次なる戦い
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空間の使徒グレストリアムと使徒の素体なって死んだルクレイツアを初めとした、複数体の使徒と突如として乱入してきたベルゼルガー帝国との戦いを終えてから数日、スレイたちはギルドマスターであるエンネアからの依頼で興国からの援軍がくる数日の間、村の護衛を頼まれた。
ただ護衛と言ってもやることと言えば使徒との戦いの余波によって倒壊した家の修繕や仮設住宅の建設、他にも帝国からの襲撃に備えて興国の騎士団の到着までの護衛、その他にも様々な雑事をこなす便利屋のような作業を行っていたのだがそれも今日までだ。
昨夜興国の首都よりやってきた騎士団より派遣され騎士たちに仕事を引き継ぎ、スレイたちの依頼は完了し目的の物も受け取りを終わったため、次の日の朝早くに一度中央大陸へと戻ることとなった。
「長い間お世話になりましたエンネアさん」
「世話になったのはこっちの方さ。ルクレイツアのバカのことだけでなく、帝国兵からわたしや村のみんなを助けてもらった。わたしらはあんたに返しきれない恩が出来たんだ。ありがとう」
「……ん。村を壊したのはスレイ、だから直すのも当たり前だからお礼はいらない」
「一言余計ですよライアさん。ごめんなさいエンネアさん」
いらぬ一言を言ったライアの頭を押さえつけてエンネアに頭を下げさせているノクト。そして頭を押さえられて必死に踠いているライアの抵抗の言葉はむなしく、ついでにリーフからも頭を押さえつけられると言った始末であったが、これに関してはライアが悪いので誰も止めはしない。
「それで、これからどうするつもりなんだい?」
「まずは中央大陸に戻ってスレイくんのご両親にルクレイツア先生の遺産を預けて、その後は西方大陸に帰ろうかって思ってます」
「帰る前にアニエスさまと合流もしなければいけませんね」
「そうですね。しばらく帰っていませんでしたから部屋の掃除が大変そうですし、ソフィア殿を招待するのはそれが終わってからになりそうですね」
「そもそもの話ですけど、わたしたちどれくらい帰っていませんでしたっけ?」
「……少なくとも二ヶ月は帰っていない、っと思う」
二ヶ月と言われてスレイたちは揃って複雑そうな顔をしているが、実際には三ヶ月近くは経っていたりする。
剣防具の製作にために氷冷大陸から帰ってきてすぐにアルメイア王国に旅立ち、そこでの戦争と使徒との戦い、そして治療を終えてすぐに狼人族の里へ行き、アルメイア王国で行われた勲章授与式を終えてすぐに興国に向かったりと、気付けば今年ももう終わりの日が近づいているではないか、っという状況であった。
「帰ったら、ゆっくりしたいかもな。さすがにもう身体が限界で悲鳴をあげてるよ」
「そうだねぇ~。年の瀬くらいはゆっくりさせてもらいたいよねぇ~」
新しい家で、新しい家族と過ごす最後の一日、そして新たな年の始まりの日くらいは使徒や世界の終わりのことくらいは忘れて過ごしたいと、スレイだけでなくユフィたちも思っている。
それに今年は新しい家族だけでなくレイネシアというかわいい娘までいるのだから、っと全員が揃ってレイネシアの方へと視線を向けると、スレイたちが一斉に自分の方へと視線を向けて、さらにはとても優しい顔をしていることに驚いたが、すぐにへにゃ~っと笑みをこぼした。
その笑顔を前にしてスレイたちは揃って、レイネシアのために絶対に楽しい年末にしようと心に誓っているのだった。
「そう言えば、ラーレは今日もあそこに?」
「あぁ。朝から行ってるよ。全くあのバカ娘は、今日出発するってのに、ちょっと行ってくる何て言って出て行っちまってね。もうすぐ戻って来るとは思うんだが、もう少しだけ待っててくれないかい?」
