宿敵との再会 ③
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フリードから魔物の捜索を押し付けられたスレイが怒りを込めて叫び返した。
「お前、何のためにルラに魔法を教わってたんだよ?」
「あのねぇ、魔法にだって発動するのに色々と条件があるんだよ!ねぇ、母さん!ユフィ!」
同じ魔法使いであり、スレイ以上の魔法の使い手である二人に同意を求める。話を振られた二人はコクリと頷いて同意を表した。
「そうね。探査魔法は対象の姿形がわからないと使えないし、探知魔法は魔力を発する相手を識別することは出来るけど、それ一匹を探し出すことは出来ないわ」
「せめて姿か魔物の魔力がわかれば探せるんですけどね」
そうだそうだよく言ってくれたっと二人に向けてスレイが何度も頷いている横で、当ての外れたフリードはどうしたものかとうねっていた。
「そうか、魔法がムリってなると魔道具はどうだ?さっきのみたいなので、何か探せるような物は作ってないのか?」
っとスレイの方を見ながら問いかけてくるフリード。いい加減諦めろよっと思いながらも、スレイは律儀に首を横に振ってから答えた。
「そんな便利な魔道具作れるか!魔道具だって基本的には魔法を道具に付与したり、複数の魔法を組み合わせて作る道具なの!オリジナルの魔法で無理なものを魔道具で簡単になんて作れるか!」
いい加減にしてほしいという思いを込めてスレイが叫ぶと、今度こそ諦めたのか頭を掻きながらフリードがうねっていた。
「そんじゃあ、何かいい案はねぇか?魔物の姿を見つけられるような方法は?」
色々と否定的な事を言ったが魔道具も魔法も万能ではないのだ、できない物はできないのだがそれでも、今のフリードの言っていることならどうにか出来るのだが、これには色々と問題があった。
スレイは腕を組みながら色々と考えを巡らせてみて、一つだけいい案が思いついたスレイだったがこれには些かの問題点があった。
「うぅ~ん。見つけるだけって言うなら一つだけ思いついたことはあるんだけど、ボク的には切羽詰まった状況じゃなきゃ使いたくない」
「なんだよ、あるんならもったいぶらずに使えよな」
「いや、使っても良いんだけど女性に見せるには何かと刺激的な物のため、精神衛生的な不安とボクへの負担を鑑みて使うのは本当に何も案が出てこないときの最終手段にしたいですね」
「お前いったい何使うつもりだ?」
フリードが引き気味でスレイに問いかけるが、当のフリードはその言葉を無視してジュリアたちにも何かいい案がないかと問い掛けた。
「これと言っていい案は何も無いわね。あっても原始的な方法でダンジョン内を探し回るくらいよ」
「私もおばさんと同意見だよ~。アリスちゃんはなにかないかな?」
「えっ、えっと……なっ、ない……です」
「という意見しか出ないわけだが、スレイの言う最終手段ってのは使えないのか?」
もう仕方ないかと思いつつ、スレイは使うにあたって最終確認としてアリステラとヴィヴィアナに了承を得てからにしようと思った。
「ヴィー、アリス、多分大丈夫だとは思うけど一応確認させてもらうよ。これから何を見ても、絶対に錯乱してダガーを抜いたり魔法を放ったりしないで」
「なっ、なんだよそれ?」
「良いから約束して、ついでにヴィーはボクを斬り殺そうとしないって約束も追加で」
「だから何なんだっての、その確認は!?」
スレイは疑問をぶつけてくるヴィヴィアナに、何度も確認を促すように問いかけ続けていると最終的に折れたヴィヴィアナが大声で答えた。
「わかった、わかった!斬り殺さねぇって約束するっての!?」
「わっ、私も……ま、魔法……使わない、よ……」
「よし、二人の言質も取ったしやりますか」
スレイが空間収納を開いたところでユフィたちは何かを察したようだ。
