戦いの終わり
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聖剣を呼び出したスレイは大きく後ろに構えた状態で残った闘気と魔力で全身を強化すると、それに対する魔族の身体から闇のオーラ溢れだしたかと思うと、すぐに溢れだしたオーラが安定し身体の周りに纏わりついた。
その状態のまま二人は黙って動かなくなった二人だったが、そんな二人の間で激しい気の打ち合いが行われていた。これはただの打ち合いだけでなく、先程の戦いと今の気での打ち合いを参考に相手の出方を知ることができたスレイだが、それは相手も同じだろう。
ピリピリとした空気が流れるなか、そんな空気をうち壊すようにこんな戦場には似つかわしくない幼い声が沈黙を貫いていた二人の間に響いた。
『ねぇねぇパパァ~。なんでうごかないぉ~』
「レネ………。悪いけどパパは今凄く集中しているから、ちょっとだけ静かにしててもらっても良いかな?」
剣から聞こえてくる愛娘の声に対して、魔族との死闘のためかなり殺気立っていたはずのスレイが一転し、いつもの優しい声色へと戻っていた。ただしこれは愛娘であるレイネシア限定に発動できる限定奥義とでも言うべきか、取り敢えず愛娘限定のスマイルが炸裂するなか、魔族が楽しそうな声をあげる。
「なんだその剣、しゃべれるのかよ!おもしれぇじゃねぇかよ!」
「悪いけどこの聖剣はただの剣じゃなくボクの最愛の娘で、人類をこの世界を守ろうとした人の想いが形となった剣だ。なめてかかると、今度はお前が痛い目にあうことになるぞ?」
スレイが本気で殺気を放つとピリピリと空気が振るえると、クスッと魔族の顔が笑うと声をあげて笑い声をあげている。
「くっ、くははははッ!イイネェイイネェあいつの言った通りこの時代はおもしれぇじゃねぇか!!ホント、この時代に蘇って良かったぜ!全くサイッコウじゃねぇかよ!!」
魔族が笑い声を上げながら全身から炎にも似たオーラが吹き荒れると、それに対抗するようにスレイも全身に流していた魔力を迸らせながら相手のオーラを弾き返すと、今度は魔族が翼を強く羽ばたかせて間合いを詰めると、スレイも翼を羽ばたかせて間合いを詰める。
二人の距離が縮まりお互いの剣が届く間合いになった瞬間、スレイは聖剣を左脇に抱えるように構えて振り抜き、魔族は暗黒剣を肩に担ぐように構え右上から斜めへと振り下ろした。
二つの剣がぶつかり合うと衝撃が駆け抜けると二つの剣が衝撃で弾かれ、大きく腕を弾かれたスレイはどうにか態勢を建て直そうと剣を引き戻しにかかった。だが、それよりも早く攻撃に転じたのは魔族だった。
「あめぇんだよ!」
弾かれた勢いをそのままに、空中上下を回転しながら逆さの格好で真横への回転斬りを放った魔族。空中だから出来るこれ攻撃にはさすがに反応できない、このまま胴体を真横に斬れる。
そう踏んでいた魔族だったがそう易々と殺られるスレイでもない。
「なめるんな!──頼んだぞレネッ!」
『わかったのぉ~!』
スレイの言葉にレイネシアが答えると、握られている聖剣が輝きだしたかと思うと刀身から光の粒となって消えていったかと思うと、光の粒がスレイの両腕に集まり形を作ると、そこに現れたのは黄金のガントレットだったが、それには刃がついていた。
左手に現れたガントレットと剣を合わせた手甲剣、ちょうど手の甲の部分から伸びる刀身が魔族の横斬りを防いだ。
これには魔族も驚いたのか、目を見開きながら自分の剣を受け止めたその手甲剣を見ながら声を荒げながら叫んだ。
「バカな、剣が変わっただとッ!?」
「まだこれだけで驚いてる場合じゃないぞ!」
スレイの手甲剣が暗黒剣を押し返したと同時に右手の手甲剣が突き立てられると、僅かに反応が遅れたらしい魔族の頬に傷が走り紫色の血が流れたかと思うと、さらにスレイが連続で斬りかかるために右腕の手甲剣で切り下ろしたが、振り下ろされた刃を魔族が受け止めブシュっと紫色の血がスレイの頬にかかる。
「捕まえたぞ!死ねぇええええ――――――――――ッ!!」
ガントレットと一体になっている刃を握ったことで距離を放せず、空間転移で逃げようにも聖剣の切っ先が触れられているので逃げられないスレイは、どうにか剣を引き戻そうとしていると魔族の袈裟斬りがスレイに向かって放たれようとしている。
剣が振り下ろされるまでの一瞬でどうにか逃げられないかを考えたスレイだったが、どれも無理だろうと結論つけたスレイはこう決めた。逃げられないのならば、真っ正面から迎え撃つだけだ!!
