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決着の時 ③

長くなりました。

 雷鳴の刃を切り裂かれ次にルクレイツアの剣から放たれようとしていた不可視の刃、それよりも一足早く放った巨大な雷竜の一撃は不可視の刃を放たれないようにするための目眩ましだ。

 あの技に似た技をウィルナーシュの補助の元で一度だけスレイも使ったのとがあるからわかるが、空間を斬り離れた場所であろうとも対象を、斬りたいと思ったその場所だけに斬激を与えるからといって、なにも万能ではないのだ。あの技は斬るべき場所を視認し狙いを定めて放たなければならないのだが、それには繊細なコントロール必要になるのだ。

 それはルクレイツアは一度足を止めて一撃一撃を確実に放っているのがなによりの証拠と言えよう。

 だがこれがルクレイツアの作戦では?っという可能性も合ったかも知れないが、それは確実に無いと断言できるのは今の使われている赤い剣の動きが流れるような動きを主体とした物で、それが足を止めてまで放つ時点で確定しているような物だ。だからスレイは雷竜の軌跡を辿るように走りながら鞘に収めた白楼を引き抜くと、黒幻と白楼に光と闇の二種類の炎を宿した二振りの剣を握りながらルクレイツアの元へと駆け抜ける。

 ルクレイツアの闘気による一刀によって雷竜が消えた瞬間、この戦いを終わらせるための最後の技を放つために黒幻を肩に白楼を右の脇に抱えるように構え駆け抜ける。


「これで終わらせる!───竜皇業炎激ッ!」


 二振りの剣から放たれる炎の輝きが竜を型どった軌跡へと変わると、一気に距離を詰めて抱えていた白楼を横に振り払うと、真っ向から受け止めるべくルクレイツアが闘気を宿した剣を振るうと、白楼と赤い剣がぶつかりあい聖闇の業火と闘気の残滓が飛び散りながら弾かれる。

 そこにスレイは肩に担いだ剣を上から下へと振り下ろすと、ルクレイツアは身をずらして黒幻の振り下ろしをかわすと、白楼を逆手に持ち変えてルクレイツアの足を払うために狙って振るわれたが、それをりも先に足を上げてその一撃をかわしその場で回転したスレイが、剣を横に揃えた黒幻と白楼の回転斬りを放つと、ルクレイツアは剣を縦に構えて受け止める。


「────グッ!?」


 回転斬りの衝撃を受けたルクレイツアが後ろに飛ばされるとそこに向かってスレイは更なる連激を加えると、ルクレイツアが追撃を剣で受け止めると赤い剣の刀身に僅かな亀裂がはしった。


「やるじゃねぇかボウズ!俺の剣をここまで砕くまで成長するなんて思ってもみなかったぜ!」

「師匠の口から、そんな褒め言葉をもらえるなんて正直ゾッとしますけど、今は素直に受け取っておきますよ」


 このまま押しきるとスレイがさらに力を込めるとルクレイツアは今にも折れそうな剣で受け止め続け、連激を受け止め受け流している。普通ならばここまで受け止めた時点で剣が砕け散ってもおかしくはないが、ルクレイツアが類いまれなぬ闘気の扱いにたけているお陰だろうと、敵であるはずのルクレイツアにそんな感想を抱いている。


 ──さすがは師匠………でも、ここで絶対にあなたを越えさせてもらうッ!!


 聖闇の業火の炎をさらに強く輝かせたスレイは更なる連激を加える。

 右から左、上から下へと放たれる高速の連激を的確なついに赤い剣の刀身が砕け、赤い剣の切っ先から先が宙に浮かぶとルクレイツアがスレイを蹴り飛ばした。


「グハッ!?───逃げるなッ!」

「逃げるわけねぇっての!」


 叫ぶスレイに返したルクレイツアは一番近くに刺さっている剣の元にまで跳躍するが、それをさせないために先に空間転移で前に回り込んだスレイが一歩前へと踏み込むと、最後の一撃を放つべく上半身を回し、大きく引き絞った黒幻の刀身に聖闇の炎の竜の頭が形成し突き出す。

