二人との再会
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今までの投稿した話を修正しまし、書き方を変えました。これからは、この書き方でやっていきます。
夜、依頼を終えたスレイとユフィは泊まっている宿には帰らずに、ギルド備え付けの酒場で呑んでいた。
「「………………」」
酒場には二人だけではなくどういうわけかギルドで再会したフリードたちと、一緒の仕事を終えたヴィヴィアナたちも同席していたのだが、スレイとユフィは揃って会話に入れなかった。
チビチビと酒を飲みながら二人はテーブルの一角に視線を向ける。
「フリードさん!今度、自分とパーティー組んでください!」
「ワシもたのみたいんじゃが」
「…………俺も、お願いします」
「おういいぜ、その代わり今回の依頼が終わってからな」
アーロン、パックス、ベネディクトの三人からパーティーに誘われるフリードが快く了承し、それからはなんともフランクな会話が続いていた。
そんな会話を聞き流しながらテーブルの反対側に視線を向ける。
「あ、あの……こんど、ま、魔法の特訓を………付けてください……!」
「いいわよ。私なんかでよかったらだけど」
「そ、そんなことないです………!とっ、とっても……うっ、嬉しいです!」
「あら、それはよかったわ」
フフッと微笑むジュリアの前では、アリステラが両手を組んで揶揄ではなく本当に天まで昇理想なほど喜んでいた。
「あんなにだらしなく笑ってるアリス、超レアなんだけど」
ヴィヴィアナが少しだけ離れながら物珍しそうな、あるいは奇妙なものを見るような目をアリステラに向けていた。
同じテーブルでありながら男女でグループが出来てしまった。
「「………………」」
そんなテーブルの中で溢れてしまったスレイとユフィは、ジョッキを傾けて残っていた酒を飲み干すと小さな声でこんなことを呟いた。
「みんな馴染みすぎだろ」
「みんな馴染みすぎでしょ」
っと、同じタイミングで二人がそう呟くのであった。
⚔⚔⚔
時間はスレイとユフィが二人と再会したときにまで遡る。
今まで話していた冒険者たちが、スレイの発した発言に耳を疑っているなか二人にさらに問いかける。
「いるには良いとしても母さん、冒険者は引退したんじゃなかったの?」
一年前に冒険者を引退し専業主婦になったはずの母がなぜここにいるのか、ミーニャとリーシャはどうしたのかとまくし立てて聞き出したいことはいくつもあった。
「指名依頼が来てね、今回だけの復帰よ」
「今回だけって……リーシャはどうしたの?」
「心配しなくても、二人のことはちゃんとマリーに頼んできたわよ」
それで安心しろと言われでも安心できない。
スレイが家にいた頃とは違うのだからと言いたかったが、家を出た身でそれを言うのはお門違いだ。だけど何か一言言ってやりたいが何も言えないと、スレイが一人頭を抱えていた。
困り果てている息子の姿を見ながら愉快そうに笑う両親の顔をスレイは思いっきり殴ってやりたかった。
「あっ、そうだったわ、ユフィちゃんに渡しす物があったの」
「えっ私にですか!?」
突然話を振られたユフィが驚いて声を上げると、ジュリアは空間収納を開いて小さな袋を取り出した。
「はい、これルラからの手紙もあるわよ」
「先生からですか」
「冒険に役立つものとか言ってたわ。確かに渡したからね」
「ありがとうございます」
なんだろうと思いながらユフィは受け取った袋を開けて中を確認した。
袋の中にはその中には今までに見たことのない、綺麗な紫色の液体で満たされた試験管のような瓶は数本と、手紙が入った封筒が入っていた。
試験管を一本取り出して魔力を通してみたユフィは、明るく輝いた液体を見ながら、そうかっと叫んだ。
「そっか!これってデュアルポーション!先生、完成させたんだ!」
デュアルポーションとは、前々からクレイアルラが研究していた体力と魔力を同時に回復させる新たなポーションのことだ。
ユフィの言葉を聞いたスレイが顔を上げて聞き返した。
「えっ!?デュアル・ポーション!?ウソ、出来たの!?」
興奮気味に尋ねてくるスレイをユフィは落ち着かせる。
「落ち着いてスレイくん、興奮するのはわかるけど……あっ、そうだ手紙」
袋の中に手紙が入っていたのを思い出したユフィは、興奮気味のスレイを押しのけて手紙を取り出した。
手紙の内容は以下の通りであった。
