邂逅と救出 ③
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現実世界へと戻りユキヤを助け出すために黒幻と白楼に聖剣を纏わせたスレイは、二振りの剣を操りながら次々と放たれるユキヤの技をいなし、魔剣から振るわれる闇の力を聖の力で受け流し上空へと弾き返すと、二つの力が混ざり合い巨大な爆発した。
聖と闇の力が爆発し大気を振るわせる中、同時に地面を蹴ったスレイとユキヤが接近すると聖剣を纏わせた黒幻と白楼、そして刀に姿を変えた魔剣がぶつかり合うと火花を散らしながら切り結び、弾き返したと同時に地面に聖剣の力で地面を斬ると、巻き上がった砂塵が吹き荒れ視界を塞ぐと、回復した翼で上空へと飛び上がった。
一度切り離された翼は再び大空を飛べるまでは回復していたようで、少しだけふらついてしまってはいるがどうにか空を飛び続けるスレイは、視界を塞がれたことでスレイを見失ったユキヤを警戒しながら、聖剣を纏った黒幻の中にいるウィルナーシュに向かって訪ねかける。
「それで、さっきボクが言ったことはどうやれば出来るんだウィルナーシュ!?言いたくないけど、あんまりあいつに残されてる時間もないし、使徒と戦っているユフィたちも心配なんだけど!」
『わめくな小僧。………魂を繋げるには我の剣をあの小僧と繋げたい者に握らせろ。そうすればあとは聖剣の娘と我でどうにかしてやる』
「こいつッ、たぶん今まで戦って来た中でも最高に難易度の高いことをさらりと要求してきやがってッ!」
何をどうすれば魔剣から手を放そうとしないユキヤに聖剣を纏わせた黒幻を握らせろと言うのだろうか、はっきり言って無理だろうとしか言いようがないのだが、きっとそれ以外の方法もないのでやるしかないのだろう。
「今のあいつ、スリープとかの催眠魔法か、あるいは気絶させたりって効いたりするのか?」
『確証はないが、効かぬだろうな。やるならば一瞬の隙を付いて意識を刈り取る他無いだろうが、お前にそんなことが出きるとは思っていないがな』
「………本当のことだからあんまり強くは言えないけど、ハッキリと言われるとなんか無性にイラッとくるのは何でなんだろ」
実際問題剣で斬りふせる以外の選択肢として魔法で眠らせる、あるいは殴りまくって気絶させるか、首を絞めて意識を刈り取る他無いのだが、使徒の力で操られているせいで人らしい感情を一つも見せない今のユキヤは、ブラフもハッタリも通用しなければ首を絞めたところで全く意に返さないどころか、冷静に返されてしまうだけだろう。
いったいどうやったらユキヤを無力化できるのか、それを考えながら土煙の晴れた場所を見ると影の翼を広げたユキヤが飛び上がると、魔剣を巨大な一本の大太刀に変化させると両手で握りしめたユキヤが頭上に構えスレイに向かって振り下ろした。
「────大太刀の型 流星群」
振り下ろされた大太刀から放たれた無数の斬激波がスレイに襲いかかる。
今からでは回避が間に合わない上に、あれは闘気によって放たれた衝撃波に魔剣の力が込められている。例えどんなに強固なシールドを造り出し防いだとしても、力の差は歴然すぐにでも破られるのが落ちだ。
ならばとスレイは黒幻と白楼に闘気と業火を纏わせ、迫ってくる闘気の衝撃波を弾き返すべく剣を振るった。
「クッ!───双牙・業火の連激ッ!」
業火と闘気を纏ったスレイの剣が魔剣の衝撃波を弾き返していると、速度は速いが斬激波の数はそこまで多くないのでユックリと、そして冷静に対処さえ出きればなにも問題はない。
問題があるとすればユキヤだが、そう思いながらユキヤの気配を探っていたスレイは一瞬で意識がそちらに行くと、ドンッドンッドンッと身体に次々と攻撃が当たった。
「ガハッ!?しっ、しまったッ!?」
身体に闘気の斬激波を受けて斬りつけられたが、闘気の斬檄波では竜の革のコートは貫けずその衝撃だけがしっかりと身体に伝わっていった。骨が砕け内蔵を傷付けられたスレイが口から血を吐きながらも翼を広げて体勢を立て直した。