どうせ急ぎのようは無い、それに当分は来れないのだ旅立つ前に最後の別れ挨拶くらいが終わるまではゆっくりと待つか、そう思っていると荷物を積めたリュックを背負ったラーレがやってきた。
「わりぃな、待たしちまって」
「待ってないよ。それで師匠にお別れ言えた?」
「あぁ。十分だ」
スレイの問いかけに答えたラーレが小さく頷くと、エンネアの方に振り返った。
「今まで世話になったなババア。身体には気を付けてな」
「うるさいよ、このバカ娘………またいつでも帰ってきな。ここはあんたの故郷なんだからな、わたしもルクレイツアもここであんたの帰りを待ってるからな」
「あぁ。また帰ってくるぜ」
エンネアが泣きそうな顔になりながらラーレを抱き締めると、一瞬驚いた顔をしたラーレだったがすぐにその手をエンネアの背に回して力強く抱き締め返した。
「気を付けて行っておいで、わたしの娘」
「行ってきます。母ちゃん」
母娘の最後の包容を見ながらスレイたちは小さく笑ってからその光景を見守っている。
ゲートを開いて中央大陸に降り立ったスレイたちは、街の至るところに装飾がされていることに気がつきまさか先日まで行われていた結婚パーティーの名残か?っと思っていると、どうやら毎年年越しと新年を迎えるに当たって観光客などが多く来るらしく、稼ぎ時ということで祭りを開くらしい、っと毎回のように手土産を渡してくるこの街の親父さんたちから教えてもらった。
祭りの準備をしている街の中を歩きながら、領主館兼自宅となっている屋敷に向かっていると始めて見る祭りを前に眼をキラキラさせながら、あれはなにかとユフィママたちに質問を投げ掛け続けていた。
「しっかし、ここほんとにこの街お前の親が領主なんだな。若様若様って言われてるしな」
「もとはしがない平民の息子だったんだけど、父さんが男爵家を嫌々ついでボクも何だかんだで子爵だし」
「げっ!?お前も貴族かよ!?全然見えねぇ」
「形だけの貴族だよ。領地も無ければ金も自分で稼いだ分しかないし、ここだってちょっと前まで危ない事件があったから金も無いしな」
それも今年あったことだと思うと色々なことがあったっと、他人事のように思えてしまうスレイだった。
しばらく祭りの準備を見て回ってから屋敷へと訪れたスレイたちは、みんなの集まっている場所に行くといつものようにヴァルマリアの突貫を受けて、続いてやってきたリーシャがレイネシアを連れて遊びに行ってしまった。
残されたスレイたちも幼子たちだけででかけるのは、いささか心配ではあったがこの街に変な輩がいないのは知っているので安心して送り出した。
子供たちが出ていったのを見送り、スレイはこの屋敷の主であるフリードとジュリアを前にして話をする。
「スレイ、それにユフィちゃんたちも今回は辛い役割を担わしてしまって申し訳なかった」
「謝らないでよ父さん。ボクは謝られることはしてないよ。ボクはこの手で師匠を殺したんだ、罵ってもらえても構わないと思ってる」
「そんなことは無いわよスレイちゃん。話はみんなから聞いてるわよ。使徒によってよみがえったあいつをスレイちゃんは弔った。ただ、あなたはあいつの最後の願いをかなえてあげたの、あなたがあいつを呪縛から解き放ったの………だからもうそんなことは言わないで」
「ごめん母さん。父さんもごめん」
気にしていたことを両親に許してもらったスレイは、改めて憑き物が取れたような笑みを浮かべていると、両親の視線がスレイたちの後ろ、ちょうどラーレのいる方へと向いていることに気がついた。
「なぁスレイ、その娘が話してたルクレイツアの娘か?」
「おう。ラーレだ。よろしくなスレイの父ちゃんと母ちゃん」
「おっ、おぉ。なんかルクレイツアみたいな娘だな」
「あのバカ………こんな可愛い娘にどんな悪影響を与えたらこうなるのかしら」
フリードとジュリアが頭を押さえながら今は亡き盟友の子育てについて頭を悩ましていると、ジュリアがあることを思いだしてラーレの方を見ながら訪ねる。
