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復活と親子の再会

 いったいどれだけの時間が経ったのだろう?アカネがユキヤの精神世界へと入って行ったあと、突如ユキヤの身体から黒いオーラが吹き荒れるのを見たレティシアとミーニャは、自分たちにもなにか出来ることはないか、そう思い伝わるかは分からなかったがアカネが握っているのとは反対の手を握りながら必死に祈りを捧げていた。

 どうか、二人が無事に帰ってきますようにと祈り続けている二人は、突然ユキヤとアカネが握っている黒幻に魔方陣に展開され光が溢れだした。

 光と共にユキヤを覆っていたどす黒い闇が消えていったかと思うと、握っているユキヤの指がピクリと動いたのを感じ二人の視線がユキヤへと向けられる。


「─────ッ!旦那さま!?」

「レンカさんッ!?」


 二人が声を出してユキヤのことを呼ぶと、ゆっくりと目蓋が持ち上がり二人と視線が合った。ポロポロと両の眼から涙を流しながら、なにかを口にしようとしている二人の口が動きを見ながら、ながらなにかを言おうとしているのがわかったユキヤは、起き上がりながら二人を泣かしてしまったと思い少しだけ気まずい雰囲気になりながらも、意を決したかのように大きく息を吐いてから二人に告げる。


「その、なんだ………俺のせいで心配かけたみたいだなレティシア。それにミーニャも、言い訳になるんだが使徒に狙われていた手前、連絡をすることが出来なかった………お前を不安にさせたのも分かっている。本当にすまなかった」


 本当に心配をかけてしまったことを思いったユキヤは、心を込めて謝罪の言葉を口にするとレティシアとミーニャが抱きつくと、後ろに倒れないように二人を支えたユキヤだったがすぐ下でなにか呻き声が聞こえてきた。


「ちょっ、ちょっと………あんたら私がいるの知ってて抱きついてきてるでしょ?重いし苦しいから早くどいてくれないかしら?」

「いやじゃの。妾たちは旦那さまが心配じゃったからのぉ。精神世界とやらには譲ったんじゃからこれくらいはゆるせ」

「そうです。それに私はレンカさんにふれ合う機会が少ないんだからこれ位させてください」


 もう好きにして、っとアカネがそう思っていると、ユキヤの手に握られていた魔剣が光と人の姿に戻ったエンジュが眼を擦った。


「とうさま、無事でよかったですとエンジュはおつたえします」

「あぁ。心配をかけたな」

「そうじゃったのぉ。ほぉれエンジュ。妾が労ってやろう。こっちへこい」

「わかりましたとエンジュはおつたえします。レティシアかあさま」


 レティシアがユキヤから放れると──ついでにアカネも抜け出した──エンジュを抱き締めて頭を撫でていると、なにかを思い出したレティシアがユキヤの方に振り返る。


「そうじゃ。ミーニャはもう暫くそうしておれ」

「まぁ寂しい思いさせた罰ってことで」

「はい!」

「あぁ~悪いんだが、そろそろあいつのところにこの剣を返しにいきたいんだが」


 戦いが続く今、いつまでもスレイの黒幻を預かっている訳にはいかないのだが、ミーニャが名残惜しそうにしているのが見える。


「ユキヤさん……私のこと嫌いですか?」

「そんなことはないんだが……」


 なぜならば先ほどから成り行きを見守っていたはずにフリードが、ずっと笑みを浮かべながらこちらを睨んでいるのだ。

 兄といい、父といい、なぜにアルファスタ家の男と言うのはこうも娘に対する執着心?あるいは心配性だけかもしれないが、いちいち殺気を向けられる身としてはいい加減にしてもらいたいと思えてしまう。

