「盗賊か?」
「こんなときに来なくてもいいのに」
そんな軽い気持ちで騒動の起こっている場所に向かおうとしたスレイたちだったが、足を前に踏み出した瞬間、少し横の地面が盛り上がると地面から出てきた手が──それもただのてではなく肉は腐り落ち骨がはみ出している、ガシッとスレイの足を掴んだ。
それを見たスレイ、ユフィ、フリード、ジュリア、マリーの五人は揃って首をかしげ、一度真っ暗な空を見上げてからもう一度その場所を見ると、腐った人間の上半身が這い出て来ていた。
そしてみんなは思った。
──あ、これゾンビだ
と一拍の間をおいてスレイは
「うわぁああ、何でゾンビがいんだ!?」
魔道銃を抜いたスレイが一発で腕を撃ち抜くと業火を纏った剣でゾンビの頭を斬った。
ゾンビとはレイスが人間の死体に乗り移り魔物化した物で、倒しかたはレイスと同じように浄化魔法か、今のように頭を潰すか、炎による焼却処分だ。
全員が周りを見回すと至るところでゾンビが這い出ようとしていた。
「何でゾンビがこんなにいるの、バニッシュで浄化したよね?」
ユフィがそう叫ぶと、なにかを思い出したようにフリードが話し出した。
「そういやあ、ギルドで聞いたんだが、ここいらで大規模な盗賊狩やったらしいんだ」
「………まさか、その魂がレイスを活性化させてここに集めてる?」
「可能性はあるわね。それにここらは魔力が溜まりやすいのよ」
「言われてみれば、魔力が濃い気が……」
魔力の濃い場所に慣れてしまっているユフィは、今更ながら普通の場所よりもここの魔力が濃いことに気がついた。つまりは、死者の怨念にこの魔力が相まってレイスを活性化させ、ゾンビなどを産み出した。
「仕方ないわ、みんなで片付けるわよ」
ジュリアに言われた通りゾンビを、出来ることならレイスも片付けることになったが、レイスは魔法を使えないフリードとマリーには倒せない。さらに戦えるのはスレイたち以外には村の門番が二人だが、盗賊相手ならまだしも魔物相手では正直に言って足手まといだ。そして村に入ってきたレイスたちは有に百を越えている。この人数を守りながらどうやって戦うか、悩んでいると
「うわぁあああん!」
「こっち来ないで!?」
「く、来るなぁ!!」
聞き覚えのある叫び声を聞いたスレイとユフィが振り返ると、避難していると思っていたミーニャとリーシャ、そして勇敢にも震えながら剣を降っているパーシーの三人がが、一匹のゾンビに襲われていた。
「がぁぁああぁぁぁ!」
ゾンビが唾液を撒き散らしながらパーシーに襲いかかろうとした。
「───ゲート!」
スレイがパーシーたちの前にゲートを発動し、飛び込んできたゾンビを自分達の前に転移させると炎を纏った剣でゾンビを切り裂いた。
「ミーニャ!リーシャ!平気か!」
「わぁあああん、おにーちゃ~ん」
「お兄ちゃん!」
「もう大丈夫だ、よく頑張ったな」
珍しく抱きついてきたミーニャと、スレイに抱えられて泣いているリーシャ、恐怖に震えている二人のことを見ながらスレイがユフィの方を見ると、同じようにパーシーを抱き締めて落ち着かせていた。
「パーシーちゃん、もう平気だよ。お姉ちゃんが来たからね」
「うん………うん」
スレイとユフィはお互い胸の中にいる幼い弟妹たちを見る。
大切な妹たちが危険な目に遭った。
さらに一番幼い妹のリーシャはゾンビを見て泣きじゃくっている。あんなリアルな動く死体、小さな子供からすれば完全にトラウマ物だ。
それに気づいたスレイは目を伏せた。
「ユフィ、妹たちを頼んでいいかな?後、父さんたちも後ろに下がらせて」
「……一応聞くけど、どうする気なの?」
「妹たちを泣かした死に損ないどもを地獄に送ってやる」
いつもよりも低い声で語りだしたスレイが空間収納を開くと、ドスンッと大きな魔道銃が地面に置かれた。
それを見たユフィは
