試験の説明
ブクマ登録ありがとうございます。これからも面白い話を書いていきたいと思っているので、よろしくお願いします。
長くなったので分割で三話投稿します。次話以降は明日投稿するつもりです。
その日、朝日も昇らないほど時間にスレイは起き出した。
「ふぅあ~……朝か」
伸びをしながらついでにあくびをするスレイだが、今は発言を聞いた人はそろってまだ夜明け前だと言われるような時間だった。
ベッドから身体を起き上がったスレイは身体を伸ばしたりほぐしてみるとパキパキと関節から音が鳴っているので、少し入念に間接をほぐすことにした。
一通り身体をほぐし終わったスレイは寝巻きからいつもの服に着替えた。
「やっぱり久しぶりの野宿はキツかったかな?」
久しぶりのベッドで眠ったお陰で疲れがとれたらしく、少しだけ身体が軽くなった気がした。
「さてと……なにしよう?」
夜明け前のこの時間なので下に降りても朝食を食べれる訳もない。だからと言って毎朝行っていた練習をしようにも昨日着いたばかりの場所で練習できる場所など皆目見当がつかない。
「銃のメンテでもするか」
やることもなく銃のメンテで時間を潰したのだが、一時間ほどで終わってしまったので壁にかけていたジャケットとマントを魔法で洗濯した。
乾かした服をラックにかけたスレイはどうするかと考えて、空間収納の中にしまってあった物の整理をすることにした。
⚔⚔⚔
朝日だ登りだした頃ユフィは目が覚めた。
「うわぁ~思いっきり寝過ごしちゃった」
村にいた頃のこの時間は朝の練習を終えて朝食を食べているような時間だ。
ちなみに旅の間は夜営の片付けをしていたような時間だった。
──はじめての旅で、思ってたよりも疲れがたまってたのかな?
寝巻きを脱いで服を着替えているユフィは、リボンを結びながら前の部屋の方を見る。
「スレイくんは……もう起きてるよね?」
服を着替え終えたユフィはローブに手をかけたが、まだギルドに向かうには時間があるのでローブは置いて部屋を出たユフィはスレイの停まっている部屋の扉をノックする。
「スレイく~ん。起きてるぅ~?」
「ん~起きてるよぉ~」
「入ってもいいかな?」
「ちょっと待って、今散らかってるから」
少しだけ時間を開けてから、鍵が開けられる音を聞いて扉が開いた。
「おはようユフィ」
「おはようスレイくん」
部屋に入ったユフィは中に何もないことをみて不思議に思った。
「何してたの?」
「朝早く起きすぎたから空間収納の整理」
「なるほどねぇ~………あれ、旅に出る前にやらなかったっけ?」
「うん。暇だったからね」
「そっかぁ~」
時間があるならユフィも同じことをしていたと思うので、同意するように頷いていると遠くから鐘の音が聞こえてきた。
壁にかけてある時計を見ると六時を回ったところだった。
「いい時間だしご飯行かない?」
「そうするか」
財布を取り出したスレイはユフィをエスコートして下に降りていった。
⚔⚔⚔
階段を下りて食堂を覗いた二人はアニタとオリガが、忙しなく働いている姿を見た。
昨日の説明ではこの宿に他の客は泊まっていないと聞いていたので、食堂を利用しに来た客なのだろうと予想した。空いてる席はないのかと、辺りを見回していた二人に声を掛ける人物がいた。
「スレイさん、ユフィさん、おはようございます」
「おはようございますオリガさん」
「オリガさん。おはよぉ~」
ユフィの軽すぎる挨拶にスレイがツッコミを入れかけたが、オリガはクスクスっと笑っていた。
「早いですね。まだ七時前ですよ?」
「いつもなら夜明け前には目が覚めるんですけどね」
「私は寝坊しちゃいましたけど」
