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新型ゴーレムの試験運転と弟

ブクマ登録ありがとうございます。


 数ヵ月前、私は今まで考えていたあるゴーレムの思想をスレイくんに話した。


「生体ゴーレム?」

「うん。正確にはキメラティックゴーレムって名前なんだけど、長いから生体ゴーレム」


 私は今まで新しいゴーレムを作ろうとしていた。

 ゴーレムは金属で出来た物だけど、私が作ろうとしているのは材質を金属と一緒に魔物の素材を使おうとしているんだ。


「魔物の素材、複数の素材を使うからキメラか……いいんじゃないか?素材ならまだ沢山あるし」


 そう、前々から死霊山に行くこともあるから、そこで私も素材を沢山手に入ってるから分けてもらう必要はないんだよね。


「それでね。スレイくんには新しいゴーレムのデザインお願いします」

「オッケー、その代わりボクも一機欲しいから作るのは手伝うよ、後でどんなデザインがいいのか考えてるのか教えて」


 私はスレイくんに今考えてるゴーレムの概要を伝えた。

 その日から私とスレイくんは新しいゴーレム開発にいそしみ出した。


⚔⚔⚔


 それは突然のことだった。


「え、魔物を倒しに行く?」

「そうだよパーシー、オレたちで魔物を倒すんだよ」


 いつものように近くの広場に遊びに来ていたパーシーは、そこに先に来ていた同い年の友人トムからそんなことを言われた。


「そうだよ、お前の姉ちゃんはオレらよりも小さいときに魔物を倒したんだろ?ならオレらも出来るって!」

「で、でも」


 姉であるユフィからその時の話を聞いているパーシーは、初めての魔物討伐の時は今はこの村にはいない、剣の先生の引率で、初めての魔物討伐を行ったことを聞いている。なのにそれを子供の自分たちだけで魔物を討伐など出来るのかとおもっていた。


「なんだよパーシーできないって言うのかよ?」

「お前、魔法と一緒にあの兄ちゃんに剣も習ってるんだろ?」

「心強いじゃん!」


 トムと一緒に広場に来ていた他の友達も一緒になってそういってきた。


「で、でも……」

「お前弱虫だよな」

「ち、違うよ!ぼくは弱虫なんかじゃないよ!」


 トムの言葉にパーシー力強い声で反論すると、トムはニヤニヤとした顔でパーシーを見る。


「なら、一週間後森で魔物倒しにに行くぞ!」

「わかったよ……」

 こうしてパーシーはそんな約束をしてしまった。


⚔⚔⚔


「ふぅあぁ~」


 朝食の席で大きなあくびをしているのはスレイだった。


「ちょっとスレイちゃん、お行儀悪いわよ?」

「ごめん、昨日遅かったから眠くて」

「お兄ちゃんちゃんと寝なきゃ?隈出来てるよ?」

「クマさん?」

「違うぞリーシャ、隈ってのは兄ちゃんみたいに寝不足な人にできる出来るものなんだ」

「へぇー、お兄ちゃんねんねできないの?リーシャがいっしょにねんねしてあげるね」

「リーシャ、別に眠れない訳じゃないから大丈夫だよ。後父さんリーシャにそんなこと言われたことないからってしょげないでね?」


 珍しく家族全員が揃っての朝食、何事もない穏やかな朝の風景、そんな穏やかな朝を噛み締めながらみんなは朝食を食べる。


「それで、今度は何を作ってるの?」

「ゴーレム、ユフィと作ってるのを参考にして、ボク専用の新しいの作ってるんだ」


 ユフィと作っているものというのは生態ゴーレムで、それを元にスレイは独自のゴーレムを作り出そうとしているのだが、中々それが出来ずになんとか形にまで持ってこれた状態だった。


「ゴーレムねぇ~、前衛より後衛に変わったらどうだ?」

「今まで剣で戦ってたのに、いきなり後衛に転職なんてしたくないよ」

「それもそうだな」


 コーヒーをすすりながらスレイが答えた。


「あ、ねぇお兄ちゃん、今日は魔法見てくれるの?」


 朝食の目玉焼きを食べようとしていたミーニャがスレイに訪ねる。少しからミーニャはクレイアルラとユフィから魔法を習っていたのだが、最近ではスレイに教えてもらおうとする。兄としてはそんなに慕ってくれる妹のためにも時間をとってあげたいと思っている。


