リュージュ家へのご挨拶と再会
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マルグリット魔法国の我が家に帰ってきたスレイたちは、我が家につくなりスレイと学園のアドモア学部長が秘かに産み出した第二世代のホムンクルスイーリアス・シスターズの説明など、やることを終えたあとロークレア騎士国に暮らすリーフの両親から、新年祭で行われる騎士学園の対抗戦の招待チケットを貰ったので、家族みんなで見に行こうと言うことになっていた。
帰ってきてすぐに家を空けるのもあれだがゲートを使えば日帰りで行けるし、対抗戦自体は数時間で終わるのでその後はレイネシアを連れて出店巡りも良いし、家族デートと言うのも乙なものかもしれないと考えながら、眠っているテオドールに軽めに殺気を当てる。
「────────ッ!?」
するとビクンッと、大きく震えたかと思うと息を飲むような声と共に全身に冷や汗を流したテオドールが、ガバッと起き上がった。それを見て無事に起きてくれたかッと思ったスレイが、涼しい顔をしながらおはようの挨拶をしようとした瞬間、スパーンッと気持ちいい音と共に後頭部を叩かれた。
「ぐぉおおおぉぉおおっ。あっ、アニエスさん………なんでキミがそのハリセンを持ってるんですか?ってか、なんでいきなりハリセンで叩くんだよ!?」
「こんなときのために前に使った後にユフィから貰っておいたのよ。それと!いきなりじゃないでしょ!なんて方法で起こすのよ!見なさいよ!ビックリしすぎてわたしの尻尾の毛が逆立ったわよ!!」
狼の獣人のはずなのに尻尾だけが猫の獣人が威嚇するときのように逆立っているのだが、それでも普通に気持ち良さそうな毛をしていると思っていると、ようやく自体を把握できたらしいテオドールがスレイたちに訪ねる。
「あ、あっ、あの師匠!それに姉さんたちも、俺気絶しちゃってたんですよね?………さっきのあのメイドはいったいどうなったんですか!?」
「あぁ。その事なら気にしなくて良いぞテオドール。アレ、ボクの知り合い………で良いのかは分からないけど、取りあえずもう終わったことだから、そんなに気にやむなよ?」
落ち込んでいるテオドールをそう慰めようとしたスレイだったが、イリスに負けたことがショックだったのか全く聞いていなかった。さっきも思ったが、元気印のテオドールがこうも元気がないのを見るとこっちまで調子が狂ってしまいそうになるので、立ち直らせるのになにかいい方法はないかと考える。
すると同じことを考えていたらしいユフィがいいことを思い付いたらしく、ポンッと手を叩いてみせる。
「ねぇテオくん。この後まだ時間あるかな?」
「えっと、俺は依頼を入れてないんで今日はフリーッスけど、夜にはビルとハワードと飯に行く予定です」
「うん。それじゃあまだ時間はあるね。それじゃあ私たちと一緒にロークレアに学園の対抗戦見物に行かない?」
ジャジャンッと、ユフィが余っていた対抗戦の観戦チケットを一枚テオドールに渡した、
受け取ったチケットを見ながらテオドールがどういうこと?っとチケットとユフィの顔を交互に見比べている。
まぁ別の大陸で行われている学園の対抗戦の観戦チケットを持っているのか不思議なのか、あるいは対抗戦とはなんなのかと思っていると、チケットの持ち主であったリーフが説明した。
「ロークレアは私の故郷でして、そこで毎年新年に行われている伝統行事のようなものでして、騎士学園の生徒たちが学園生活の集大成としての発表の場のようなものですね」
「前にそこで戦いかたのレクチャーをしたことがあってね。そのときの生徒が今度は講師として指南した生徒たちが出るって話しだから、見に行こうってことになってね」
生徒という単語を聞いてテオドールの耳が反応を示した。
どうやら一番弟子を自称していた手前、自分よりも先に指南を受けていたものがいることが物凄い気になっているご様子に、これはあとひと押しで陥落出来そうだなっと思いながら、スレイが話を続ける。
「まぁ、テオドールも乗り気じゃないみたいだし今回は家族だけで観戦を楽しもうかなと───」
「不詳!スレイ師匠の一番弟子、このテオドール!師匠の行く道ならばどこまでもお供する所存でございます!」
「うん。元気になったのはいいことなんだけど、うるさい」
