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参戦 ②

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 時は三十分ほど前にまで遡り、アカネからの連絡を受けたスレイたちはこの場で唯一ルーレシア神聖国へとゲートを開けるノクトがゲートを開き、全員でいざ戦いの地ルーレシア神聖国へ、っと大いに意気込みながら向かったのだが、スレイたちは街の中に入ることはかなわなかった。


 もちろん今は人命の危機である状況なので検問などぶっ壊して不法入国をする所存であったが、事態はもっと簡単だった。

 ただ単にルーレシア神聖国の首都に着いたと同時に敵に襲われただけでなく、街の周りを通常の魔物避けの結界だけでなはく、より強固な結界が覆ってしまっており物理的に入ること不可能な状況だった。


 到着早々に戦いを強いられたスレイたちは、向かってくるクリスタルの肉体を持った使徒の分体との戦いに大いに苦戦を強いられていた。


「ウォオオオオッ!!」


 黒幻と白楼の二振りの剣で攻撃をいなしながら懐に潜り込んだスレイは、二振りの剣を十字に交差させるように振るい分体を切り裂いた。だがバラバラに切り裂かれたはずの分体の身体から新たな結晶が産み出され、完全に元の分体と同じく身体を再構成したのだ。


「クッ、またかよッ!」


 これですでに二十を優に越える分体を切り裂いてきたスレイだったが、未だに分体が消えることはないのだ。

 自分を切り裂いたスレイに向かって水晶の剣を突き立て、振り下ろした。


「クソッ!」


 たまらずに後ろに飛んだスレイだったが背後にはまた違う分体がおり、スレイが下がったのを見て水晶の剣を真へと振り抜くが、それをしゃがんでかわしさらには足払いで分体の足を払うと、倒れる分体を蹴り飛ばす。

 するとその先にいた分体とぶつかり粉々に砕けたかと思うと、砕かれた破片がまた増殖したのだ。

 先ほどからこの調子でずっと無限に増殖を繰り返され街の外には水晶の化け物だらけとなっていた。分体をいくら斬っても斬った分だけ増えて、いくら魔法で吹き飛ばしても水晶が一欠片でも残っていればそこから再生されてまた増える。

 その事に苛立ちを覚えたスレイは、遠くで分体と戦っている父フリードに向かって叫ぶ。


「クソッ!ダメだ、また増えた────ッ!ねぇ父さん!暴龍の剣でこいつら全部喰えないのッ!?」


 ダメ元と言わんばかりにスレイが叫ぶと、同じ言うにいい加減にこの使徒の無限増殖が鬱陶しく思っていたらしく、若干キレかかっているような声色でフリードが叫び返して来た。


「殺れないこともないがッ!こいつら全部となるとッ!俺の闘気が全部剣に吸いとられちまうんだよッ!それでも良いってんなら、いくらでも殺ってやるんだがなッ!ってか、お前も聖剣を使ったら一瞬で片付けれねぇのかよッ!」


 っと、フリードが大声で叫び返して来るのだが、元を質せばあれを最初にあの分体を増やしたのはフリードなので、この場にいる全員がお前が何とかしろやっと言いたかったが、それをグッと堪えながらスレイもフリードに言い返した。


「こっちもッ、やれないことはないけどッ!聖剣じゃ分体だけじゃなくて、みんなも巻き込みかねないんだよ、っと!」


 そう、聖剣ソル・スヴィエートを使えば確実に分体を一欠片も残さずに消し去ることは可能だろうが、光の力を使った斬激一つ取ってもその威力は計り知れないし、例え威力を分散することの出来る弓の形態を取っていたとしても、狙いを定めることが出来ずに危険だ。

 このままではどうのしようもないっと、スレイが心のなか叫んでいると偵察と緊急の連絡の時のために飛ばしていたレイヴンが肩に停まり、嘴を大きく開くとそこから声が聞こえてきた。


『お兄さん、リーフお姉さん聞こえていますか!』

「ノクト?どうしたんだ?」

『聞こえていますッ!がっ、余裕がないので手短に』


 レイヴンから聞こえてくるリーフの声には余裕が見られず、苦しい戦いを強いられているのが伝わってきたが、スレイ自身もかなり切迫した状態のため他人事ではいられないのだ。


『実は、クレイアルラお義母さんに言われてずっと初めに砕いた分体の胴体だった分体にわたしのスパローと、ライアさんのセキレイを着けてたんです』

「それがッ!どうしたって、もしかしてッと!?あっぶねぇなッ──風牙・大嵐ッ!」


 ノクトがなにを言いたいのかを察したと同時に、目の前にいた使徒が自分のすぐ横を狙ってはなられた突きを避けると、黒幻に纏わせた暴風の魔力を風牙・大嵐で吹き飛ばしたスレイは、大きく息を吐いているとレイヴンの口から心配そうな声が聞こえてくる。その声の主に向かって一言大丈夫だと告げてから、もう二人へ声を変えて話を戻す。