「悪いな。そう簡単に倒されるわけないっての!いくぞレネ!──聖剣よ 答えよ!」
『はぁ~いなおぉ~!』
スレイの言葉とレイネシアの可愛らしい返事が重なった瞬間、両腕の手甲剣が光となって消えると手甲剣から片刃の双曲刀に変化すると、交差したその刃で振り下ろされた暗黒剣の一撃を受け止めると、交差した刃で暗黒剣を滑らせ攻撃をいなした。
そこからスレイが前へと出ると魔族の懐へと潜り込み、双曲刀の刃を重ねながら斜め下からの同時に切り上げる。完全に決まったかに思われたその一撃だったが、それは魔族のオーラが双曲刀と包み込むようにして受け止めた。
「惜しかったなぁ、もうちょい速けりゃあ俺のことを斬れたのによぉ!」
魔族のその言葉を聴きながら受け止められた剣を押し返そうとしたところで、スレイは一瞬手を止める。ここから更に聖剣を押し込むとなにかが不味いと思っていると、一瞬の硬直を見逃さなかった魔族がスレイに拳を振るった。
それはとっさに剣を放した左手でカットしたものの、次は暗黒剣による切り払い。これはさすがに受け止めきれないと思ったスレイは剣の中に内包している聖の光を纏わせると同時に魔族のオーラを凪払いった。
「これならどうだッ!」
「ぅぉおっ!?」
オーラが書き消されるのをみたスレイはそのまま双曲刀を握り直して魔族に向けて振るうと、魔族は振り抜こうとしていた剣を引き戻し両腕をクロスしてガードの態勢を取る。
その直後、魔族を光の斬檄が襲い遥か後方へと吹き飛ばした。勢いだけで殺傷能力の低いこの攻撃に、さすがの魔族も呆気に取られたのか、ガードを解いてその場から移動したスレイの気配を追ってそちらをみながら叫んだ。
「グッ!テメェ!───────ッ!!」
魔族が言葉につまったその理由は、あんな腑抜けた一撃を見舞ってくれたスレイに文句のひとつでもいってやろうと思いながら、スレイのいる方をみたそのとき全身から本能的に不味いと激しい警鐘が鳴り響いたからだ。
視界の奥、そこでは黄金の弓に神々しい光を宿した一本の矢をつがえたスレイの姿があった。
「光の矢に撃ち抜かれろ!」
そう叫びながらスレイが弓の弦を放すと、極限にまで圧縮された聖の魔力が込められた矢が魔族へと向かって放たれる。
魔族は自身へと向かってくる矢を前にしても全く動じることがない。これで決まるかに思われたそのとき、顔を上げた魔族がスレイへ向けて叫んだ。
「ふざけんじゃねぇぞ半端もんが!撃ち抜かれるのはテメェだ!!」
魔族の暗黒剣から魔方陣が展開され聖剣から放たれた光の矢を取り込むと、矢をそのままスレイの方へと撃ち返して来た。
再び攻撃を返されたスレイだったが、今度も慌てることなくゆっくりと弦に指をかけて引き絞ると、弓に聖の魔力で形作られた矢が現れると自分に向かってくる光の矢に対して打ち出すと、二つの矢がぶつかり合い激しい衝撃と爆風が駆け抜ける。
爆風に煽られて後ろに吹き飛ばされたスレイは、爆煙によって視線が遮られながらも魔族の気配だけを便りに弓を向けると弦に指をかけ現れた矢を再び放った。放たれた矢が爆煙を払いのけ視界が開けると同時に、魔族が不適な笑みを浮かべた。
「何度やっても同じだってわかんねぇのかよッ!」
暗黒剣から再び魔方陣が展開されるのを視て今度はスレイが叫んだ。
「そっちこそ、何度も同じ手ばっかり使ってちょっと芸がないんじゃないか?」
「なんだと───っ!?」
スレイの言葉に対して魔族が言い返そうとしたそのとき、自分に向かってくる光の矢が無数に枝分かれして放たれると、魔方陣を消した魔族が全身に漆黒のオーラを纏うと、降り注ぐ矢を掻い潜りながらも防ぎきれない物に対して暗黒剣を振るって打ち払った。