──あ、これマジギレの時のスレイくんだ
長い付き合いの中でもたまにしか見たことのないマジでキレているスレイが、これからどこまでのことをやるのか、ユフィにも全くわからないが、それでもこのままここにいるのだけは危ないとだけわかった。
ささっとスレイの腕の中から二人を連れて村人が集まってるところに匿ってもらい、手持ちのシールドシェルを全て起動させてフリードとジュリアに避難を促し、
「スレイくん!いいよ!!」
「オッケー」
両端についているグリップを握ったスレイは、眩い光を放つ銃口から妹たちを泣かす死に損ないどもを、地獄へ送るべくトリガーを引き絞った。
──バズーカ型魔道銃 サルガス
放たれたのは聖の魔力の光、浄化魔法と同じくレイスたちを滅ぼせる力で、聖の魔力の光はすでに生まれていたゾンビと地面から生まれでようとしていたゾンビを浄化し滅びていった。
「魔力を撃ち出すのは範囲が広くていいけど、空のやつらは届かないか」
上空を見上げると仲間がやられたのを見て、集まってきたレイスたちが一斉にスレイに襲いかかってきた。
「好都合だ」
そういいながらスレイは新たな魔道銃を二挺取り出した。
──二挺一対サブマシンガン型魔道銃 カルトス・ポルックス
撃ち出された銃弾が空から降りてくるレイスたちを撃ち抜くと、撃たれたレイスたちは光に粒となって消えていった。通常、レイスは魔法以外は効かない、だがスレイの撃った弾は効いた。
その訳は
「遊びで作った閃光弾だったけど、こんなところで役に立つとは」
弾頭にレイスを滅ぼせる太陽光を付与した魔石を取り付け、打ち出した瞬間に弱い光を放つ特殊弾で、なんとなく遊びで作った物を、なぜかわからないがマシンガンのマガジンに入れてあった。
弾を撃ち尽くしたサブマシンガンを空間収納にしまうと、巨大な影がスレイに差した。
上を見上げると、どこから持ってきたのか巨大な魔物の骨の化け物がスレイを押し潰そうとしたが、それを素早く察知したスレイが後ろに跳んでかわす。
「めんどくさいな」
スレイが剣といつもの魔道銃を抜いて撃つが、骨が魔物の物なのとレイスが乗り移ったせいで余計に固くなっているのだ。
「固すぎるけど、こっちにはまだこれがあるんだよ!」
剣で骨の魔物を殴り倒すと、剣と魔道銃をしまったスレイは空間収納の中から新たな魔道銃を取り出す。
──対物ライフル型魔道銃 アトリア
一発撃つごとに骨の魔物の身体は砕け、ボロボロと崩れ落ちていくが完全に倒しきれない。
最後の一発を撃ち終わったスレイは、投げ捨てるようにアルナスルを空間収納にしまうと左右の手に空間収納の入り口を開くと、両手に新たな魔道銃二つを握ると、脚力を強化して真上に飛び上がった。
「これで終われ」
スレイは肩に担いだ魔道銃を残った骨の胴体に向ける。
──六連式ミサイルポット型魔道銃 カペラ
もはや銃じゃないその魔道銃から発射されたミサイル、その弾頭には空間収納が付与された魔石が仕込まれており、対象にぶつかることによって発動するのだが、魔石に付与された空間収納の中には圧縮された太陽光が入っており、相手を一瞬にして焼き殺す。
眩い光と熱により消し飛んだ骨の化け物、それを見たスレイはカペラを投げ捨て空いた右手に剣を握り、聖の魔力を纏わせる。
左手に握るのかいつも使っている魔道銃アルナイルと同じ、ハンドガン型の魔道銃だった。だが決定的に違うには、この銃に銃弾が必要ないことだ。
「アルナイルじゃさすが無理だけど、こいつなら」
スレイがトリガーを引くと、銃からは発砲音が聴こえず撃ち出された時には魔力の光が飛んでいった。
──ハンドガン型魔道銃 アルニラム
魔道銃アルナイルは銃弾と魔力弾を撃ち分けることができるが、こにアルニラムは魔力弾だけを撃ち出すことができる魔道銃だ。実弾が効かない相手のために作ったこのアルニラムと聖の魔力を纏った剣、二つの武器を操りながら残りのレイスたちを倒していったが、いかんせん数が多い。