 そうしているがなかなか離れようとしないミーニャを見て、大きくため息を一つついたクレイアルラがユキヤに助け船を出した。


「ミーニャ。この事態を早急に解決させるためにもスレイの聖剣の力と、レンカの魔剣の力は必要不可欠です」

「むぅ~!わかりました!わかりましたけど、レンカさんにはこれが終わったらいっぱい甘えさせていただきますから覚悟してくださいね!」

「もちろん妾とアカネもじゃぞ旦那さま」


 何故かレティシアまでもがミーニャに便乗してそんなことを言っているので、大きく顔をひきつらせていると


「それじゃあ姫さまとトキメも呼んで盛大に甘えるのもいいのかもね。その手の薬はユフィにもらえるし」

「おっ、おぉ。それはいいんだが、スズネ?お前いったいなにする気なんだ?」


 アカネがソッポを向いて答えてはくれないが、一度スレイに相談した方がいいのかもしれないと考えながら立ち上がる。


「エンジュ。もう一度頼めるか?」

「はい。いけますとエンジュはおつたえします」

「──魔剣よ 我が名の元に顕現せよ 魔剣ルナ・ティルカ!」


 再び顕現した魔剣を握ったユキヤは、刻印を発動して影の翼を広げたユキヤは空へと飛び上がった。



 時間は少し遡り、スレイとユキヤが上空で激戦を繰り広げていた頃、家族のことを心配したノクトが一度実家の側に行くと言い出し、一人では使徒のいるこの街を歩かせるわけには行かないとライアが一緒に行くと言い、二人で分体と操られた人たちを切り抜けなが街を駆け抜ける。

 そんななか、ノクトの表情が目に見えて暗い色をみたライアはそのことについて訪ねようとしたと同時に、上空から聖と闇がぶつかり合い激しい爆発が吹き荒れるのを見て、本当に魔王が敵に操られているんだと思い上空を見上げている。


「……スレイ、大丈夫かな?」

「お兄さんを信じましょう。それよりも、探査魔法に複数の分体と人の反応がありました………この様子。たぶん人が追われているようです。助けましょう!」

「……ん。了解!」


 ノクトにそう言われたライアは魔眼を発動して未来をみる。

 数秒後の未来では二人の前に修道服を来た栗色の髪のシスターと、そのシスターを追っていうクリスタルの身体を持った分体が四体現れる。ライアはさらにそこから未来に起こるであろう無数の未来を視ていく。

 ここからはライア自身の選択によって変わっていく。使徒の動き、どうすれば一撃で使徒を倒せるのか、いったいどこに攻撃を当てればコアを破壊できるのか、幾度も変わっていく未来のなからライアが考えるなかでも最良と思える答えを探し当てる。


「……ノクト、合図したら一番左にいる奴の右足を吹き飛ばして、他は牽制用に分体の足元に撃って」

「わかりました!」


 走りながら杖に魔力を貯め始めるノクト、後数秒で分体と接触する。そうライアが頭の中で考えながら視界の先で先ほど見たシスターと分体を見つけると、未来視の魔眼で視た通り一番左にいた分体が地面を強く蹴り、一気に仕留めようと加速した。


「……ノクト今!」

「了解です!───ライトニング・スピアッ!」


 ノクトの杖に描かれた魔方陣から五つの雷の槍が創られると、一本目の雷の槍が放たれる。

 放たれた雷の槍はノクトの誘導のもと、シスターに当たらないようにと弧を描くように撃たれ迷うことなく分体の右足を吹き飛ばすと、そこに隠れていた分体のコアが砕かれ光の粒となって消えていき、それに少し遅れ放たれた残りの槍が分体の足元に着弾し砂塵を巻き上げた。


「ライアさん!後は任せましたッ!」

「……ん。任されたッ!」


 身体強化によって一気に距離を積めたライアはまず、視界を奪われて水晶の剣でガムシャラ攻撃を繰り出そうとしていた一体の腕を拳で砕き、懐に潜りこんだ瞬間に貫手で分体の肩を貫くと、中にあったコアを掴みそして握り砕いた。

 次にすぐ真後ろにいた分体の太ももの辺りを蹴り砕きながら内部のコアを砕き割る。そして最後に残った分体へは炎を宿した拳を胸に打ち付け、内部のコアを砕いた。

 一瞬にして三体の分体のコアを破壊したライアは、光となって消えるその身体を見下ろしてから分体に追われていた栗色の髪のシスターを見る。


「……大丈夫?怪我してない?」

「はっ、はい。危ないところを助けていただきありがとうございます」

「……ん。いいよ。それより、ここは危ないから避難する」

「分かっております。ですが、それはできません。わたしは行かねばならぬ場所があるのです」


 ライアはこのシスターを止めないと行けないと考えたが、それでもこんな非常事態にどこへ行こうとしているのかが気になり、訪ねようとしたその時、後ろからかけられたノクトの言葉でその先を遮られてしまった。