こうして元気になったテオドールも一緒にロークレアへと向かうことになり、スレイたち一行は簡単な準備をしてからゲートを使ってロークレアの首都ウルレアナにやって来たのはよかったのだが………
「久しぶりじゃな小僧!腕が鈍っておらんようでよかったわい!」
「いやですねぇカルトスさん。ボクはまだまだ現役ですからそう簡単に腕が鈍るはずがないじゃないですか」
ここはリーフの生家でもあるリュージュ家、騎士爵家のリュージュ家は小さいながらも立派な屋敷を持っているのだが、その玄関ホールでは今まさにスレイとリーフの祖父カルトスの激しい攻防が繰り広げられていた。
振り下ろされる大剣の一撃を黒幻で打ち払いるだけのだが、その衝撃で辺りを吹き飛ばしそうなカルトスの大剣の一撃をどうにか勢いを殺しながらも、周りに被害を出さないように細心の注意を払いながらというなかなかに難しいことを行っていたりもする。
まぁそんな芸当が子供に分かるはずもなく、レイネシアが無邪気にはしゃいでいる。
「パパすごいのぉ~」
「いや、まぁレネの言うとおりすごいのは分かるんだけど………分かるんだけどね───なんで屋敷につくなりこんなことになってるのよ!?」
っとツッコミを炸裂させたアニエスに同調するように、リーフの後に加わったライアたちがウンウンッと大きく首を縦に振りながら同意していた。
そんな彼女たちの横では、何だかんだで見慣れていたスレイとカルトスの攻防に対して、ちょっと自分の感性がおかしくなってたおかな?ッと、思い始めたユフィ、ノクト、リーフだった。
「まぁ、祖父のあれはスレイ殿に対してはいつものことですので、みなさんも多めに見てあげてください」
「あははっ、リーフのおじいちゃんってなかなかユーモアがある人なんだね………」
「わたくしはあれをユーモアの一言で済ませるには、なかなか難しいのではないかと思うのですが………どうなのでしょうか?」
「……ん。私もラピスに同感。理解不能」
ラピスとライアの言葉にアニエスたちが揃ってうなずいているのを見て、ユフィたちはただ笑うしかないと思いながら小さく顔を引きつらせながら困った笑みを浮かべていた。
そんなユフィたちはさておき、一緒についてきたテオドールはと言うと師匠であるスレイの戦いとカルトスの戦いを間近で見て──念のために言っておくと二人とも遊びのようなものなので軽くだが──、興奮しておりどうやら少しだけ元気を取り戻しているご様子。
カルトスの攻撃をいなしながらテオドールがこちらに元気に声援を送っている姿を見て、そろそろいいかなっと思ったスレイが次に放たれた真上からの振り下ろしと同時に身を屈めて走り出すと、左手を竜麟と竜爪を発現させたスレイが振り下ろされた大剣を受け止める。
すると大剣を引き戻そうとしたカルトスだったが、スレイの手に捕まれて全く動かないため、これ以上はもうやめようと思ったのか大剣を握る力をカルトスの緩める。
「カルトスさん。いい加減にしてくださいよ。お会いする度にこうも戦わされたらたまったもんじゃありませんよ」
「ふん、かわいい孫娘を取られたのじゃからのぉ、定期的に小僧どもの腕が鈍っておらぬかを調べておるわけよ」
「はははっ、ハリーさんのかわいそうに」
リーフの二番目の姉リリルカの旦那のハリーは国の魔法使いで、監査官のくらいについているものの表向きは文官で通しており本人も文官の仕事に精を出しているせいで、全く体を鍛えていないそうだ。
心のなかで遠くの地にいるハリーに合掌を送っていると、もう戦う意思がないのは明白なのでスレイが大剣から手を離すとカルトスが剣を引いた。それを見てスレイも黒幻を鞘に収める。
二人の戦いが終わったのを見てからか部屋の影に隠れていたメイドや執事がやってくると、カルトスの大剣を預かりスレイたちの剣を預かっていった。
「あのヘナチョロではなくアガットの方じゃ」
「………誰ですかそのアガットさんって?」
「私の一番上の姉のララ姉さまの旦那さんです」
あの遺跡探索ばかりしていてアルメイア王国が大混乱が起こっていることも知らずに、ダンジョンのなかに籠り続けていたと言うリーフの姉ララ夫婦──念のために言っておくとスレイたちはあったことがありませ──、そんな行方不明に近い人たちにどうやって会ったのかとも思った。
「前にララが帰ってきたときに手合わせしてな、小僧と同じくらいやるようになっておったわ」
「おじいさま。ララ姉さまは次にどちらへ向かうと言っていましたか?」
