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剣聖祭の裏側で

今更ですが新年あけましておめでとうございます!

本年も本作品をどうか、よろしくお願いします!!

 剣聖祭予選・第二試合の最終戦はスレイの黒幻が聖剣擬きを切り裂くと同時に、まるで糸の斬れた操り人形のように意識を失ったエドヴァンが倒れたため、剣の損傷、そして意識喪失からこれ以上の試合は不可能と判断されエドヴァンの敗退が決まり、試合はこれにて閉幕………と言うわけにはいかなかった。

 試合の最中に暴走したエドヴァンの聖剣擬きの攻撃のせいで、多祥なりとも被害を受けた観客が運営に押し寄せ、安全が保証できるまで大会の中止を訴え駆けてきたが、そもそも数々の戦いを終えてスタジアムは既にボロボロになっていたため、会場を変えると言う話が持ち上がっていた。

 第三試合からは別の会場で、それも各クラスごとで別のスタジアムでの試合をおこなうことになり、新しいスタジアムにはちゃんと守護結界もはられているそうで、今回のことで抗議を起こした人々もどうにか納得の姿勢を示した。

 さて、これで剣聖祭の二回戦も滞りなく終了した………かに思われたのだが、事態はそれだけで終結してくれるほど優しいものではなかった。

 あの後、エドヴァンの聖剣擬きの暴走の理由、それについて主催者側から質問責めを受けたスレイは、試合後に一時間程度、事情聴取と言う名の取り調べを受けようやく帰路に着こうとしたとき、なぜかユキヤが待っていた。


「どうしたんだよこんなところで。とっくにみんな宿に帰ったとばかり思ってたんだけど?」

「お前に聞きてぇことがあったからまってただけだ。それがなけりゃ帰ってる」

「そうか。まぁ大体の予想は着いてるけど、いったいなにが聞きたいんだ?」

「さっきお前が斬ったあの聖剣。本当にただの偽物だったのか?」


 ユキヤの問いかけはスレイの予想通りの物であった。

 なにも不思議なことではない、ユキヤだけでなくあの場にいたユフィたちも──約数人は違うが──身体強化や、獣人特有の聴力によってあのときの会話を拾っている可能性があった。

 それにあの戦いの最中、聖剣擬きの宝珠から溢れ出した禍々しいオーラは、あの場にいる全員が目撃している。だからこうしてユキヤの質問の意味も分かるし、それを訪ねてくる理由も分かっている。


「あの剣事態は本当にただの偽物だよ。大方、大昔の人が兵器として聖剣を複製しようと試みてたけど、結局は失敗してどこかに封印されてたのを、あいつが偶然手に入れてそれを本物の聖剣だと思い込んだ。とかじゃないか?」


 適当にとは言わないが、ほとんどスレイの想像での話しでしかなかったが、ユキヤは今の話しにどこか引っ掛かりを覚えていた。


「お前、なんか隠してやがるな?」

「おやおや、ユキヤくん。君って人は親友を疑うようなことを言うのかい?酷いよ!親友の君に疑われるなんて!」

「テメェは隠し事をしているときは口調がかわんだよ。分かりやすすぎんだっての」


 そんなに分かりやすく誤魔化しをしているのだろうかと、スレイは自分の言動を思い返してみるが全く分からない。なのでこの話は考えないことにした。

 なぜかって?なんだか思考の沼にはまって出られそうになからだ。


「嘘ってほどのものじゃないけど、あいつもしかしなくても使徒と接触している可能性があったってだけ」

「そうだろうな。まともに身体強化も出来てねぇ奴が、テメェの打撃受けて生きていられるはずねぇからな」


 なぜかやけに素直に引き下がったユキヤ、いつもならここで罵倒の一つでも言ってくるはずなのにどうしてだ?っと、スレイが不思議に思っていると、ギロリと鋭い眼光がスレイを射抜いた。