「もしかして、エリィさん?」

「その声は、まさかノクトちゃんじゃないのッ!」


 その声に振り返ったシスターは、ノクトの顔を見ると口元を押さえながら身体を震わせ、ノクトも大きく眼を見開きながら持っていた杖を手放してシスターに抱きついた。


「お久しぶりですエリィさん!会いたかった、会えてよかったです!」

「ノクトちゃん!もぉ~、三年もどこに行ってたのよ~、心配してたんですからね!」


 二人がお互いの背中に手回して抱き締め合いながら久しぶりの再会に涙を流している。空気を呼んで辺りの警戒をしながらノクトの杖を回収していたライアは、もういいかな?っとしばらくの間を空けてから二人に問いかける。


「……えっと、二人は知り合い?」

「そうなんです。あっ、お二人に紹介しますね。こちらはわたしの幼馴染みのエミーリア・ティルスさんです」

「……ん。よろしく」

「それでこちらは、わたしと同じ人と結婚する婚約者でお友達のライアさんです!」

「よろしくお願いしま───エェッ!?ノクトちゃんが結婚!?婚約ッ!?どう言うことですか!幼馴染みのわたしになんの相談もなしに婚約なんて!」

「えっと、それについては後でちゃんと説明しますけど、エリィさんもその服ってまさか!?」


 ノクトはリーゼリアの着ている修道服をみて驚いてる様子だが、つもり積もった話しもあるだろがまずはここから移動した方がいいと、ライアは魔眼で観ていた未来ではもうすぐここの分体がやって来るのを見ている。


「……二人とも、ここも危ないから速くノクトの家、行こ」

「あっ、はい!そうですね。エリィさんも一緒に行きましょう」

「えぇ。そうさせていただきます」


 急遽新たに一人追加してノクトの家へと急ぐのであった。


 しばらく街のなかを走っていったノクトとライア、そしてエミーリアの三人は目的の家の前にたどり着くと、中に人の気配が有ることを確認してから、家を覆うように張られている結界にライアが手を触れると、小さなスパークと共に触れようとした手が弾かれた。


「……この結界、見たことある気がする」

「ここ結界、たぶんお兄さんが作った魔道具ですね。………そう言えば前に幾つかの魔道具が無くしたとか言ってましたけど」

「……無くしたんじゃなくて盗まれてたね」


 これは後で報告だなッと二人でこそこそと話し合っていると、結界を隔てた扉の奥から人の気配が近づいてくるのを感じてノクトが慌て出す。


『あっ、あの………扉の前に、どなかたいらっしゃいますか?』

「えっと、その………あの」

「ノクトちゃん?何でそんなに戸惑ってるの?」

「だって二年もあってないから……どう切り出していいのか」

『そっ、その声って本当にッ!?』


 声をかけられて返事に戸惑っているノクトだったが、エミーリアに話しかけられて答えていると、再び扉の奥から声が聞こえて来たかと思うと扉がバンッと開かれ、家の中からノクトと変わらぬ背丈か、少し小さい黒髪の美少女が出てくる。

 出てきた少女の姿をみてもしかしてノクトのお姉ちゃん?っとライアが思っていると、その少女がビクビクとしているノクトの姿をみて一目散に駆け寄ってきたかと思うと、家の回りに張られている結界に触れバチンッと音をならして弾かれた。


「はうぅ~!?」

「だっ、大丈夫お母さん!?」


 結界に弾かれて尻餅をついて倒れている少女を見てノクトが叫ぶと、その言葉を聞いたライアは思わず首をかしげてしまった。


「……ん?お母さん?お姉さんじゃなく?」


 本当に?っと聞きたくなったが、それよりも先に家の中からもう一人の気配がやって来たのを感じたライアがそちらをみると今度は壮年の男性が出てきた。


「ノーラ!なぜかってに外にって、ノクト!?なぜここに!?」

「お父さん!結界の一部を解いて私たちを中に入れて、説明はするから」

「あっ、あぁ!」


 壮年の男性が持っていたネックレス型の魔道具に魔力を通すと、結界の一部を解くと三人が中に入り結界に触れて眼を回している黒髪の少女改めノーラに駆け寄ると、すぐに治癒魔法をかけながら話しかける。


