迷いと迎え
人型の竜を撃破したスレイは体力が回復したのを見計らって、どうにかしてみんなのいるところへ戻るが、戦いの影響で全員がかなりの負傷をしていた。
アスフィル一人で治療できる容量にも限界がある。
軽症者はアスフィルと手持ちのポーションで治療し、重症者の治療はスレイが受け持つことにした。
治療を行うスレイも腕を失っているが、竜の治癒能力があるため時間が経てば腕を治すことが出来る。
そのことを説明してもやはり心配らしいイグルがしきりに声をかけてくる。
「おいスレイ。ほんとに大丈夫なのか?休んでたほうが良いんじゃないか?」
「だから大丈夫ですって、竜の因子で時間が経てば腕も生えますし傷だって平気ですから。ってか、正直に言って邪魔なんで大人しくしててください」
無常にもイグルを突き放したスレイはげんなりとしながら前へと向き直る。
スレイの正面には傷の治療を受けていたリーフとライアが座っていた。
「全く、あの人少し心配症なんじゃないかな?」
「私たちに竜と戦わせてしまった負い目もあるのでしょう」
そんなものかと息を吐いたスレイは、ライアの方へと向き直った。
「治療続けるけど、痛みとかは平気?」
「……大丈夫。だから続けて」
「わかった。じゃあ骨を元の位置に戻すから、痛かったり違和感を感じたらすぐに言って」
小さく頷いた二人を見てスレイは行くよ、っと声をかけてから闘気を使って少しずつ慎重に砕けた骨の位置を直し始める。
二人とも一時的だったとはいえあの竜とさしで戦っていたため、この中で一番の重症者であることは間違いない。
まずリーフの方は大小差はあれど全身に裂傷がいくつか、それに加えて竜に左腕と肋が折れその時の影響か内蔵も傷つけていた。
次にライアだがブレスに焼かれた肩はすでに治癒が始まっておりその他はすでに完治していたが、酷いのは竜と打ち合い砕けてしまった拳だ。
すでに大まかな治療を終え、傷付いた内臓の治療も終わっていた。
砕けた骨の位置を直し治癒魔法を使って砕けた骨を繋いだスレイは、額から流れ出た汗を拭いながら大きく息を吐いた。
「治療終わりっと。ライアの方は自然治癒で大丈夫だろうけど、リーフは様子見ながら継続的に治癒魔法はかけようか」
「えぇ。そうですね」
ギュッと腕を握りながら顔をしかめるリーフ、そこにライアがこんな事を言った。
「……リーフ、普通の人だもんね。それに引き換え、同じ人間族のはずなのにスレイは異常」
「うるせぇ。半分竜の因子が入ってるけどボクは種族的には生粋の人間族だっての」
自分で言っててもおかしいだろうとツッコミをもらいそうな内容だったが、今更このネタで言い争っているほど暇ではない。立ち上がったスレイは氷の義手を魔力へと戻した。
「……竜力、元に戻ったの?」
「多少はね。戦えるかって聞かれたら微妙なくらいの量だけど、腕を再生するくらいなら」
吹き飛ばされた腕の傷口に意識を向けると、竜力を身体に流しながら腕の再生が始まった。
傷口から肉が蠢き、骨が生えてきたかと思うと、少し遅れて筋肉繊維に血管、最後に皮膚が再生される。
瞬く間に再生された腕を動かし、指を一本ずつ曲げて握りこぶしを作りまた開く、最後に腕全体を動かしてどこにも違和感がないことを確認した。
「よし、完璧ってどうしたの二人とも?」
「……改めて腕生えるの見たけど、気持ち悪い」
「グロいですね」
「言うなっての!自分でもなんとなく感じてることなんだから」
生え揃ったばかりの左腕に魔法陣が描かれた包帯を巻いたスレイは、ボロボロになったシャツを脱いで新しいシャツに着替えている。
「二人も着替えるなら車出すけど、どうする?」
「ではお願いします」
「了解。それとコユキってどこに行ったか知ってる?」
「コユキでしたらオルク殿と一緒に竜の亡骸を拾いに行きました」
「そっか。っじゃあ、ボクはイグルさんのところ行ってくる」
空間収納から魔導四輪を取り出したスレイはそのままイグルのいる方へと向かった。
「イグルさん。今良いですか?」
