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街中デート ①

ようやく三十話、次の章に進むのはいつのことになるのやら……もう少しだけお付き合いください。

 時は巡りスレイとユフィは今年十五歳の誕生日を迎えようとしていたある日のことだった。


「ねぇスレイちゃん。ちょっといいかしら」

「なに母さん?」


 ユフィとの約束があったため出掛けようとしたボクは台所から出てきた母さんが声をかけてきた。


「あなたたち、今年十五歳でしょ?」


 この世界での十五歳は成人もしくは旅立ちの歳とも言われる。


「旅立ちの日はもう決めたの?」

「あぁ~そういえば、まだ言ってなかったっけ」

「何を?」

「実はユフィと決めてたんだけど、リーシャの五歳の誕生日にしようかなって」


 正確に言うと三月七日がリーシャの誕生日なんだ。ちなみにミーニャは七月十六日が誕生日で、パーシーくんが十月一日となぜかみんな三ヶ月ずつずれている。

 なんだこの変な偶然……?

 何て考えていると母さんから疑問が口にされた。


「何でまたそんな日に?」

「まだ小さいリーシャがかわいそうだしね……出来れば長くいてあげたかったんだ」

「……スレイちゃん」


 正直な話しだがボクもミーニャやリーシャと別れるのが辛いだけなんだよな。


「あ、ヤバいユフィと約束してたんだった」

「行ってきなさい、彼女を待たせて怒らせないようにね」

「わかってますって、じゃあ行ってきます」


 ボクは少し駆け足で駆け出したボクの耳に母さんのあきれたような声が聞こえてきた。


「あの子もデートならもう少しオシャレをすればいいのに、変なところだけあの人に似ちゃったわね」


 何てあきれたような声が聞こえてきた気がする。


⚔⚔⚔


 その日、スレイとユフィは新しい魔道具、もとい新しいゴーレムを作るための材料となると金属や魔石を買いに行くために朝早くから出かけようとしていた。

 つまりは買い物デートだったがここで一つ問題が起きた。



「もう!いい加減にして!!」



 朝早くの村の中にユフィの叫び声が響いた。

 早起きの少しお歳の行ったお姉さま方は、響き渡るユフィの声から、まさか彼氏であるスレイと喧嘩でもして破局か!?、等と様々なことを一瞬で想像した。

 実はスレイとユフィが付き合いだしたことは周知の事実。もといここは小さい村なのでそんなに人がいないことも合間って噂はすぐに広まる。

まぁそんなことは良いとして、お姉さま方が一斉に声がした方に視線を向けたのだがすぐに興味を無くして元の作業に戻っていった。


「いい加減にしてよ!何で私がスレイくんとデートする度にお父さんがついてこようとするのよ!」

「ユフィ。お父さんはお前たちの交際を認めてない。ユフィと付き合うなら俺を倒せるくらいにはならねば」

「毎回スレイくんに手も足も出ずに負けてるのにまだいうの!?いい加減認めなよ!お父さんそんなことしててものすごく恥ずかしいよ!」

「ユフィ!父親に何てことをいうんだ!」

「ユフィもおじさんも朝早いんだから少し落ち着いて声を落として」


 ユフィとゴードンに言い争い、そしてそれを止めるスレイ。もう見慣れてしまったその光景に村のみんなはすでに興味を無くしてしまっていた。

 それから言い争いは激化、今までは落ち着かせようとしていたスレイもユフィ側に傾いた。


「なら今ここで決着着けてよ!」

「つけてやろうじゃないか!小僧、かかってこい!!」

「わかりましたよ!もうぶった押してやりますよ!!」


 ゴードンが背中にクロスするように背負っていたバトルアレックスを、スレイはデートのため空間収納の中に締まっていた剣と短剣を抜き放ち闘気を纏おうとしたその時だった。


「「あっ」」

「ん?──ひぃぃ~!?」


 剣を構えたスレイと、その後ろに立ったユフィがそろって声を上げ、少し遅れて後ろを見たゴードンが野太い悲鳴をあげた。



「あぁ~なぁ~たぁ~いい加減にしましょうかぁ~」



 そう、三人の前に現れたのは全身に殺気を纏ったマリーだった。それからほどなくしてマリーに捕縛、もといタコ殴りされたゴードンは引きずられて帰っていった。


「それじゃ~気を付けてねぇ~、後ぉ~お泊まりなんてしちゃあ~ダメよぉ~?」


 等と言い残して帰っていった。


⚔⚔⚔


 王都の街中を歩いているスレイとユフィだったが、ユフィは物凄く不機嫌だった。


「もう!お父さんなんて知らない!」

「まぁまぁ、おじさんもユフィのことを大事にしてるんだから」

「知らないよ、あんなお父さん!」


 頬を膨らませて怒りを表しているユフィを見てスレイは複雑そうな顔をしていた。


「でもねユフィ。謝れるときに謝った方がいいよ?前のボクみたいになる前にね」

「あ……っ」


 そう、スレイがヒロだった頃の両親とは喧嘩したまま死別した。そのことを思い出したユフィは、言葉をつまらせてしまった。


「ごめんね……スレイくん」

「いや、気にしてないよ……だけどねユフィ、この世界は地球よりも死が身近だ。だからさ、今度は……この世界では、最後まで悔いのない人生を送ろう」


