宿敵との再会 ④
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前回の宣言通りバトルメイン回です。
薄暗いダンジョンの中で一人の少年が壁に寄りかかりながら休んでいた。
全身を黒で揃え顔の上半分を覆うような仮面をつけた少年は、荒い息を繰り返しながら小さく舌打ちをする。
「……今回の仕事も楽じゃねぇな………チッ、クッソが痛ってぇな」
仮面の少年は肩口から胸にかけて裂傷を負い血を流している。
傷口を押さえながら止血をしていたが、血が止まらないので仕方なくポーチの中からポーションを取り出した。
これが最後の一本だと分かるともう一度舌打ちを鳴らしながらポーションを一気に煽った。
「クソがっ、今ので最後の一本か……あんなやつ相手にこのザマじゃ俺もまだまだだ未熟だ」
仮面の少年 クロガネは大きなため息を吐きを一つつくと、薄暗い部屋を照らすように魔法で小さな明かりを灯した。
この部屋は完全に袋小路、こんな逃げ場のない場所で襲われたら一巻の終わりだ。
魔物の気配は感じられないが、もしものときのため入口をじっと見つめ気配を探り警戒をしている。
大丈夫だと息を吐き少し休もうと考えたクロガネは目を閉じようとしたその時、入口の方から足音が聞こえてきた。
「─────ッ!」
目を開き立ち上がったクロガネは鞘に納めていた漆黒の剣を抜いて警戒してする。
足音とが近づくにつれてクロガネの心臓の鼓動が早まり意味が荒くなり、自分でも分かるほど殺気が強まる。
いつでも来いとクロガネが剣を構えたその時だった。
「これはまた、随分と殺気立ってるね」
部屋の入口からかけられた人の声に安堵したクロガネだったが、姿を確認するまでは安心はできなかった。
「誰だか知らねぇがこっちに来て顔を見せろ」
「おいおい、久しぶりだってのにずいぶんな挨拶だな」
「なに?」
光の球をもう一つ創り出したクロガネが影の射す小道へと放つと、段々と明かりに照らされた先で姿を表した人物の顔を見て誰かを察した。
「その顔、テメェまさかスレイか?」
「うん。そうだよ。久しぶりだねクロガネ。五年ぶりくらいかな?」
ガチャリと言う音と共に真っ白な髪の少年 スレイは、左手に握っていた独特な形状をした魔道銃の銃口を真っ直ぐとクロガネに向けた。
⚔⚔⚔
右手に握った剣を下に向けたスレイは、左手に握る魔道銃を真っ直ぐと構えた。
銃口を向けた先にいるクロガネの目を真っ直ぐ見ながらスレイは質問を口にする。
「久しぶりの再会でいきなり聞くのも悪いんだけど、このダンジョンの死と君は何か関わりがあるのかい?」
仮面越しに見えるクロガネの目には疑問を覚えたようにすぼめられた。
一瞬クロガネが何かを考えるような素振りをしてからスレイに向けて答えた。
「関係ない」
「そうか……いきなり向けてごめん」
ゆっくりと下ろされる銃口を見ながら、今度はクロガネが質問をする番だった。
「テメェ、こんな封鎖されたダンジョンにいるってことは冒険者になったのか」
「あぁ。そのとおりだけどなんでわかったの?」
「街の連中が言ってたからな。近々冒険者が調査に来るって話してたからな」
「そう言うことね。それでそっちは何しにここに?」
「答える気はない」
「そうか」
短い返事の返しにスレイとクロガネは静かに睨み合うと、静かに殺気を放ちながらお互いを牽制しあっている。
「どうするんだい」
「何がだ?」
「いつかの時みたいに、ボクのことを殺そうとするんじゃないかと思ってね」
そう、二人の初めての出会いの時、スレイとクロガネは殺しあった。
あの時とは立場がまるで逆だが、今のこの状況はあのときとまるで同じだ。
今度はクロガネがスレイを睨み付けながら話し出した。
「確かに、オレの姿を見られたからには生かしておくわけにはいかねぇな」
今度はクロガネの視線に込められる殺気が強まると、不敵な笑みを浮かべたスレイが問いかける。
「じゃあ、ここであの時の決着をつけるかい?」
「ハッ、そいつはなかなか面白そうだな」
答えるクロガネの口元が僅かに歪んだ。
仮面のせいで表情は読みづらいが今のスレイと同じくらい不敵な笑みを浮かべているであろうクロガネ、この二人はある意味では似た者同士であった。