───スレイとユフィへ
ようやく完成した新たなポーションです。
あなたたち二人の協力のお陰で完成しました。
完成したばかりで数はあまり用意することはできませんでしたが、餞別としていくつか送ります。
あなたたちの冒険の道に幸あらんことを祈っています。
クレイアルラより───
簡潔に書かれた手紙でユフィはスレイにも手紙を見せると、読み終わったスレイに顔がほころぶのが消えた。
デュアル・ポーションの開発には二人もかなりの協力をした。
知識面ではあまり役に立つことが出来なかったが、素材集めや調合の手代などをしていたのでその成果がこうして目の前にあることを素直に喜んだ。
袋の中のポーションは十本、ユフィは自分の分のポーションを抜き取ると残りをスレイに差し出した。
「これ、スレイくん分のポーション」
「あぁ。ありがと」
袋ごと受け取った中身を確認してから空間収納にしまったスレイは、改めて二人の方へと向き直った。
「それで、この騒ぎはいったい──」
「すまんなフリードくん、ジュリアくん待たせてしまって」
スレイの言葉を遮るように現れたのは、ギルドマスターのデイヴィッドだった。
「遅いってのギルマス」
「すまんすまん、ってスレイくんにユフィくん。なんじゃみな知り合いかね?」
何か封筒を持ってやってきたデイヴィッドはスレイとユフィ、フリードとジュリアを順に見ながら問うてきた。それに対してスレイたちはそろって、何を言ってんの?っという顔をした。
「知り合いも何も、こいつオレの息子と未来の義理の娘」
「ボクの家名、見なかったんですか?」
呆れたようなスレイの言葉を聞いてデイヴィットが思い出したかのように答えた。
「そういえばお前たちの家名、同じじゃったな」
今さらか!っとここにいる全員がそう思い、今までの気づかなかったデイヴィッドにあきれた。
スレイたちの呆れたような視線を受けながらデイヴィットが小さく咳払いをした。
「積もる話もあるかもしれんが、フリードくんたちはワシの部屋に来てもらうぞ」
「あぁ、分かってる」
フリードとジュリアが頷き合うと、今度はスレイの方へと向き直った。
「そんじゃあなスレイ、ユフィちゃん」
「また後でね」
「はい、また後で」
「わかったよ。でも、後でちゃんと質問には答えてもらうからね」
踵を返し手を振りながらフリードとジュリアが去っていった。
「まったく。いったいなんだったんだ、アレ?」
「っとか言いながら、スレイくん嬉しそうだね」
「そうかな?」
嬉しそうと言われても納得いかないスレイだったが、あの両親のせいでいらぬ時間を取った。早く仕事に行こうとあるき出そうとしたその時、黙ってこちらを見ていた冒険者たちが一斉に動き出した。
「お前ら本当にあの二人の身内か!?」
「今度いっしょに依頼に行こう!?」
「お願いだ、あの二人に紹介してくれ!」
今まで黙っていた冒険者が一気に押し寄せてきたのだった。
⚔⚔⚔
フリードとジュリアとの再会もつかの間、一瞬にして取り囲まれたスレイたちは魔法で冒険者たちの目をくらませて、適当な依頼を受けて逃げて来た。
その際、なぜかいっしょにヴィヴィアナたちもついてきた。
森の中を歩きながらスレイは大きなため息をついていた。
「なんだったんだアレは?」
ようやく落ち着いた場所にまでやって来たスレイは先程の他の冒険者たちの行動、その理由が全くわからずにいた。
なぜあそこまで必死になって両親のことを聞き出そうとしたのか、全く心当たりがないのだ。
「ホントだよね、どうしてなんだろ?」
同じように理由に付いて全く心当たりのないユフィが、スレイと似たような反応をしながら答えている。
すると、後ろにいたヴィヴィアナとアリステラが呆れたような声で答えた。
「お前らな、あの人たちはこの大陸で数人しかいないSランク冒険者だぞ?」
「ぼ、冒険者にとっては……あ、憧れの、存在、なんだよ……?」
全くもって初耳のその話しに、スレイとユフィは目を見開いて驚いていた。
「うっそだぁー」
「それホントなの?」
生まれてからこの方ずっとあの二人を見てきたが、そんな様子は全く感じなかった。
二人共仕事でよく家は空けるし、家に居るときは娘に甘いただの父親と、家事が少しだけ苦手な母親、どこにでもいるような普通の両親だった。
それがいきなりSランク冒険者と言われても全く実感がわかないが、その反面で納得もできた。
