誕生会と再会の喜び
先ほど投稿した続きです。
季節はめぐり年の瀬も迫った十二の月の二十日。この日はスレイとユフィの誕生日、その調度中間であり二人の合同誕生会の日だった。
この日は朝早くからスレイとユフィの母親たちがパーティーの料理作りや、飾り付けを頑張っていた。本日の主役の二人はというと、その間父親二人に付き添われれミーニャも一緒に村の外へピクニックに行っていた。
普段はのんびり遊び回れない村の外で存分に遊び、夕方には村に帰ってきた。
村に帰ってきたスレイたちは、一度自分の家へと帰るとパーティー用に用意された少しだけおしゃれな服に身を包んでいた。
用意されていたに着替えたスレイは、部屋の鏡に映った自分の姿を見ながらもおかしなところはないかと確認していた。
「うん。着替えはバッチリ!……だけど、ちょっと似合ってないかなぁ~」
普段の格好に慣れすぎているのか、少しおしゃれな服を着ると完全に服に着られているような感じたしたスレイは、自分が根っからの市民思考なのだと実感していた。
鏡の前でもう一度自分の姿を見ていると、コンコンッと部屋の扉がノックされる。返事を返そうとしたがそれをまたずに、扉の奥からジュリアの声が聞こえてきた。
「スレイちゃん。お着替え一人でちゃんとできた?」
「うん、ちゃんとできたよ」
「そう。なら入るわよ」
ガチャッと部屋の扉が開きジュリアが入ってくる。部屋に入ってきたジュリアは、鏡の前に立っていたスレイの前にまでやってくると、上から下までしっかりと見てからウンウンと満足そうに頷いた。
「偉い偉い。ちゃんと一人で着れてるわね」
「当たり前でしょ、ボクもう五歳なんだからさ!これくらい余裕だよ!」
「そうだったわよね。それにしてもそのお洋服、やっぱりスレイちゃんに似合ってたわ。私の見立て通りね!」
フスンッと胸を張っているジュリアの姿を見てスレイは少し気恥ずかしさを感じてしまった。
「さて、もうすぐパーティーが始まるわ。着替えも終わったし下に行きましょうか」
「うん」
ジュリアに手を繋がれ一緒に下へ通りていったスレイは、飾り付けが終わったリビングにやってくる。
普段は物置に仕舞われている長いテーブルの上には、誕生日会のパーティーのためにと作られた豪華な料理が並べられている。
今日はたくさん遊び回ってお腹が空いていたスレイは、不覚にも料理の匂いにつられてテーブルの方へと向かっていくと、ちょうどその時料理を運んでいた女性とぶつかりかけてしまった。
「あらぁ~、ごめんなさいねぇ~。大丈夫だったかしらぁ~」
「うっ、うん。大丈夫だよマリーおばさん」
「良かったわぁ~。でもぉ~、危ないからぁ~あんまり走っちゃだめよぉ~」
「はぁ~い!」
スレイがぶつかりかけた桃色の髪の女性マリーは、おっとりとした口調で注意をした。
この女性、髪の色からわかるかもしれないがユフィの母であり、こんなおっとりとした口調だが元冒険者でスレイの両親と一緒にパーティを組んでいたそうだ。
そんなマリーは、冒険者を引退した今でも技のキレは衰えておらず、極稀にユフィの父相手に炸裂したりする。
ユフィの母マリーは、運んでいた料理をテーブルに並べるとスレイの目線に合わせるように腰をかがめると、ニコニコと微笑みながら話しかけてきた。
「そのお洋服ぅ~、とっても似合ってるわねぇ~。かっこいいわぁ~」
「ありがとうおばさん!」
「あらあらあらぁ~、そんなおばさんじゃなくってぇ~、お義母さぁ~んってぇ~呼んでくれてもいいのよぉ~」
ニコニコのほほんっと告げるマリーに対して、スレイはなにを言っているのだろうと困惑しながら、どう返したものかと困り果てて至高が停止してしまった。
すると一部始終を近くで聞いていたジュリアが、マリーの背後にたちその脳天めがけて思いっきりチョップを落とした。
「フンッ!」