目の前にいる相手を倒して五年前の決着をつける。その意志のもとスレイとクロガネはお互いの武器を構えた。
無言で武器を構えた二人は、全身の闘気を纏うと足元には小さな渦が巻いた。
それは二人の意思を表すかのように高め合った闘気が荒ぶり、激しい渦となり吹き荒れた。
荒ぶる闘気の渦は地面を駆け抜け砂塵を巻き上げ、壁にいくつもの傷を刻んでいきそしてぶつかり合った。
「ハァアアアッ!」
「ウォオオオッ!」
声を上げながら走り出しお互い自分の剣の間合いに入った瞬間、スレイは左脇に抱えるように構えた緋色の剣を斜め下から上へと、クロガネは肩に担ぐように構えられた漆黒の剣を上から斜め下へと同時に振り抜いた。
赤と黒の剣が空中に閃を描きながら振るわれ、そして激しい火花をちらしながら重なり合った。
剣を握りしめる手から伝わる重みが、向けられる刃から感じる冷たい殺意が、命のやりとりをしているその実感が今スレイとクロガネの本能を掻き立てる。
離れた赤と黒の剣が引き戻され、そして激しく打ち合う度に火花を散らしていく。
「この五年、のほほんっと生きていたわけじゃねぇみてぇだなッ!」
「そんなことないさ。お前や師匠みたいな相手と殺す気で戦ってこなかったからね、だいぶん鈍ってるよッ!」
次に剣が重なった瞬間、スレイは力を込めてその刃を押し込むとクロガネが剣を傾け力を逃がそうとしたが、スレイはそれをさせ無いように剣を押し込む。
剣を反らせないと悟ったクロガネが力を込めて押し返した。スレイとクロガネの剣が重なり合い真正面から二人の視線が重なりあった。
「テメェ、これ。ぜってぇ鈍ってるやつの動きじゃねぇだろ!」
「最近ギルドマスターにやたらと絡まれるのが増えて、嫌でも対人戦が増えてね」
「意味わかんねぇんだよッ!」
強めのツッコミを入れたクロガネは剣を引いてスレイの体勢を崩した。
前につんのめりそうになるスレイ、そこにクロガネはベルトから取り外した鞘を突きつける。
「ハッ!」
「───ッ!?」
突き出された鞘の切っ先がスレイの身体を打ちつける瞬間、咄嗟に下を向けていた魔道銃を持ち上げ鞘の突きを受け止めたが、受け止めたときの姿勢が悪くスレイの上半身が起こされる。
ここだッとクロガネが一本前に踏み込み、漆黒の剣の鋭い一閃が振り抜かれようとした。
「───くッ!?」
このままではガードが間に合わないと考えたスレイ、は崩れた体勢のままさらに後ろに倒れた。
後ろに倒れることによって無理矢理にスペースを作ると、身体強化を両腕に集中させ緋色の剣を振りあげてクロガネの剣を弾き返した。
「チッ!クソがッ!」
「痛ッて!?」
受け身も取れずに背中から倒れたスレイだったが、クロガネからの追撃はなかった。
その理由は先程のスレイの一撃を受けたクロガネは、あまりの剣の重さに受けきれず剣が手の中からこぼれ落ち弾き飛ばされたからだ。
鞘だけでは殺しきれないと思ったクロガネは、絶好のチャンスであるにも関わらずスレイを追撃せずに後ろへと後退し地面に刺さった剣を回収すると、向かってくるスレイを牽制するように構えた。
「チッ、馬鹿力がッ!腕が痺れてやがる」
「お褒めに預かり光栄の極みだねッ!」
クロガネの軽口に同じく軽口で返したスレイは緋色の剣を大きく引き絞ると、間合いに入った瞬間にクロガネに向けて剣を突き放った。
身体強化を施した両足から来る踏み込みと、身体の捻りを加えた重刺突は一本の矢のごとくクロガネを狙って放たれたが、その切っ先はクロガネには当たらなかった。
「いくら強かろうと、当たらねぇと意味はねぇだろッ!」
重刺突の弱点は一度突き進んだら止まれないこと、それを見切りサイドステップで横に飛んでかわしたクロガネが背後から急襲する。
「終わりだッ!」
背後からスレイを仕留めるべく駆け抜けるクロガネは、両手で握りしめた漆黒の剣の切っ先を後ろに向け切り上げようとしたその時、何かがおかしいと思った。
スレイがあんな隙の大きな技を何も考えずに使うのか、そんな疑問が頭をよぎったその時強い魔力の流れを感じた。
マズイと思ったクロガネは踏み込もうとした足を引きとどめ、後ろへと下がろうとした。
