変異と変化
最期の飛竜を斬ったスレイとリーフは地上の様子を確認しようとしたその時、大気を震わせるほどの咆哮が響き渡った。
咄嗟に耳を塞ぎながら声のする方へと視線を向けた二人の目に映ったのは、一対の翼で巨大な体躯を浮かせながらこちらへとその鋭い眼光を向ける一匹の深紅の竜の姿だった。
「おいおい。なんだかあいつ、こっち見てる気がするんだけど?イグルさんたちはどうしたんだよ!」
「あの竜………まさかとは思いますが、こちらに来るつもりですか!?」
ここに来て作戦とは違う異常事態に声を荒げる二人であったが、そんな事を言っていても深紅の竜がこちらを標的に定めた事実は覆らないならと、覚悟を決める竜の姿を睨みつける。
空中へと浮かび上がった深紅の竜はゆっくりと、しかし確実にこちらへと近づいてくるその巨体の接近を見つめながら、二人はいつでも攻撃を放てるようにそれぞれの剣に闘気と魔力を込めると、二人はお互いの顔を見てうなずき合い左右に分かれるように動いた。
今はまだ下にいるライアたちに近すぎるため、攻撃を放つことの出来ない二人はあの深紅の竜が今二人のいる高度にまでやってきたところを狙い、同時に攻撃を放つつもりでいる。
さぁ、来いと深紅の竜のことを待ち構えていた二人だったが次の瞬間、二人のことを吹き飛ばそうと突風が吹き荒れた。
「うわッ!?凄い突風だな、これ!?」
吹き飛ばされそうになりながらもスレイは翼を力強く羽ばたかせて、吹き荒れる突風を受けて吹き飛ばされないように踏ん張っていると、突如スレイの元に影が差した。
突風がやみ顔を上げたスレイの眼前に深紅の竜がそこにいた。
「グルルルルッ」
「あっ、これ………不味くね?」
瞬く間に目の前に現れた深紅の竜は鋭い爪のはえた腕を振り上げた。
竜に爪は全てを切り裂く、咄嗟に張った障壁など紙を割くよりたやすく切り裂いてしまう。スレイを切り裂くべく振り下ろされる振り下ろされようとした。
シールドを張ったところで意味がない。ならばと左右の剣を逆手に持ち変えると、刃を十字に重ねて振り抜かれた竜の腕を押し留めようとしたが、上空からの払いに対してスレイは耐えきれない。
ブゥオンッと、風を切る音共に振り払われた竜の爪はスレイを投げ飛ばした。
「ぅうぁッ!?」
情けなく吹き飛ばされたスレイは轟音を立てて山肌に投げ飛ばされる。
「スレイ殿ッ!!───このッ!!」
全身に闘気を纏い駆け抜けると、深紅の竜に接近してその鱗を斬りつけるのだが、振り抜かれた翡翠の刃は深紅の竜の鱗によって用意に弾かれてしまった。
今までない幾体もの使徒や数多の魔物を斬り裂いてきたはずの翡翠を持ってしても斬ることの出来ない深紅の鱗、このドラゴンは今ままで戦ってきた魔物の中でもまさに上位に入る。
かつて戦ったタイラントレックス、アレを相手にしたときよりも遥かに死を短く感じる。
負けるとリーフが思ったその時、身を翻した深紅の竜から逃げるように後ろへ飛ぶリーフだったが、その巨体が動くときに吹き荒れる風で身体が飛ばされる。
何が来てもいいようにと手甲に闘気で円形の盾を作り出し身を守ろうとしたが、深紅の竜が大きく口を開くと巨大な魔法陣が展開された。
これは防いだとしても意味がない。守っても守らなくても殺られるとリーフが思った。
「ガァアアアアアア―――――――――――ッ!!」
放たれた深紅の竜のブレスがリーフの目の前を真っ白に染め上げたかと思った。
だがしかし、放たれたブレスはリーフを消し去ったかと思われたその時、ブレスが深紅の竜へと跳ね返された。眼の前で起きたことに驚くリーフは、幾栄にも重ねられた無数の刃が回転しながらブレスを弾き返した。
「───ッ!?これは、ハッ!」