「あっ、いった………もぉ~、なにするのよぉ~ジュリアぁ~」
目尻に涙を浮かべながらチョップの当たった脳天をさすっているマリー、その姿はまさに被害者のそれであったがやった当人であるジュリアは、怒りの宿った目でマリーを睨みつけていた。
「あれくらいで痛くないでしょ、マリー?大体、スレイちゃんは私の子よ?なに言わそうとしてるのよ?」
「えぇ~いいかなぁ~い。私だってぇ~息子が欲しかったのよぉ~」
「だったら自分で産みなさいよ!息子がほしいからって、友人の息子を取らないでちょうだい!」
「でもぉ~、将来的には呼んでもらえことになるかもしれないわぁ~」
マリーのその一言でピキッと額に青筋を浮かべたジュリア。全身から怒りのオーラを立ち上らせたジュリアが、マリーに怒りの言葉を投げかけては、ジュリアの言葉をのらりくらりとマリーが跳ね除ける。
そんな母親たちの言い争いをみて恐怖を感じたスレイは一先ずこの部屋から退散しようと決める。喧嘩をしている二人に気づかれぬよう、息を潜めてこっそりとリビングを抜け出した。
険悪な空気が流れるリビングから抜け出したスレイは、一人廊下で安堵の息をついている。
「おいスレイ、こんなところでなにやってるんだ?」
「あっ、お父さん………ちょっと、お母さんたちの喧嘩から逃げてきたの」
スレイの説明に対して意味が分からずに、なんのこっちゃと思ったフリードは、騒がしいリビングの方を覗き込んで理由を察すると、しゃがみ込みスレイの頭を撫で回した。
「そうかそうか、確かにああなった母さんたちの側には居づらいよな」
「うん。それに、お母さん怖かった」
「ハハハッ、確かに怒ったときのジュリアさんは怖いけどな、これからあれよりも更に怖いやつが来るんだぜ?それに比べりゃ可愛いもんだろ」
フリードの語る怖いやつ、あえて名前を出さなかったにも関わらずその人物の顔を思い浮かべてしまったスレイは、同意しようと頷きかけたそのとき、後ろからドスのきいた声が降り注ぐ。
「おい、フリード………お前の言う顔の怖いやつってのはもしかしてこんな顔をしてるんじゃないか?」
ビクッと肩を震わせながら後ろに振り返ったスレイは、ヒィッと小さく悲鳴を上げて驚いた。
そこには熊と見間違うほどの体格に堀の深い顔と髭面の大巨漢が立っていた。そんな大巨漢に対してフリードはいつも変わらないのノリで片手を上げながら声をかけた。
「よぉゴードン、来てたのか。それにユフィちゃんもよく来たね。いらっしゃい」
「おじさん!スレイちゃん!お邪魔してまぁ~す!」
「ユフィ、いらっしゃい」
引き攣った顔でユフィを出迎えているスレイは、今にも怒り出しそうな熊………ではなく、ユフィの父ゴードンと父フリードの様子を横目で見守っていた。
ゴードンはフリードの頭を掴むとそのまま握りしめて持ち上げると、自分の視線の高さにまで持ち上げる。
「おいフリード、俺の質問に素直に答えろ。お前の言う怖い顔ってのはこの顔か?」
「なんだよゴードン。自覚があるんなら聞く必要ないだろ」
「よし、殺す!」
どこからともなく取り出された手斧がフリードの脳天を叩き割るために振るい降ろされる。しかし、そこは現役の冒険者、手斧の柄を握りしめてそれを止める。
「おいおい。木こりが斧で木以外を斬ろうとするんじゃねぇよ。あぶねぇな」
「お前ならば止められるだろ」
強面もゴードン、職業はヤクザ───ではなく森の木こりで、あんな太い指先で器用にも木工細工を手掛ける。そして顔に似合わず、趣味はガーデニングだ。
怒りで更に怖い顔をするゴードンと、ニヤニヤとしているフリード、対象的な二人がじゃれ合っているのを見ていたスレイとユフィは、いつものことだと慣れた様子でその場をあとにした。
「いつもごめんね、ボクのお父さんが」
「違うよ~、私のお父さんがキレやすいのがいけないんだよ」