通りで指名依頼が多いわけだっと納得したスレイは、ふとある疑問が頭をよぎった。
「ちなみに、他のSランク冒険者はどんなのがいるの?」
なんとなく嫌な予感がしたスレイがみんなに問いかけた。
「そうだな……確かクレイアルラとか言うエルフと、狂剣士の異名を持つルクレイツアとか言うのもおったな」
思い出すかのようにパックスが語った名前を聞いたスレイは、どちらも聞き覚えのある名前の上自分の師にそんな二つ名があることを初めて知った。
だが自然と納得するような名前に笑いをこぼしかけていると、アーロンもなにかを思い出したに口を開いた。
「そうでした、すでに引退したそうですがマリーと言う名のお方もいたそうですよ」
「…………懐かしい。血濡れの聖母か」
今度はユフィの母親マリーの名前と二つ名が出てきた。
スレイがチラリとユフィを見る。
ユフィ、笑顔を崩さずにスレイを見つめ返した。
「「…………………」」
見つめ返してくるユフィのその目が言いたいことを察したスレイは、そっとユフィから視線を外した。
つまりは、私そんな人知らないよっと、自分の母親のことを頭から消し去っているユフィであった。
「てかよぉ~、お前そんならそうと早く言えよ」
「ボクだって初耳だったんだよ。ってか前に写真見たことがあったでしょ。なんで気付かなかったんだよ」
「そりゃあ名前は知ってても顔は知らなかったからな」
何でも写真はあまり出回って居ないそうで、誰もSランク冒険者の顔をしらなかったらしい。
「それよりも、先程のクレイアルラと言う名前が出てましたが、どういうご関係何ですか?」
アーロンが、スレイとユフィに向かって訪ねると、これくらいならば話してもいいかと言うことを二人が視線だけで話し合った。
「ボクたちの魔法の先生」
「今は故郷の村でお医者さんしてるよ」
それを聞いて前と同じようにアリステラが食いついた。
「そ、それホントなの……!?」
「う、うん。ホントだよ」
「ねぇ、こんど会わせて……!お願いだから……!」
「あ、あぁ。うん、いつかね」
興奮のあまりか、アリステラがいつもとのキャラの違いにスレイとユフィは驚いた。
「自分はルクレイツアさんに会って見たいですね。一度手解きを受けて見たいものです」
純粋な顔で目をキラキラさせながら語るアーロンの目を見たスレイは、思わずガシッとアーロンの両肩を掴んだ。
「えっ、どうしたんですか!?」
いきなりのことに驚くアーロンは、目の前にいるスレイの眼に生気がないことに気がつく。
「アーロン、それだけはやめとけ」
「へっ?」
「いいかい?あの人と手合わせなんてしたら死んだ方がまし──いいや!いっそ一思いに殺してくれって思うほど滅多うちにされたあげく、もうマジで死ぬかと思うほどボロボロにされるんだぞ!」
熱弁をかましたスレイはすべてを言いきったあと、しまったと思ってしまった。
「スレイさんそれどう言うことですか!?まさかルクレイツアさんとお知り合いなんですか!?」
アリステラに続いてアーロンまでもがキャラが変わり、スレイに向かって詰め寄っていった。
「う、うん。一応ボクの師匠だから」
「なんと!うらやましい!今どこにおられるのですか!?教えてください!」
「怖い怖い!アーロンの目が怖い!ってか、あの人のしごきは殺人レベルだから、マジでやめとけよ!!」
誰かに助けを求めたかったが、誰も二人を止めようとはしないので、二人が自然に落ち着いてくれるのを待つことにした。
⚔⚔⚔
今日の依頼はロックアントと言う石の身体を持つ魔物のことで、習性は基本的に普通のアリと同じだが巣は地面ではなく木の上に作るのだが、一つの巣にいるのは大体十匹ほどだ。
「パックスさん、そっちに一匹いきました!」
盾を構えロックアントの動きを止めていたアーロンが叫ぶ。
「任せろ!───フンヌゥゥ!!」
「ピギャァァァァァァッ!?」
一匹のロックアントに力いっぱい斧を振り落としたパックスだったが、岩の表皮が固すぎるため致命傷には至っていなかった。
「今ので割れんのか、かなり固いのぉ~」
今の一撃で刃がかけてしまったパックスは、後ろに下がると同時に飛び込んだスレイが魔法を放った。
「───ウイングバレット!」
飛び込んだスレイが魔道銃の照準を合わせて魔法を叫びながらトリガーを引き絞る。
一発の銃声と共に撃ち出された弾丸が銃口に展開された魔法陣を抜けると、弾丸が風の魔力を纏い撃ち出された。