跳ね返ったブレスの直撃を受けた深紅の竜は、目を回しているようだ。今のうちにと距離を取って剣を構えたリーフは、この回転する剣はスレイのソード・シェルだと察したリーフのもとに声をかける人物がいた。
「無事だねリーフ。間一髪間に合ってよかったよ」
「スレイ殿!良かった、ご無事だったんですね!?」
「なんとかね。咄嗟に身体を竜人化させていなかったら、岩肌に血の花を咲かせていたでしょうね」
遠い目をしながら答えるスレイは、空間収納を開くと巨大なタワーシールドを取り出すと、それをリーフに差し出した。
「使う?その盾じゃ心もとないでしょ」
「お借りしたいですが空では構えていても仕方ありませんので、こちらを使います」
そう言いリーフが取り出したのはいつもの手甲、それを即座に装着したリーフはスレイの側に並び立つと硬直から回復した深紅の竜が二人に吠える。
「グガァアアアアアアッ!」
吠える深紅の竜に対してスレイとリーフは全身に闘気を纏いながら剣を構え直す。
「あのドラゴンに私の剣が通じませでしたが、どういきますか?」
「そうだな……タイラントレックス戦と同じようにとは思うけど、まずは斬りまくってなるべく薄いところを探すぞ!」
「いいですね。では、それでッ!」
「じゃあ、先手はボクがもらうよ」
スレイとリーフが同時に深紅の竜へと向かって駆け抜ける中、二人は同時にそれぞれの技を放つために構えた。
スレイは黒幻と白楼に竜のオーラと業火の炎を纏わせると、黒幻を肩に担ぎ白楼を右の脇に抱えながら翼を羽ばたかせる。
リーフは翡翠に闘気を纏わせると、左脇へと構えながらその刀身に手を触れながら闘気の足場の上で構える。
駆け抜けるスレイの接近を見いた深紅の竜が爪を掲げると、間合いに入った瞬間を狙って振り下ろした。
「ハッ、殺意が高いな」
深紅の竜の爪がスレイを切り裂くべく振るわれる。
振り抜かれた爪が用意にスレイの身体を切り裂いたことに多少の違和感を覚えた竜、しかし伝わってくる手応えは確かに、切り裂かれたスレイの身体がかき消えたかと思うと深紅の竜の背後に回り込んだ。
「"亡霊の演舞"からの───竜王煉尽激ッ!」
竜のオーラと漆黒の業火を宿した二振りの剣が縦横無尽に放たれる。
漆黒の炎の火の粉が竜の鱗を焦がし、左右の剣から放たれる一撃一撃が深紅の竜の鱗を激しく打ち付ける度、内部へとその衝撃が伝わっていく。
「グギャアアアアア――――――ッ!?」
スレイの連撃を受けた深紅の竜は、身体を捻ってスレイの連撃を中断させて弾き飛ばされるが、そこを狙って今度はリーフが切り込んだ。
「今度は自分の番です!───秘技・蒼覇月閃迅ッ!」
スレイの斬り込んだ側の反対側から放たれたリーフの連撃が深紅の竜を斬りつけたが、打ち付けられた刃は深紅の鱗阻まれてダメージを与えることは出来ない。
しかし、攻撃が当たるごとに怒りを募らせる深紅の竜は、スレイを振り払ったときと同じように身体をひねりリーフを振り払うと、深紅の竜が翼を広げ身体を起こした。
何をするのかとリーフが警戒すると、大きく口を開いたドラゴンはブレスの魔法陣を展開する。
ブレスの一発なら撃たれる前に斬り込めるかと、リーフが切り込むことを考えたその時、深紅の竜が広げた翼に無数の魔法陣を展開していた。
その数、総勢二十以上。これは流石に無理だと思ったリーフだったが、魔力が集まった魔法陣に魔力の球がぶつかり爆発した。
「ギャォオオオァアアアアッ!?」
爆発を受けて悲鳴を上げる深紅の竜、何が起こったのかとリーフが思っているとバサッと翼を羽ばたかせる音が耳につく。
音のする方に視線を向けると、そこには黒幻と魔道銃を握りしめるスレイの姿があった。
「ご無事だったんですね」