「おう。って、お前その腕」
「生やしたんですよ。それよりセッテさんとゼグルスさんの様子はどうですか?」
この戦いでセッテは義手と義足を失い、ゼグルスは目を切り裂かれたと聞いた。
「セッテならそこで大人しくしてる。ゼグルスはテントの中で眠ってるよ」
「治療はしたとのことでしたが、念のために見に来たんですけどアスフィルはゼグルスさんと一緒ですよね」
「あぁ。何かあったら出てくるだろ、それより問題はセッテだな」
「我がどうかしたか?」
振り返った二人の前には槍を杖のようにして歩くセッテの姿だった。
「あの、一応手足無いんですよね?」
「手足はないが怪我はしておらんぞ」
「先にあなたの手足をどうにかしたほうが良いな」
このままではどこに行くかわからないセッテのために、空間収納から金属製の義手と義足を取り出した。
「セッテさん。ボクの手製ですけど、使います?」
「それはありがたいが、我の背丈にあわぬだろう」
「サイズは自在に調整できますよ。それと少し手を加えますから待っていてください」
取り出した義手と義足の他に青色の鉱石を二つ取り出した。
「何だその石は?」
「水氷石と風琉石って言って、どちらも金属の中に熱を溜めないようにするために必要なんですよ」
地面に手を付いて魔力を流すと地面に魔法陣が刻まれると、まずは二種類の鉱石を混ぜ合わせたあと義手と義足に金属でコーティングを施した。
「よし、それじゃあそこに座って手足を測りますからじっとしててくださいね」
「頼んだぞ」
メジャーを使ってセッテの手足を測り、それを元に義手と義足の調整を始める。
錬金術を使ってパーツを引き伸ばし、薄くなったところに新しく金属を継ぎ足して調整を終えた。
「終わったのか?」
「えぇ。とりあえず今はこれくらいで、あとは取り付けてから調整します」
「もう着けてるのか?」
「はい。なので、可能な範囲で服を脱いでください。もちろん、接合部が見えればいいので」
「分かった」
繋げやすいように服を脱いでもらうと、あらわになった肌を見てスレイは眉を潜めた。
「この傷えらく治療の後が荒いですけど、もしかして焼きました?」
「ほう、分かるか?」
「わかるかって、こんな不毅然な断面見たら誰だってわかりますよ。さてどうするか」
スレイは錬金術の魔方陣が描かれた手袋を嵌め義手の接続部分の形を変更する。腕の断面に合わせるように形を直した義手を改めてセッテの腕にはめる。
そこから同じように義足も断面に合わせるように加工し取り付け、義手と義足の長さを確認して最終調整を行った。
「借りでつけましたけど、違和感はありますか?」
「いいや」
「それでは、神経をつないでいきますね」
一度、義手と義足を外して神経と接続する作業を始めようとした時、テントの方から凄まじい悲鳴が上がった。
「ぅあああぁああぁぁぁああぁぁぁ―――――――っ!?」
激しい叫び声に誰もが呆然となる中、スレイはただ立ち尽くしているだけのイグルに小瓶を投げ渡した。
「イグルさん」
「なっ」
名前を呼ばれると同時に投げ渡された小瓶を見ながらイグルが困惑していた。
「鎮静効果のある薬です。ゼグルスさんに飲ましてあげてください」
「わっ、わかった」
立ち去っていくイグルを見送りそのまま作業を続けるスレイにセッテが問いかける。
「やけに用意が良いな」
「こうなるんじゃないかとは思っていましたから、ゼグルスさんも後で診ますよ」
「頼んだ。それよりまだか?」
「もう少し……よしこれで良いはずです。手足を動かしてみてください」
言われた通り腕と足を動かしたセッテは最後に立ち上がり、先程まで杖代わりにしていた槍を奮って見せる。
「ふむ。問題ない。以前の義手よりもしっくりくる感じがする」
「それは良かった……しかし、右腕と右足の傷、どうやったらそんな切断のされ方になるんですか?」
右足は半ばからなにかに食い千切られたような跡が、右腕にはまるで切れ味の悪い剣か何かで何度も切りつけたような跡があった。