風を纏った弾丸がロックアントの外皮を砕いて打ち込まれると、突如全身に風の刃が走った。
「ギ、ギギギ、ギャアァァァァァァ!?」
撃ち込まれた弾丸に纏った魔法によって内部から切り刻まれたロックアントは、断末魔の悲鳴を上げながら事切れた。
ようやく倒せたロックアントの亡骸を回収しながらスレイは小さく呟いた。
「これで五匹目、あと十匹か」
このあたりにロックアントの気配がないのを確認したスレイは、二人に声をかけてからコールを使い別行動を取っているユフィに連絡を取ろうとしていた。
連絡を取ろうとするスレイの側でパックスとアーロンが話していた。
「すまんがワシの武器がこれでの、何か貸してくれんかの?」
「では、自分の盾をお貸ししましょう」
「すまん、助かるわい」
アーロンが空間収納と同じ効果のあるバックから、少し小型の盾を手渡していた。
それを横目で見ていたスレイはコールが繋がったのを確認すると、ユフィに問いかける。
「あっ、ユフィ。スレイだけどそっちはどれくらい倒せた?」
『こっち?今、六匹目を倒したところだよ』
「すごいな、こっちはまだ五匹だよ。こっちにはもうはぐれはいないし、一度合流しない?」
『そうしようか』
「それじゃあさっき決めた場所に集合で」
『うん。りょーかい』
コールを切ったスレイは二人にユフィたちとの合流の旨を伝え、レイヴンの案内でユフィたちと合流した。
⚔⚔⚔
全員が合流したあと、見張りを立てながらランチタイムとなった。
「クッソ!何でアタシが見張りなんだよッ!」
「…………公平なくじの結果だ。諦めろ」
見張りとして立っているのはヴィヴィアナとベネディクトだ。そんな二人に申し訳ない気持ちを抱きながら、全員は弁当を広げている。
「一応レイヴンとオウルも飛ばしてるから、索敵の心配はないよ」
「シールド張っても良かったけど、範囲を広げると薄くなっちゃうから」
「ヴィ、ヴィーちゃん………ごめん、ね……?」
一応魔物の巣の近くなので、警戒をしていたが特に魔物が現れる気配がなく弁当を食べるのが遅くなったヴィヴィアナが拗ねたのだった。
⚔⚔⚔
昼を食べ終わったスレイたちは残りのロックアントの討伐を開始した。
「───シールド・リフレクションッ!!」
杖を構えたユフィが突進してきたロックアントに対し、物理反射のリフレクションを併用したシールドを張った。
シールドに真っ向から突っ込んだロックアントは、自分の突進の勢いをそのまま自分に返され、衝撃を受けて後ろに吹き飛ばされた。
「今だよ、スレイくん!」
「ハァアアアアァァァ――――ッ!」
ユフィの合図とともにロックアントも背後から現れたスレイは、強化を施した剣で胴を二つにした。
身体を二つに切り離され地面に転がったロックアント、その頭部に剣を突き刺し完全に死んでいるのを確認したスレイは即座にその場を離れながら叫んだ。
「次だ、ユフィッ!」
「オッケー!───エアーブロウッ!」
魔法陣が展開された杖を掲げたユフィが発動した風のつぶては、ゆっくりと進軍するロックアントの大群に当たり意識を向けさせる。
「全く面倒なことになったな」
「すみません、自分のせいで」
スレイが小さく呟くとアーロンが必死に謝った。
アント種は瀕死になると仲間を呼び寄せる特殊なホルモンを分泌し、それによって近くにいる仲間を呼び寄せる性質を持っている。
今スレイたちは数十匹の群れに取り囲まれていた。
原因はアーロンがそれを知らずに盾で殴ったせいで、仲間を呼ばれて囲まれてしまったのだ。
さらに厄介なことに、このロックアントの中には僅かだがは鉱石を腐食させる粘液を持って個体がおり武器を破壊されることがある。
そのため元々武器が破損していたパックスも奮戦したものの完全に武器が破壊され、皆を守るためロックアントの進軍を押さえていたアーロンの盾も破壊された。
そしてもともと硬い外殻を持つ相手にダガーの刃は効かず、甲殻の隙間を狙ったところでダガーが折れてしまいヴィヴィアナも下がった。
「ごっ、ごめん……もっ、もう……ムリッ……!?」
「アリスちゃんッ、下がってッ!?」
武器を失ったヴィヴィアナたちを一人アントの進軍から守っていたアリステラの魔力が切れた。
みんなを守っていたシールドが消えかかっているのを見たユフィは、攻撃の手を止めてシールドを展開した。
「ごめん、二人共ッ下がるねッ!援護期待しないでッ!」
アリステラが倒れた今守りの要がいない後衛に下がったユフィが叫んだ。