「そう言えば、ラーレちゃんはうちの息子に何て告白を受けたのかしら?」
「ちょっと母さん。別にラーレをここに連れてきたの嫁にしたからって訳じゃないからね」
「「「「「「えっ!?」」」」」」
なぜかユフィを初めとして自分の婚約者たちと、話題となっている当のラーレ本人から疑問の言葉を口にされてスレイは頭痛に痛む頭を押さえるようにグリグリとこめかみを押さえる。
「ごめん、全く身に覚えがないんだけど………ボク、いつそんなこと言った?」
身に覚えがないスレイが本気で訪ねると、ユフィたちが揃ってため息を吐くのを見て本当にいつそんなことを言ったんだ?っと自分の行いを振り返ってみたがどこにもそんなことを言った覚えがないため、スレイが一人で困惑しているとリーフが助言する。
「ほらスレイ殿、あのときです。ルクレイツア殿が消える直前に、ラーレ殿を頼むと言ってたではないですか」
「いや、あれって一人残していくラーレのことを心配してボクに面倒をみるように頼んだんじゃないの!?」
スレイが思っていたことをそのまま伝えると、ユフィたちが頭を押さえたり視線を外しながらため息をついたりして、ついでにフリードとジュリアも呆れ顔になってから揃って──
「「「「「「「そんな訳あるか!」」」」」」」
全員から声を揃えてツッコまれたスレイは耳を押さえて後ろにたじろぐと、ジュリアから床に正座するように言われておとなしく正座すると、ユフィたちが一斉に目の前を取り囲んだ。
「わかってましたけども、やったぱりスレイさまは鈍感すぎます!」
「そう言うところです、そう言うところなんですよお兄さん!」
「……天然超鈍感男」
「前々からそう言うところがあるのは知っていましたが、これほどとは………」
「スレイくん、次は無いからね?」
ラピス、ノクト、ライア、リーフ、ユフィの順で罵倒され呆れられたスレイのライフはもうゼロだった。
いや、勘違いしたくらいでそこまで言わんでもよくないですか?っと、床に正座させられながらうなだれてしまっていると、フリードが優しくスレイの肩をポンッと叩く。
「お前も娘を持ったんだから分かるだろうが、父親が娘を頼むって言うことはそれ即ちもはや嫁に出すって意味だ。分かったかスレイお前もいつかは通る道だからな、覚えておくんだぞ?」
「父さん……とりあえず、レネを嫁に出すならボクの全力の拳を受け止めるような男じゃないと許しません」
スレイが大真面目な顔でそう言っていると、ユフィたちから殺気のような冷たい視線を向けられてスレイがブルッと震えさせられると、ユフィがラーレを前に出した。
「はい。それでラーレちゃんのこと、どうするの?」
「それにつきましては……ラーレがどう思ってるのかについて聞きたいんだけど」
「あぁ?オレはまぁ、憎からず想ってるぜ?お前強いし頼りになるし、それに親父が認めた奴だからな信用も出きるしな」
「えぇっと………つまりどういうこと?」
「だから、オレお前のこと好きだってことだ」
恥ずかしげもなく言いきるラーレにスレイは顔が赤くなると、未だに隣にいたフリードが茶化してきたのでスレイは竜人化した腕で全力の肘鉄を鳩尾にいれると、フリードが苦しそうに地面を転がっている。
「まぁ、お前がオレのこと幸せにしてくれるんだろ?だったら一生幸せにしてくれよ旦那さま」
「ふふふっ、それじゃあ婚約成立ってことでスレイちゃん。アレを出しなさい」
「あのぉ~ボクの意思は?」
「あら、お母さんは女の子との約束を破るような娘の育てた覚えはないのだけど?」
それを言われると弱いスレイは諦めたように最後の腕輪を取り出そうとしたそのとき、バンッ!っと大きな音を立てて扉が開かれると、そこには学園帰りなのか指定のローブを羽織ったミーニャが入ってくる。
その顔はどこ怒っているようにも見え、キョロキョロと周りを見回しスレイのことを見つけると、ズカズカッと足音を鳴らしながら歩み寄る。