「終るのはお前だクロガネッ!」
上半身だけを振り返り握りしめた魔道銃の銃口をクロガネに向けた。
向けられた銃口には魔法陣が浮かび上がるのを見たクロガネは、魔法が来ると思い漆黒の剣に闘気を纏わせた。
「貫けッ!───インフェルノ・スピアッ」
トリガーを引き絞り撃ち出された弾丸が業火の槍を纏うと、クロガネを貫くために飛んでいく。
「殺らせるかッ!!」
こんなところで負けられないと叫ぶクロガネだったが、闘気だけではあの魔法を止められないことはすぐに分かった。ならばどうするか、そんなのは至極簡単なことだ。
相手が魔法なら同じく魔法で対処すればいいことだ。
「吹き荒れろッ!──テンペスト!」
クロガネの握る剣に暴風の嵐が現れ、斬り上げると同時に放たれた暴風が業火の槍をかき消した。嵐が止むとクロガネが接近する。
クロガネが握りしめる剣には未だに暴風の魔力が渦巻いている、これを直に受けるのはマズイと感じたスレイはクロガネの攻撃を回避する。
剣が振るわれるのに合わせて暴風の魔力が吹き荒れ、風の刃がスレイを襲った。
「ちょこまか逃げてんじゃねぇよッ!」
クロガネが剣を振るうのに合わせて吹き荒れる風の刃、それをかわすごとに部屋の壁には鋭い傷が刻まれていく。
「あんなのまともに受けれるかッ!」
「だったら刻まれて死ねッ!」
「それこそごめん被るッ!」
振り抜かれる剣を後ろに下がりながら回避したスレイは、魔道銃の銃口をクロガネに向けて連続でトリガーを引き絞った。
連続で撃ち出された弾丸は暴風を纏った一閃で地面に落とされた。しかしスレイの攻撃はこれでは終わらなかった。
パチパチッと何かが弾けるような音を耳にしたクロガネがスレイの方を見ると、まっすぐに向けられた魔道銃の銃身に白いスパークが走っていた。
「撃ち抜かれろッ!」
短く発せられた言葉とともに撃ち出された弾丸は、今までのものよりも速い。
「チッ!」
暴風の刃でも止められないと考えたクロガネが回避すると、撃ち出された弾丸がダンジョンの壁を撃ち抜き凄まじい破壊音が鳴り響た。
「あぶねぇなぁもん使いやがるじゃねぇか」
「お前も似たようなもん使ってるだろ!」
スレイとクロガネの戦いは激しさを増していく中で、二人の顔には自然と笑みが浮かんでいた。
───あぁ、ヤバいなボク。こんな状況だってのに笑ってるなんて、今までなかったのに!
───クソがッ、身体はとうに限界だったってのに、なんでだろうな、今だけはまだ動くッ!
風の刃に当たらないように大きく後ろに飛んでかわすスレイを追撃するようにクロガネが剣を振るう。
振り抜かれた刃から放たれる風の刃が壁を切り裂き、崩れ落ちた壁の一部が瓦礫となってスレイの頭上から降り注ぐ。移動するたびにパラパラと視界の端で落ちていく砂粒を目にしながらステイは考える。
このままやられっぱなしでもいられないスレイは、クロガネの攻撃をかわしながら真紅の剣に視線を落とした。
あの暴風に対抗する手段はあるが、剣に大きな負担をかけてしまうリスクがある。そんな事を気にしている場合ではないのは百も承知だったが、そのリクスを追う覚悟がスレイにはできていなかった。
「おいスレイ、よそ見とはいい度胸じゃねぇか!」
「ッ!しま──」
考え事をしていたせいで集中力を欠いてしまったスレイは、クロガネの接近に気付くことが出来なかった。
振り抜かれようとすりクロガネの剣、後ろに下がってかわそうともこの距離ならば確実にクロガネは距離を詰めて逃さないだろう。
逃げられない、かわせないとなるとどうするのかというともはや受けることしか出来ない。
「ッ………グッ!?」
剣が振り抜かれた瞬間、スレイは緋色の剣と魔道銃を掲げることで受け止めることが出来た。しかし、荒れ狂う暴風をそれだけで受け止めることは出来ずスレイは飛ばされた。
壁に背中を打ち付ける膝をついたスレイだったがすぐに起き上がり剣を構えた。
「グッ……あっ」
剣を構えたその時、緋色の剣の刀身に刃が欠けよく見ると魔道銃の銃身にも大きな傷が刻まれていた。闘気で強化を物ともせずに剣を損傷させた。
刀身に刻まれた深い傷は次に受けたらあとがないことを物語っている。このままではヤバいと思ったスレイの目の前にクロガネが迫る。