 するとルクレイツアはひび割れ半ばから砕け散った赤い剣に闘気を纏わせ、スレイの最後の一撃を迎え撃っつべく振るわれる。聖闇の炎の竜を纏った黒幻と赤い剣がぶつかり合うと、甲高い破壊音を鳴らしながら赤い剣の刀身が砕け散り、炎の竜を宿した黒幻の切っ先がルクレイツアの胸へと剣の切っ先が突き立てられようとした。

 これで決着が着くと思ったそのとき、二人の戦いを遮る声が響き渡った。


「───そこまでだ!動くなッ!」


 響き渡ったのはグレストリアムの物だと気づいたスレイは、あと一歩でもルクレイツアに突き刺さりそうな黒幻を引いて後ろに飛んで下がると、グレストリアムの声のした方へと視線を向ける。


「てっ、てめぇ………はっ、離せっ!!」


 苦しそうに踠いているラーレの身体は背後に回っているグレストリアムの悪魔のような腕で拘束され、その細い首には凶悪な鋭い爪が当てられているだけでなく、ラーレを助けようとしてグレストリアムに返り討ちにあったのかリーフ、ライア、ラピスの三人が身体の一部を押さえて踞り、ユフィとノクトも魔法でグレストリアムを攻撃しようとしているようだが、あの二人の魔法ではグレストリアムだけでなくラーレもその周りにいるリーフたちも巻き込みかねない。

 ならばとスレイがラーレを助けるために動こうとしたそのとき、グレストリアムがスレイに叫ぶ。


「動くなと言ったはずだ!お前たち全員武器を捨てろ!でなければラーレの首をへし折るぞ」


 全員がギリッと奥歯を噛み締めるとチラッとユフィとノクトスレイの方に視線を向ける。

 どうするかと聞いてきたのでスレイは二人に首を縦に降って答えると、黒幻と白楼、それに胸のホルスターに納めていたアルナイルとアルニラムを抜いてルクレイツアの前に投げ捨てた。それを見てここは従うことにしたユフィとノクトも、お互いの顔を見てうなずきあってから杖を投げしてる。


「そこにいるお前たちもだ。早くしろよ」

「……言われなくてもそうする」


 ライアがグレストリアムに答えてガントレットを外して捨てると、リーフとラピスも翡翠と二振りの短剣を投げ捨てた。

 これで全員が武装を放棄したことになるがグレストリアムはラーレを離そうとしないのを見て、スレイたちが口を開こうとしたそのとき、誰よりも先にルクレイツアが喋り始めた。


「おいグレストリアム!ボウズたちは武器を捨てたんだ。そろそろラーレを離してもいいんじゃねぇのか?」

「おっ、親父」

「師匠」


 ルクレイツアのその言葉に驚いた様子のスレイと首を押さえられて苦しそうに踠いているラーレは、思わずと言ったようにルクレイツアのことを見ながらそう呟いている。

 やはりルクレイツアは人の心を失っていないのか、っと考えているとグレストリアムがまるで吐き捨てるかのようにこんな台詞を口にした。


「ルクレイツア………貴様、よもやこれで終わるとは思っているわけじゃねぇだろ?今すぐそこにある剣を取ってスレイとそこの女どものの首を落とせ!でねぇとまずはラーレからぶち殺すぞッ!!」


 グレストリアムの爪の先がラーレの首の皮に食い込むとそこから伝って真っ赤な血が滴り落ちるのを見て、思わずスレイが駆け出しそうになったが、それに気づいたグレストリアムの視線がスレイの方へと向き牽制してきたため動けない。