「お母さん!しっかりして、お母さん!!」

「うぅ~ん………ノクト、ごめんなさいねぇ。お母さんったら慌てちゃった。てへっ?」

「てへっ?じゃないです───はわっ~!?」


 起こっていたノクトが突然奇妙な声を上げた。


「おっ、お母さん?わたし、怒ってるんだかね?わかってるの?」

「もぉ~、二年も会ってなかったんだもの。我慢しきれなかったのよぉ~」


 ノーラに力強く抱き締められたノクトはライアとエミーリアが見ている前なので、恥ずかしさを覚えながらも久しぶりに感じた母の温もりに思わず目元が熱くなり、ぎゅう~ぅッと強く抱き締め返した。


「ただいまお母さん」

「えぇ。お帰りなさいノクト」


 ポンポンっと背中を叩きながら涙を溢したノーラだった。


「なっ、なぁノクト?お父さんもいるんだが………その、お父さんもノクトのこと抱き締めたいんだが?」

「お父さんは………暑苦しいからいや……かも」

「そっ、そんなぁ~」


 悲しそうにしているノクトの父トロアと小さく笑っているノクトとノーラ、ほほえましい家族の交流の一幕を見守っていたライアは、もしも両親がいたらきっとこういう感じなのかな?そう思い少しだけ胸がいたかった。

 しばらく家族の一幕を見守っていたライアだったが、母の腕のなかから抜け出したノクトが待ち惚けを喰らっていたライアをみて慌てる。


「あっ、ごめんなさいライアさん。両親に紹介もしないで」

「……ん。大丈夫、気にしてない」


 ライアがそういうとノーラがライアを見て眼を輝かせる。


「あなたがライアさん?はじめましてノクトのお手紙であなたのことは拝見させてもらいましたよ!」

「……ん。よろしくノクト母」

「よろしくね。あぁ~ん!娘がもう一人増えたみたいよぉ~」


 ぎゅぅ~ッとノーラがライアのことを締め上げるように抱き締めると、ノーラに思いの外強く締め上げられたせいでライアが苦しそうに呻き声を上げている。


「うふふっ、おばさまったら相変わらずのようですね」

「───ッ!?」


 そう言ったにはエミーリアだったが、二人がエミーリアの姿を視たと同時に跪いた。


「これは聖女様、ようこそおいでくださいました」

「このような事態のためなんのお構いもできませんがご容赦願います」

「お二人とも顔をお挙げくださいまし。わたしとて選ばれたばかりの身ですので」


 三人の話を聞いたライアが驚いた様子でノクトの方をみる。


「……ノクト、あの子が聖女ってマジなの?」

「えぇ。先ほどお会いしたときに言いかけたことでしたが、あの法衣は代々聖女となる方が身につける特殊な物なんです」


 聖女。つまりは数ヵ月前にアルメイア王国へ異世界人の召喚の方法を伝えた人物であり、現段階での要注意人物の一人である彼女がここにいるのだ。

 エミーリアがもしかしたら神と繋がっているのではないか、一度芽生えた疑念はライアの中で膨れ上がっていった。もしも敵であったのなら、ノクトの前であっても倒さねば、そう考えたときライアとノクトはあることに気が付いた。


「さぁ、ノクト、ライアさん。こんなところではなんだから中に入りなさい。外は危険だから」


 そうノクトの父トロアに言われたが二人は首を横に振って答える。


「ごめんね。お父さん、わたしたちちょっといくところがあるの」

「……ん。ノクト父、ごめん」


 スレイとユキヤの戦いの気配がなくなった。

 戦い事態の気配はまだ続いている。ここに来た目的も果たした、ならみんなのもとに戻るのが先決だ。


「ノクトどこへいくの?」

「お母さん……大丈夫だよ。終わったらお兄さんやみんなを連れてくるから」

「そう………それならいってらっしゃい」


 母の言葉を受けたノクトは小さく笑みを向ける。


「いってきます!」

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