スレイが攻撃を受けた理由は一つ、気配を探っていたユキヤが全く違う場所に移動していたからだ。それも自分も自分のすぐそばで、連続で場所を移動し続けていたせいで気配を関知しきれなかったからなのだが、その気配がスレイのすぐ真横に現れた振り替えると、太刀に形を戻した魔剣に闘気を流し込むユキヤがそこにいた。
「────斬激の型 焔ノ太刀・陽炎」
宿った闘気の輝きが炎のように燃え上がると同時に、魔剣から闇の力の吹き荒れると同時に真上から剣を振り下ろした。闇の輝きを宿した闘気の斬檄がスレイの元へと迫ると、黒幻に闘気と聖闇の業火を纏わせると大きく振りかぶった。
「やらせるかよッ!───竜王烈爪閃ッ!」
聖と闇の炎を纏った斬檄がまるで龍の爪のごとき鋭さを持って放たれると、ユキヤの放った斬檄がぶつかり合うと二つの力が衝突し合い爆発を起こしスレイが吹き飛んだ。
「くそっ!いい加減にやりづらくなってきたな」
感情が無いせいで気配を関知しずらく、さらには感情が無いせいか次の動きを読みづらいせいで、先ほどのユキヤの突発的な攻撃に対処しきれなかったのだ。
そろそろ真面目にユキヤの意識を刈り取る方法を考えなければ、そう思っていると再びユキヤの気配が消えたかと思うといきなり背後から現れる。
振り返ったスレイ白楼で受け止め黒幻で切り返すと、剣が当たると思った瞬間ユキヤがその場から消え去った。
「────体移動の型 朧霞」
「クソッ!?」
不規則な移動の技を使かいスレイの真下を取ったユキヤは魔剣の闇の力を斬激に乗せて放つと、スレイは剣が振り上げられるまでのその一瞬で空間転移を発動し、ユキヤの足元をとった。
「これでどうだ!──黒鎖ッ!」
叫んだスレイがユキヤの側に空間収納を開くと、そこから無数の黒鎖が現れユキヤに巻き付かせて固定する。
手足を黒鎖の鎖が縛り上げると、ガチャガチャと音を鳴らしながら黒鎖の拘束を外そうとしているが、手首や肘などをしっかりと固定しているせいで全く外れる気配はないのが分かると、ユキヤが魔剣に力を込め始める。
どうやら魔剣で全てを破壊しようとしているのだろうと察したスレイは、白楼の切っ先を真っ直ぐ向けると剣の切っ先に魔方陣が展開される。
「ちょっと氷の中で頭冷やしてろバカユキヤッ!───フリージング・コフィン!」
込めれる最大限の魔力を込めたスレイの氷の檻によってユキヤが閉じ込められる。
黒鎖の拘束を抜け出したユキヤが自身を閉じ込めている氷の檻を破壊しようとした。
「───斬撃の型 桜花一刀」
ユキヤの放った一撃が氷の澱を破壊しよう放たれたが、氷の澱はかすかに傷が入るだけで未だ健在だった。
「どうだ、聖剣の力が入った檻の強度は」
魔方陣を構築する際に聖剣の力をいくらか込めていたお陰か、魔剣とユキヤの剣戟にも耐えうるとは思わなかったがこれですぐには氷の檻が砕けることはないはずだ。
これでしばらくは大丈夫、そう思ったスレイは身体中から力が抜けていくのを感じる。先程受けた傷や、一度きり落とされた翼で無理をして飛んでいたのを思いだし、少し休むためにも一度地面に降りる。
「はぁ、はぁ、さすがに……ちょっと無理しすぎたか?」
長引いた戦いのせいで闘気も魔力も、それに竜力を使いすぎたため膝をついていたスレイは、しばらくは動けそうにないなと思いながら体力と魔力を回復させるためにデュアル・ポーションを一本取り出して飲み干した。
これで少しは回復が速まるなと思っていると、地面に置いていた黒幻と白楼が光ったと思ったら、人の姿に戻ったレイネシアがギュッとスレイに抱きついてきた。
「パパ、おけがいたい?」
「平気だよ。ちょっと疲れたから休憩してるだけだから」