マジかっとスレイがユフィを見ていると、オリガが問いかけてきた。
「朝食、直ぐに用意できますがどうされますか?」
「いただきまぁ~す!あっ、スレイくん奢りだからねぇ~」
「はいはい、わかてるって」
なぜスレイが朝食を奢るのかと言うと、昨日のかけっこの景品だ。
オリガに注文を聞き終えたオリガは二人をしている席に案内すると、厨房で料理をしている母アニタにオーダーを伝えた。
「お母さん。モーニングプレート、二つとコーヒーと紅茶お願いします」
「はぁ~いただいまぁ~」
忙しなく働くオリガとアニタの声を聞きながら、二人は朝食が来るのを待つのであった。
⚔⚔⚔
朝食を食べ終えたスレイは食後のコーヒーを飲みながら壁に掛かっていた時計を見る。
「七時前か……時間、結構あるな」
試験の時間は九時からなので、まだ二時時間以上はある。ここからギルドまでは歩いても十分ほどなので、かなり時間に余裕がある。
「さて、まだ時間も余裕があるけどどうする?」
「うぅ~ん。そうだねぇ、食後の運動ってことで近く散策する?」
「いいねぇ、賛成───すみません、会計お願いします!」
「はぁ~い!」
会計を済ませたスレイは一度部屋に戻ってジャケットと剣を身に着けてからユフィと合流した。
アニタに出かけることと部屋の鍵を預けて宿屋をあとにした二人は、揃って街の中を歩いていた。
「スレイくん、どこ行く~?」
「そうだなぁ~、とりあえず適当に回り見て広場みたいなところ探そうかなって思ってる」
「もしかして、朝の稽古場所探し?」
「そう、まぁ見つからなかったらアニタさんにでも聞けばいいんだけどさ」
他愛のない会話をしながら歩き始めるスレイたち、しばらく歩いてからようやく目的の場所を見つけた。
それからは少し早いがギルドへと向かい、依頼のボードを確認してみることにした。
⚔⚔⚔
ギルドにやって来た二人は、早速依頼の張られているボードに向かおうとしたスレイとユフィだったが、ここで冒険者ギルドの鉄板に遭遇していた。
「おいボウズここはガキが女ずれで来ていい場所じゃないぜ」
「嬢ちゃんこっち来て一緒に楽しいことしない?」
「そんなガキよりもイイコトしてやるぜ」
「「「ギャハハハハ!」」」
どうも下品な笑い方をする三人組、朝っぱらにもかかわらず酒臭い息をかけられて不機嫌になったスレイは、そんな冒険者たちに笑顔を向けて一言。
「人の女口説いてんじゃねぇよ、叩きのめすぞ?」
スレイの一言にユフィは嬉しそうにしているのだが、言われた冒険者三人組は顔に深いシワがよった。
「おいガキ、舐めた口聞いてんじゃねぇぞ!」
「ボクがガキだって言うんでしたら、いい大人が朝っぱらからそんなに酔っぱらうもんじゃありませんよ?」
「このガキ殺してやる!」
一人の男が剣を抜いて斬りかかってくる。
「なにやってるんですか!止めなさ……い?」
昨日とは別の受け付けのお姉さんが斬りかかろうとした男を止めようとしたがそ、れを言い終わる前にスレイが男の腕から大剣を奪い取った。
男の足を引っかけて腕を捻って一回転して地面に叩きつけられたのまでを、流れるような動作で行った。
「グハッ!?」
「まだやりますか?」
大剣を肩に担ぎながら笑顔で訪ねるスレイだったが、残りの二人は関係ねぇ!と言いながら切りかかってきたので、一人目と同じように全員を転ばせた。
その後、スレイは受け付けのお姉さんから叱られた。
⚔⚔⚔
喧嘩はあちらから仕掛けたのをみんな見ていたお陰で、スレイはおとがめは無しになったが本来ならばギルドでの私闘は罰金ものだそうだ。
「スレイくんってホントに巻き込まれ体質、ううん。問題を引き寄せる体質だよね?」