「あぁ。ちょっと吹き飛んじゃったけど平気」
爆発から回復した深紅の竜はスレイの姿を見つけると一目散に向かってくる。
よほどスレイのことが気に入ったのか、その目にばもはやリーフは見えていない様子だったが、それに構わずリーフもスレイと共に真紅の竜に応戦する。
向かってくる深紅の竜が口を開くと魔法陣が展開される。
来ると思ったスレイが展開された魔法陣に魔道銃の銃口を向け、魔法弾を撃ち出そうと引き鉄を引こうとした。しかし、スレイが引き鉄を引きよりも速く魔法が発動する。
撃ち出された雷がスレイとリーフを襲うが、咄嗟にスレイがソード・シェルを取り出しはなった。
放たれたソード・シェルが二人のかわりに雷撃を受けると砕け散った。
「助かります!」
「いいって、それより来るぞ!」
向かってくる深紅の竜がリーフにその手を伸ばすと、闘気の地面を蹴って上へと逃げたリーフは後ろに引き絞って構えた翡翠の刃を深紅の竜へと振り抜いた。
「───秘技・煌刃連双撃ッ!」
放たれた二連撃が深紅の竜の眉間を斬り裂いたが全くダメージが入っていない。
竜の鼻先に立ったリーフは、このまま連撃をくらわせようと技をはなとうとしたが、眼前に誰かがしがみついているせいのが気に入らないのか、身体を捻って暴れることで振り払おうとした。
「くっ、大人しくしていなさい!」
無理な注文だと思われようとも、ここで倒さねばならない。
鱗を掴み振り払われないようにしがみついたリーフは翡翠を逆手に持ち替え切っ先を突き立てようとしたその時、振り払えないと分かった深紅の竜はその手でリーフを無理矢理にでも引き離そうとした。
「リーフ!上に飛べッ!」
「ッ!!」
背後に現れたスレイを見たリーフは闘気を纏った翡翠で伸びていた手を払い除ける。
すると翡翠の刃で斬りつけた場所からわずかに血が飛んだ。これだけ切りつけてようやく、そう思う一方で目に見えるダメージを負わせれたことに喜びを感じる。
本当はこのまま追撃を与えたかったが、今はこれだけでいいと考えたたリーフは、トンッと竜の鱗を蹴って真下へ飛び降りた。
飛び降りたリーフを目で追いかけようとした深紅の竜だったが、すぐにその興味は別のものに移った。漆黒の炎を纏った黒幻を垂直に構え、力強い羽ばたきの音共に駆け抜けたスレイがすぐ目の前に迫っていた。
「喰らえッ!───業火ノ突激ッ!」
突きと共に放たれた漆黒の炎が深紅の竜の眉間に突き刺さる。スレイの突きと炎の爆発によって深紅の竜の身体が、後ろへと弾き飛ばされる。
これならどうだとスレイが思ったその時、真下から風を切る音が聞こえ下へと視線を向けると吹き飛ばされた勢いを利用し深紅の竜の尻尾が振るわれる。
剣を突き出すために前傾姿勢になったスレイはこのままでは直撃する。翼を羽ばたかせ身体を捻りながら尻尾の攻撃をかわしたスレイだったが、上げた視線の先で身を翻した深紅の竜が口を開き魔法陣が展開される。
「クソッ!」
空間転移が間に合うかと魔法を発動しようとした瞬間、真下から何かが凄まじい轟音と共に何かが飛んでくる。ドンッという衝撃音と共に竜の頭が真上へとかちあげられ、放たれたブレスが上空へと放たれた雲を散らした。
体勢を立て直したスレイは今のは一体誰がッと考えたが、そんなの一人しかいない。
「……スレイ、無用心」
「助かったよライア」
深紅の竜を蹴り飛ばしたのは案の定ライアだった。
本当に助かったとスレイが思っていると、同じようにしたから登ってきたリーフが並び立った。
「お二人共ご無事ですか!?」
「平気、それより下はいいの?」
「……だいたい終わってる」
「では、本当にこいつで最後なんですね」
剣を構え直したスレイたちは、深紅の竜を睨みつける。