「それでノクトが言いたいのって、スパローたちが着いてるのがこの増殖する分体の本体ってことか?」

『わたしじゃなくてお義母さんがですけど、本体さえ倒せば他の分体も消えるかもしれません!ですが確証はありませんので、これ以上増える可能性もあります!』

『確証が無くても、やってみるしかありません!』


 それもそうだろうな、っとリーフの声に頷いていたスレイが動体視力を高めるために両目を竜眼へと変え、遠くにいるリーフも闘気によって身体の身体機能を強化する。


 二人は自分のレイヴンとセキレイの案内のもと向かってくる分体を薙ぎ払いながら接近すると、スレイは周りにいる分体ごと雷を纏った業火で、リーフは的確にその一体だけを狙っては技を放った。


「───雷竜砲撃閃ッ!」


「───煌翼一刀ッ!」


 二人の技が同時に分体を切り裂き倒された同時に、周りにいた無数の分体が光の粒となって消滅していく。

 どうやらクレイアルラの推測が正しかったのだと思ったスレイはゆっくりと黒幻と白楼を鞘に収めると、同じように武器を収めたみんなのほうへと歩み寄ると、開口一番にラーレがこんなことを言いだした。


「なぁなぁ、使徒って奴らと戦うといっつもこうなのかよ?よく今まで生きてこられたな?」

「はははっ、場数が違うからね。それに今までに軽く百回くらいは死にかけるのを経験したら、いまさらあんなので死んでられないって」


 笑い話ではすまないことを笑って話しているスレイにラーレが若干引いている。ついでにユフィたちも心なしか少しだけ距離を置いている気がして止まないので、スレイは一度咳払いをしてから街をすっぽりと覆ってしまっている結界を見上げる。

 この結界は魔物避けとして普通の街を覆っている結界とは違い、魔力の他にも微かにだが別のなにかが感じ取れる。もしやと思っていると、ラピスがスレイのとなりに歩み寄る。


「この結界、神気が込められていますね………どのような力かは判別できませんが、確実に使徒がいます」


 元使徒のラピスからのその一言でノクトからギュッと拳を握りしめ奥歯を強く噛み締めている。自分の産まれ育った場所がまさか神の占領下にあったなど知りたくもなかっただろう。

 目に見えて落ち込んでいるノクトを心配するようにユフィがその肩を抱いていると、直後にドォーンッと何かが爆発するような音に全員が驚くと、爆炎を纏った拳をプラプラとさせているライアがそこにいた。


「……神気の結界、私の拳じゃやぶれそうにない」

「当たり前です。そもそも街の結界を拳で破れるはずありませんし、普通の攻撃で破れるような物が大事な街を守る結界に使われるはずはありません」


 無謀にも拳で結界を破ろうとしたライアにクレイアルラが嗜めている横で、ラピスが横を向いて視線を合わせないようにしているスレイをジッと見ていた。

 前にマルグリット魔法国で使徒として覚醒しいたラピスを外へと誘き出す時のことを思い出しながら、スレイさま結界を破っていませんででしたっけ?っと、視線だけで問いかけてきたのでスレイはラピスになんのことでしょうか?っと言う視線を向けているのであった。

 そもそもの話だがアヴィス・ルートゥーを使ったところで神気の結界を破れる保証もないので、あのときのことは絶対に言わないでくださいっと懇願していると、レイネシアを抱っこしていたジュリアがスレイの方を見ながら告げる。


「もしかしなくても聖剣ならなんとかなるんじゃないかしら?ねぇレネちゃん?」

「できるのぉ~」


 やはり出来るのか、っそう思いながら全員の視線がスレイの方へと向かっているのに気が付き、これはやるしかないっと思いながら片手を真っ直ぐ伸ばす。


「我が名の元に顕現せよ 聖剣ソル・スヴィエート!」


 スレイの手の中に黄金の聖剣が顕現すると即座に聖剣を弓へと変化させると、こちらを見ているユフィたちに向けて話を始める。


「これで神気の結界をぶち破るから、ボク先行してあいつらを助けに行ってくるから──」

「ちょっと待ってよスレイくんを一人で行かせたら今度はどんな無茶するか分からないから」

「いや無茶って、そんなしょっちゅうは無茶やっていませんけど」

「この前のルクレイツア先生とグレストリアムとの戦い、忘れたわけじゃないでしょ?」


 それを言われたらぐうの音も出せないスレイは、仕方がなく折れてユフィを連れていくことを了承すると今度はミーニャがスレイに告げる。


「兄さん!私も行くからね!」

「待ちなさいミーニャ!それはお兄ちゃんが許してもお父さんが許しません!」

「父さんがそんな必死にならなくても………いや、兄としてはこれくらい、はやめておいた方が良いな。息子としても恥ずかしいし」


 言われなくてもミーニャを連れていく気は更々無いスレイだったが、父フリードの必死な言葉にスレイだけでなくミーニャたちも少し引いていると、そんなみんなを代表してクレイアルラがフリードとスレイを嗜める。


「フリード、それにスレイ。あなたたちが思っている以上にミーニャは強くなっています。それに、女が愛する人を思って戦うと決めたのですから、あなたたちはただ黙ってそれを支えてあげてください」