「テメェに言いてぇことは沢山あるが………そこでコソコソ隠れてこっちを伺ってるそこの使徒ども、いい加減出てきて顔を見せたらどうだ?」


 殺気の籠った眼でスレイの背後を視ると壁沿いから出てきた二人の使徒、その顔を視てユキヤはおもいっきり顔をしかめていた。


「チッ。知ってる気配があるとは思っていたが、まさかあんただったのかよウルクソリヴェ」

「えっ、なになに、二人ともお知り合いなんですか?」

「そんなんじゃねぇが、神の手先だったころに実戦の戦い方なんか教わっていた時期があってな………その、お前たちと始めてあったときの任務、あれはこいつの最終試験でな」


 最終試験で師匠を殺せとは、まさかとは思ったがウルクソリヴェは地上で神の野郎に仇なしかねない人物を密かに消していたのかもしれないが………まぁ、それは後でゆっくり考えることにしよう。


「久しいですねウルクソリヴェ。そっちの使徒は始めましてだな」

「ウフフッ、そうですね。私は流麗の使徒 キーアベル。あなたは確かクロガネでしたか」

「悪いがその名は捨てて今はレンカと名乗ってる。それでお前らはなぜここにいる?戦うって言うんだったら相手になってやるが?」


 そう言うとユキヤは腰に指していた黒刀に手を掛けるのを視てスレイが止めようとしたが、それよりも先にキーアベルが前に出る。


「私たちは争うためにこの場に来たわけではありません」

「ハッ、あんたら使徒の言うことを信じて良いことにあったことがねぇんでな。それとバカ!てめぇなんでこいつの言うことを信じやがったんだこのバカがッ!!」

「ユキヤくんや。人のことをあまりバカバカと言わなくたって良いんじゃないでしょうか?」

「うるせぇこのバカ!大体、テメェがこの使徒どもことを俺たちに黙ってたのが悪ぃんだろうが!そこん所ちゃんと理解してやがるのかこのオオバカ野郎が!!」


 親友からバカバカと何度も何度も罵倒をされたスレイは、不貞腐れて道の端で体躯座りをしながらそこら辺に落ちていたきの棒を使ってのの字を書いている。


「てめぇはそんな古典的な落ち込みかたしてんじゃねぇ!こいつらの前にテメェからぶった斬ってやっぞ!このバカ!!」

「もうバカでもなんでも良いけど、こんかいばかりはその人たちの言うことは正しかったし、ボクは今回の件が片付くまでは手を出すきは更々ないよ」


 スレイがそう言うとユキヤが魔眼を発動させたらしく眼の色が変わったが、すぐにもとの色に戻ると構えを解き話を聞く姿勢を取った。

 だがまだ疑いは完全に解けていないからなのか左手は柄を握っているままだった。


「そのバカの言葉もテメェらのことも信じたわけじゃねぇが、話だけは聞いてやる。それで俺が信じられねぇと判断したら容赦なく斬る」

「それで構わないわ」


 そう答えているキーアベルだったが、スレイはちょっとばかしウルクソリヴェが静かすぎないか?と思っている。

 なぜならあの戦闘狂とまではいかない………だろうが、戦いが好きそうなあの使徒がここまで黙っている。その理由はいったいなんなのか?不思だぁ~なっとおもっていると、ウルクソリヴェの足元を注視した。

 なんとライオンのごとき巨大な素足をキーアベルがヒールの踵でグリグリして、ついでに笑っているキーアベルの笑顔の裏になにやら黒い般若のような物が見える。

 あれはけっして触れてはいけない、例えるなら闇ノクトと同じ部類の物だ。安易に触れたら最後、こちらにまで飛び火してひどい結果になるのだと、過去の経験から自分の感が囁いてきたのでスレイは合えて見てみぬ振りをするのだった。


「それで、なんでテメェらはここに来たんだ」

「私たちがここに来た理由はこれですよ」


 そう言いながら取り出したのは布に巻かれた少し長い筒のような形状の物だった。

 これが一体なんだと思っていると、キーアベルがソッと外した。すると見えてきたのはエドヴァンの持っていた聖剣擬きの破片、と言うよりもスレイが真っ二つに切り落とした聖剣擬きがくるまっていた。