「さぁのぉ。あやつは自分の興味を唆られたことへは突き進むんじゃが、それ以外はてんで興味を示さんからのぉ。我が孫娘なが困ったものじゃ」
スレイは表情を変えずに心のなかで、あなたのその攻撃性にもこちらは困っていますッと、言いたかったのだがグッと言葉を飲み込んで堪えていると、チョンチョンッと背中をつつかれる。
なんだろうと思って後ろを振り替えると、レイネシアを腕に抱いたノクトがそこにいた。
「お兄さん。レネちゃんのこと、カルトスさんに紹介しなくていいんですか?」
「あっ、そうだった。カルトスさん。アルフォンソさんとルルさんから聞いているかもしれませんが、この娘がレイネシアです。ほらレネのひいおじいちゃんだよ」
「レネのひーおじーちゃんなのぉ~?」
ノクトに抱えられたレイネシアをカルトスに紹介すると、カルトスの顔が顔を破顔させる。
「おぉ、お主がか。話しはあの二人から聞いておる。待っておったぞ。さぁ、お入り。他のみなもよくきた。うまい菓子を取り寄せたあるからの」
「……お菓子!いただきます!」
「貴族さまの選んだ菓子が不味いわけねぇ!オレも食うぜじいちゃん!」
「わぁ~い!おかしなのぉ~!!」
お菓子が食べれると知ったライアとレイネシアが我先にと中へ入ろうとし、割りと食い意地が張っているラーレも一緒になって食べに行こうとしたのだが、ライアをアニエスが、ラーレをスレイがそれぞれ止め、レイネシアはノクトの腕のなかだったのでそのまま捕獲された。
「はいはい。今からゆっくりお菓子食べてたら開会式始まっちゃうから、そのお菓子は後な」
「あんたたち、さっきうちで買ったばかりの果物食べ尽くしたでしょ!まだお腹すいてんの!?」
「……私、竜人だから」
「オレまだ成長期だし、ガキの頃から飯は異様にくえるんだよな!」
全く答えになっていない答えが帰ってきてスレイとアニエスは呆れている。
「すみませんカルトスさん。私たちこれから対抗戦を見に行くので、アルフォンソさんとルルさんたちにもご挨拶したいのですけど」
「あの二人ならロアを連れて先に行っておる。トリシアは近所のご婦人と一緒に新年祭で焼き菓子の出店をやっておるわい」
「おばあ様が出店ですか………後で皆で行ってみましょう」
リーフの言葉に食べ物屋と言うことでライアとラーレが揃って目を輝かせようとしたが、再びスレイとアニエスによって押さえつけられて暴走を防がれるのであった。
リュージュ家に今までの旅のお土産を渡してから闘技場の方へと行く。
その途中、かつてお世話になったギルド職員や、町の人と再会しながら受け付けも無事に終わり会場のなかに入ろうとしたスレイたちだったが、その途中でスレイたちを呼び止める声があった。
「スレイ先生!それにユフィ先生にノクト先生!それにリーフさんじゃないですか!」
突然名前を呼ばれたスレイたちは揃って後ろを振り替えると、そこにいたのは以前学園の講師をしていたときの生徒の一人であった少年ベルリの姿があった。
「ベルリ!久しぶりだな!」
「はい!以前、リーフ先生とノクト先生にはお会いできましたけど、今日はお二人にもお会いできてよかったです!」
そういって話しかけてきたベルリを見て、事情を詳しく知らないライアたちは誰?見たいな顔をしていたのでスレイが、以前教えた生徒の一人であることを教える。
「元気そうでよかったよ~。ところでルミアちゃんとユンちゃんとはどうなったのかな?」
「ユフィお姉さん!そういうことは聞いちゃダメです!」
「あぁ構いませんよ。ちゃんと付き合ってますし、いつになるかは分かりませんがちゃんと結婚する予定ですよ」
「それは吉報ですね。ちゃんと二人を幸せにするんですよ」
「はい!」
ベルリの返事を聞いていると唐突にテオドールが間には行ってきた。
「おいお前!俺はスレイ師匠の一番弟子のテオドールだ!」
「そうか。俺はベルリ、スレイ先生の生徒に一人で今は騎士団に所属している一騎士だよろしく」
「お前、なかなかやるみたいだな。動きだけでもわかるぜ。後で俺と戦おうぜ?」
「いいよ、っと言ってもさすがに私闘は禁止されてるから、この後にでも訓練って名目でだけど、それでもいいかな?」
「おもしれぇ!やろうぜ!」
なんだか元気になってくれて良かったと思っているスレイは、やはり年の近いもの同士で切磋琢磨し合えるというのは、実にいいことだと思っているのであった。