「兄さん!レンカさんと連絡が取れないんだけどなにか聞いてない!?」
「ミーニャ!?久しぶりに会っていきなりそれかよ!?」
「いいから教えて!」
「しっ、知らない!あいつから連絡こないし、こっちも忙しくてしてないから!?」
鬼のようなミーニャの顔を見てスレイが叫ぶように答えると、じぃ~っとスレイの眼を睨み付けてからヘタリと座り込んだ。
「ふぇ~~~ん!レンカさんに捨てれたんだぁ~~~~~~!!」
年甲斐もなく泣き始めるミーニャを見てスレイたちが困惑し、初対面のラーレがいきなり泣き始めたミーニャを見て引いている。
捨てられたなどと穏やかではないことを言っているミーニャをノクトたちが慰め、スレイもそこに加わろうとしたフリードとジュリアの突き刺さるような視線を向けられた。
たぶんあれは、どうなの?っと言う意味の視線だろうが、誓ってもいいユキヤはそんな軽薄な男では決してないと、親友として言いきれる。
「なぁノクト。たしか、あいつら今ルーレシア神聖国のダンジョンに行くとか言ってたよな」
「えっ、あぁ、はい。神聖国が保有するダンジョンに向かうからと、わたしの両親へのお手紙を渡しました」
ついでにという訳ではなかったが最近ではあまり手紙を送れていなかったため、神聖国に向かうといっていたユキヤたちに手紙を託していた。
「ならダンジョンに潜ってるから分からなかったのか、もしかしたら通信が出来ない事情があったのかしれないし、ミーニャちゃんがフラれるなんてないない」
「そっ、そうですキッと事情があるんです!ミーニャさまをお捨てるなんてあり得ません!もしも本当にそうだったらわたくしたちがレンカさまのあそこを切り落とします!」
ラピスの恐ろしい一言にスレイとフリードが恐怖を感じていると、ユフィとノクトがスレイの黒幻と白楼をジュリアが暴龍の剣を片手に持っていったいなにをしようとしてるのか、分かるからこそスレイとフリードは部屋の角で身を縮めている。
「まっ、まぁ、そのうち連絡来るって」
「そっ、それでも連絡がこなかったら?」
なんだかミーニャがめんどくさいことになってきた。そうスレイが想いながらユフィのプレートを借りて──自分のは前回の戦いで壊れて制作中──ユキヤに渡したプレートに連絡をいれる。
「でねぇなあのバカ」
「私のでもダメなの?アカネかレティシアさんのは?」
「レティシア殿の通信も無理みたいですね」
「こっちもですね」
アカネとレティシアに連絡を取ろうとしていたリーフとラピスがプレートの通信を切る、さてどうしたものかと考えているとラーレがノクトとライアに質問をしていた。
「なぁなぁ、あいつらの持ってるあれってなんだよ?」
「……ユフィとスレイの作った魔道具」
「通信機です。遠くの相手とお話しできる物なんです」
「マジかよ!すげぇ便利じゃねぇか」
「……ん、ちょ~う便利」
「後でユフィお姉さんがラーレさんの分もいただけるはずですよ」
「やったぜ!」
無邪気に喜んでいるラーレだが、ここにいるメンバー以外は特に持っていないので誰と通信するつもりなのか、そう思っているとユフィのプレートに着信があった。
「これって、アカネのだよな?」
「ホントだ………でるね」
ユフィが着信を繋げる。
「アカネ?ミーニャちゃんが連絡ないって心配してるけど大丈夫なの?」
『ザァ………ザザァ…………ザァ………』
ユフィが代表してプレートに話しかけると、聞こえてくるのはノイズだけ。今までこんなこと無かったのに、そう思い再び声をかけようとした瞬間、ひび割れる音の中から切羽詰まったようなアカネの声が聞こえてくる。
『ユ……フィ!ス……レイ!おね……がい……助け………レン、カが………レン……カが使………徒と……って……』
ノイズによって途切れ途切れではあったが確かに使徒と言う単語が出てきたのを聞いて、スレイたちの顔色がかわった。