ワシャワシャとレイネシアの頭を撫でるとキャッキャッと、無邪気な声をあげて笑っている娘にスレイは疲れが消えていくのを感じていると、人が近づいてくる気配を感じたスレイは黒幻を構えてレイネシアを庇うように立つと、近づいてきた人物の顔を見てスレイは剣をおろした。
「おっ、スレイにレネじゃないか!」
「あらあら、ボロボロじゃない」
やってきたのはフリードたちだった。
「じぃ~じ!ばぁ~ば!」
「父さんに母さん、それにルラせんせ………じゃなくてルラ母さん」
「ですから、先生でいいです」
本日二度目のやり取りをしているとレイネシアが祖父母の方へと走り出す。
近くに敵の気配は無いのでスレイも止めはしないのだが、真上からビシッと何かがひび割れる音が聞こえスレイが上をみると、ユキヤを閉じ込めていた氷の檻が砕け、ひび割れた場所からは魔剣の光が漏れだしていた。
「あいつッ!」
背中に翼をはやしたと同時に頭上の氷が砕け縛っていたはずの鎖が千切れると、魔剣の力がスレイたちに向かって放たれた。
「父さん!母さん!レネを守ってて!───ノヴァ・ヘリオース!」
スレイの放った魔法とユキヤの放った闇の斬激がぶつかり合い大地を揺らした。
「おいスレイ、どうなってる!?」
「使徒に操られてるんだよ!」
魔剣を構え斬りかかってくるユキヤを前にしてスレイが再び聖剣を呼び出すために片手を前につき出す。
「聖剣よ 我が名の元のけんげ────ッ!?」
聖剣を呼び出すよりも先に魔剣を降り牽制するユキヤに舌打ちをしながら、次々放たれる魔剣の攻撃をかわしている。
「おいスレイ、なにかやれることはあるか?」
「それならっ、こいつの意識を、飛ばす方法があったりしないの?そうすればあとは何とかするからッ!」
身体を屈ませてユキヤの足を払い身体が傾いたところに蹴り飛ばすと、地面に手をついて魔法を発動させると地面に大穴を開けてその中にユキヤを閉じ込めるが、すぐに魔剣の力を使って脱出してきた。
あれでは聖剣を呼び出せない、そう思いながら転がっている白楼を拾うために走ろうするとフリードから声をかけられた。
「おいスレイ!レンカくんの意識を飛ばせばいいんだよな?」
「そうだよ!」
「なら話しは速い退いてろスレイ!」
なにを、そう思ったその時フリードの暴竜の剣から光が放たれると、ここにいると危ないと思ったスレイが空間転移で飛び退くとフリードが剣を放った。
「意識を喰らえ!───暴竜の鋭斬!」
フリードの放った斬激がユキヤを斬ると意識を失ったかのように落ちてきた。
あのまま落ちたらユキヤが死ぬと思ったスレイは氷の魔法を応用して雪のクッションを作ってその中にユキヤが落ちた。
「助かったけど………殺してないよね?」
「意識を喰っただけだ。すぐに目が覚めるから安心しろよ」
それならいいのだがッとスレイは思いながら、一緒にいたはずのノクトたちがいないことに気がついた。
「ねぇ、ノクトたちは?」
「ノクトはご両親のところに行きましたよ。ライアもそれについていきました」
「あとリーフちゃんがミーニャちゃんたちの援護に行って、ラピスちゃんとラーレちゃんと私たちで分体を倒してたのよ」
「ママたちいないのぉ~」
ノクトたちがいないことにレイネシアが目に見えてしょげているが、スレイはそれ以上にノクトが両親のところに行っている、そのワードに顔を歪めてしまっている。
「どうしたスレイ?変な顔して」
「いやちょっとご両親へのご挨拶をしなくちゃならないと思うと胃が痛くて」
この戦いが終わったらノクトのご両親との顔合わせし、娘さんをくださいと言わなければならないのかと考えながら、なにか手土産になるものはなかったかと思いながらもまずはここを乗りきるのが先決だと思った。
「まぁ、そのことは後で考えるとして。レネ、もう一度聖剣になってもらうけど、いけるか?」
「いけるのぉ~」
「よし。なら───聖剣よ 我が名の元に顕現せよ 聖剣ソル・スヴィエート」
レネが聖剣に戻り黒幻と白楼に纏わせると、それを見ていたジュリアがスレイに訪ねる。
