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ダンジョンまでの道中

いよいよダンジョン攻略、といきたいところですが、それまでの道中の話を少しお送りいたします。

ブクマ登録ありがとうございます。これからも皆様に楽しんで頂けるよう頑張っていきます。

 フリードとジュリアと開会してから一週間、スレイとユフィは十人程の冒険者と共に死んだダンジョンの調査の依頼に行くことになった。

 全員が集まった所で今回の調査のリーダーとして、フリードが他の冒険者に向けて挨拶をしていた。

 フリードの話を要約すると、これから行くダンジョンは歩いて三日ほどの距離にあるそうで、初めてダンジョンに向かうも者や長期依頼に行く者もいるので馬車での移動ではなく歩きでの移動となるらしい。


「それじゃあ行くぞぉ~」


 なんともやる気のないフリードの掛声で出発したスレイたちだった。


 ⚔⚔⚔


 歩きながらスレイとユフィは集まった冒険者の顔を見たのだが、特に紹介しても面白い人がいない………と言うよりもいつも顔を合わしている人たちだったのであまり代わり映えしない。


「結局みんな知り合いか」

「そうだねぇ~」


 今日この調査依頼のために集まった冒険者はアリステラ、ヴィヴィアナ、パックス、アーロン、ベネディクトそしてもう一人、ずっと黙ってミハエル、そんなメンバーのことを見ながら呟いた。


「アーロン、お主本当に来ても良かったのか?」


 そう尋ねるパックスの言葉はスレイたちも思っていることだった。

 この中で唯一の妻子持ちのアーロン、それもまだ幼い乳幼児と言ってもいい年齢の子供がいるアーロンが長期的に街を離れるのはどうなのかと心配してのことなのだが、当のアーロンは少し不安そうな顔をしながらも小さくうなずいた。


「はい。妻も許してもらえましたからね」

「なんだなんだ、まさか倦怠期ってやつか?」

「ヴィ、ヴィーちゃん……そ、そんなこと言ったら、メッ……!……だよ……?」

「アタシは子供か!」


 アリステラに言われて怒られるヴィヴィアナだが、そのお叱りの言葉にヴィヴィアナは不服の言葉を告げると、ヴィヴィアナに倦怠期を疑われたアーロンは、否定の言葉をつげた。


「失礼な、妻との仲は良好ですよ。今朝も朝早くから自分のために弁当を作ってくれました」

「…………なんだ、ノロケか」


 不安そうな顔か一転、なんともだらしない顔をしたアーロンを見ながらスレイが問いかける。


「ダンジョンに潜って戻ってくるだけでも数日は戻れないけど、寂しくはないのかい?」

「寂しいですが、これも家族のためですからね!」


 拳を掲げて意思表示をするアーロン、それを見ながら全員が微笑んでいると先頭を歩いているフリードから声が投げかけられた。


「いやぁ~、若いっていいね」

「フリードさんも十分若いわよ」

「それを言うならジュリアさんもさ、年を増すごとに綺麗で魅力的になっていくさ」

「あら、そういうフリードさんも、年を重ねてますますかっこよくなっていくわ」


 人の前でもか変わらずノロケ出すフリードとジュリアを他のみんなが微笑ましい夫婦像に微笑んでいる中、この両親の息子であるスレイはと言うと、片手で目元を覆い空を見上げながら立ち止まる。