「スレイくん、まさかと思うけどあれ使うの?」
「それしかないでしょ?数があって確実に見つけられる方法なんて───っというわけで、出てこい」
空間収納から一斉に黒い影が落ちガサゴソと蠢いたと思うと、ダンジョン内のいたるところへと一気の散らばっていく黒い塊は、一見すると家の中で蠢くあの小さな黒い虫に見えた。
その大群にアーロンたちは壁際まで下がり、見慣れているはずのフリードたちも心做しか距離を取っていた。そして案の定というべきか、危惧していた通りヴィヴィアナとアリステラが悲鳴を上げて叫んだ。
「ひっ、ひぃいいいい〜〜〜〜ッ!?」
「すっ、スレイ!?テメェ、なんてもの空間収納で飼ってるんだよ!?」
「違うわ!これはゴーレムだよ」
黒い塊の一匹を手で掴むとみんなに見せるように掲げた。
スレイの掌に乗せられたそれはあの有名な不潔の象徴ではなく、掌サイズの黒い蜘蛛の大群であった。
「ボクの探索用小型ゴーレムアラクネ、見せたことあるでしょ?」
「一体二体はあるけど、この数はねぇよ!?」
「そうよね。いったい何体作ったのよ?」
「ハッハッハッ、我がアラクネ軍団は日々量産され続けているのです。その数は三日で五体を自動生産され今では千体を優に超えております」
さすがに作りすぎたと思っていたスレイの目には生気が感じられなかった。
「スレイくん、疲れてるんだね………っというか、顔色悪いよ?」
「あぁ……うん。この数、制御するのに魔力をちょっと……あと百くらいコネクトで視覚共有したら気分が」
「なんて無茶するの、ほら横になって少し休んで」
「うん………そう、する」
ベルトから剣を外して横になったスレイは、絶え間なく移り変わっていく無数の景色を見ながら気持ち悪と呟き、これは耐えられないとコネクトを切ったが気分は優れない。
これはしばらくダメそうだと思っていると、ユフィがスレイの頭を自分の膝の上に乗せた。
「どうかな、スレイくん?」
「うん。柔らかくて気持ちいいかも」
「えへへっ、ちょっと恥ずかしいけどたまには良いかも」
なんて微笑んでいるユフィを見上げていると、少し離れたところから両親の話し声が聞こえてきた。
「ちょっとジュリアさん見てよあれ、息子が仕事中に彼女とイチャイチャしてるんですよ?信じられますぅ!?」
「あらあらフリードさん。こういう時は優しく見守るものよ。そうすれば速く孫が見れるわ」
「なるほど、さすがジュリアさん」
「流石じゃねぇ!」
ツッコミを入れたスレイは空間収納から取り出した物をフリードに向けて投げたが、不意打ちとはいえそんな物が当たるはずもなく難なく受け止められる。
「あぶねぇなぁ~って、なんだコレ?」
フリードは投げ渡されたそれをまじまじと見ていた。フリードの手の中にあるのは始めに渡されたプレートの、倍以上に大きな物だった。
「アラクネの外部制御用の魔道具、今放ったアラクネの視界を映し出せるようになってるから、みんなで異変がないか探して」
「そういうことね。んで、どうやるんだ?」
「制御板にボタンがあるでしょ。それを押したらリンクしているアラクネすべての映像が映し出されるよ」
「ホウホウ、これか?」
言われたとおりにボタンを押すと制御板が光だし、空中に半透明の窓が出現したかと思うとその数が増えていき、数百近くの窓が映し出された。
「うわっ、スゲェなこれ」
「いっ、いっぱい……こ、これって……と、投射魔法……かな……?」
「アリスちゃん。大せいかぁ~い!」
投射魔法、別名念写魔法とも言われており、術者の見ている光景やイメージを窓として映し出す魔法で、これはそれを利用してアラクネの目を通して見た光景を映りだしているのだ。
「ってな感じで、アラクネの見ている光景をリアルタイムで映し出してるってわけ。声や音はさすがにムリだけど」
「はぁ~、難しくってわかんねぇな」