同じように深紅の竜もスレイたちのことを睨みつける。
竜の眼はスレイたちを睨みつけながら今までの戦いを振り返っていた。尽く自分の手を潰され、身体の大きさの違いからこちらの攻撃を当てることは出来ない。ならばと深紅の竜は奥の手を使うことにした。
突如深紅の竜から凄まじい力が溢れ出した。
「何をするつもりなのですか!?」
立ち昇るほどの竜の力にスレイたちがたじろいだその時、突如魔眼の力が発動しこれから起こることを見たライアは、それを止めるためにも二人に叫びかけた。
「……スレイ!リーフ!今すぐあれに攻撃!」
「えっ?……分かった、リーフ!」
「はいッ!」
嵐のように吹き荒れる竜の力のせいで近付いて攻撃することは出来ない。
黒幻に闘気と雷撃の魔力を白楼には暴風の魔力をまとわせたスレイ、翡翠に闘気を纏わせたリーフ、拳に闘気と竜力で形作った刃が輝いた。
三人技を放とうとしたその時、溢れ出した竜の力が一点に集まっていくのを感じる。ライアでなくてもこれを放置しては不味いと感じた二人は、闘気の輝きがました瞬間先んじて技を放った。
「───双牙混成・雷鳴風竜斬ッ!!」
「───秘技・飛翔竜翼閃ッ!!」
「───炎竜翔斬ッ!!」
技の名前を叫ぶと同時に黒幻と白楼を振り抜くと、闘気と纏った雷撃と暴風が溶け合い混ざり雷纏った嵐の竜へと姿を変える。
翡翠から放たれた闘気の斬撃が竜の形を取り、闘気と竜力で作られた斬撃。二匹の竜と斬撃が吹き荒れる力の奔流の中にいる深紅の竜へと向けて放たれる。
放たれた技が竜から溢れ出した力にぶつかり巨大な爆発を起こした。
「ライア、どうだ!?」
「……だめ───来るよッ!」
ライアの声を聞いて二人が武器を構え迎え撃つ構えをたその時、吹き荒れる爆炎の中に何かが光ったように思った。何かが来ると思ったその時、爆炎の中から光の線が走る。
「……ぅッ!?」
打ち出された光の線はライアの肩を撃ち抜くと、ジュッと肉の焼ける音と激痛がライアを襲った。
「───アァアアアアアァァァァ―――――――――ッ!?」
「ライア殿!?」
隣りにいたライアから叫ばれた声に反応したリーフが視線を外したその時、爆炎の中から何かがとてつもない速度で駆け出した。
「リーフ、前ッ!構えろッ!!」
「えっ?あっ!?」
何かが接近したことに気づいたリーフはライアを庇うように前に立とうとしたがそれでは間に合わない。
動くのが遅れたリーフを見て、前にではスレイは竜力と闘気を纏わせ黒幻を肩に担ぐように構えながら技を放った。
「───竜王烈閃爪ッ!」
振り下ろされた黒幻から放たれた三本の爪激が飛び出してきたなにかに向かって放たれた。しかし、スレイが攻撃を放った瞬間、その何かは凄まじい動きでスレイの技にできる僅かな合間へと身体を通し攻撃をかわす。
「なんだこいつ!?───ッ、リーフッ!」
抜かれたことに声を上げたスレイに盾を構えたリーフが反応する。
接近した何かがリーフの眼の前に現れたその時、目に写ったそれを見てリーフは小さく息を呑んだ。
リーフの眼の前に現れたそれは、深紅の鱗を持った人の形に近い竜だった。
「竜の人?」
状況から見てもこの人型の竜があの赤竜なのは確定だ。
一瞬だけ呆けてしまったリーフだったが、人型の竜が拳を振り上げたのを見たその時、リーフは咄嗟に盾を構える。振り抜かれた拳を拳で防いた瞬間、盾を通して伝わる凄まじい衝撃が腕に伝わった。
ゴキッと腕の骨が砕ける音と、脳天を突き抜けるほどの衝撃が頭に駆け抜けた。
「〜〜ッ!?」
声にならない叫び声を上げるリーフ、そこに人形の竜が襲いかかろうとした。
「……さっきの、お返しッ!」
「やらせるかッ!」