「グレストリアム………お前ぇッ!」


 悔しそうにキツく拳を握りしめるスレイだが、悔しいのはスレイだけではなかった。


「この下郎がっ!」

「元使徒であるわたくしからしても、ここまでの非道は許せませんッ!」


 リーフとラピスがグレストリアムに向かって叫びかける。


「ノクトちゃん。今はまだ落ち着いて、まだその時じゃないから、絶対にチャンスは来るから」

「わかっています………わかっていますけど、そんなことを言っても我慢できませんッ!」


 ユフィが今にも魔法を使って攻撃を加えようとしているノクトを必死に押さえ込む。だってユフィは信じているから、こんな状況を抜け出すチャンスは絶対に来ることを………


 ユフィたちが必死に自分たちの感情を押さえ込んでいる中ライアだけは、周りの騒音ともとれる叫び声の中でただジッと眼を閉じて瞑想をしているかのようだった。

 その事に不振に思ったラピスがライアの方を伺い始める。


「ライアさま、先ほどからどうなさいました」

「……ん。大丈夫、ただ未来を見てただけ」

「未来視の魔眼………それでいったいどんな未来を見たのですか?」

「……わからない。未来が揺れてる。一つは私たちがグレストリアムに殺される未来、もう一つは私たちの勝つ未来………でも、今も揺れている」


 つまりは確定していない二つの未来が交互に往き来し、今も分からないのだとライアが語る。ならばとその未来を確定させるにはいったいどうすればいいのかと、リーフとラピスが尋ねるがそれはライア自身にも分からないのだという。


「……でも一つ分かるのはもしも私たちが勝利する未来になったとしても、スレイとラーレにとっては悲しい結果になる」


 小さなライアの呟くような声を聞いた二人は、いったいライアが見た未来の光景ではどうなっていたのか、そう思ったそのとき、遠くの場所から突然の呻き声が聞こえてくる。


「ぅっ、グォオオオオオオ――――――――――っ!ルクレイツアッ貴様ァアアアア――――ッ!」


 突然グレストリアムが胸を押さえながら暴れまわり、そしてスレイの側では自分の胸に黒幻を突き刺して踞っているルクレイツアの姿を見て、これはいったいどういうこと―なのだと二人が思っていると、ライアが小さく呟いた。


「……未来が確定した」


 これからいったいなにが起こるのはみんなが死ぬ絶望の未来の予兆なのか、はたまたみんなが助かる最高の未来やってくる前兆なのか、そのどちらなのかはわからないがこれだけは分かる。きっとスレイがグレストリアムを倒すと言うことだ。



 それはグレストリアムが叫び始める少し前にまで遡り、グレストリアムからスレイたちの首を取れと言われたルクレイツアは、スレイが投げ捨てた黒幻を横に凪いでから真下に構えると目の前にいたスレイの方へとゆっくりと歩みよった。


「許せとまでは言わねぇよボウズ」

「構いませんよ。ただ師匠も人の親になったんだってわかって良かったです………ただ一つだけ約束してください。ここで奪う命はボクだけ、ユフィたちは見逃してください」


 出来ることならそうして欲しいとスレイがルクレイツアに頼むと、遠くでユフィたちが必死に叫びスレイにそんなことをしないように説得する声が聞こえてくる。

 だがスレイの覚悟は決して覆ることはないが、ルクレイツアは小さく首を横に振ってそれには答えられないと言っている。


「悪いがそれは出来そうにねぇよ」

「そう、っですか」


 やはり無だろうなっと思いながらスレイは最後の瞬間を待とうとしたそのとき、ルクレイツアは黒幻を逆手に持ち帰るとその刃を手に取った。


「まっ、なにをッ!」

「悪りぃなボウズ、あとは託したぜ。グレストリアムを止めてくれ」

「やめてください師匠ッ!」


 静止を訴えるスレイの声を聞かずにルクレイツアは自分の胸に黒幻の切っ先を突き刺した。


「ぅっ、グォオオオオオオ――――――――――っ!ルクレイツアッ貴様ァアアアア――――ッ!」


 突然胸を押さえて暴れ始めるグレストリアムの腕から離れたラーレは、首を押さえながら苦しそうに咳き混んでいると、ユフィとノクトから声をかけられる。


「ラーレさん!伏せて!───ライトニング・バレットッ!」

「うぉおおっ!?」


 ノクトの声を聞いて頭を下げたラーレは、瞬く間に放たれた雷の砲撃が苦しそうに踠いているグレストリアムに直撃する。


「早くこっちにきてラーレちゃん!───アブソリュート・オバーレイン!」


 無数の魔方陣を展開させたユフィの元にラーレが走り、自分たちの元にラーレが来たのを確認したユフィが待機していた魔法を発動すると、魔方陣から放たれた絶対零度の氷結の雨がグレストリアムの降り注いだ。