「そいつは聖剣擬きって、おい、まさか盗んで来やがったのか?」

「えぇ、こんな紛い物を持っていってもあのお方はお慶びにはならないわ。それにここまで壊されたらもう使い物にはならないしね。私たちが回収したところであなたたちにはなんの問題はないでしょ?」

「それはまぁそうですけど」


 本物の聖剣と比べれば天と地ほどの差の有るの紛い物、さらには完全に壊しているので神のところに持っていかれても問題ない………はずだ。

 あのエドヴァンが騒ぎ立てるんじゃないかとも思ったが、今回はさすがにやりすぎたらしく明日の朝には憲兵隊が連れていき、犯罪奴隷におとされるとは聞いている。

 なので何ら問題はない………はずだ。


「だがなぜそれを回収する?テメェらにとってそれは必要ねぇだろ?」

「えぇ。普通は必要ないわね。でも、今は必要なの」

「それは、あいつを見つけるためにって意味ですか?」


 スレイがキーアベルに訪ねると肯定するようにコクりと首を縦に振った。

 やっぱりそうかと、今の答えで頭のなかで組み立てていた全てが繋がり、これからの方針も定まり始めてきたが、ここで事情を知らずに置いてけぼり食らったユキヤはドスッとスレイに肘打ちを食らわせた。


「グヘッ!?なにすんだよ!?」

「話が全く見えねぇんだよ。テメェらだけで理解してんじゃぇよ!どうしてそいつが必要なのか、一から全部説明しやがれ!」


 ユキヤがキレ気味に答えると、スレイとキーアベルが顔を見合わせてから仕方ないと言った雰囲気でため息をついてから同時にうなずき合う。それを視てユキヤくん、青筋をビキッと額に浮かべる。


「テメェら、早くしねぇとマジで斬り殺すぞ」

「お前キレやすいな。カルシウムが足りないんじゃないか?ほれ牛乳」

「いるか、しばき倒すぞ!」


 空間収納から取り出した牛乳瓶をユキヤに差し出したスレイだったが、それにブチッと来たらしいユキヤが瓶を叩き倒して黒刀を抜き掛けるが、済んでのところでスレイが黒鎖でユキヤの黒刀をガッシリと巻き付けて封じることにした。

 だがそれで止まるユキヤでもなく、鎖で黒刀が抜けないのならと空間収納から予備の刀を取り出しスレイの首を斬ろうと切りかかった。


「あっぶね!?落ち着けユキヤ!悪かった!悪かったから落ち着け、ちゃんと説明するから!そんな物騒な物を振るわないで、お願いだからさぁ!」

「うるせぇ!いい加減にせんと俺でもキレるわ!さっさと話さねぇとマジで斬るぞ!!」


 振るわれた黒刀を真剣白羽取りで受け止めるスレイと、ギチギチと黒刀を押し込もうとしているユキヤ。これはさすがにまずいと思ったキーアベルが止めにはいろうとしたそのとき。


「面白そうじゃねぇか!我も混ぜろ!」

「ウルクソリヴェッ!話が余計にややこしくなるからあなたは黙ってなさい!」

「はい」


 今までは借りてきた猫のようにおとなしくしていたウルクソリヴェが、スレイとユキヤの喧嘩を視てまるで水を得た魚のように参戦しようとしたが、それをよしとしないキーアベルが一喝するとシュンッとして隅っこで膝を抱えて座っていた。