一気に広範囲を殲滅できるもにはないか、そう考えていたスレイはもう一度サルガスを使うかとも考えたが、あれは魔力を溜めるのに時間がかかり、さらには重量が有りすぎるせいで取り回しが難しい、何かに聖の魔力に似た物で、広範囲に広がるものはないかを考えいると
「そういやあ、こんなのも作ってたっけ」
剣を地面に突き刺したスレイは空間収納の中からボールのような物を三つ取り出し、レイスたちのいる場所に投げると、左手の魔道銃に魔方陣を展開させる。
「───ストーンバレット!」
ドンドンドン!撃ち出された三発の石の弾丸は真っ直ぐスレイの投げたボールを撃ち抜くと、眩い光を発し出す。その光を浴びたレイスたちは光の粒になって消えていった。
今投げたのは太陽光を封じ込めた少し弱めの閃光弾だ。
なぜこんなに太陽光を使用した魔道具があるかと言うと、スレイの業火の魔法を越えるほどの威力を有する太陽光収縮魔法──未だに名称なし、だが、これは制御が難しい。最大出力で使用すればここら一体を蒸発させることも出来るほどの威力がある。それを使いやすいように出来ないかと試行錯誤を繰り返し出来たのがこの魔道具たちだ。
最後も一体を斬り倒したスレイは、剣と魔道銃をしまい妹たちの元に戻ると、リーシャはジュリアの胸の中で泣きじゃくっていた。
「リーシャ、もう怖いものはいないよ」
「いやぁ~」
スレイがリーシャギュッとジュリアの服を握る強さを強め、頭を埋める。
「えっと、何で」
妹が顔を見せてくれない。
なにげに傷ついたスレイがジュリアたちの顔を見ると、そっと顔を反らした。
──え、なにその反応?
困惑するスレイにユフィがそっと耳打ちをする。
「あのね、リーシャちゃん、スレイくんが戦ってるのを見て怖くなっちゃったんだって」
「え?」
「だからね、スレイくんが怖がられてるの、リーシャちゃん」
妹のために戦いその妹に怖がられる。
スレイは衝撃のあまり四つん這いになって崩れ落ちる。
「き、気をしっかり持ってね」
「…………………………」
「す、スレイ……だ、大丈夫か?」
「………ふふふっ」
「す、スレイちゃん?」
「………はははっ」
「お、お兄ちゃん?」
「………………………」
「あ、あらら?」
ユフィたちが崩れ落ちたスレイを心配するが、だんだんと黒いオーラを放ち出したスレイから身を引いていると、突然スレイが立ち上がるとどこかにゲートを開いた。
「ちょっと、死霊山行ってきます」
そう言って消えていったのだった。
⚔⚔⚔
それから十日間の間、ユフィが様子を見に行くまでレイスを狩り続けていたらしく、その間死霊山では聞こえることのないレイスたちの叫び声が聞こえたそうだ。
余談だが、なぜユフィがスレイを迎えに行ったのかと言うと、十日もの間スレイがいないことにリーシャが泣き出し、ユフィがスレイを迎えに行ったのだ。
「おにーちゃんごめんなさい」
「お兄ちゃんこそごめん、怖い思いをさせて」
二人は謝りあいながらどうにか仲直りしたのだった。
⚔⚔⚔
オマケ
死霊山でのレイスたちの会話
レイス1(な、なんなんだあいつは!?)
レイス2(し、知るかよ!オレはまだ生まれたばかりなんだぞ!なのに、なのに)
レイス3(嘆くな!大丈夫だあいつも人間、いつかは隙が出来るそこを叩くんだ)
レイス2(おぉ!)
レイス1(その手があったか!)
レイス3(だからいまはあ逃げ──)
スレイ 「みぃ~つけたぁ~」
レイス達(!?)
スレイ 「いやぁ~探すのに苦労したよぉ~、と、言うわけ消えろ」
レイス達(((い、い、いやぁああ──────ッ!!?)))
虚ろな目で彷徨うスレイによって、今の死霊山にはレイス達の聞こえることのない叫びが絶え間なく木霊していたのだった。