「…………毎回思うけど、ただ巻き込まれてるだけで引き寄せてない、そこ間違えないで」
「あ~あぁ~、赤ちゃん出来てもスレイくんの引き寄せ体質は似ないで欲しいなぁ~」
「まだ出来てもない子の心配は止めてあげてね?」
そんな話をしながら二人はボードを見ていた。
依頼の内容は多種多様な物が並んでおり、魔物退治に手紙運びに老人の話し相手、他には都市内の清掃作業に売り子の手伝い等々が上げられた。
そんな中からスレイは一枚の依頼書を見つけて指さした。
「これユフィ向きの依頼だね。今度受けたら」
「ポーション作りかぁ~。スレイくんも出来るじゃん」
「出来るけどユフィや先生と比べたら、ねぇ?」
ポーションを作るとその制作者の腕次第で品質が大きく左右されるのだが、ユフィやクレイアルラが作るポーションと比べ、スレイの作るポーションは劣る。
「ついでに、あれもあるから」
「それはぁ~……うん。そうだね」
アレという言葉に何かを察したユフィが目を逸らしながら、小さな声でごめんねと謝った。
なんとも言えない空気になった二人は改めて依頼書を確認した。
「魔物討伐、やっぱりこれ系が多いよね」
「そうだねぇ~」
冒険者になったのだからこういうのを求めていたのだが、今のランクで受けれるのはゴブリン等の低級に限られていた。
今まで散々強い魔物と戦ってきて今更とは思わないが、それでももう少し強い魔物と戦いたいと思っているスレイは小さなため息をついた。
「地道にランクあげるしかないか」
「そうだねぇ~」
しばらくは街なかの依頼やゴブリンなどの魔物の討伐しながら地道にランクを上げていこうと言うことになった。
そんな折、スレイは一つ気になる依頼書を見つけた。
「おっ、みてよユフィ!」
「ん~、なになにぃ~」
「これ、ダンジョン探索だって」
「わぁ~、やっぱりあるんだ。ダンジョン!」
異世界、冒険と来ればここでもう一つの楽しみと来ればダンジョン攻略、まだ見ぬ財宝、冒険者になった一番の楽しみとも言える。
ユフィがワクワクした目で依頼書を見たが、そこに書かれていた参加可能ランクはDと書かれていた。
「やっぱりランクかぁ~」
「なりたてだから仕方ないな」
そんな話をしていると、下の階から試験の開始を告げるアナウンスが聞こえてきた。
⚔⚔⚔
冒険者ギルドの裏手には少し大きな修練場があった。
そこにはスレイとユフィの他に男女六人が集まっていた。
スレイとユフィを合わせて計八人。男五人に女三人と、男女比に偏りが有ったがそんなものだろうがその殆どが戦士のようだ。
中にはスレイと同じく魔法戦士もいるかもしれないが、魔法使いはユフィともう一人の女の子しかいなかった。
魔法職はもう少しいるかとも思ったが意外に少ないのだなっと思っていると、修練場にギルド職員たちが入ってきた。
「それでは、これより冒険者適正試験を行います」
前に出て話し出したのは昨日、スレイとユフィを案内したお姉さんだった。
「試験内容はは現役の冒険者との一騎討ちです」
実戦方式なのだなあと思いながら試験内容を聞いていると、魔法使いの少女がおずおずと手を挙げた。
「おや、なにか質問ですか?」
「あ、あの……ひ、一つ……いいですか……?」
手をあげた少女の方を見たスレイは目を細めた。
白い髪に病的なまでに薄い色素をした肌、極めつけに赤色瞳を見てアルビノなのかもしれないと思った。
「はい。なんでしょうか」
「あ、あの………い、一騎討ちで……け、怪我とか……し、死んじゃうんじゃ……?」
「お前、そんなの気にしてんのかい?」
そう声を上げたのは白髪の少女の隣にいた少女だった。
白髪の少女とは対照的に少し浅黒い肌に黒い髪をした小柄な少女は、必要最低限の革鎧に腰にはダガーを二本下げていた。