振り抜かれるライアの拳とスレイの黒幻、左右からの同時攻撃だったが人型の竜はスレイの剣をかわし、身を翻しながらライアの拳を掴み取りグッと引き寄せると、回転しながらスレイへと投げつける。
「グッ!?」
「……キャッ!?」
殴りつけ弾き飛ばされたスレイが空間転移で背後へと回ったスレイだったが、それよりも速く人型の竜の廻し蹴りが振り抜かれるが、咄嗟に腕でガードしたスレイは蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされたは岩壁にぶつかり砂塵が舞った。
「……スレイッ!?この、離せッ!」
拳を握りしめられたままのライアが振り回される。
まるでライアを鈍器のように振り回す人型の竜、このまま振り回されていてはいけない。どうにかして振りほどかなければと考えたライアは、視界の先でリーフが動くのを見た。
ならば少しでも注意をそらそうと身体を捻った。
「……このッ!」
顔面に向けて膝を突き刺した。しかし、人型の竜は怯むことはなかった。
人型の竜は掴んでいたライアの拳を放し拳を振り抜こうとしたその時、背後からリーフの声が響く。
「やらせませんッ!」
砕けた左腕がだらりと下がりながらも握りしめられた翡翠の刃が人型の竜を斬りつける。
振り下ろされた鋭い一閃が人型の竜を斬りつけるも、竜はそのスピードでかわし懐へと潜り込んだところでライアが割って入る。
「……これでどう!?」
竜に爪を模した闘気と竜力の爪が人型の竜を切り裂こうとしたが、これでも人型の竜は交わし続ける。
「ハアァアアアアアッ!!」
「……ヤァアアアアアッ!!」
リーフとライアが連携して攻撃を仕掛けるが連撃が人型の竜はかわし続けている。
怪我人であるリーフがいるとはいえ、二人がかりで当てることが出来ない現状にリーフとライアが歯噛みする中、人型の竜はリーフの一閃をかわし蹴りつける。
「かはッ!?」
腕が砕けている今、防ぐことが不可能なリーフはガードすることもできずまともに受ける。骨が折れたのか血を吐きながらリーフが後ろに弾き飛ばされた。
「……リーフッ!?このッ!」
闘気の爪ではなく拳を握りしめたライアが人型の竜を殴りつけようとしたその時、同じく拳を握りしめた人型の竜は正面から打ち合った。
「……ぅぐっ!?」
打ち合ったライアの拳が砕ける。
続けざまにライアへと蹴りを放とうとした竜だったが、真上から何かとてつもない力を感じ顔をあげる。
「二人とも離れろッ!」
スレイの声が響くと追撃をしようとしたライアと、そんなライアを援護しようと踏み込んでいたリーフが同時に顔を上げる。
掲げられたスレイの掌に集まる光の光球、それを見た二人はここにいては巻き込まれると思い急いでその場から離脱した。二人が魔法の範囲外に逃れたのを確認したスレイは魔法の名前を叫んだ。
「喰らえ───ノヴァ・ヘリオースッ!」
高級から放たれた光の爆発が人型の竜を飲み込もうとした瞬間、人型の竜が口を開くと先程ライアの肩を撃ち抜いた光線が放たれた。
放たれた光線はスレイの魔法を真っ向から打ち破り、その奥にいたスレイの腕を撃ち抜いた。
「グアッ!?」
肘から下が吹き飛び叫び声を上げたスレイは、瞬時に力を使って失った腕を再生させると鞘に納めた白楼を抜き放った。
スレイの出せる最大威力の魔法でも倒せなかった。
こうなればすべての力を開放して接近戦しかないと考えたスレイは、こちらを見て口元を釣り上げる人形の竜の姿をみて一人愚痴った。
「クソッ、誰だよ。あの竜が成年期の変異種だって言ったの!どう見たって老成期の変異種だろうがッ!」
限界を迎えかけている二人へと襲いかかる人型の竜へと向かっていくスレイは、全身に刻印を巡らせ肉体を竜人のものへと変化させながら向かっていくのだった。