「いいよ。ゴーレム造りも一段落したからね。でもボクは構わないけどそこは本職に頼んだ方がいいんじゃ」


 少し口惜しい気持ちになりながら、スレイはジュリアの方を見る。


「あら、私は構わないけど決めるのはミーニャちゃんよ?」

「私は……お兄ちゃんに教えてもらいたい」


 もうすぐ旅に出るスレイと少しでも一緒にいたい、その気持ちからの言葉だったが、妹の思いを汲み取ったスレイは静かにうなずいた。


「わかったよ。その代わり、厳しくいくから覚悟しろよ?」

「うん!」

「リーシャもいくぅ~」

「あぁ、リーシャもいいぞ」


 スレイがリーシャの頭を撫でながら微笑んでいると、バタン!と扉の開く音が聞こえてきた。


「お客さんかしら?」

「ちょっと見てくるよ」


 スレイが立ちあがり玄関の方へと向かうと、そこには肩で息をしたユフィがいた。


「どうしたのユフィそんなに慌てて?」


 こんなに慌ててユフィがやって来ることなど今までなかったので、スレイは何か約束でもしてたかと、思い返してみたが全く見覚えがなかったのだが、ユフィはガバッとスレイの両肩に手を置いた。


「スレイくん!パーシーちゃん見てない!?それかスレイくんの家に来てない!?」

「えっ?パーシーくん?いや、見てないし来てないけど……何かあったの?」

「それが……パーシーちゃんがどこにも居ないの!」

「ユフィ、中で詳しい話を聞かせてくれ」


 スレイはユフィを家の中に招き入れると、家のなかに入ってきたユフィを見たフリードたちが挨拶をする。


「ユフィちゃんいらっしゃい」

「なに?スレイちゃん、デートの約束でもしてたの?」

「父さん、母さん、ちょっと真面目な話しだから真剣に聞いて」


 真面目な話しと聞き、二人の表情が変わった。


「ユフィちゃん、何があったんだい?」

「その、朝からパーシーちゃんの姿が見えないんです」

「どこかに遊びに行ってるって可能性はないのね?」

「はい、村の遊び場は一通り、それに……前にお父さんに買ってもらった剣も無くなってるんです」


 剣士になりたいと言っていたパーシーのために、ゴードンが買い与えた剣なのだが使うとき、もしくは家から持ち出すときはスレイかユフィ、又はクレイアルラと一緒の時と言う約束だった。


「それで、さっきからお父さんとお母さん探してたんだけど探してたんだけど」

「剣を持っていったか……」


 普通は遊びに行くのに剣などは持っていかない、ならばなぜ剣を持っていったのか全員がその事を考えている。



「あッ!」



 突然声を上げたのはミーニャだった。全員がその方向を一斉に見ると、なにかを思い出したが言ってもいいのもか、わからずに困惑している時のミーニャの顔だ。


「ミーニャ、なにか知ってるのか?」

「あのね、前にパーシーちゃんのお友達が何か話して他の聞いたんだけど、その時、魔物がどうとか、って言ってた気がするんだけど……まさか……」

「魔物狩り!?」

「そ、そんな……ウソでしょ……?」

「聞こえた気がするってだけだから……分からないけど……」


 自信の無いミーニャの言葉だったが、手がかりはこれ以外何もなかった。


「ジュリアさん、ゴードンとマリーにこの事を知らせてくれ、あとパーシーくんの友達も家にも確認して」

「えぇ、わかってるわ」


 ジュリアは急いでエプロンを外して外へと出た。


「オレは念のために村の中を探す。スレイはユフィちゃんと森に行け」

「分かってる、行くよユフィ!」

「………うん」


 スレイは空間収納の中から剣と短剣、それに魔道銃を取り出し、ユフィも杖を取り出すと、村に一つしかない出入り口へと急いだ。


⚔⚔⚔


 スレイとユフィが森へと向かった頃、パーシーたち四人は深い森の中を歩いていた。

 全員の腰には体格に合わせた大きさの剣が下がっており、彼らの足取りはどこかうきうきと、まるでピクニックにで行くような足取りだった。


「魔物なんか俺がこの剣で倒してやる!」


 先頭を行くのは友人のトムだったが、トムはまともに剣を握ったこともないただの素人、誕生日に両親から剣をプレゼントしてもらって、息巻いているだけだ。なので魔物を倒せるとは全く思っていない。