 煙が晴れると氷の氷像へと姿を変えたグレストリアムがそこにはあった。それを見てあれで殺れたのかと思ったスレイだったが、突如自分の目の前に踞るルクレイツアが叫んだ。


「まだ、死んでねぇ……ッ!」


 ビシッと氷像にヒビが刻まれ爆発すると中から現れたグレストリアムが、ユフィたちを睨み付けると地面を蹴り接近した。


「死ねッ!小娘どもッ!!」

「「「──────────ッ!!」」」


 一瞬の跳躍で接近したグレストリアムがユフィ、ノクト、ラーレの三人に向かって拳を振り下ろそうとしたそのとき、ガキィーンッと強い衝撃が走った。


「殺らせはしませんよ!」


 盾を構えたリーフがグレストリアムの爪を受け止め、ギリギリと火花を散らしていると円形の刃が放たれる。


「絶対にみんなで生き残ってみせます!」


 グレストリアムが一瞬早く後ろに飛び退くと、そこに走り込んできたライアが炎を纏った拳を放った。


「……みんな生きる未来をつかむまで死なない!──業波爆陣激ッ!」


 放たれた無数の連激に曝されたグレストリアムは、身体中から血を流し炎に焼かれ後退する。そこに翡翠を握ったリーフと双短剣を逆手に握ったラピス、そして双曲刀を握ったラーレが走り込む。


「消えなさいッ!───蒼波閃刃激ッ!」

「あなたはわたくしたちで倒しますッ!」

「死ねよバケモンがぁあああ―――――ッ!」


 三人の連携による追撃を受けたグレストリアムだっが、


「ゥオオオオオオオオ―――――――――――――――――――――ッ!!」


 グレストリアムの砲口と共に放たれた神気によって四人が吹き飛ばされる。

 吹き荒れる衝撃を受けながらもどうにか踏ん張ったユフィとノクトは、支えにしていた杖に魔力を込める。


「よくもッ───ドラゴライズ・インフェルノ・バーストッ!」

「当たってッ!───イーグル・ウィンドッ!」


 炎の竜と風の鷹がグレストリアムの元に直撃しようとした。


「舐めるなぁああああ―――――――――ッ!」


 叫び声と友に横に振るわれたグレストリアムの手刀、そこから放たれた神気の斬激よって魔法が打ち消され、ユフィとノクトもその衝撃で吹き飛ぶ。


 たった一瞬の間にユフィたち全員を相手に圧倒的な強さを見せるグレストリアムを見て、このままじゃ不味いと思い白楼を掴み向かおうとしたスレイの腕をルクレイツアが掴んで止める。


「待てボウズ……約束しろ。必ずお前の手であいつを殺すってなぁ」

「そっ、それは………」

「お前は気付いてたんだろ?俺とあいつの命が繋がっているってことに、だからラーレや嬢ちゃんをグレストリアムと戦わせなかった。それに最後のあの一撃、お前は寸前で止めようとしただろ」

「………気付いてました?」

「誰がてめぇに剣を教えたと思ってやがる?………だから、頼むスレイ。お前があいつを斬れ」


 ルクレイツアの、師のその言葉を受けてスレイた小さく頷き、そして立ち上がると白楼を手放した。

 カランッと音を立てて地面に転がった白楼の音がやけに耳に届くなか、スレイは師匠の願いに答えるべく覚悟を決め右手を前に突き出すように構える。


「──我が名の元に顕現せよ 聖剣ソル・スヴィエートッ!」


 虚空より現れた黄金と白銀の直剣、その柄を強く握りしめたスレイは頭のなかに話しかけてくるレイネシアに無かって一言、行くぞ、そう答えると聖剣に聖闇の炎を纏わせながらグレストリアムの元にまでかける。