現在、ロックアントとまともに戦えているのはスレイとベネディクトの二人だけだった。
「さて、どうするかな」
これ以上は長引かせれないと思ったスレイは、残された手札でだけのことができるかを考え用としたその時、ベネディクトの方から重い金属音が響き渡った。
「…………こいつ硬い」
ベネディクトの声を聞いたスレイが振り向くと、そこには明らかに通常種とは異なるアントの姿があった。
「クソッ、厄介なのがいるなッ!」
飛びかかってくるロックアントの胴体を二つに斬り裂き、落ちていく上半身が蠢くのを見て頭部に弾丸を撃ち込んで完全に絶命させる。
踵を返してベネディクトの方に走りながら魔道銃でロックアントの数を減らしていく。
鈍色の身体を持ったロックアントの亜種メタルアントは、鋼鉄よりもはるかに硬い外皮を持っておりその硬さは通常種の十倍とも言われている。
通常種の外殻を拳で撃ち抜くベネディクトもさすがにメタルアントは厳しいようだ。
「ベネディクトさん!代わって、そいつはボクがやる!」
「…………頼んだ」
闘気を纏った拳で殴り飛ばし後ろに下がったベネディクト、そして入れ替わるように前に出たスレイは剣に業火の炎を纏わせた。
「ハァアアアアァァァ――――ッ!」
叫びながら前に出たスレイの刃がメタルアントの身体を両断した。
「よし次ッ!」
⚔⚔⚔
その後ロックアントの大群を倒し終えたスレイたちは、依頼の達成報告のためにギルドに戻った。
ギルドに帰るとスレイとユフィが帰ってくるの待っていたフリードとジュリアが、一緒に夕食のついでに呑まないかと誘われた。
全員でギルドの酒場でこうして呑んでいたのだが、あまり遅くまでいられないアーロンが帰ったので飲み会はお開きとなった。
フリードとジュリアを連れて宿に戻ってきたスレイたち、先にユフィとジュリアが風呂にいっている間、スレイとフリードは酒場で呑み直していた。
「結局あまり話せなかったけど、ここでの依頼ってなんなの?」
酒を呑みながらスレイはフリードに訪ねる。
「気になるのか?」
「引退してる母さんを引っ張り出すくらいだからね」
「実はな、あるダンジョンの調査依頼でな」
ダンジョンとは魔物もように生きた迷宮のことで、元は魔物が掘った巣や人間が地下に作った迷宮等が捨てられたりしたときに、長い年月をかけて集まり死んでいった魔物のコアを取り込み、ダンジョンにコアが生まれる。
それがダンジョンなのだが、これが人の作った迷宮だったら隠された財宝が、魔物が作った天然のダンジョンなら高価な鉱石や宝石がある。
それはダンジョンのコアがあると永続的に生み出し続け、破壊された壁などもすぐに再生できる。
「新しいダンジョンでも見つかったの?」
「いや、死んだダンジョンの調査だ」
それを聞いたスレイは顔をしかめる。
ダンジョンが死ぬことは珍しくない。たんに寿命を迎えたか、あるいは誰かがコアを故意に破壊したか、理由は様々だ。
「気になるか?」
「うん。ただの調査依頼で二人を呼び寄せるなんて普通じゃないでしょ?」
「その通り、実はここだけの話、すでに調査は行われてその時にな、コアが見つからなかったんだ」
スレイは持ち上げていたコップをおろしてフリードの方へと向き直る。
「それって、つまりは誰かがコアを持ち去った、あるいは捕食されたってこと?」
「かもな、それを含めて調査する予定だ。危険もあるが行くか?」
「………いいの?」
「ギルマスのじいさんに頼まれたんだよ、新人の面倒を見てやってくれってな。それで、どうする?」
「もちろん。行くに決まってるでしょ」
「さっすが、俺の息子だ」
ニヤリと笑って答えるスレイにフリードも笑って答える。
「よし、飲め飲め!」
「ちょっ、父さん、ボクお酒はあんまり得意じゃ」
「良いんだよ。立派になった息子と酒が飲めるのが嬉しいんだ。付き合えよ」
「……わかったよ」
注がれる酒を見ながらスレイが困り顔を浮かべ、フリードが陽気に笑う。
そこに風呂上がりのユフィとジュリアも加わり四人で盛大な酒盛りをした。
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次の日初めて自分の限界まで飲み続けたスレイとユフィは、朝から二日酔いがひどく起き上がれなかった。
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