つい気になって聞いてしまったことだったが、人にだって言いたくない過去があるのは自分がよくわかっていた。まずかったと思ったスレイはハッとしてセッテの顔を見ると、セッテは少し表情を曇らせていた。
「何十年も前に今日にように竜と戦い油断して足を食いちぎられ、ついでに毒までもらってな。腕を切断する羽目になった」
「すみません。余計なことを聞いてしまって」
「構わん。我も若かったということだ。それよりも、この義肢の値段はいくらだ?」
「差し上げますよ。どうせ趣味が講じて作ったものなので、まだありますから」
「ならばありがたく受け取っておこう」
義肢をもらったセッテは嬉しそうにかけていく。
きっとオルクの手伝いに行ったのだろうが、無茶な使い方をしてせっかく用意した義肢が壊れないことを切に願うのだった。
「さてと、次はあっちかな」
ゼグルスが眠らされているというテントから声は聞こえない。
渡した鎮静剤が効いているようだ。
テントの中に入ったスレイはムワッとむせ返るような熱気に、辟易とした声を上げながら中に入る。
蒸し暑いテントの中には横になって眠らされているゼグルスと、看病していたアスフィルとイグルがいた。
「あの二人とも、熱くないんですかこの中?」
「暑いに決まってるだろ」
「だったら一人くらい外に出たら良いじゃん………まぁ良いや、ちょっと診ますよ」
風魔法で熱気を外へと逃し、魔法で氷を作って風魔法で涼しい空気を循環させてからゼグルスの診察を始める。
ゼグルスの傷は右目を切り裂き、額から頬までにかけて三本の線が走っている。
傷はアスフィルの治癒魔法で塞がっているようだが、熱を帯び呼吸が荒くなっているのを見て額に手を当て、続いて傷跡に触れると思った通り傷の周りに熱が帯びている。
「傷口に熱が出ているな。アスフィル、桶とタオルを持ってきて水と氷を用意して傷口を冷やして」
「…………うん」
アスフィルがテントの外に行くのを確認してからスレイは魔力でゼグルスの傷を確認する。
傷跡はかなり深く、皮膚を切り裂き頭蓋骨にまで届いていたようだが、運良く脳にまでは届いていなかった。
続いて切り裂かれた目を開いて眼球を確認すると、切り裂かれたとは思えないほどしっかり形を取り戻していた。これで見えているかどうかは微妙なところでしかない。
指先に光球を作り出しゼグルスの眼球に近づけ、光を当て瞳孔確認をするが反応していない。
「右目は完全に失明していますね」
「それは、治せないのか?」
「無理ですね。アスフィルの治療で形は取り戻していますが、そこまでです」
仮に誰かの目や義眼の移植、あるいはスレイのように竜の因子を与えられた場合ならもしかしたら治る可能性はあるかもしれないが、現状で治す手段をスレイは持ち合わせていない。
「目のことは今は後回しです」
熱に苦しむゼグルスを見て空間収納から薬剤箱を取り出し、そこに入れてあった小瓶をいくつか手に取ると、手帳に薬の注意事項などを記入しそれをイグルに手渡した。
「しばらくは熱が出ると思います。解熱剤と痛み止め、もしかしたら化膿するかもしれませんので、しばらくはこの薬を塗ってあげてください」
「あっ、あぁ」
「後塗ったあとはきれいな布で巻いて、毎日取り替えてあげてください」
「わかった……それだけ、なのか?」
「それだけとは?」
「いや、目が見えないこととか、そこら辺はどう説明すれば良いんだ?」
何をいうかと思えば、目が覚めたゼグルスに現実を突き付ける、その覚悟がイグルにはないのかと呆れてものが言えなくなった。
「そんなの、ボクは知りませんよ。イグルさんから言ってあげてください」
「だけどよぉ、俺が診たわけでもないのにそんなこと言ったら傷つけるんじゃないか?」
煮えきらないイグルの言葉にスレイはなんだか怒りを感じた。
「イグルさん。彼はあんたの仲間だろ?それが傷つけるのが怖いから言ってくれ?ふざけるなよ」
「すっ、スレイ?」