「ヤベェ、親のノロケを人に見られるの、マジで精神に来る」

「頑張ってスレイくん、まだ傷は浅いよ」


 精神的に傷いているスレイを何とか立ち直らせようとするユフィ、なんだか遠足にでも行くような雰囲気が流れる中でじっと押し黙っていた者が声を上げた。


「ふん、君たち少しは落ち着いたらどうかね?」


 その声を発したのは黄金の鎧を纏ったミハエルだった。

 ミハエルの声を聞いてみんなが足を止めて彼の方に振り返った。


「悪いがね、私は君たちとは違って忙しいんだ、こんな呑気に歩いていけば着くまでに何日かかるかわかったもんじゃないよ」


 新人研修ということで集められたミハエルは初めからこのパーティーに馴染めていない。加えて今の発言でヴィヴィアナが切れた。


「テメェッいい加減にしろよなッ!」

「ヴィーちゃんステイ!」

「アタしゃ犬かッ!」


 後ろからユフィに羽交い締めにして止められたヴィヴィアナは、犬扱いされて大いにご立腹だった。

 出発して早々険悪なムードになったのを見てフリードが間に入った。


「はいはい、そこまでそこまで。ミハエル君の言うことももっともだな。お前たち、妻子持ちもいるからここからは走って移動するぞ」


 フリードが声をかけると全員が走り出した。

 先頭を行くフリードの速度に合わせるスレイたち、チラチラと前を走るフリードがこちらの様子を確認しながら走っている。

 ユフィが以前身体強化が苦手だと言っていたアリステラに声をかけた。


「アリスちゃん、大丈夫?」

「う、うん……」

「疲れたらすぐに言ってね、スレイくんが背負ってくれるから」

「ちょっとユフィ~、そこボクなの?」

「男の子なんだから進んでやるべきでしょ?」


 友人とは言え恋人が異性を背負って運ぶのは良いものなのだろうかと言いたいのだが、ユフィが良いならいいのかっと思うこにした。


「納得がいかないけど、ユフィから許しもでたから疲れたらいつでも言ってね」

「あっ、ありがとう……」


 どういたしましてっとスレイが答えると、その横を誰かが抜き去っていくのが映った。

 誰だと思いその背中を見ると、ミハエルがまっすぐフリードの方へ向かっていくのが見えた。


「すまないが、こんな速度で急いでいるのですか!?」


 真横を走るミハエルを見ながらフリードが答えた。


「あぁ、そうだがなにか?」

「フッ、Sランクの冒険者がこの程度とは、これはガッカリですね」


 人を煽るよう態度を取っているミハエル、その口調にジュリアが腹をたてる。


「みんな、止まりなさい」


 指示を受けてスレイたちが足を止めると、ジュリアがミハエルの方に歩み寄りそして説教を始める。


「今の言葉は見過ごせないわよ」

「はっ、そうですか」

「あなたね!」

「待って、ジュリアさん」


 これ以上はまずいと思ったフリードがジュリアを止めると、フリードはミハエルに話しかける。


「ミハエルくんだったかな」

「えぇ。いつかあなたたちを越えるような冒険者ですので、覚えておいてください」


 やすい挑発をするように煽るミハエルの言葉にヴィヴィアナたちがカチンと来たが、それを察したフリードが視線を向けてから話を続けた。


「ミハエルくん。すまないが、このパーティーの中には身体強化が苦手な子もいる。これ以上は速くできないんだ」


 普通ならばこれで理由を察して分かってくれる、そう思ったフリードだったが、返ってきた言葉は想像してもいないものだった。


「ならば置いていけばいいでしょう」

「………え、えっ?」

「…………はぁ!?」


 ミハエルの本心からの言葉なのだろうか、それを聞いたアリステラがオロオロとうろたえる。