両親たちが喧嘩をしているのでパーティーはもう少し時間がかかりそうだ。一度上に戻って呼ばれるまで待とうかと考えたスレイは、自分の部屋にユフィを招き入れる。
「パーティー始まるまでボクの部屋で遊ぼ」
「うん───あっ、スレイちゃん。ちょっと待って」
なんだろうと思いスレイが振り返ると、クルンッと人回転したユフィはスカートの裾を手で摘んで小さくお辞儀をした。
「どうかなスレイちゃん。このお洋服似合ってるかな?」
普段はスレイと変わらないような服装をしているユフィだったが、今はスレイと同じようにおしゃれな格好をしている。
白を貴重としたブラウスに淡い赤のスカートを身にまとった清楚な服装だった。一言で言えばかなり似合っており、見惚れてしまった。
「うん。とっても似合ってるよ。見惚れちゃった」
「うふふ、ありがとうぉ~、スレイちゃんもそのお洋服とっても似合ってるよ!」
スレイとユフィはお互いに少し頬を染めながら上へと上がっていく。結局、パーティーが始まったのはそれから三十分後だった。
⚔⚔⚔
ジュリアに呼ばれてリビングにやってきた二人は飾り付けされた部屋と豪華な料理を見て声を上げた。
「わぁ~、美味しそう!」
「さぁさぁ、主役の二人はこっちに座ってね」
テーブのに並べられた二つの椅子、そこに座ったスレイとユフィはそれぞれの母親からジュースの入ったグラスを受け取った。
「それでは、遅くなりましたがこれより二人の誕生日会を始めます。みんなグラスを持って!」
ジュリアが乾杯の音頭を取りると、みんながそれに合わせてグラスを持ち上げた。
「スレイ!ユフィ!お誕生日おめでとう!」
「「「おめでとう!」」」
持ち上げたグラスを打ち合わせる。
両親とグラスを打ち合わせたあとスレイとユフィも小さくカチンッと音を立てて打ち合わせる。
「おめでとう」
「おめでとぉ~」
お互いに祝福の事をかけると、早速豪華な料理を食べ始める。
パーティーも進み料理も減ってきた頃、ジュリアがフリードに声をかけた。
「フリードさん。そろそろあれを渡しましょうか」
「あぁ、そうだな。おいゴードン、マリー。用意できてるか?」
「おぉ」
「出来てるわよぉ~」
なんだろうとスレイとユフィが思っていると、立ち上がったフリードたちは一度席を外して何かを持ってくる。
「よぉ~し、お前ら。プレゼント渡すぞ。こっち来い」
フリードに呼ばれてソファーの置かれている方へと移動したスレイとユフィ。
椅子からソファーに座りなおした二人の前にフリードがたった。
「そんじゃまず俺からな。スレイには剣と剣帯を、ユフィちゃんには絵本のセットな」
「剣!お父さんありがとう!」
「やったぁ~!おじさん!ありがとぉ~」
スレイはさっそく受け取った剣を抜いてみようとしたが、危ないからと言う理由でジュリアに止められ没収された。
「近いうちに、お前の師匠になりそうなやつを連れてきてやる。だから頑張れよスレイ」
「お父さんは教えてくれないの?」
「これでも忙しいからな……それに、お前はお前の剣を見つけてほしいからな」
どういうことなのかいまいち理解できないスレイはキョトンっとしていると、フリードはそんなスレイの頭を優しく撫でてから後ろに下がると、今度はゴードンが前に出た。
「今度は俺からだ。ユフィにはブローチ、坊主には花の苗だ」
「キレイ!ありがとお父さん!」
「おじさんありがとう。でも、これなんって花?」
「咲けばわかる」
受け取った鉢植えがなんの花かは教えてもらえなかったが、頑張って育ててみようと思った。
「それじゃあ次はお母さんたちからね。私からはおそろいの杖よ」
「私はぁ~、ローブとぉ~、マントよぉ~」
ジュリアからは先端に無色透明な宝石がつけられた杖が、マリーからは深い緑のマントと真っ白なローブが送られた。
ちなみにマントはスレイが、ローブがユフィが受け取った。