「ボクが伝えたところで彼が傷つくのは当たり前なんだよ。それで傷つくのなら、彼を支えてもう一度立ち上がらせろ。それが大人であるあんたの役目だろ」
うなだれるイグルを見下ろし立ち上がったスレイはテントを出ると、アスフィルがちょうど戻ってきたのでゼグルスが目覚めたことを伝えて、あとの処置について簡単に説明した。
後のことを頼み歩き出したスレイは考え事をしていた。
イグルと言う男のことがよく分からくなっていた。
初めにあったときには確かな強さを持った陽気な男、だけどゼグルスとの決闘のあとからこうして一緒に旅をしてよくわかった。
イグルという男は、あまりにも臆病すぎるのだ。
「こういうのは、ボクの役目じゃないでしょうが」
大きく息を吐いたスレイは、目の前に広がる渓谷を見つめながらもう一度大きなため息を付いた。
前半はイグルの態度について、後半はこの広大な渓谷の何処かに無くした白楼を探し出さなければならない。ある意味、竜人の里を探すよりも大変なことだ。
「面倒ではあるけど、これでも普通の剣を探すよりは可能性があるのが救いだよな」
白楼の元になった素材はスレイに因子を分け与えたヴァルミリアの物、そのためかスレイにはあの剣の存在を感知することが出来るのだ。
それでも大体の場所がわかるだけでそこから探し出さないといけない。
もうじき日も暮れる。
オルクと竜の亡骸を回収に行ったコユキも帰ってきていないので、白楼を探しにいくのは明日になる。
今夜はここでキャンプするとして、少し速いが夕食の準備をしようとした時テントの中からイグルとゼグルスが出てきた。
「起き上がっても良いんですか?」
「あぁ……おい白髪頭。俺の目はもう視えないのか?」
その質問の意味はどういうことだとスレイはイグルの方を見ると、すまんと言いたげに両手を合わせている。どうやらこっちに全て振ったようだ。
「答えろよ!」
「えぇ……イグルさんからも聞いたと思いますが、目を見えるようにするのは不可能です。ちゃんとした医者にかかっても答えは同じはずです」
残酷かもしれないがそれが現実だ。
それは魔法大国であるマルグリットでも、臓器の複製や眼球の複製などは今のところ不可能だ。
「なぁおい………もう俺は……冒険者としては戦えないのか?」
「さぁ………それはあなたの頑張り次第ですよ。多少のハンデはありますが、目を失った冒険者でもAランク昇格することもある。でもまぁ、武器は変える必要がありそうですけど」
右側が完全に死角となった今、今までのように超至近距離での戦いを続けるのは不可能だ。
それを口にしようとしたスレイだったが、ゼグルスの絶望に満ちた表情を見ながら言葉を続ける。
「たとえ武器を変えたとして、それで今までに培ったものがなくなるわけじゃない。結局、最後は自分自身なんだ、諦めたくないのなら立ち上がって戦え。ボクに言えるのはそれだけです」
突き放すような言い方かもしれないが、スレイに言えるのはこれだけだった。
後のことをどうするかはゼグルス次第、スレイには関係がないので焚き火と夕食の準備を始めようとしたその時だった。
「おいスレイ」
「今度はなんですか、イグルさん?」
「こんな時に悪いんだが、俺と勝負してくれ」
「はぁ?」
何言ってるんだろうこの人、そうスレイが思いながらイグルを見るとその表情は真剣その物だった。
「嫌ですよ。こっちは武器もないし、さっきの戦いで全身ボロボロなんですから」
「無理は承知だ。頼む」
目上の相手に頭を下げられたスレイは渋々ながら承諾した。
「わかりました。その代わり時間制限ありで良いですか?」
「構わん。ついでだ。お前の技もありで頼む」
「本気ですか?」
「あぁ」
どうやらイグルは本気のようだ。
仕方なしにスレイもそれを了承すると、ちょうど帰ってきたオルクに審判を任せ、二人は周りに被害が出ないように少し離れた場所に向かった。
「制限時間は二分、オルクさん。審判を頼みます」
「おぉ───両者構えッ!」
合図とともにスレイは黒幻と白楼の代わりに柄だけの魔力刀弐式を構える。