「終われ、スレイッ!」
振りかぶられたクロガネの剣がスレイに向かって振り下ろされる。
振り下ろされる剣を見ながらもう迷ってる暇はないと、覚悟を決めたスレイは緋色の剣に魔力を流した。そして流した魔力を炎に変換する。
振り下ろされたクロガネの剣に向けてスレイも剣を振り上げる。
今更魔法を使ったところで関係ない、真正面から叩き伏せるとクロガネが思いながら剣に力を込め振り下ろしたその時、激しい衝突音と共に剣が弾かれた。
「なにッ!?」
周りの景色がゆっくりと動いていく、今しがた何が起きたのかクロガネには分からなかった。
剣に纏った暴風は止めていない、にも関わらず剣が弾き返されたのはなぜか?その理由を求めるためクロガネがスレイの剣へと視線を向けた。
スレイが振り上げた緋色の剣、その刀身に纏った赤黒い炎を見たクロガネは忌々しくその炎の名を告げた。
「クソがッ!業火の炎を纏いやがったのかッ!」
「正解ッ!」
振り上げた緋色の剣の刃を返し頭上から剣を振り下ろすと、今度はクロガネが後ろに下がった。
逃さないと後ろに下がったクロガネに銃口を向けたスレイは、銃身に雷撃を纏わせてトリガーを連続で引き絞る。
連続で鳴り響く重い重低音と共に薬莢が排出される。魔道銃に装填された弾倉に残った弾丸全てを撃ち込むと、流るような動きで弾倉を排出した。
「ハッ、弾切れかッ!」
撃ち込まれた弾丸を前に口元を吊り上げて笑ったクロガネは、剣を一閃することで吹き荒れる暴風を利用し放たれた弾丸全てを巻き上げ、そして弾道を流した。
弾道を逸らされた弾丸は壁を砕くと、クロガネが駆け出す。
スレイが新たな弾倉を装填する前に今度こそ仕留めようとしたが、スレイは空の魔道銃をクロガネへと向けた。
「───ッ!」
しまった、そう思ったクロガネの心中を読み取ったかのようにスレイの口元が釣り上げられた。
「穿たれろッ!───ライトニング・スピアッ!」
「阻めッ───テンペスター・ウォールッ!」
弾丸のごとく放たれた雷の槍に対して、クロガネは剣に纏っていた魔力の一部を魔法へと昇華させその一撃を防いだ。しかし咄嗟に創り出した魔法は脆く、壁は打ち消された。
威力が弱まった魔法に向けて風の斬撃を放って相殺した。
空中に漂う僅かな電撃が肌を焼きながらも、スレイの方を睨みつけるがそこにはすでに姿がない。どこに行ったのか、そう思ったクロガネだったがすぐ背後から近づいてくる気配に気付いた。
「そこかッ!」
振り向きざまに振るったクロガネの剣とスレイの剣が重なると、凄まじい熱気と凄まじい暴風がぶつかり合った。
お互いの魔法がぶつかり合い互いを傷つけながら切り結んだ。
「相変わらず多彩じゃねぇかッ!」
「ボクにはこれしか無いからねッ!」
「そうか、よッ!」
剣を重ね合っている途中クロガネが力を緩め、スレイが前のめりになったところにクロガネの膝蹴りが顔面を狙って放たれたが、即座にスレイは魔道銃のトリガーを引いた。
撃ち出された風の魔力が地面に当たり、吹き荒れた風がスレイとクロガネを押しのけた。
「うおっ!?」
「クッ!?」
風の爆発によって浮き飛ぶスレイとクロガネだったが、吹き飛ばされながらもスレイは攻撃の手を止めなかった。
「───ミラージュ・バレットッ!」
撃ち出された一発の弾丸が空中で分裂し七発の弾丸がクロガネに迫ったが、弾丸が増えたところでクロガネには関係ない。
吹き飛ばされながらも剣を振るい風によって弾丸を逸らした。
「魔法で増やしたところで元は一つ、まとめて吹き飛ばしゃ関係ねぇよッ!」
「だったらこれならどうだッ!」
身体強化で両足を強化したスレイは一撃を当てるごとに離脱し、強い踏み込みと共に何度も何度も斬り掛かった。ヒットアンドアウェイ戦法に徹してクロガネに反撃を許さない。
「小賢しい真似をッ!」
「うるせぇ、お前相手に手段なんて選んでられないんだよ!」
攻撃を受けるだけのクロガネを押していくスレイだったが、勝負を決めようにも決め手にかけるがこのまま動きを止めるしかない。
業火を纏った剣を大きく引き絞り、地面を強く蹴ったスレイの重刺突がクロガネに向かって放たれたその時、クロガネがスレイの動きに合わせて身体を後ろに引いた。