「テメェ……マジでそんなことを言ってるのか?」

「あぁそうだが、足手まといはいらない、そうだろ?」

「テメェ、ブッ殺すぞ!」


 親友の悪口を言われヴィヴィアナが完全にブチギレた。

 ダガーを抜き放ったヴィヴィアナが全身に闘気を纏うと、ミハエルを斬り殺すべく襲いかかろうとした。


「ヴィ、ヴィーちゃん……ダメッ!」


 アリステラの静止の声とともにアーロンたちも遅れてヴィヴィアナを止めるべく動こうとしが、それより先に動いていたスレイが前に入ることでヴィヴィアナを止めた。


「はい、そこまで」

「ッ!?止めんじゃねぇよ、スレイ!!」


 振り抜こうとした腕を掴んで押さえつけたスレイをヴィヴィアナが睨みつける。


「落ち着いてヴィー。ただでさえ数日は一緒のパーティーなんだから、初日で喧嘩はしない」

「そ、そうだよヴィーちゃん……そ、それに、あ、足手まといは、事実だから……」


 ブチギレているヴィヴィアナをなんとかしてなだめようとするスレイとアリステラだったが、再び口を開いたミハエルの言葉が火に油を注いだ。


「ふむ、足手まといと言うことに自覚があるのなら、君も今からでも町に帰ったらどうかね?」

「あ゛ぁ?」

「えっ……あっ……そ、それは………」


 目を伏せて言葉を探すアリステラの姿を見てスレイはミハエルに釘を差した。


「ミハエル、今のは言いすぎだ」

「なぜだ?ホントのことなのだ。才の無いものが才ある者の足を引っ張っては元も子もないだろう?」

「ミハエルッ!いい加減にしやがれテメェッ!」

「あッ!?」


 ヴィヴィアナがスレイの手を振り払いミハエルに斬り掛かろうとすると、今度はスレイではなくユフィが後ろから羽交い締めにして止めた。


「はいストップ、いくら何でもやりすぎだよヴィーちゃん」

「うるせぇ、離せッ!こいつはぶっ殺さないと気がすまねぇんだよッ!!」


 羽交い締めにされながらも暴れでもがくヴィヴィアナをユフィが落ち着かせようとする。


「ヴィーちゃん、危ないよッ!?ちょっとスレイくん止めてッ!?」

「むり、こっちが刺されるわ」


 もうこうなったらとユフィが一度ヴィヴィアナの拘束を解いてから、覆いかぶさるように押さえ込み腕の関節を決める。

 これで少しは大人しくなるかと思っていると、ミハエルがまたしてもいらぬ言葉をいった。


「全く、君と言う女はいつみても騒がしいな」

「んだとコラァ!今すぐその首たたき斬ってやる!」

「やめてヴィーちゃん、キレる斬れちゃう!?」

「だからやめろってヴィーッ!それとミハエルは煽るな!!」


 スレイの言葉はどこ吹く風、全く聞く耳を持とうとしなミハエルについにアーロンたちが苦言を呈した。


「いい加減にしてくださいミハエルさん!数日とは言え同じパーティーなんですよ!アリスさんに謝ってください!」

「なぜ私が謝らねばならないんだ」

「…………本気でいってるのか?」

「あぁ、そうだが」


 さも当たり前のように告げるミハエルに今度はベネディクトがキレかかった。ぎゅっと握り締められた拳を持ち上げようとしたところをパックスが止める。


「落ち着けベネディクト」

「……………すまん」

「構わん、じゃがミハエルにお主は少しは黙らんか」

「ふん、醜いドワーフは黙っていろ。これは人同士の話なのでな、失敗作の分際で口を挟まないでもらおうか」

「な、なんじゃと……!」


 さすがにこれは聞き逃せないそう思ったスレイだったが、ここにいる全員から冷ややかな視線を感じ取ったのか、それともただ気にくわなかっただけなのかミハエルは鼻を鳴らして踵を返した。