 スレイが優しくユフィの手に触れ、そのまま指を絡ませる。


「………うん」


 指を絡まされて少し恥ずかしそうにするユフィだったが、包み込むようなスレイの大きな手を握り返して小さな声でうなずいた。


⚔⚔⚔


 カラン、カラァーン、というドアのベルが鳴ると、居眠りをしていたルリックスが目を覚ました。


「いらっしゃい、おおユフィお嬢ちゃん。久しぶりじゃの」

「おじいちゃん久しぶり」

「ホォホォホォ、おやもう一人おるのかね?」


 ユフィを見たルリックスが目を細めて微笑むと、ユフィの後ろにいたもう一人を見る。


「お久しぶりですルリックスさん」

「おぉ、なんじゃ。スレイの坊やか、大きゅうなってますます両親に似てきたの」

「ありがとうございます」


 簡単に挨拶を済ませると、ルリックスがお茶を用意してくれた。


「おぉ、そうじゃ前に坊やが置いていった魔道具、あれ、なんと言ったかのぉ?」

「リバーシですか?」

「おぉ、そうじゃそうじゃ、それなんじゃがなもう売れてしもうてな、在庫があればまた持ってきてほしいのじゃが……」

「なら空間収納の中に、一セットならありますよ」

「おぉ、そうか。すまないが売ってもらえんかね?」

「えぇ、構いませんよ。ですが売る代わりに、今日ユフィが買おうとしてるものと交換で」


 隣でお茶を飲もうとしていたユフィの手が止まる。


「ちょ、ちょっとスレイくん!?」

「そんなものなら構わんよ。坊やの作るものは売れ行きが良いからのぉ」

「なら成立で」


 スレイが空間収納の中からリバーシのセットを一つ取り出し、ルリックスに手渡した。

 一年ほど前からスレイは地球のおもちゃを売ることがあった。木で作られたおもちゃ等は前からよく配ったりしていたが、今回のように魔道具として作ったおもちゃは、その手の専門にしている者に頼み販売をしてもらっている。ちなみにこのリバーシは挟まれると勝手に裏返るだけと、とっても簡単にできている。


「しかしわからんのじゃが、毎回ここに書き込んであるこの絵と文字?これはなんじゃね?」

「サインですよ。勝手に偽物が出されたら困りますからね」


 スレイが渡したおもちゃのすべてには端の方に小さく、筆記体でかかれたHIROの文字とその横には小さな桜の花びらが描かれていた。これは、スレイとユフィで考えたことで、この世界にもしも自分達以外の、地球のクラスメイトがいたときに、自分達の存在に気づいてもらうためだ。


「まぁそんなことより、ユフィ必要な物頼んだら?」

「あ、そうだった。おじいちゃん欲しいものがあるんだった」


 ユフィはルリックスから買い取った、もといスレイのお陰でただでもらった物を空間収納の中にしまうと、少し話してからデートを開始することにした。



「ふふぅ~ん」


 鼻唄混じりのユフィは、朝と違ってとってもご機嫌なご様子。


「あ、あのさぁユフィ?」

「なぁ~にぃ~」

「あのさ、近い後当たってる」


 腕を絡められ、それだけでなくさりげなくこの二年でさらに成長した豊満な胸を押し付けてくるユフィに、ついついツッコミを入れるスレイ。


「当たってるんじゃなくて当ててるの」

「当ててるの、じゃありません」

「あ、いったぁ~い」


 軽く、ものスッゴく軽くコツンこずくと、ユフィは頭を押さえるしぐさをする。

 その仕草一つ一つがいとおしいと思えたスレイは、街中であるにも関わらず抱き締めたい欲望に刈られたが、さすがに街中なので自重した。


「それでユフィ、これからどこ行きたい?」

「そうだねぇ~」


 ユフィはちらりとスレイの格好を一瞥した。


「よし服見に行こぉ~!」

「服って、この前作らなかったっけ?」


 ちなみに今ユフィが着ている淡い青色のTシャツとスカート、それに上着の薄緑色のジャケットもスレイのお手製だった。


「私じゃありません~、スレイくんの服ですぅ~」

「ボクの?」


 自分のことを指差したスレイに、ユフィは大きくかぶりを降った。


「スレイくんいつも同じ服じゃん、たまにはオシャレしようよぉ~」


 スレイは自分の格好を見下ろしてみる。

 黒いシャツに黒いズボン、そして極めつけに灰色のフード付の黒いジャケット、いつもと同じ真っ黒スタイルだった。


「変かな?」

「見慣れちゃって変じゃないけど、たまには彼氏の違う姿が見たいかなぁ~って」

「しゃあないか……じゃあ服屋行きますか?大切な彼女のお願いだしね」


 笑って見せたスレイ、その顔をみたユフィは嬉しそうに微笑むと、スレイはユフィの頭をポンポンと優しく撫でると、呆けた目をしてすぐにハッとした。


「もう!私そんなに子供じゃないからね!?」

「ごめんごめん、それより、ボクは場所知らないから案内頼むよ?」

「任せて、とってもいい場所があるの!」


 スレイは謝りながらユフィの指に自分の指を絡ませ、恥ずかしげもなく町のなかに消えていった、のだが、歩きながらそんなやりとりをやっているとさすがに目立つのだが、やっている本人たちは全くもって無自覚なため、周りの──特に独り身の──被害は計り知れないものであったそうな。