それを視てスレイは自分の考えていた通りだったのだと思いながら、身体を真下へと向けて急降下してから反転、魔族の下をとったスレイが弓を構えながら今度は聖の魔力だけでなく炎の魔力を流し、聖火の炎で形作った矢を引き絞る。
「お前のその剣は、一つの攻撃を吸収しそれを倍にして跳ね返す。だったら無数に分裂させたこの攻撃ならば吸収しきれないって訳だろ!レネ!最大威力でぶっ放せ!!」
『わかったのぉ~!』
スレイの要望に答えるようにレイネシアが返事をすると、弓につがえた聖火の矢が更に輝き出すのを視て一気に打ち出すと無数に分裂した矢が魔族をとらえる。
「テメェが数で勝負ッてんなら、こっちは一撃で勝負相手やろうじゃねぇかッ!!───ダークネス・ブレイズ!」
暗黒剣に自身の漆黒のオーラを纏わせるとその刀身が何倍にも膨れ上がり一本の巨大な剣を形作ると、向かってくる無数の矢に漆黒の刃を振るい、その全てを切り裂いた。矢を切り裂いた魔族をそのままスレイの方へと向かって急降下し始めた。
「おい!そんな弓ばっかじゃなくて今度は剣で斬り合おうぜ!」
「いいよ。でもその前に!」
聖剣を弓から剣に戻すのかと思った魔族だったが、次の瞬間スレイは思いもよらぬ行動にでた。構えを解いたかと思うと再び身を反転させて真下へと一気に降下させる。
「なっ!?逃げんじゃねぇよ!」
スレイが降下するのを視て魔族もそれを追うように翼をはためかせてその後を追う。しかし、いったいどこへ向かっているのか、そう思いながらその先へと視線を向けると、スレイがいったいなにを目的にしているのかが分かり身を起こして空中で停滞する。
「ハッ!そう言うことか!いいぜテメェの全力を真っ正面からぶち壊してやるぜ」
スレイが向かっている先には先程の切り合いで地面に落とされた黒幻がある。
元々二刀流の剣士であるスレイの本領は一刀では発揮されない。ならばその全力の象徴たる剣を広いに行くまでは待ってやろう、そう思い佇んでいた魔族だったが、急降下をしていたスレイが地面すれすれで直角に曲がると、黒幻の柄に手を伸ばつかむと同時に引き抜いた。
さぁこれで心置きなく殺りあえる!そう思いオーラを纏った魔族だったがスレイはそのまま更に直進していった。
「テメェ!やっぱり逃げんじゃねぇか!ふざけんじゃねぇぞ!!」
全くこっちを視ずに直進し続けるスレイに魔族がキレる。
戦うと言っておいてまさかの逃げるとは、許しがたい冒涜だと憤怒した魔族が暗黒剣にオーラを纏わせ放つと、それに気づいたスレイが身を翻して左手で握った聖剣で打ち払うとその場で止まった。
「おい!なにを勘違いしているか分からないけど、ボクは逃げてるわけじゃないぞ!」
「だったらなんだってんだよ!テメェの剣は揃った!それでなんでまだ戦わねぇんだ!」
確かに、スレイの手には黒幻と聖剣、二本の剣が握られている。なのにいったいなにをしようとしているのかが分からない魔族が叫ぶと、ニッと口許をつり上げたスレイが叫び返した。
「そんなの決まってるだろ?───いくぞレネ!」
『いくのぉ~!』
レイネシアが返事をすると同時に聖剣が輝きだし光となって消えると、光の粒の一部が黒幻へと吸い込まれ残りのもう半分がスレイのすぐ後ろに経っている白銀の剣、白楼に吸い込まれる。
「来い!聖剣!」
スレイが左手を後ろに向けると、地面に突き刺さっていた白楼がスレイのもとにまで飛来しスレイの手の中に収まった。
「こう言うわけだよ。どうだい、これがボクの全力なんだけど、これが不服って言うんだったらもとの聖剣一本で相手するけどどうする?」
「いいじゃねぇか!いいじゃねぇか!殺ろうぜ!サイッコウの殺しあいってやつおよぉ!」
先程よりも強烈なプレッシャーを放ち、全身に溢れる漆黒のオーラを迸しらせながら暗黒剣ダーゼルガの切っ先を向ける魔族に対して、口元をつり上げているスレイは自分のなかで沸き上がる戦いへの興奮が押さえられそうにない。