「大丈夫です。自分たちもわかりませんから」
説明を聞いてもちんぷんかんぷんッと言った感じのヴィヴィアナたちをよそに、フリードたちは映し出された映像を見ながら魔物を探した。
「ところでスレイ、まだダメそうなの?」
「ダメッと言うか現在進行系でその制御板に魔力吸われて動けません」
「なら仕方ないわね。ユフィちゃん、息子をお願いね」
「はぁ~い!任されました~」
千機近いゴーレムの視界を映すために魔力を使い続け、魔力が枯渇する苦しみに唸っているスレイにユフィはポーションを飲ませようとした。
「ポーション、あるけど飲めそう?」
「うん。ありがとう」
横になった身体を起こしてゴクゴクとポーションを飲み干したスレイは、再度ユフィの膝の上に頭を乗せた。
「二度とやらないと思うけど、この仕事終わったらあの制御板改良しよう」
「魔石搭載型にしないと、危ないよね」
「うん」
ポーションのお陰で少し楽になったスレイはフリードたちを手伝おうかと考えたその時、警戒用に出していたレイヴンが突然鳴き出した。
「カァ!カァ!カァー!」
突然鳴き出したレイヴンを全員が見る中、ユフィは起き上がってレイヴンを見ていたスレイに問い掛けた。
「ねぇスレイくん、これって」
「あぁ。緊急時の鳴き声だね」
スレイがそう答えるとユフィがこめかみを抑え、重い溜息を一つついた。
現在レイヴンが繋いでいるアラクネはミハエルの後を付けさせているあの一体のみ。つまりはミハエルに何かあったのだと察したスレイは、懐からプレートを取り出した。
「レイヴン、こいつに視覚を送ってくれ」
「カァー!」
レイヴンが一鳴きするとスレイの持っていたプレートと視界がリンクする。
プレートを操作してアラクネが見ている光景が映し出されると、そこに映ったのは血溜りの中でうつ伏せで倒れているミハエルの姿だった。
「「「「─────ッ!?」」」」
ミハエルの無残な姿に誰しもが息を呑んだ。
行動はあんなのだったが、ミハエルは決して弱くはない。実際にここでの戦いでは魔物に後れを取ることもなく、一人で行動しいる間も見ていや範囲では危うい場面などなかった。
そんなミハエルをあぁも無残な姿にした相手はいったいっと考えていると、震えるような声でヴィヴィアナが問いかける。
「あいつ……死んでないよな?」
「生きてるよ。アラクネが心拍を確認してる」
プレートを操作しながらコネクトでアラクネに魔力のパスを繋げたスレイは、ミハエルを救うためアラクネに付与された魔法を発動させていく。
「今、アラクネに付与した治癒魔法と防御魔法を発動した、これで少しは持つだろう」
「……す、スレイの、ゴーレム……スゴいね……」
アリステラが呆れているようだが、今はそんなことをいちいち気にしてはいられない。
「治癒魔法はただの延命措置でしかない、急がないとミハエルが危険だ。ゲートを開くよ」
「待ってスレイ、ゲートでって言うけど見たことな居場所じゃないと開けないのはあなたも知ってるでしょ?」
「大丈夫だよ。コネクトでアラクネの視覚をもらってるから、それで開ける」
「なるほど、使い魔の要領ね」
「そういうこと、いくよ。───ゲート!」
そう答えたスレイはゲートを開くと、もしもの時のために全員が武器を構えながら中に入っていく。
⚔⚔⚔
倒れていたミハエルの様態はかなりひどいものであった。手足はぐちゃぐちゃ、腹部に走る裂傷は内臓を傷つけているようで血がとめどなく溢れている。
アラクネを通して心拍を測っていたがすでに鼓動は弱くなっている。時間がないと思いながらもまずは怪我の状態を確認するのが先決だった。
「スレイくん、彼の鎧を脱がして」
「わかってる。アーロン、一人じゃ無理だから手伝ってくれ」
「了解です」
二人がかりではミハエルの鎧を剥ぎ取り、ついでに治療に邪魔なのでシャツを剥ぎ取ると、すぐに交代したユフィがミハエルの診察を始めた。