「……やっぱり、ぼく帰る」


 今までうつむいて歩いていたパーシーは、小さな声でそう告げるとみんなは足を止めてパーシーの方を見る。


「なんだよ!ここまで来て」

「そうだぞ!帰るなんていうなよ!」

「やっぱり弱虫かよ!」


 パーシーの友達たちは口々にパーシーを責める。


「でも、魔物と戦うなんて……危険だよ」

「なんだよ!もういいよ!パーシーなんて置いてこうぜ!」


 他の二人を連れて奥へ奥へと進んでいってしまうトム、それを立ち止まって見ている。


「と、トムくん……」


 下を向いたパーシーはこのまま踵を返して元来た道を帰ろうとしたその時、魔物が来たときのために使っていた探知魔法に、何かが近づいてくるのを感じた。


「み、みんな!何か来るよ!」


 咄嗟にパーシーが叫ぶと、奥へ行こうとした三人が立ち止まって剣を抜いた。パーシーも少し遅れて三人の元に近づいて、腰に下げていた剣を鞘から抜いた。


「ぱ、パーシーどっちから来るんだ?」

「右の茂みから」


 全員がパーシーの言った方に向き直ると、少しして茂みが揺れるとそこから出てきたのは、パーシーたちと一緒くらいの大きさの魔物ゴブリンが現れた。


「な、なんだよ、ゴブリンか」

「お、お前らこんなのにビビるなよ」

「そうだ、こんなの魔物の中じゃ一番弱いじゃんか」


 パーシー以外の子供たちは口々にゴブリンのことをバカにしているが、パーシーはまだ怖い顔をしていた。


「おいパーシー、いくら初めての魔物だからってゴブリン相手にびびりすぎだろ?」

「………………違う」

「え?」

「奥からもう一匹来るよ!」


 パーシーが叫ぶと再び茂みが揺れ、黒い影が現れたと思うと目の前に立っていたゴブリンを切り裂いた。

 現れた巨大な影にパーシーたちは震え上がった。

 目の前には赤黒い毛並みに、血走った目をした大きな熊だった。


「ぶ、ブラッディーベアー………」

「グラァァッァァアアアアーーーーーーーッ!!」


 誰かが目の前の魔物の名前を呼ぶと同時に、熊は大きな咆哮ををあげた。


「………ぁ、うわぁぁぁあぁぁぁぁッ!?」


 熊の咆哮を聞き、今まで威勢を張っていたトムが泣き叫びながら逃げ出した。

 それにつられて他の二人も泣き叫んで逃げ出したが、パーシーは動かなかった。


 ──怖い……怖いけど、ぼくは……逃げちゃダメなんだ……!


 目に大きな涙を溜めながら、今すぐ逃げ出したらトムたちがやられることを分かっている。だから、逃げだしたくても逃げ出せない。

 全身は震えが止まらない、だけど逃げれない。


 ──ぼ、ぼくがみんなを守るんだ!


 確固たる意思を宿した目でブラッディーベアーを見たパーシーは、剣を両手で握り魔法を発動する。


「サンドストーム!」


 パーシーは土魔法を使い、砂の嵐を発動すして熊の視界を奪った。そしてパーシーはトムたちが走り出した方とは別の方に走る。


「エアーカッター!」


 走りながらパーシーは風のかまいたちを発動して意識を向けさせ、このまま森の奥へと走っていくパーシーをブラッディーベアーは追っていく。


⚔⚔⚔



「パーシーくん!どこだぁー!!」

「パーシーちゃん!どこにいるの!!」


 森の中を探していたスレイとユフィは、中々見つからないパーシーを心配して焦っていた。

 そんな二人の元にコールが来た。

 耳に手を当ててコールを繋げる。


「はい、母さん?どうしたの?」

「何かあったんですかおばさん!」

『良かった、あのねスレイちゃん、ユフィちゃん、どうやらミーニャちゃんの言ってた通りパーシーくんは森に行ったみたいなのよ』


 話を聞くと、どうやらパーシーの友達が三人、朝から居ないらしい、それどころかその子供たちも最近買い与えられたらしい剣が無くなっているそうだ。


『今から私たちも森にいくけど、無茶はしないでね?』

「わかった。何かあったらコールするよ」

「おばさん!お願いします!」


 コールを切ると、スレイとユフィは探知魔法を発動するが、森の中では魔力の反応が多すぎてあまり役に立たない、それ以前にスレイもユフィもパーシー以外の子の魔力知らないので探しようがない。他にもサーチや探索魔法はあるが、両方ともこんなところでは使っても意味はない。


「サーチもムリだし、スレイくん!探索魔法は?」

「あれは障害物が少なかったら使えるけど、こんなところじゃ意味無いよ」

「どうしよう……もうなにもないの?」


 諦めそうになったユフィの目には大粒の涙がたまっている。


 ──なにか、何か無いのか?空はダメだ、こんなに木が多いと上からは見逃す、何か……何か無いのか?