 スレイが聖剣を顕現させた瞬間をみたユフィたちは、グレストリアムとの一騎討ちの邪魔をしないためその場から離れるとグレストリアムがスレイの存在に気がついた。


「ようやくそれを使ったかスレイッ!」

「決着をつけるぞグレストリアムッ!」


 グレストリアムの拳とスレイの聖剣がぶつかり合うと、グレストリアムが身を捻り回転するとスレイの腹部を蹴り、弾かれるように身を起こしたスレイに更なる連続蹴りを放ち弾き飛ばす。

 蹴り飛ばされたスレイは聖剣を地面に突き刺して踏みとどまると、背後から感じていた気配を便りに振り向きそこにいたリーフとラーレを見て告げる。


「ラーレ、師匠のところに行ってくれ」

「なっ、なんだよ急にそんなこと!」

「いいから行け!もう本当に合えなくなるその前に!」


 地面を蹴り距離を積めたグレストリアムが拳を握りしめスレイに向かってくる。立ち上がったスレイは聖剣を両手で握りしめると、振り抜かれた拳に合わせるように剣を振るう。

 衝撃が駆け抜け木々を揺らしながら、拳を弾くと追撃をしかけるグレストリアムにスレイは聖剣を敢えて大降りで振るい隙を見せる。


「はっ!決着を焦ったかッ!」

「まさかッ!」

「──────────ッ!?」


 大降りの一撃をかわされた瞬間にスレイは聖剣を弓に変化させると、勝ち誇った笑みを浮かべていたグレストリアムに向かって無数の矢が放たれる。

 それを見たグレストリアムが後ろに飛んで矢を打ち落とすし始める。込める力を抑えて数を増やしたためグレストリアムが難なく矢の雨を突破されるのも時間の問題だ。

 次の矢をつがえると同時にスレイは決断できずにいるラーレに叫びかける。


「行けよラーレ、速く」

「なんで、なんで行かなきゃならねぇんだよ!」

「いいから行けッ!でないと君は一生後悔することになるんだぞ!」

「何でそんなこと分かんだ!あいつが死ぬのなんて自業自得で、あんな奴の死に顔を見るなんてまっぴらごめんだッ!」


 頑なにルクレイツアのところに行くのを拒否し続けるラーレ。こちらもいつまでも弓で抑えてはいられない、速くしなければと焦るスレイは、更にラーレ向けて叫びかける。


「いいかラーレ。人は死んだらそこで終わりなんだ。例え自分を裏切った相手であっても、血のつながらない父親であっても君は、あの人の娘なんだろう!?」

「でも、そうだとしてもあいつは!──親父は、オレたちを裏切って」

「だったらそれを伝えてやれッ!」


 目尻に涙を浮かべて俯いてしまったラーレはスレイの叫び声をハッと顔を上げた。


「その怒りを言ってやれ!その悲しみを言ってやれ!君の口で、君の声であの人に全部ぶつけてやれ!理由なんてなんでもいい、ただ言葉をかわし喧嘩してもいい、罵倒してもいいから、ちゃんと最後の別れを言ってやれ」