スレイは聖剣となった黒幻と白楼を見ながらゆっくりと大きく深呼吸をすると、空中で大きく右腕を前に突きだし正面で水平に構えられた黒幻と、それに重ねられるように垂直に構えた白楼、その二振りの剣の刀身に聖闇の炎を宿した。
「あぁ。やろう。こっちの全力をもってお前の全力を叩き伏せよう──さぁ、ショータイムだ!」
次の瞬間、スレイと魔族がその場から消えると空中で激しいぶつかり合いが繰り広げられる。
今までの戦い全てがあいての様子見だったのか、二人は自分の出せる全てを出して剣を振るうとたった一太刀でも当たれば致命傷に違いないと、これを視ているものであればそう思うほどに激しい剣戟が繰り広げられている。
真上から振り下ろされた白楼の一撃を魔族がかわすと、暗黒剣の連続斬りが一瞬にして放たれると引き戻した白楼と黒幻がそれを弾き返し、最後の一撃を強く跳ね返したスレイは大降りの横凪を放つと、魔族が翼を羽ばたかせて上へと飛び上がるとスレイもそれを追って飛び立った。
太陽の方へと飛び上がッた魔族、それを視て眩しそうに目を細めるスレイだったが突如身を翻した魔族が暗黒剣に闇のオーラを纏わせて振り下ろした。
向かってくる闇の斬檄を黒幻と白楼に宿る聖剣の力と闘気の斬檄で打ち緒としたスレイ。そこに魔族が上段に構えた暗黒剣を振り下ろし、それをスレイはクロスした黒幻と白楼で受け止める。
「楽しい!楽しいぜ!こんなに楽しいのは初めてだ!!」
「殺しあいくらい静かにやれッ!───竜皇烈閃爪ッ!!」
暗黒剣を押し返したスレイは黒幻に闘気を纏わせて大きく空を斬る言うに放つと、黒幻の刀身から三本の鋭い閃のような斬檄が放たれる。
「いいじゃねぇかよ、そんくらい!」
それを暗黒剣から放たれた漆黒の斬檄がスレイの技を打ち払うと、肩に担ぐように構えられた黒幻とだらりと真下に構えられた白楼を握るスレイが駆けると、それにあわせるように魔族も駆ける。
「これんらどうだ!───双牙・竜皇の鋭刃ッ!!」
「んなもんが効くかッ!」
上下から同時に放たれる一撃と切っ先から真っ直ぐ放たれる突き、スレイの剣と魔族の剣がぶつかり合い激しい衝撃が二人を弾き飛ばした。
空中で体勢を立て直した二人は再び斬りかかると、ギリギリとつばぜり合いに持ち込んだ。
「さすがに、ここまで長引かせるとかなり力を消耗しちまったなぁ」
「こっちはお前とやりあう前に、でっかい奴と殺りあってたんだ。お前以上にこっちも限界なんだよ!」
剣を押し返し白楼で振り払ったスレイだったが、魔族はそれをヒラリとかわし真上からの落下の勢いを利用した切り下ろしを放った。
だがスレイはそれを剣では受け止めず後ろに重心をずらすことでかわす。
「───竜皇飛翔激!」
スレイが黒幻の刃から放ったのは闘気で形作り、聖闇の炎と聖剣の力を宿した黄金の竜の一閃だった。
かなりの至近距離から放たれたその一撃は暗黒剣の吸収能力の発動には間に合わず、直撃で受けてしまった魔族は、全身を焼き尽くす勢いで燃え上がる炎をオーラで消しながら叫ぶ。
「熱ちいじゃねぇかよ!」
「だったら次は完全に焼き殺してやるよ!」
黒幻を肩に担ぐように構え白楼を右脇に抱えるように構えたスレイが魔族のもとへと駆けると、暗黒面を両手で構えた魔族が迎え撃つように構える。
脇に構えた白楼を斜め上に向けて振り上げると魔族の暗黒剣で受け止めると、更にスレイは黒幻での袈裟斬りを繰り出すがそれを魔族が引戻した剣で受け流し、そして切り返すがスレイは空間転移でわずかに後ろに飛ぶと、魔族の暗黒剣は空を斬る。
後ろに飛んだスレイが翼を強く羽ばたかせると、二振りの剣を脇に抱えながら振り抜いた。
振り抜かれた二振りの剣を垂直に構えた暗黒剣が受け止めギリギリと火花を散らすと、魔族はそのまま押し込もうとするが押し返されないようにスレイも両の手に力を込める。