 ただそれだけでは終わらない、心に深い手傷をおった物たちは、リア充と言う魔物(宿敵)を打ち倒す──タコ殴りにする──ために立ち上がったのだが、ただ相手が悪かった。


「すみませぇ~ん、善良な一般市民を集団で襲おうとした悪漢を捕まえたので引き取ってもらえませんか?」


 相手は死の山を踏破した化け物、それを相手にただで済むはずもない。

 それが例え三十人を超える人数だとしても、変わることはなかった。


⚔⚔⚔


「あれ、なんだったんだろ」


 町の衛兵の詰所、地球で言うところの交番のような場所に悪漢たちを連れていった帰り、スレイは隣をピッタリと歩くユフィに訪ねる。


「さぁ?でもスレイくんカッコ良かったよ。一人で三十人も倒すなんて」

「さすがにちょっとやり過ぎたけどね。後喧嘩して拍手もらっても嬉しくないって」


 あの悪漢たちが襲ってきたのが大通りの人がいる場所だったため、否応でも人に見られることとなったのだが、周りの人たちは一対三十人強、理不尽な集団リンチが起こると思い、有るものは始まった時点で詰所に衛兵の詰所に駆け込もうとしたにだが、蓋を開けてみれば人数では圧倒的に不利であるはずのスレイが、悪漢たちを圧倒しているではないか、そうなれば衛兵を呼びに行こうとした人は足を止め、周りからは大歓声が上がるほどだった。そしてそのせいか、先程から指を指してヒソヒソと何かを話している人たちがたくさんいた。


「……なんか、いい気がしないな……」

「何で?」

「完全に悪目立ちだろ?それせっかくのデートなのに、人に見られてると雰囲気でないじゃん」

「スレイくんって、そういうの気にする人だっけ?」


 スレイはよくも悪くも天然、悪く言って超が二つほどつく鈍感だと思っているユフィ。

 長年のアプローチを全く気がつかなければそう思われても妥当な評価である。


「そりゃ、好きな人といるときくらいはね」

「もぉ~スレイくん大好きぃ~!」

「だ、だから抱きつかないでって、ってか、む、胸があたるから!?」


 年頃の健全な少年としては、あまりよろしくない状況に心臓が早鐘のように鳴り響いている。そして、周りからは好奇の視線と冷たい嫉妬の視線を受けることになった。

 その後、もう一度嫉妬に狂った悪漢の襲撃を受け同じようにスレイが撃退しようとしたが、今度はその前に警邏をしていた衛兵に見つかり、その後はただの大捕物、スレイも捕まりかけたが、周りの人たちがあらぬ因縁をつけられた善良な一般市民と言うわけで、事情だけ聞かれることになった。

 そのせいで、服屋へ行く時間がだいぶ遅くなってしまった。


⚔⚔⚔


 昼に差し掛かる前、ようやく目的の場所にたどり着いたスレイとユフィ。


「ここが服屋?」

「そうだよ、前にお母さんたちと来て、ここで一緒にお父さんたちの洋服買ったの」

「………こ、ここで?」


 スレイは中世の町中にある異質な、ものスッゴク異質な建物、より詳しく言うとなぜか所々ファンシーで、普通の家ならレンガなどそのままの色か、あえて落ち着いた色であるはず、にもかかわらずここにある建物はピンクの割合が多く、落ち着いた町並みからは想像できないほどな異色をはなっている。


「まぁスレイくんの気持ちはわかるよ……私も最初は、なにここ?って思ったから」

「あ、やっぱり思ったんだ」


 そう答えたスレイは、店の見た目は置いておいて中に入るためにノブに手をかけ……たのだが、どうにもこの店のデザインのせいでしり込みしてしまっていると、しびれを切らしたユフィがスレイの手を取った。


「もう入るよ!」

「わ、わかったから、待ってて!」


 ユフィは強化を施した手でスレイを引きずりながらドアを開ける。

 カラン、カラ~ンっとドアベルが音をたてる。


「はぁ~い、ちょぉ~っと待ってねぇ~」


 店の中に入った瞬間、スレイとユフィの元にとっても野太い声が聞こえ、そして奥の部屋からとってもたくましいシルエットが見え、ついでに言うと、フリフリスカート姿でだ。


「あぁ~んら、ユフィちゃんじゃあなぁ~い。なぁ~にぃ~そちら彼氏さんかしらぁ~?」


 出てきたのは、三段重ねのフリフリワンピースと明るいメイク、普通なら可愛らしいとでも言う格好だが、そのすべてを台無しにしているガチムチな鋼の肉体、つまりこの店員は男だ。

 それを知ったスレイは心の中で


 ──オカマってこの世界にもいるんだ


 だった。

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