 いくら魔法を覚えても全く意味がなかった悔しさを覚えたスレイは、上を見あげるとちょうど上空を一羽の鳥が飛び立ったのを見てあることを思い出した。


「そうだ、ユフィ!()()があるよ」

「アレって、もしかしてアレ?」

「あぁ、まだ試作だけど、他にもいろいろとあるよ」


 二人は空間収納の中からカラスとフクロウを取り出した。

 これが、スレイとユフィが作った生体ゴーレムだ。


「「起動(オン)!」」


 二つの生体ゴーレムを起動させると、パタパタと所有者の肩に止まる。


「レイヴン頼むパーシーくんを探してくれ!」

「お願いオール!パーシーちゃんを探して!」


 二人がゴーレムに語りかけると二体のゴーレムは飛び立った。


「カァ~!」

「ホォー!」


 いかにも鳥らしい鳴き声を上げた二体のゴーレムは、パタパタと飛び立っていった。


「よし、ついでだお前らも行ってこい!」


 空間収納の中から無数の蜘蛛を地面に落とすと、隣でユフィが小さな悲鳴を上げた。


起動(オン)!」


 取り出した蜘蛛型ゴーレムは動きだし、森の中へと散っていった。


「ユフィ、コネクトで視覚共有しよう」

「う、うん……でも、後であの蜘蛛について教えてね?」


 引き吊った顔のユフィにうなずきかけ、二人はコネクトの魔法を使用した。

 コネクトは本来は使い魔視力を共有化するのだが、二人のゴーレムは魔物の素材を使っているお陰でこの魔法の使用も可能なのだ。


「うん、成功だね」

「あぁ……でも、数が多すぎてちょっと頭痛い」


 共有する視界が多すぎて頭痛を訴えたスレイは、何かあるまでは共有しているすべてのを情報をカットして、自分の視覚にもどした。


「これでいい、ユフィボクたちも探すよ」

「うん」


⚔⚔⚔


「はぁ……はぁ……もういいかな?」


 ぼくは大きな木の上に登って小さくなって隠れている。

 ここなら大丈夫、だよね?

 小さくなって震えるしかないぼくだけど、もう魔物もいないよね?


「グラァァッァァアアアア!!」


 ぼくは下から聞こえてきた声を聞いて再び震えたけど、木の下を覗いて見ると、そこにはあの熊の魔物がぼくのことを見上げていた。


「ぅ、うわぁぁぁあぁぁぁぁ!?」

「グラァァッァァアアアアッ!!」


 熊の魔物はぼくの上っている木を体当たりで倒そうとして来る。それなりに大きな木に登ったから大丈夫、ぼくはそう祈るようにしていると、バキバキッと大きな音が聞こえると、後ろに引かれるよな感覚に教われた。


「わぁぁあぁあぁぁッ!?」


 バタァーンっと大きな音がなって、木は倒れた。

 葉っぱがクッションになってぼくは助かったけど、もう……動けないよ。

 ゆっくりとぼくに近づいてくる熊の魔物は、ぼくを殺すために爪を振り上げる。


「いやだ……いやだぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 死にたくない、その一身でぼくは叫ぶとパタパタッと、何かがぼくの肩に止まった。


「ホォ~!!」


 フクロウが一声鳴くと、シールドが現れた。


「これって……お姉ちゃんのゴーレム?」


 顔をあげるとほぼ同時にぼくの目の前に何かが落ちてきた。


「全く、こんなとこまで来て、後で怖いぞ、ユフィが」


 剣と短剣を持ったお兄ちゃんがそこにいた。


⚔⚔⚔


 森を走っていたスレイは急に左目の視界が変わったので足を止める。


「ユフィ!止まって!」

「どうしたの?」

「レイヴンが子供たちを見つけた、でもパーシーくんは居ないみたいだ」

「ッ!スレイくん場所は?」

「ゲートを開く、ゲート!」


 瞬く間に開いたゲートくぐった二人は、レイヴンが張ったであろうシールドの前に出た。


「もういいぞレイヴン!」

「カァ~」


 一鳴きしてシールドをといたレイヴンはスレイの肩に止まり、二人は木の側でうずくまって泣いている子供たちの前に歩み寄る。


「もう大丈夫だよ」

「ねぇ、パーシーどこにいるのか知らないかな?」


 二人は泣いている子供たちから事情を聴く。


「ブラッディーベアー……それで君たちは逃げてパーシーは残った、と?」


 しゃくり声をあげる子供は静かにうなずいたのを見て、ユフィは今にでもこの子たちをひっぱたきたい気持ちになったが、こんな子達に当たっているだけ時間の無駄だ。


「ユフィ、この子たちを連れて先に戻ってて」

「スレイくん……でも、まだパーシーちゃんが」

「ボクが見つける。悪いけどオールの視覚をレイヴンに共有させて」

「わかったよ。すぐにやるね」


 スレイではオールにコネクトできない、なぜならコネクトは術者の使い魔、つまりユフィの魔力で起動したオールにはスレイはコネクトできないのだ。だがこれを解決する手はある。