「あらあら、ルラもちゃっかり女の顔をするようになっちゃったわねぇ~、善きかな善きかなってね~」

「はぁ………バカなことを言わずにあなたも説得してあげてください。そもそもミーニャはあなたの娘ですよジュリア?」

「今はあなたの娘でも有るのだけど、そうね。ミーニャ、女だって男の人に守られてばっかりじゃダメよ。たまにはこっちからどんどん行きなさい!良いユフィたちもよく聞きなさい、いつも男に主導権を握らせているのはダメよ?夜の方だってそうよ、たまには私たちの方から───」

「やめろ!親のそういう話とかマジでやめろ!後、ユフィたちもメモるな!」


 スレイが思いっきり叫ぶとなにやらメモを書いていたユフィたちが一斉に隠したが、ジュリアがこそこそとみんなに何かを言ったかと思えばキャーキャー騒いでいるので、どうせなにか言っているのだろうっと考えながらもうどうでも良いやっと思いながら弓の形になった聖剣の弦に手をかけて矢を出現させる。


「行くぞ、二人とも準備をして。後衝撃が大きいからみんなはボクの後ろに下がってシールドを張って」

「もう張っていますのでいつでも構いませんよ!」

「こちらも大丈夫です!」

『「クロノスの時の結界も張ってるから安心してやりなさいスレイ」』


 シールドを張ったクレイアルラとミーニャ、それにクロノスを精霊憑依したジュリアが秒針のような杖をトンッと地面を突くと、ジュリアを中心としてみんなのいる場所に巨大な時計盤が現れると、カチッカチッと音をならしていた針がその動きを止める。


「こっちは良いよ!」

「精霊憑依 シルフ!」


 ユフィがフライング・ボードを起動させてその上に乗り、ミーニャも風の妖精シルフをその身に宿すと風を操って上へと浮かび上がっていた。

 それを見てスレイは弓を結界に向けて矢をつがえた弦を強く引き絞る。

 聖剣が闘気と魔力を使って作り出した矢に光が集まると、身体の中からさらに力が抜けて行きくのを感じるがすぐにクロノスの時の結界によって鏃にさらに輝きを増していった。

 あの結界がどれだけの強度を持っているのかは分からないが、いささか力が大きすぎる気がしたのでスレイはレイネシアに語りかける。


「レネ、間違っても街を吹き飛ばさないでよ?ここにはレネのおじいちゃんとおばあちゃんもいるからさ」

『わかったのぉ~!』


 そう答えてレイネシアはスレイの方へと魔力と闘気を返そうとしたが、クロノスの力によって瞬時に回復するので戻さないで欲しいのだが、元々前の戦いのせいで魔力と闘気が回復しきれておらず身体が絶賛不調だったせいで、返してもらえたお陰で大分楽になったスレイはもう一度声をかける。


「行けッ!」


 弓から放たれた矢が障壁とぶつかりあいその衝撃がスレイたちの元にまで走ると、スレイが聖剣を盾に変化させて衝撃を受け止めると放たれた聖剣の矢が結界を破ると、このままでは街に被害を与えてしまうためスレイが矢を操り上空で爆発させる。

 結界に空いた大穴を空けると全員が一斉に街の中へはいると、先行する予定のスレイ、ユフィ、ミーニャの三人がそのまま大空を駆け抜ける。


「スレイくん、アカネとレティシアさんの居場所は分かってるの?」

「二人の場所は分からないけど、魔剣の位置は分かるからたぶんその近くのはずだ」

『「兄さん、もっと早く!」』


 ミーニャが急かすように叫ぶのを聴きながらスレイは全力で飛び、森林公園の方へたどり着くとちょうどそこではアカネとレティシアが、両腕を水晶の剣に変えた使徒とその隣に並び立つユキヤに襲われている状況であった。


「どう言うことだ?」

『「分からないけど、二人を助けなくちゃ!」』


 ミーニャの言う通りだと思った二人は同時に頷くと、スレイは盾のままにしていた聖剣はめた左腕をを真っ直ぐ伸ばし、ユフィは杖の宝珠に魔方陣を浮かび上がらせ、ミーニャは精霊武装のレイピアに風を纏わせる。


「───聖剣よ 我が求めに答えよ」


「───ライトニング・スピアッ!」


『「───大いなる風よ 敵を切り裂け」』


 三人が同時に攻撃を放つと魔剣から闇の輝きを放ったユキヤによって攻撃は防がれたが、これで良い目眩ましになった。

 そう思った三人は地上にいる二人の側にまで降りる。


「アカネもレティシアも、無事みたいでよかったよ~」

『「お二人とも私今、とっても怒ってるんですからね!」』


 ユフィとミーニャ二人にそう声をかけると、等の二人はポカンッとした顔でこちらを見ているだけであったが、こんな状況では仕方ないと思ったスレイは名にも言わずに弓から剣へと聖剣を戻すと、巻き上がった砂塵を薙ぎ払うように聖剣を振るってから二人の顔を見て改めて告げた。


「遅くなってごめんね二人とも、助けに来たよ」

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