「ぅ………ァアアアアアア―――――――ッ!!」
「なっ!?」
スレイが声をあげながら剣を押し返すと、黒幻と白楼を高速で振り抜くと魔族の暗黒剣が受け止めそして切り返そうとしたが、それよりも先にスレイの黒幻が魔族の剣を掬い上げるように上へと弾き返した。
「取ったぞ!」
スレイの白楼が斜め下から魔族の胸元を斜め上に切り裂き、傷口から血飛沫が飛ぶ。
「チッ!」
あと一歩踏み込んでいたら確実に切り裂かれていたと思いながらも口元に笑みを浮かべた魔族が漆黒のオーラを左手を集めると、オーラを圧縮した小さな球体を作り出しスレイの元に投げる。
スレイはそれを黒幻で切り裂くと、球体に集められていたオーラが一気に溢れ出したかと思うと鋭い針状の鉱物へと変化しスレイの身体を貫いた。
「グハッ!?」
『パパッ!』
「どうだ!魔皇気にはこういう使い方も出きるんだよ!」
重大な場所は防いだが身体中に突き立てられた針が刺さり血を吐き出したスレイに、思わずレイネシアが叫びかける。
「平気だレネ、でも今のはちょっと危なかったッ!?」
高質化は一瞬だけだったのか、すぐに質量を無くしてもとのオーラへと変化し消えていったが、今の一撃で隙ので来たスレイに魔族は畳み掛けるような連続斬りを放つと、それをどうにかかわそうとするスレイだったがここまでの戦いのツケか、魔力と闘気、それに竜力のの限界が近い。
そのためか、かわせるはずの攻撃がかわしきれず身体中を切り裂かれる。
黒幻と白楼で受け流しているものの確実に押され始めているスレイ、この状態でいられるうちに仕留めたいがそろそろ飛ぶのも限界だった。
「やるしかないかッ!」
「なにッ!?」
魔族の剣がスレイの首をとらえた瞬間に空間転移で逃れたスレイは、地面にまで下がりそして翼を消して地面に降りる。
すると白楼を地面に突き立て黒幻を両でて構えると大きく息を吸いそして集中した。
「なにをするつもりか知らねぇが!俺をもッと楽しませろ!!」
叫びながら降下してくる魔族の気配を感じならがもスレイは更に集中する。
『パパぁ~?』
なにやらスレイの気配が変わったことを察したレイネシアが声をかけるが、スレイは全く反応しなかった。
だが、それはすぐにやってきた。
「見えた───光刃!」
スレイが剣を振るったと同時に降下を始めていた魔族の翼を両断した。
「なにッ!?─────チィッ!!」
翼を切り落とされ地面に落下を始める魔族だったが、魔皇気と呼ばれるオーラを使い地面に降りるとスレイに好奇の目を向けてくる。
「テメェ今のどうやったんだよ!」
「剣士の極致、そのなりかけの一撃だよ」
「いいじゃねぇか!おもしれぇよ半端者の癖によぉ!!」
「いい加減、その呼び方はやめて欲しいけど、まぁいい。───さぁ、最後の勝負といこうぜ!」
ここに来て全力で出せるのはあと一撃、無理をすればもう一撃は技を出せるかもしれないがそれは奥の手で残しておきたい。
だからスレイはこの技に全てを賭けるために聖剣の力を全て解放すると、黒幻と白楼の刀身が黄金の輝きを放ち出すと、二振りの剣に黄金の竜が現れそして二振りの刀身のなかに吸い込まれる。
「なんだよ、もう終わりにしようってのか?もっといいじゃねぇか!」
「悪いな。こっちはもう限界なんだ。だからこの最後の技に全てを乗せる」
「正真正銘の全力か!いいぜ!かかってこい!!」
最後の技の打ち合い、それを了承してくれた魔族に感謝の言葉を胸に秘めながら、スレイと魔族が同時に地面を蹴った。
「行くぜ!最後の一撃!真っ正面からその一撃をへし折ってはるよ!」
「あぁ。やってやるよ。ただし、勝つのはボクだ!───竜皇絶翔激!」
両の剣を大きく後ろに構え体勢を低くし更に加速したスレイは魔族が攻撃の体勢にはいるよりも先に斬りかかった。