ダガー使いの少女の方を見た白髪の少女が、またしてもおずおずと話しかける。
「でっ……でもぉ………」
「冒険者は怪我してなんぼだろいいじゃねぇか!怪我上等!」
バシバシッと軽快に笑いながら白髪の背中を叩いきながら笑っていたが、不安そうな少女の顔を見て気まずくなったのかダガー使いの少女はポリポリと頬をかいてから受付嬢に問いかける。
「まあ、こいつの言う通り仕事前の怪我すんのは嫌だよな。そこんとこどうなんだい?」
「それはですね──」
受付嬢が説明しようとしたその時、受験者の中から声が上がった。
「やはり女性が冒険者など、なるものではないのではないかな?」
受付嬢が説明しようとした瞬間、今度は金髪の長身イケメンが口を挟んだ。
ちなみにそのイケメンだが、目が痛くなるような黄金の鎧を身に纏いついでに剣の柄までもが金で加工されている。
先程から鎧に光が反射して隣に立っていた二人が物凄く眩しそうにしていた。
さらに言うとキザったらしく前髪をかき上げると、ダガーの少女の事を見ながら告げた。
「女性ならそんな物は持たずに、お淑やかな生き方に変えてみたらどうかね?」
「あ゛ぁ?」
「あ、あわわっ………お、落ち着いて……!?」
ダガーの少女が女の子にあるまじき顔でがイケメンを睨み、隣にいた魔法使いの少女が慌てながらダガー少女をなだめていたが、イケメンは更に余計なことを言う。
「おやおや、女の子がそんな言葉を使う物ではないね?」
「テメェ今ここでぶち殺してやろうか?」
「お、落ち着いて……!」
「殺すなど物騒なことは止めたまえ」
「よし、ブッ殺す!」
「や、やめて……!」
魔法使いの少女の制止を降りきったダガーの少女は、鞘から二本のダガーを抜きイケメンに斬りかかる。
イケメンはと言うと一瞬のことで動けずにいた。
それを見たスレイは少女を止めるべく構えていたが、自分達よりも近い位置にいた者が動いた。イケメンに向けてダガーを振り抜く少女、だがその前に一つの影が間に入ると少女は足を止めた。
「テメェ邪魔すんな!」
「止めてください!大事な試験前なんですよ!」
少女を止めたのは少し小柄な盾持ちの少年だった。
鈍い色の鎧に短い茶髪の少年が身の丈に迫るほどの盾を下げると、目の前の少女とイケメンを睨むとなにも言わずに元の場所に戻り、少年も元の場所に戻った。
するとその隣に立っていた戦鎚を持ったドワーフが話しかける。
「主、なかなかの動きじゃな?」
「いえ、自分はまだまだ、あちらの方々は自分が動くよりも先に動こうとしていましたし」
盾持ちの少年はスレイとこの場にいる最後の一人、ガントレッドを持った男のことを順に見ていた。
「…………………………」
ガントレッドの男はなにも言わずに佇んでいたが、先ほどスレイとほぼ同時に動きかけたが、直ぐに少年が動いたので引き下がっていた。
「あの話を戻してもいいですか?」
一騒動あったせいで話を忘れていたみんなは、今度はなにも言わないで聞くことにした。
「試験はこの場所で行うのですが、この場所には結界術式が編まれ、例え首を切られたとしても大事には至りません」
今の話のどこに安心しろと言うんだ?と此処に居るみんなは思ったのだった。
「それでは制限時間は十分、武器はご自分のをお使いいただいて構いませんよ。魔法の使用も可能です、以上で説明を終わりますが、なにかご質問はありますか?」
今度は誰も手を挙げることはなかった。
「それでは、名前を呼ばれた方から始めますので、そちらに移動願います」
指差された観客席に移動する。
「それでは、初めは──」
こうして試験は始まった。