対するイグルも戦斧の柄を両手で握り、大きく腰を落として刃を後ろへ引きながら構えた。
「───初めッ!」
振り下ろされたオルクの手を合図にスレイとイグルが駆け出す。
身体を回転させ振るわれたイグルの戦斧の一閃が放たれスレイの身体を両断しようとしたたその時、スレイは真上へと飛び上がり振り抜かれた戦斧の上へと着地する。
そして踏みしめた戦斧を蹴りぬき更に跳躍したスレイ。踏み抜かれた戦斧は地面に落とされた。
「クソッ!?」
落とされた戦斧を持ち上げ構え直そうとしたイグルだったが、それよりも速くスレイが叫ぶ。
「終わりです。───雷鳴・鳴神」
黒幻から放たれた雷撃がイグルの身体に流れ込み地面に倒れる。
着地したスレイは黒幻を鞘に戻し魔力刀を空間収納に収めたスレイは、雷撃をもろに浴びて痺れたイグルのことを覗き込んだ。
「これで満足ですか?」
「あぁ………悪いな、こんな……こと、たのんじ、まって」
「全くですよ。八つ当たりなら一人でもやってください。人を巻き込むな」
「もう済んだ………ホント、悪かったよ」
何かを悟ったかのようなイグルの表情を見てどこか疑問をいだきながらも、その答えが出なかったスレイは後のことをオルクに託してその場を去るのだった。
⚔⚔⚔
スレイがその場を去った後、オルクは未だに地面に横になるイグルの側に腰を下ろした。
「どうじゃった?あやつと戦って」
「無様に負けた。格が違うってやつかね」
「冒険者でなければお前も抜きん出た才がある。じゃが、こと冒険者として見るならばスレイがいくつも上といったところか」
「はっきり言うなよ。嫌になってくる」
「事実を言ったまでじゃ………先に戻るが、お前はどうする?」
「少ししたら戻るよ」
倒れたイグルを置いてその場を立ち去るオルク、残されたイグルは己の不甲斐なさを悔やんだ。
空を見上げながら握りしめられた拳を地面に突き付けるのだった。
⚔⚔⚔
夕食を終えて寝泊まりしていた車の中で二人の傷の経過を確認していたスレイは、考えていたことを話し始める。
「明日、このパーティーを離れようと思うんだけど、どうかな?」
唐突なその言葉を聞いて顔を見合わせた二人は無言でうなずいた。
「良いと思いますよ。元々の契約ではここまでの約束でしたし」
「……ん。それにスレイの剣も回収しなくちゃだし」
「剣については見つける算段は付いてるけど、竜人の里の方は手がかりなしだから速く探し出さないとね」
ここに来るまででもかなり時間を費やした。
できることなら早く竜人の里を見つけたいと考えるスレイに二人も同じ気持ちであった。
「っというわけで今日はやめに休もう。今晩だけはゴーレムで監視するって伝えてあるから」
「……んじゃあ、寝ようか。おやすみ」
コユキを抱えて速攻で横になったライアからすぐに寝息が立ち始める。
「いや速すぎるだろ」
「それだけ疲れているのですよ……自分もそろそろ限界です」
「そうか……おやすみリーフ」
「はい。お休みなさい」
それにつづくようにリーフも横になるとすぐにすやすやと寝息を立て始めた。
二人が寝入ったのを確認したスレイはライアに抱き締め潰されかけて、苦しそうにしていたコユキを助け出す。
「一緒に寝るかコユキ?」
「んにゃぁ~」
コユキを抱えて自分用に張ったテントに入ったスレイもまた限界を迎え、横なったと同時に意識が暗闇のそこへと沈んでいくのであった。
⚔⚔⚔
次の日、夜が明ける少し前スレイたちは突如鳴り響いた警報によって叩き起こされた。
即座に横においてあった黒幻を持ち、元の姿に戻ったコユキと共に外に出たスレイが見たのは、竜の翼を背に空をかける数人の男たちの姿であった。
それは正しくスレイたちが探し求めていた竜人の姿であった。
「お前たちがここに住まう竜を倒した者たちだな」
「我らが長老がお呼びだ。大人しくついてこい」
竜人たちの来訪にスレイたちは心のなかで歓喜の声を上げるのであった。
ブクマ登録ありがとう御座いました!