「あなたたちも、話が進まないからいい加減にしなさい!!」


 さらなるキーアベルの叱咤を受けてどうにか剣を引いたユキヤと、どうにか首の皮が繋がって安堵の息をついたスレイ。

 ようやく話が進むと思いながらユキヤが刀を鞘に戻して空間収納に投げ入れる。


「話を戻すわね。私たちはあのお方の命を受けてある使徒を追って、この地上に降りてきました、目的はその使徒の始末。それが私たちの目的よ」

「始末とは穏やかな話じゃねぇな。仲間内での内乱でも起きてるのか?」

「内乱。とまではいかないけど、私たちのもとから離反した使徒が問題を起こそうとしている。と言ったところかしらね」

「ハッ、だったらそのまま共倒れしてくれりゃこっちは楽でいいんだがな」


 ユキヤが本心からそう言っていると、それを聞いたスレイが小さく首を横に振った。


「それについてはボクも全くの同意見なんだけど、今回ばかりはそんなことも言ってはいられないよ」

「あぁ?いったいなにが起こるってんだ?」

「以前起きた古代の魔物、そして魔族の復活。あれと同じことが起きようとしている。とでも言えば言いかな?」


 スレイのその言葉を聞いてユキヤの表情が鋭さを増すと、無言でさっさと話せと視線だけで言うとキーアベルが話し出した。

 全ての話を聞いたユキヤは全てを納得しながらも、こんな大事なことを今の今まで黙っていたスレイを取り敢えず斬ることにした。

 居合から一瞬での抜刀でスレイの首を落とそうとしたが、済んでのところでスレイは黒幻の刀身を抜いて剣を受け止めた。


「うわっ、あっぶねッ!?えっ、なんで斬った?なんで斬ったのユキヤくん!?」

「こんな話を黙ってやがったバカをぶっ殺してやりたくなっただけだ。気にするなよ親友」

「ユキヤくん、ちょぉ~っとそこの競技場裏行こっか。ぶっ殺してやるよ親友」


 スレイとユキヤが張り付けたような笑みを浮かべながら剣と刀を抜き合う。低い笑い声を上げながら黒幻と黒刀を同時に振り抜いたそのとき、


「「いい加減にしなさい!!」」

「イッテェエエエエエエッ!?」


 スパーンと気持ちの言い音と、男二人の絶叫が鳴り響いた。

 地味に痛む頭をおさえながら顔を上げたスレイとユキヤの目の前には両手でハリセンを持ちながら答えるユフィと、ハリセンを肩に担ぎ腰に手を当てているアカネが立っていた。


「えっ、なんでユフィ!?」

「はっ、なんでスズネ!?」

「「全然帰って来ないから迎えに来た!」」


 どうやら全然帰ってこないのを心配して見に来てくれたらしいが、この時間の女性の一人歩きはさすがに容認出来ない。


「いや危ないでしょこんな暗い夜道を一人でって!?」

「なにかあったらどうするつもりだったんだ!」

「大丈夫大丈夫。こんなこともあろうかとスレイくんが置いていった黒騎士に護衛してもらってきたから」

「私の専門は隠密よ。なにも必要ないわ」


 確かにそうだった。

 それにユフィとアカネだけでなく、二人の身内は揃いも揃ってそこらのゴロツキよりも強い。よく考えると全く問題はなかったと、二人揃って納得していたのだが有ることが気になった。


「ところでユフィ、アカネ。ちょいと聞きたいんだけどいったいどこから聞いてた?」


 ユフィとアカネが来たと同時に姿を消したキーアベルとウルクソリヴェだが、もしかしたらもっと前に来ていたのならと思ったのだが…………ユフィとアカネから一瞬にして発せられた殺気に二人は身震いした。


「いつからってそりゃあねぇ~」

「もちろん、全部聞いたしちゃんと全部みてたわよ。ずいぶんと親しげにしてたわよね」


 ユフィとアカネが氷点下の笑みを浮かべながらこちらをみている。

 なぜか今すぐこのばから逃げなければと思いながら、スレイとユキヤがジリジリと後ろに下がろうとしたそのとき、スレイの周りに魔方陣が展開され、ユキヤは鋼糸によって拘束された。


「あのぉ~、ユフィさん?これはいったいなんですか?」

「おいスズネ、こいつはなんの冗談だ?」

「なにもこうこないよぉ~。こうでもしないと二人ともお話ししてくれないでしょ~」

「ひら、さっさと吐きなさい。でないと切り刻むわよ」


 自分の彼女がなかなかに世知辛く、スレイとユキヤはちょっと泣きたくなった。

 ついでに自分たちの知っていることを全て話し、ついでにユフィたちから強引に話を聞き出されたスレイは一人で隠していた責任を取ってみんなの前で土下座をしたのだった。

ブクマ登録、誤字報告ありがとうございます

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