「お母さん、おばさんありがと~!大事にするね!」
「マントカッコいい!ありがとうおばさん!お母さんも杖ありがとう!」
「喜んでもらえて良かったわぁ~」
「二人共、その杖練習用だけどちゃんと魔法が使えるわ」
「魔法!教えてくれるの?」
「えぇ。でも約束よ。魔法も剣も簡単に人を傷つけることができるわ。無闇やたらに使わないこと、それが約束よ」
「うん!」
「はい!」
二人の返事を聞いて頷いたジュリアが離れると、キッチンの方に行っていたフリードがホールケーキを持って戻ってきた。
「よぉ~し、プレゼントも渡し終わったし、ケーキ食おうぜ!」
フリードが持ってきたケーキは見事なショートケーキ、本当にこれを作ったのかとスレイは思った。
「すごぉ~い、これお母さんが作ったの?」
「作ったぁ~って言いたいけどぉ~、時間がなかったからぁ~、食堂のおばさんに頼んだのぉ~」
「でも美味しそう!」
切り分けられたケーキを受け取りったユフィが嬉しそうにしている。それを見ながらスレイは、自分のプレゼントはいつ渡そうかと考えている。
「あっ、ねぇ!スレイちゃん!」
「なに?」
声をかけられ振り返ったスレイの目の前にバッと小さな箱が差し出された。
「お誕生日おめでとう!私からのプレゼントだよ~」
「わぁ~ありがとう、開けていい?」
「うん!いいよぉ~!」
箱を開けると中には歪な形のクッキーが入っていた。
「クッキーだ!ありがとう、食べていい?」
「うん!食べて食べてぇ~!」
さっそく一枚口に入れたスレイが一口クッキーを口に含む噛むと、パキンッといい音がなった。
「うん。甘くておいしいよ。あと、なにか花の匂いもしていいね」
「花の匂い?」
スレイの感想にユフィは首を傾げていた。その理由は、このクッキーを作るときに花の匂いがするようなものを使っていないからだ。
そんなユフィの思いとは裏腹に口に入れていたクッキーを飲み込んだスレイは、一枚食べようとしたその時、自分の身体がなにかおかしいことに気がついた。
「あっ、あれ?………おっ、おかしいな」
「どうかしたの?」
「なんか、手が震えてる?」
ガタガタと小さく震え出し両腕、しかしその震えは段々と全身に上がっていき、異変に気づいたフリードたちが心配の声を上げる。
「どっ、どうした?」
「だっ、大丈夫?」
両親が震えるスレイに声をかけたその時、突如糸が切れた人形のようにバタンッと倒れた。
「キャアアアアアーーーーーーッ!?スレイちゃんが倒れたァアアアアーーーーッ!?」
「なっ!?スレイッ!?ジュリアさん回復!!」
「すっ、すぐに!───ヒールッ!」
ユフィが悲鳴を上げ、駆け寄ったフリードとジュリアが慌てながら魔法を使ってスレイを治そうとした。
⚔⚔⚔
薄暗い部屋の中、ベッドに横になっていたスレイが悪夢にうなされていた。
「ぅっ、うぅっ………ハッ!」
バッと布団を押しのけながら起き上がったスレイは、荒い呼吸を繰り返しながら心臓を落ち着かせる。
「ハァ……ハァ……ハァ……なんだよ、巨大なクッキーに食べられるの夢って」
自分でも分けの分からない夢の内容にツッコミを入れたスレイは、自分の服装を見てふと疑問を覚えた。
なぜ寝間着に着替えずに眠ってしまったのか、それにいつの間にベッドに入っていたのかと疑問に感じていると、ベッドの端で誰かいるのを気付いた。
誰だろうとスレイは目を凝らしていると、そこで寝ていたのはユフィだった。なぜユフィがここに?っと考えたところでスレイはパーティーでのことを思い出した。
「そうだ、ユフィのクッキー食べて倒れたんだ」
それを思い出したスレイは、同時にあることを思い出してクスクスと笑ってしまった。
スレイは以前、っと言ってもまだステイではなくヒロだった頃、今日と同じように誕生日にミユから送られたクッキーを食べて倒れたことがあった。