 かつて同じ後悔をしたことのあるスレイが必死にラーレに訴えかけると、その真剣な横顔を見てなにかを覚ったのかリーフがラーレの肩を抱いた。


「ラーレ殿、ここはスレイ殿の言うことを聞きましょう」

「だっ、だけど」

「いいから、行きますよ」


 リーフは無理やりラーレの手を取って連れていく。


 それ横目でみたスレイはリーフに対してお礼を言いながら矢を放った。

 放たれた無数の矢を前にしてグレストリアムは空間停止の力を使用し矢を消し去った。


「ハァッ、ハァッ………ハァッ」


 力を使う度に苦しそうにしているグレストリアム、どうやらスレイとルクレイツアがコアを傷つけたのがよほど答えている。

 このまま遠方から矢を放ち続ければこちらが力尽きるよりも前にグレストリアムが倒れるだろう。………だが、スレイはそんな決着は求めていない。

 弓から剣へと形を戻したスレイは、聖剣に視線を落とし聖剣の意思 レイネシアに向かって語りかける。


「レネ。次で決める。今出せる全部の力を込めてくれ」

『うん!わかったのッ!』


 二つ返事で返されたと同時に身体の中からあり得ない量の闘気と魔力が抜けると、軽い目眩がスレイは襲ったがどうにか踏みとどまった。

 聖剣から放たれる黄金の輝きをこの場にいる誰しもが息を飲んでいる。


「決着を………付けるとするか、スレイ・アルファスタ」

「あぁ。決着を付けるぞグレストリアム──さぁ、地獄へ落ちろ」


 聖剣から放たれる黄金の輝きが集束しすると、スレイが聖剣を垂直に構えると続いて現れたるは黄金の炎の龍がその刀身を包み込む。

 それに対するグレストリアムの手刀に神気の輝きが放たれ、巨大な一振の剣となる。

 二人が同時に地面を蹴るとスレイは走りながら聖剣を後ろへと構え直し、グレストリアムは神気を纏った手刀を垂直に構える。


「死ねスレイッ!!」

「死ぬのはお前だ、グレストリアムッ!───龍皇煌炎檄ッ!!」


 突き出された神気の刃と黄金の龍を宿した刃がぶつかり合った衝撃が辺りに吹き荒れた。

 ギリギリと聖剣と神気の刃が打つかり合い拮抗する。


「負けられない、師匠の想いが、みんなの想いが、この剣に籠っているんだッ!」

「想いなど無駄だッ!俺には空間を停止させるの力があるのを忘れたのかッ!」


 グレストリアムが叫ぶとその恐ろしさを身をもって知っているスレイは、力が発動するよりも早く決めなくてはと思った。


「させるかぁああああ――――――――――ッ!」

「終わりだスレイ・アルファスタッ!止まった時のなかで死ねぇ!!」


 叫ぶスレイを嘲笑うかのようにグレストリアムの力が発動させようとしたその時、背後から光が放たれたグレストリアムの力を書き消した。


「なにッ!?」


 いったいなぜ!?グレストリアムがそう思った瞬間、理由はたった一つしか思い付かない。


「悪いな、グレストリアム」

「ルクレイツアッ!貴様ぁああああ――――――――ッ!!」

「行けぇッ!坊主ッ!」


 それの声を聞いた瞬間、スレイは自分の両目から熱い雫が伝っていくのを感じる。


「─────ッ!ゥオオオオオオアアアア――――――――――ッ!」


 その想いに答えるべく吠えたスレイは聖剣を握る手に力を込めると、わずかな拮抗の後に黄金の龍が神気の刃を砕く。


「させるかぁあああああ―――――――――――――ッ!」


 グレストリアムが左手にも神気の刃を発現させそしてスレイを斬った…………はずだった。


「────なッ!?」


 漏れだしたグレストリアムの小さな叫び声、その理由は斬ったと思ったスレイの身体が突然揺らめき、まるで霞のように消えたからだ。


「────見様見真似・朧霞 これは一度お前に見せたはずだ、グレストリアム」


 聞こえてきた声に反応したグレストリアムは自分よりも下にいたスレイに驚きながらも、もう左の剣を降り下ろそうとしたその時、素早く右に回転し攻撃をかわしたスレイが聖剣の柄を両手で握りしめ、返す刃で左下からの切り上げる。

 黄金の龍を纏った聖剣の刃がグレストリアムの身体に食い込んだ。


「やっ、やめ───」

「これで終わりだ。地獄に落ちろ、屑やろうが」


 これが最後の一撃。

 渾身の力を込めた一閃が放たれる。


「──竜王天昇斬ッ!!」

「────ヤメロォオオオオオオオオオ――――――――――――ッ!」


 叫び狂うグレストリアムの声が無視して聖剣に力を込めてたスレイは、聖剣の中に内包する全ての力を込めて振り上げると、聖剣から現れた黄金の龍がグレストリアムを喰らい天へと登りそして爆砕した。