見切られた、そう思ったスレイが足を止めて剣を引き戻そうとしたが時すでに遅く、突き出した剣はクロガネの剣に巻き取られて宙へと舞った。
「今度こそ終わりだスレイッ!」
殺られるそう思ったスレイだったが、こんなところでは終われない振り抜かれた剣を受けるべく魔道銃を掲げた。
ギィンッと激しい音と共に銃身に新たな傷を付けると、スレイは懐からもう一丁の魔道銃アルニラムを抜き放つと、圧縮した魔力弾を撃ち放った。
「ッ!?」
撃たれた魔力弾をかわしたクロガネは、これ以上近づいてたら危ないと距離を取った。
離れたところで睨み合ったスレイとクロガネはお互いに動こうとはしないまま時間だけが過ぎていく。
「どうした、来ねぇのか?」
「それは君のほうだろ?」
お互いにこれ以上戦いを続けられる状態ではなかった。
業火と暴風、この二つはそれぞれの属性の最上位に位置しており、魔力の消費が桁違いに高いのだがそれを常に維持している二人の魔力はすでに付きかけていた。
度重なる魔力消費を繰り返したスレイと連戦のクロガネは体力も魔力も万全ではなかった。
どうするかと考えを巡らせている二人だったが、突如部屋の中に響き渡った声により戦いは中断される。
「カァー!カァー!カァー!」
バサバサとスレイの頭上を旋回するレイヴンを見上げたクロガネは眉をひそめながら尋ねた。
「なんだ、その鳥?生き物じゃねぇな」
「ボクのゴーレムだ。警戒用に放ってたんだけど、これは………」
スレイが剣を収めたのを見たクロガネも同じく剣を収めると、今度はスレイが取り出したものを見ながら尋ねた。
「なんだそりゃ」
「ん?あぁ、このゴーレムの操作板みたいな物」
「ほぉ~」
プレートを見ながら目を細めるクロガネを訝しみながらも、プレートを操作したスレイはレイヴンの目を通してみているものを呼び出した。
プレートが光り映し出された映像は、一瞬で途切れてしまった。
「───ッ!?」
映像が途切れる一瞬、映し出された光景が見えた。
そこに映っていたのは地面に倒れるヴィヴィアナたちと、異様な姿をしたミノタウロスと戦うユフィたちの姿であった。
なぜその場にフリードたちがいないのか、疑問を覚えたスレイが全員の位置を把握するとなぜか二人の位置がダンジョンの未開拓領域にいることになっていた。
何が起こっているのかはわからないがスレイはレイヴンに向けて叫んだ。
「レイヴン!映像が途切れた場所まで案内しろッ!」
「カァー!」
肯定の返事が返ってきたのを聞いて今すぐにでも駆け出そうとしたスレイだったが、クロガネが肩を掴んで止める。
「おい、今のは何だ?」
「レイヴン………あのゴーレムと繋がっている別ゴーレムが見た映像だ」
「そうか、ならなんでアイツらがあそこでアイツと戦ってる!?」
クロガネがいうアイツらというのはアカネともう一人の赤毛の女性のことだろうが、入ってきたのは知っていたがなぜ一緒に行動しているのかはわからない。
「知らないよ。だけど、一つ言えるのはなぜかユフィたちと一緒にいる、君の連れが危険だってことだろ」
ギリッと奥歯をかみしめたクロガネは、スレイにこんな提案をした。
「おい、スレイ。今だけは共闘してやる。あの魔物を殺すのを手伝え」
「何か知ってるみたいだな……それを話す条件を飲むなら手伝ってやる」
「わかった、それでいい」
恐ろしく素直だと思いながらポーチの中から紫色のデュアルポーションを取り出して一気に煽った。
クロガネの暴風で負った怪我と消費した魔力が回復していくのを感じているスレイは、ポーションを取り出そうとしないクロガネに問いかける。
「クロガネ、お前ポーションは?」
「テメェに合う前に全部使い切った」
「ふぅ~ん。なら、一本やるよ」
スレイはポーチから取り出したデュアルポーションをクロガネに渡した。
「見ない色だな」
「先生謹製の傷と魔力を回復するポーションだ。効果はお墨付きだよ」
「またスゲェものを」
苦笑しながらポーションを煽ったクロガネは、傷と魔力が回復したのを確認するとスレイの方に向き直った。
「行けるぞ」
「わかった。レイヴン頼む」
「カァー!」
レイヴンの後を追ってスレイとクロガネ走っていくのだった。