転生してまで幼馴染に貰ったクッキーを食べて倒れる経験をするなど、こんな稀有な体験をするとはなんとおかしな人生かとスレイが一人で笑っている。
するとその声を聞いてユフィが目を覚ました。
「うん……あれ?私いつの間に………」
「ごめん。起こしちゃった?」
目を覚ましたユフィと目があったスレイ、するとユフィが目を一瞬見開いたかと思うと、目尻に涙を浮かべながらスレイに抱きついた。
「良かったぁ~!スレイちゃん、目が覚めたぁ~!」
「ごっ、ごめん………ちょっ、静かに」
今が何時なのかは分からないが、キッとみんな寝ている。
騒がしくして起こしては申し訳ないので静かにしてもらおうとすると、ハッとしたユフィが申し訳無さそうにしながらスッとスレイから離れた。
「ごめんね………もう平気?」
「うん。もうスッキリ!」
「良かったぁ~………あっ、そうだ。おばさんが、スレイちゃんのプレゼント机においていくって」
「ホントだ。ありがとう」
ベッドから起き上がったスレイは、机の上に置いてあったプレゼントを確認すし、その中にユフィに渡すはずだったプレゼントがあった。
部屋の明かりをつけてユフィの前に戻ったスレイは、手に持っていたプレゼントをユフィの前に差し出した。
「ユフィ。これ、遅くなったけどボクからのプレゼント」
「あっ……いいの?」
「うん。受け取って」
「ありがと」
あんなことを仕出かしたぶん、気まずさのあったユフィだったがスレイの言葉を聞いてプレゼントを受け取った。
プレゼントを受け取ったユフィはスレイの断りを入れてから箱を開ける。
「うそ………これって」
ユフィは箱の中に入っていたリボンを手に取り、そこに刺繍された蝶を見ながら息を呑んだ。
「ユフィ、どうかしたの?」
「ううん。前にこんなちょうちょの刺繍が入ったリボン持ってたんだけど、それに似てたから驚いちゃって」
「えっ?ユフィ、こんなリボン持ってたっけ?」
ずっと一緒にいるがユフィが蝶の刺繍の入ったリボンを付けていた記憶はない。
「うん。でも、失くしちゃったの」
「そうなんだ」
そうなのかと、納得しようとしたスレイだったがリボンを見つめるユフィのその顔が懐かしみと、どこか悲しみの折混ざった表情だった。
それを見たスレイは、頭の中でそんなはずはないと頭の中で思いながらも、もしかしたらと考えてしまった。一度溢れ出した想いは隠すことが出来ず、自然と口に出してしまった。
「ねぇユフィ……そのリボンってさ、赤い生地に……青い糸で、刺繍されてなかった?」
「────ッ!?なんで、君がそれを!?」
鬼気迫る勢いでスレイに詰め寄ったユフィの口調から子供らしさが消える。
「君は誰?なんでそのことを知ってるの!?まさか、私と同じ───」
「転生者なの?って?」
「────ッ!?」
あからさまに狼狽えるユフィを前にスレイはこれで確定だと思った。
「ボクは転生者だ。君もそうなんだよね、ユフィ」
「うっ、うん………でも、なんで」
「わかるよ。だって、今言ったリボン、ボクが君にあげたんだから」
必死に絞り出すようにスレイの口から告げられた言葉を聞いたユフィはハッと目を見開いた。
「うそ……そんな……まさか、ヒロくん?」
目を見開き、口元を抑えながら訪ねるユフィにスレイは小さく頷いた。
「そう、だよ………ミユ」
ポロポロとユフィの両目から涙がこぼれ落ちる涙が手の甲を伝って落ちていく。言葉はいらない、その涙こそが答えなのだと思い、スレイの目からも自然と涙がこぼれ落ちていく。
「会えた……もう一度、君に」
「私も……ヒロくん…………」
二人はそっと近づき、そしてお互いの身体を抱きしめる。
もう、二度と会うことができないと思っていた大切な幼馴染との再会に、二人は静かに泣き続けるのであった。
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