「ちょっとどう言うこと?アカネ!?アカネ!」
「スズネさん!なにがあったんですか!レンカさんにいったいなにが!?」
ユフィとミーニャがプレートに向かって叫びかけるが、アカネからの返答は帰ってこない。たぶん相手側のプレートが壊れたのかもしれない。
スレイはみんなの方に視線を向けると、全員がうなずき返した。
「悪い父さん、母さん。ちょっとルーレシア神聖国まで行ってくる」
コートと剣を手に取ったスレイと、同じくユフィたちも武器を手にして屋敷を出ようとしたそのとき、ミーニャがスレイを呼び止める。
「兄さん!私も一緒に行かせて!」
「ダメだ。使徒との戦いが危険なのはミーニャも分かってるだろ!」
「分かってるよ……それでも私も行かせて、だって私はレンカさんの彼女だから」
ミーニャの真っ直ぐな眼を見てスレイはことばに詰まらせる。なぜならその眼はスレイ自身がよく知っているからだ。
「……さすがは兄妹、スレイの負け」
「スレイさま、ミーニャさまを連れていきましょう」
「ライア、ラピスまで………あぁ!もうっ、分かった!ミーニャも来い」
「ありがとう!お兄ちゃん!」
妹に弱いのは悪い癖だっと思いながら、これでいよいよ出発かと思ったら今度はフリードとジュリアが待ったをかけた。
「待てよスレイ、ユフィちゃんたちも。オレとジュリア、それもルラも一緒に行くぜ」
「娘の旦那になる子がピンチなら、私たちが行かない理由もないしね」
「あのぉ~、ルラさんいませんけど?」
ノクトがそう訪ねるとガチャリと部屋の入り口が空いてクレイアルラが入ってきた。
「話は聞こえていました。少し待っていてください、必要になりそうな魔法薬などを取りに行ってきますから」
「「「「「「…………………」」」」」」
入ってきてそう言ったクレイアルラ、来てくれるのは嬉しいのだがスレイたちは目を見開いて固まっていた。
「どうしたのですか、私の顔を見て固まって」
「いや、えっ?………あの、ルラ先生?その顔どうされたんですか!?」
ユフィが驚いたように叫ぶのにはちゃんと理由があった。
「先生、いや今は義母さんか?いやこの際どっちでもいいのか?………じゃなくて!まさか父さんとの結婚がいやそんな入れ墨を!?」
今度はスレイがそう叫んだ。そう、今のクレイアルラの顔にはまるでどこかの民族が顔に書く入れ墨のような物があったからだ。
まさかクレイアルラがそこまで追い詰められていたとは………生徒として、そして義理の息子として、それに気付けなかったのは情けない!スレイがそう思っていると今度はユフィが叫ぶ。
「おじさん!何てことをしたんですか!!」
「ホント父さん、最低だな!ほらレネも、じいじ最低って言ってやりなさい!」
「?」
ユフィとスレイがフリードに向かって次々罵倒の言葉を並べ、ついでとばかりにレイネシアにも言ってもらおうとしたが、当のレイネシアは不思議そうに首をかしげるだけだった。
「なにもしてねぇし、ちゃんと合意の上だっての!後スレイ、お前はなにレネにまで言わせようとすんだマジで死ぬは、心が!」
スレイとユフィが叫びフリードが反論すると、コホンッとクレイアルラが小さく咳払いをした
「落ち着きなさい二人とも、これはとある精霊との契約の儀式に必要なペイントです」
「えっ、本当に?父さんが無理やり結婚を迫ったからとかではなく?」
「本当に儀式用のペイントです。それに結婚に関しては私も望んでのことですから、後悔はありません」
本当なのだろうか、そうスレイが疑いの眼差しを浮かべるとさすがに二度目の疑いの眼差しにフリードが怒り出そうとすると、
「お兄ちゃんもお父さんも喧嘩してないで、早く準備してレンカさんのところに行くよ!」
「「はっ、はい」」
ミーニャの怒りの叫びが木霊するなか、スレイとフリードが小さく返事をするのだった。