「すまないが、私は先に一人で行かせてもらう」

「おういけいけ!テメェなんか魔物に食われて死んじまえ!!」


 闘気を纏いながら走り出したミハエルを誰も止めようとはしない代わりに、ここにいる全員が冷めた目でミハエルの後ろ姿を見ていた。

 面倒なことになってきたと思ったスレイが頭をかきむしった。


「たまに居るのよね。ああいう新人」

「今回の調査依頼に誘われて、浮かれてんのかね?まぁなんだ、あんま気にすんじゃねぇぞ」


 いままであえて黙ってなにもしてこなかった二人は、ミハエルの後ろ姿を見ながら告げた。

 キャリアの長い二人からすると、何度も見ていた光景なのかもしれないが、新人であるスレイたちからすると気にするなと言う方が無理だった。

 スレイとユフィはミハエルの後ろ姿を見ながら小さな声で呟いた。


「人種絶対主義者、か」

「本当にいるんだね」


 スレイが小さな呟きにユフィも同調するように答えた。

 人種絶対主義者、簡単に言えば人以外の種族、エルフやドワーフ、獣人などは神が作り出した失敗作といい、人間以外の種族を差別している者たちのことを指す総称だ。

 二人とも知識としては知っていたが、初めてそういうやからに出会った。


「おいユフィ、いい加減離せ。ってかどけよ」

「あっ、ごめんね」


 ユフィが極めていた腕を離して解放すると、立ち上がったヴィヴィアナが腕を確認した。


「悪かったな、止めてくれて」

「良いよ。悪いのはあっちだし」

「すまんかった」


 珍しく元気のないヴィヴィアナに何か声をかけようかと思ったが、言葉が出てこなかったユフィは何も言わなかった。

 そんなユフィの姿を見ながらスレイはパックスに話しかけた。


「パックス、平気?」

「あぁ、気にするでない」


 気にするなというパックスも元気がない。

 こういう時は変に声をかけることもできないのでそっとしておくことにしたスレイは、同じようなユフィの方に歩み寄った。


「二人の方はどうにかなりそうだけど、ミハエルの方はどうしょうも無いか」

「なぁ~んて言いながら、ミハエルにアラクネ付けてるのはなんで?」

「死なれたら目覚めが悪いからね」


 コネクトでアラクネの視界を共有しミハエルの様子を確認したスレイは、無茶をしそうになったら合図を送るようにとアラクネに追跡を命じたまま視界を戻した。


「よし、落ち着いたみたいだから出発するぞ」


 フリードが声を掛け一人欠けた状態で一行は再び進み始めるのであった。


 ⚔⚔⚔


 日も暮れて来るよりも早く、スレイたちは野宿の準備を始めることになったのだが、ここで一つ問題が発生した。


「何で誰もテントの張り方知らないの!?」


 ここにいる誰もテントどころか野宿の仕方まで知らなかった事にスレイはあきれてしまった。


「悪いな、やってみようとは思ったんだが無理だった」

「ごっ……ごめんね」

「自分、野営とかはしたことがありませんので」

「火なんぞ必要なかろう」

「…………テントもいらんな」


 っとは野営の準備の出来ない面々のセリフであった。

 旅の経験のあるパックスとベネディクトは大丈夫だろうと思っていたところでのこれ、この二人よく今まで生きてこれたなとスレイは感心するのであった。


「どうするユフィ、こいつら全員締める?」

「ダメだよぉ~」

「……わかった。それでテントはこっちで用意するとして、取り敢えずみんなには薪になりそうな木探して火を起こしてくれるかい?」


 っというわけでみんなで枯れ枝を探して焚き火の準備をしてもらっているうちに、スレイは一人でテントを張っていた。


「こんなことなら、畳まずに入れとけば良かった」

「ホントだね」


 そう答えるユフィは夕食の準備をしていた。


「しかし、野宿も久しぶりだな」

「旅の間はずっとだったけどね」

「そうだな。まぁ修行中よりは楽だったな。あのときは命かかってたし」


 二人で話ながらテントを張っているとフリードが近寄ってきた。


「おいスレイ、ユフィちゃん。あっち大変なことになってるぞ」

「「えっ?」」


 ひきつった顔のフリードに言われたスレイとユフィは、フリードがみている方を見る。するとそこにはなぜか、キャンプファイヤー並みに燃え盛る炎が見えた。


「なにやってんだ!?」

「なにやってんの!?」


 同じことを叫びながら二人が鎮火活動を開始する。

 まずは被害を出さないようにシールドで周りを覆い、一気に消火するためにユフィが最上位の氷魔法コキュートスアローを使い炎を凍らせた。


 ⚔⚔⚔


 プルプルと口許を震わせたスレイが腕を組ながら睨む。


「いったい何をどうやったらあんなことになるんだ!」


 怒りに震えるスレイが全員を地面に正座させて理由を聞き出す。


「すみません」

「面目ない」

「…………悪かった」

「ご、ごめん、なさい」

「悪かったよ」


 全員が揃って頭を下げて誤っているが話はそれでは終わらない。


「アリスちゃん、どうしてあんな燃えかたしたのか教えて」

「あ、あのね……な、なかなか、火がつかない……そ、その魔法で……」

「なるほど、つまりは火力を間違えてあんなことになったわけか」


 アリスに話で納得したスレイとユフィは、テントを張り終えたあとに全員に火の付け方を教えた。

 結局二人が野営と夕食の準備をすることになった。



 ⚔⚔⚔


 夕食の席で隣に腰を下ろしたフリードが、スレイに話しかけてきた。


「けっこう面白い連中だな」

「そうだね。面倒なのが一人いるけどね」


 片目をつむって視界をミハエルに付けているアラクネの視覚にリンクすると、ミハエルはテントは張らずに直接寝袋に入って寝てしまっている。


「うっわ、危ないな」


 火もつけていないもで寝ているので本当に魔物に襲われるか、もしくは山賊や盗賊に襲われるかもしれないので、スレイはアラクネに周りを確認させてから、安全を確認してアラクネに付与しているシールドを発動しミハエルを守る。


「何したんだ?」

「火もつけずに寝てるバカをシールドで守った」

「……なぁ、お前のゴーレム、前より進化してねぇか」


 前まではそんな機能付いていなかった、そう思ったフリードがスレイに訪ねる。


「村を出てから色々つけたからね」


 空間収納の中から数体のアラクネを取り出す。


「えぇっと、こいつが映像記録が可能で、こいつは透明化も出来て、こいつはユフィのシェルと同じことが出来るやつだったかな?」


 見た目がほとんど同じなため、全く区別がつかない。


「一通りの機能はレイヴンにつけて、こいつらは一つか二つ機能を追加してるね」


 そんなことを話していると、いつの間にかユフィまでもオールに着けた新しい機能の説明などを始め、しまいには今までに作った魔道具や魔道銃、ゴーレムをすべて空間収納の中から引っ張り出してみんなに向けて、使い方や新しい機能などの説明などをしながら夕食は進んでいった。


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