「左手骨折、頭部と胸部の裂傷……内臓も不味いかも、左足は……完全に潰されてるから治療に時間がかかるかな」
「そこは私とスレイちゃんでやるわ。アリスちゃん、あなたヒールは使える?」
「は、はい……!」
「ならアリスちゃんは、治癒魔法を使いながら随時ポーションをかけて回復を促して」
「わっ、わかり……ました……」
アリステラ自分の空間収納からポーションを取り出すと、スレイとユフィが揃ってバックを渡してきた。
「これボクの手持ちのポーション、効力が高いの全部渡しておくから」
「私のも全部使ってもらっていいからね」
「わ、わかった……」
アリステラに渡したポーションはすべてそれなりに効果が高いものだが、今のミハエルを全快させる効力はない。気休め程度で治癒魔法を補佐するのには十分な効果が得られる。
「さぁ、時間がないわ、スレイは風魔法で私たちを包んで、その間にユフィちゃんは傷口の洗浄をお願い」
「わかりました」
「オッケー───エアーウォール」
スレイが魔法を唱えると小さな球状の空気の膜が作り出された。
これは地球で言うクリーンルームのような物で、空気の膜で包むことでそれ以上の細菌などが入りこまないようにするのだ。
本当なら服も着替えたほうが良いのだが時間がないのでそのまま治療を開始した。
「絶対に助けるわよ」
治癒魔法使えるものがミハエルの治療に当たっているなか、残された者たちは次々に現れる魔物の群れを相手取っていた。
「お前ら、一匹も後ろに行かせるなよッ!」
「「「「はい!」」」」
フリードの掛け声にアーロンたちが応える。
⚔⚔⚔
ミハエルの治療を開始したスレイは、ミハエルの傷を治療しながら忌々しいそうに呟いた。
「足の腱が切れてるし、靭帯も損傷が激しいな……」
「筋肉も潰されてて、完全に治るかどうかは本人次第ね……スレイ、ポーションはまだある?」
「………安い低品質が五本、それと自作で作った失敗作のポーションと、ルラ先生からもらったデュアル・ポーションがあるけど、ミハエルから魔力を感じないからそれは使えないよ」
デュアル・ポーションは魔力回復用のマジック・ポーションの役割を持っており、これは魔力を持っていない者が飲めば体外に出すために膿のような物が出来、さいやくの場合服用者を殺してしまうのだ。
「仕方ないわね……こっち腱の再生は終わったわ靭帯の方はどう?」
「ごめんもう少し、母さん血管は繋げてあるから、筋肉組織の治癒をお願い」
「わかったわ。魔力は足りる?」
「まだ大丈夫、それよりユフィとアリスに方は平気?」
胸の傷を治癒していたユフィが額に汗を滲ませながら答えた。
「まだ大丈夫……アリスちゃんは?」
「わ、わたしも、大丈夫」
二人からの返事を聞いたジュリアは取り出そうとしていたポーションをしまい治癒に専念した。
四人で治療を初めて一時間、長い治療を終えたアリスは肩で息をしながら座り込んでいた。
「アリスちゃん、おつかれぇ~」
「うっ、うん……でっ、でも……まだ」
立ち上がろうとするアリステラだったが、その前にスレイが肩を押さえて座らせた。
「良いから、アリスは座ってて魔力空でしょ?」
「でっ、でも……」
「良いから、後はスレイくんがどうにかするって」
「ボクかよ………まぁ、どうにかするつもりだけどさ───シールド!」
立ち上がると同時にこの部屋全体を覆うようにシールドを張ったスレイは、みんなに向かって叫んだ。
「みんあ、ミハエルの治療は終わったよ!」
「終わったのならこっち手伝えよ!」
「分かってる!ここの魔物を倒したらゲートで安全な場所にまで飛ぶからね!」
スレイの参戦によって残っていた魔物は瞬く間に倒されていった。
⚔⚔⚔
魔物を殲滅後、ゲートで魔物のいない部屋に移動した一行は部屋の入り口をユフィのシェルで塞ぎ、安全を確保した。