 それはここにあるレイヴンだ。レイヴンとオールは人間でいうところの兄弟にあたる、そのため二機間での視覚のやり取りも可能なので、オールから視覚情報を受け取りレイヴンとスレイがコネクトする、そうするとオールの視覚をスレイが受けとることになるのだ。


「よし、これでいい、ボクはこの子たちがブラッディーベアーと遭遇した場所に向かう」

「気を付けてね」

「分かってる……フライ!」


 飛行魔法を唱えたスレイは空に飛び上がり急いだ。


「さて、君たちは村に戻るけど、お母さんたちにこの事とを話して叱ってもらうからね!」


 泣いたままの子供たちは、なにも言えずにただ頷くだけだった。


⚔⚔⚔


 話を聞いて先に向かわしていたアラクネたちと視覚共有を行い、その場所に降り立った。


「ここか」


 そこには、ひしゃげたゴブリンの肉塊と今北場所の反対側には真っ直ぐ血の後が残されていた。


「血の後から考えて、この先か」


 集まったアラクネたちを空間収納にしまい、フライの魔力で上空に飛び上がり視力を教化した。


 ──ここなら、もしかすると


 最大出力で視力を教化したスレイは、木々の間から見える血の後を追っていきついにその姿を見つけた。


「レイヴン!オールの視覚を貸せ!」

「カァー!」


 すぐに送られてきた視線から場所を見たスレイは、レイヴンに指示を出しオールを向かわせる。スレイも飛び立つと、程なくして木が倒れた。

 オールの視覚を受け取り見てみると、ブラッディーベアーがパーシーに近づいてくる姿を見え、速度をあげるとようやく視認できる距離にまでたどり着いた。


 ──見えた!


 オールがパーシーの前に止まりシールドを発動し守っている、その前真ん前に降り立った。

 降り立った衝撃でブラッディーベアーが吹き飛んだが、オールのシールドでパーシーは無事だった。


「全く、こんなとこまで来て、後で怖いぞ、ユフィが」


 剣を凪いで煙を散らすしたスレイ、その姿を見たパーシーは大粒の涙をこぼす。


「お、お兄ちゃん!」


 シールド越しだが、擦り傷等は見れるもののひどい怪我は無いことに安心してると背後から足音が聞こえる。


「グラァァッァァ!!」


 吹き飛ばされたのがよほど気に触ったのか、全身血だらけでひどい有り様なのにも関わらず向かってきた。


「あ、あぶない!!」

「あぁ~大丈夫、大丈夫」


 スレイは空いていた左手で懐から魔道銃を抜いて真っ直ぐ熊に向ける。


「おとなしく死んどけ」


 打ち出した一発の銃弾は、赤黒い炎を纏い一本の矢となり熊の頭を撃ち抜き、額に大きな穴を開け絶命した熊はスレイの少し手前まで歩き地面に倒れこんだ。



「さて、パーシーくん、取り敢えずお姉ちゃんとお母さんには死ぬ気で謝りなよ」



 パーシーを連れて村に戻ると、先に戻っていた子供たちはお母さん方に叱られて泣き叫んでいた。

そして無事に戻ってきたパーシーはと言うと、ユフィとマリーついでにクレイアルラの三人から永遠に続くのかと思われるほど怒られていた。怒られはしたものの、誰一人として大事に至らなかったことに皆安堵した。


⚔⚔⚔


 オマケ


「なぁ、ユフィ今さらなんだけど、レイヴンとオールに声帯なんて付けたっけ?」

「えっ?」

「えっ?ってなんだよ?……もしかして……違うの?」

「う、うん……ずっとスレイくんが付けたんだとばっかり思ってた」

「ボクじゃないよ」

「「……………………」」


 二人は、自分達の作り出したゴーレムに起こった奇怪な現象に、微かな恐怖を感じたのだった。

設定してないはずなのに声が出るって、あのゴーレムはなんなんでしょうね?

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