「ねぇスレイちゃん。聖剣を二つに分けれるのなら、その状態のレネちゃんはどうなってるの?」
「いや、知らないけど………レネ。今どっちの剣にいるんだ?」
『こっちなのぉ~』
っと声が帰ってきたのは白楼の方だった。どうやら意思を二つに分けたりは出来ないようだ。
『でもちからでないの~』
「ふむ。ではその二つの剣に聖剣の力を分けるようですね。しかし、さすがは伝説の聖剣。私たちでは考え付かない製法で創られていますね。興味深い」
「はいはい。孫娘を研究対象にしないの。それで、スレイちゃんはこれからどうするの?」
「そいつ助けるためにちょっとアカネたち呼びに行くつもり」
そう言いながらスレイは先ほどユフィたちと別れた場所にゲートを開いた。
「悪いけど、ちょっとそいつを少し見ててもらってもいいかな?」
「おう、任しとけ」
スレイがゲートを開きそこを潜った瞬間、スレイの目の前に水晶の砲弾が迫ってきたので黒幻で切り裂いた。
「あっ、危ねぇ~~~ッ!?」
ちょっとだけ死の恐怖を味わったスレイは咄嗟に剣を振ることの出来た自分に拍手を送っていると、使徒がこちらの存在に気がつき攻撃を仕掛けてくる。
すぐに黒幻で弾いていると、ボロボロに傷ついているリーフが駆けつける。
「なんでここにいるんですかスレイ殿!?それよりも大丈夫なんですか!?」
「大丈夫、それよりもアカネはどこにいるんだ?ユキヤの元に連れてくから呼びに来たんだけど」
「えっと、アカネ殿でしたらミーニャ殿とレティシアと一緒にいるはずです」
「ありがとうリーフ」
次々に放たれる水晶の砲弾を打ち払いなが空間転移で二人の側に飛ぶと、驚いた二人が思わず身構えていると聖剣を纏った白楼の切っ先から魔方陣が浮かび上がると、シールドが現れて水晶の攻撃を防いでいると、スレイが黒幻をアカネに差し出した。
「アカネ!これ持ってユキヤのところに行ってくれ!」
「はっ?いや、ちょっとスレイ!?なに言ってるの?」
「良いから行ってくれ、それと向こうに行ったらウィルナーシュの指示にしたがって」
「兄さん!ちゃんと説明してあげてよ!」
「してる暇ないっての、それとミーニャとレティシアも一緒に行ってあげて!」
「妾もかぇ?妾だけでもここに残ってもあやつと戦わなくてもよいのか?」
「ボクがこっちに残ってどうにかするから、それとこの剣すごく重いから二人で持ってくれる」
ポンッと手を出していアカネとレティシアに向かって聖剣を纏った黒幻を置くと、ズンッと重さを受けて二人が倒れそうになった。
「おっ、重いぃぃいいいい――――――――ッ!?」
「なっ、なんなんじゃこの剣ッ!?」
「ちょっ、お兄ちゃん!?」
恐ろしく重い黒幻を受け取ったアカネとレティシアは二人係でもふらついてしまい、そこにミーニャも加わったことで三人係でようやく支えている。鞘ごと渡した方が良かったかも、そう思いながらスレイがゲートを開いて三人を風魔法で押し込んだ。
「やっ、やめてスレイ!?」
「あわああぁぁあっ!?なにするんじゃスレイ!やめんかッ!?」
「お兄ちゃん!!」
黒幻を持ちながら風にあおられて後ろに倒れるようになるアカネ、レティシア、ミーニャが口々にスレイに向かって叫ぶ。
「ユキヤは任せるから、あいつが目ぇ覚めたらぶん殴ってやるって言っといて!」
言いたいことだけ言い残したスレイは消えていく三人からの怨み節の言葉を聴きながら、側にまでやってきたユフィとリーフに声をかける。
「悪いね二人とも、あいつのためにミーニャたちを行かしちゃって」
「いいよ~。これくらいなら私たちでもどうにかなるからねぇ~」
「えぇ。それに、自分たちならば楽勝、ではないですか?」
勝ち誇ったかのようなリーフの顔にスレイをユフィもうなずくと、目の前で水晶の化け物と貸した支配の使徒 ゼルヴィアナを倒すべく挑発的な笑みを浮かべる。
「やるぞ二人とも───ここからは、ボクたちのターンだ!」