「ユフィ、これ」
「ありがとう」
スレイがポーチから取り出したポーションをユフィに渡す。
ユフィがポーションを飲んでいる横で、スレイも同じものを取り出して服用する。
「疲れた……」
「そうだね……」
揃って大きな息をはいたスレイとユフィだが、まだこれで終わったわけではない。
「父さん、ミハエルはどうする」
「この傷だ、そとに出すしかないだろ?」
「じゃあ、誰が彼に付き添うの?」
治療はしたもののまだ予断を許さぬ状況だ。
あの街にまともな医者が残っていとも考えづらいので、誰かしら魔法使いを同行させる必要がある。問題は誰をいっしょに返すかというところだ。
「あ、あの……わたしが……戻るよ」
「アリスちゃん」
「いいの?」
「わたし……魔力がもう残ってないし……か、回復を待ってたら……お、遅くなる……から」
アリステラの言葉にみんなはなにかを言おうとしたが、それよりも先にヴィヴィアナが叫ぶ。
「なにいってんだアリス!お前がこんなやつをみてやる必要なんてないんだよ!?」
「ヴィーちゃん……」
「それならアタシも一緒に戻る」
「だ、ダメだよ!ヴィーちゃんは、戦えるから……!」
アリステラとヴィヴィアナの言い争いをする中、一人の男がわりこんだ。
「…………ならば、俺が一緒に行く」
「ベネディクト……お主がか?」
「…………俺も闘気が足りないからな」
「……わかった。ベネディクトお願い」
「…………任された」
短いやり取りだけをやってスレイはゲートで三人を朝までいた町へと送り届ける。
「父さん、母さん、そろそろ移動しようか」
「そうだな……と言いたいが、スレイ、ユフィちゃん、二人は魔力はどれくらい残って回復してるんだ?」
「ボクは六割くらい」
「私は八割くらいは回復してます」
二人ともポーションを飲んだお陰でかなり回復しているが、それでもまだ全部は回復していない。
「戦闘はまだ続くが平気か?他のみんなも必要ならもう少し休憩をとるが」
そうフリードが声をかけるが、全員は首を横にふって休憩はいらないと言っている。
「そうか、ジュリアさん、さっきのプレートでアラクネの視覚を出してもらえるか?」
「えぇ、構わないわよ」
ジュリアが預かっていたらしいプレートを起動させ、空中に映像を写し出すといくつか暗くなっていた。
「おいスレイ、これどうなってんだ?」
「破壊されたんだ」
ヴィヴィアナの問いにスレイが答えると、ジュリアから受け取ったプレートを操作し、暗くなっている映像の前の映像を写し出してみると、一体以外のすべてのアラクネが地面から生えた岩に破壊されていた。
「父さん、アラクネの操作権限返してもらうね」
「元々お前の物だ、好きしにろ」
「ありがとう」
視覚をプレートにリンクさせたままスレイはレイヴンを通して、アラクネ数機を破壊された地点へと移動させていると、
「何をしておるんじゃ?」
「場所の当たりをつけて敵を見つけてみる……お、ビンゴ」
スレイが辺りを着けた先には巨大な魔物が存在していたが、次の瞬間アラクネの映像は消えたが、これで大体の場所はわかった。
「ここだ」
地図に指を指した場所を見て、フリードが声を上げた。
「これからそこに向かう。相手も移動している可能性がある移動中に対面する可能性がある。気を引き締めていけ!」
フリードの声にみんなが声を揃えて返事をするなか、スレイはフリードに話すことがあった。
「父さん。悪いけどボクは別行動を取らせてもらうね」
「……わかったが、気を付けろよ」
「うん」
みんなに背を向けて走り出したスレイは、破壊されたアラクネのある場所に急いだ。
──一瞬だけ見えたあの姿、あいつだよな
そう心の中で告げながら走っていた。
今回はかなりスレイが壊れましたが、次回は真面目に戦わせます。