最初の一撃目は後ろに下げられた左右の剣を真上へと振り上げる切り上げ、それを真横に一閃した暗黒剣の一撃が受け流す。
続く二撃目と三撃目は振り上げられた黒幻と白楼による斜め上からの切り下ろしだったが、それは真横へ一閃の状態から更に一回転した魔族が回転の威力を合わせた切り上げがスレイごと弾き返した。
「まだだぁあああああ――――――――ッ!!」
「こいよ!!」
弾き飛ばされたスレイが白楼を握る手を大きく引き絞り地面を蹴ると、そのまま放たれた矢のごとき疾走によって放たれる強力な突きだったが、魔族は剣の柄を両手で握り頭上高くより振り下ろされた唐竹割りにより弾き返される。
ジャリッと地面をるよく踏みしめたスレイが踏みとどまると、更に前へと踏み出し振るわれた横凪を切り下ろしで防がれそして切り返しで足元を狙って放たれる魔族の一撃、だがスレイはそれを飛んで回避すると、逆さの状態で空中で回転しながらの回転斬りを放った。
「空中じゃ、軽いんだよ!」
「グッ!?」
放たれた回転きりを同じく地面に倒れるようにして中に身体を浮かした魔族の剣が弾くと、そこに魔族のオーラによって作られた刃が放たれる。
それを視たスレイは黒幻を大きく振り下ろすことによって剣圧によってそれを弾く。
────あと、残り十ッ!
この技は繋げられるのは約十八回まで、これはスレイが今までに編み出した単発技を繋げて放つ。
最初は"紅蓮十字斬"による二連続を放ち、続け様に"業火の突激"の突きからの空中での"風牙・円激"と最後に放った"竜皇烈閃爪"までの八撃を既に使ってしまった。
残りで一気に倒す!
「ハァアアアア――――――――――ッ!」
駆け出したスレイは黒幻と白楼を真後ろに大きく構えながら走り出すと、それを迎え撃つように暗黒剣と魔皇気によって形作られた刃が放たれると、スレイは白楼を垂直に構えて走り出すと白楼の刀身に炎の渦が現れ身を包んだ。
切っ先から現れた炎の渦によって弾きとばされると、接近したスレイの斬り上げを魔族の剣が受け止める。
「グッ!?」
渾身の力を乗せて放った斬り上げによって体勢を崩した魔族、大きく空いた場所に向かって最速の一刀が振るわれると、それを守るために魔族は自らの左腕でガードするとスレイの剣が魔族の腕を切り裂いた。
あと八撃、地面を強く蹴ったスレイの剣が振りかぶると切り裂かれた腕を持ち上げた魔族が叫ぶ。
「お返しだッ!」
傷口の断面から魔皇気が溢れ出すと無数の刃となってスレイを襲うが、その刃はスレイの白楼から放たれた炎の衝撃を放ちながら振り下ろされた一撃によって焼き斬られる。
すると、魔族の切り下ろしとスレイの剣の切り上げがぶつかり合った瞬間、魔族の手が突如として切り落とされる。
切り下ろすと同時に放たれた"光刃"が魔族の腕を切り落とした。
「ぐっ、しまった!?」
両腕を失った魔族が魔皇気を傷口に纏い切り落とされた両腕の代わりを作ろうとするが、それよりも先に駆け出したスレイが叫ぶ。
「させるかぁあああ――――――ッ!!」
「やらせねぇっての!」
スレイが最後の六撃を連続で放とうとしたが、魔族はそれをさせないために魔皇気を放ちスレイを絡めとろうとしたが、瞬時に放たれたスレイの剣閃が魔皇気の拘束を打ち消すと最後の一撃を放つために黒幻を大きく後ろに構えながら駆ける。
「終わりだぁアアアアア――――――――ッ!!」
スレイの黒幻の刃が魔族の身体に重なった瞬間、巨大な竜が現れると同時に爆炎が吹き荒れ魔族の身体を切り裂いた。
爆炎が収まったとき立っていたスレイは、黒幻を大きく掲げる。
すると、遥か遠くの場所から
『『『『『───ォオオオオオオオッ!!』』』』』
怒号と聞き間違えるかにような声が聞こえてくるのだった。