 グレストリアムを倒したスレイは、人の姿に戻ったレイネシアの手を引いてユフィたちのいる場所に向かうと、レイネシアがスレイの手を引っ張ってきた。


「ねぇねぇパパ、あのおじさんはしとなの?」

「違うよレネ。あの人は、ラーレお姉ちゃんのお父さんで、パパの先生だ」

「ねぇパパ。なんでママかなしそうなの?なんで、おねーちゃんないてるの?」

「それはね、もう永遠に会うことができない場所に行っちゃうからなんだよ」


 レイネシアが不思議そうにスレイの顔を見上げている。

 ユフィたちのいるその中心ではグレストリアムが消滅したことによって、体内に残っているコアと身体を構成している神気が消えかかり、肉体を維持できないルクレイツアは虚ろな眼で目の前に座り涙を流すラーレの頭を撫でていた。


「たく……俺の娘が、そんななさけねぇ、顔をしてんじゃねぇよ」

「泣いて、ねぇよ……バカ親父」


 素直に認めずただうつむいて泣き続けるラーレを見て、ルクレイツアは苦しそうにしながらも小さく笑みを作ると、ユフィたちの合間からスレイのことを見つける。

 その視線に気付いたユフィはスレイの方に行くと


「先生、もう時間がないみたい」

「あぁ。分かってる」


 レイネシアの手を離したスレイはゆっくりとルクレイツアの前にまで歩みより、目の前で片ひざをついた。


「悪かったな、ボウズ……お前に、重荷を背負わせちまって」

「いえ。これはあなたの弟子として背負わなければならない十字架です。だから気にしないでください」


 ギュッと握りしめられたスレイの手を見たルクレイツアは、一度眼を伏せてからスレイとラーレの顔を順に見てから口を開いた。


「強くなったな、スレイ……お前は、最高の弟子だった」

「ありがとう、ございます……師匠ッ」

「ラーレ、こんな酷でぇ親父で悪かったな」

「うるせぇ……謝んじゃ、ねぇよ………オレは、感謝、してるんだよ……オレを、助けてくれて、親父の娘にしてくれて……ありがとう」


 スレイとラーレの感謝の言葉を聞いたルクレイツアは、光の粒となって消えていき自分の指を見て時間がもう無いと覚った。


「スレイ。最後に一つ……頼まれては、くれねぇか?」

「なんですか?」

「ラーレのこと、お前に託す………幸せに、してやってくれ」

「なっ、なななななッ!?なに言ってんだ親父!」


 今まで泣いていたラーレが顔を真っ赤にしてルクレイツアに吠えと、スレイはルクレイツアに答えるように小さく頷いた。


「その約束、確かに守ります」

「ふわっ!?てめぇもなに言ってんだスレイ!!」


 今度はスレイに向かってキレるラーレだが、スレイはなぜラーレがこんなに怒っているのかが分からない。

 父親が娘の幸せを願うなど当たり前だ。

 ならばそれを託されたスレイはラーレが成人を迎え自立し結婚するまでは、血の繋がらない兄として見守ろうと固く誓いを立てる。


「お前、絶対になにか間違えてやがるな」


 微妙な顔をしたルクレイツアは今度はユフィたちの方を見る。


「嬢ちゃん、こんなバカ弟子だがいつまでも支えてやってくれ」

「はい。確かに引き受けました。先生」


 ユフィがルクレイツアにそう答える。

 言いたいことを全て伝え終わったのか、ルクレイツアはみんなから視線を外して空を見上げる。


「もうなにも、思い残すことはない………あぁ、良い人生だった」


 その言葉を言い残してルクレイツアの身体は光の粒となり消えていった。

 ルクレイツアが居た場所には、その胸を貫いていた黒幻がカランッと音を立てて落ちる。


 今までそこにいた人が消えた。


「あぁ……おや、じっ………ぅうあ、あぁああああああ――――――ッ!!」


 その事実にラーレは両目からあふれでる涙を何度も何度も拭いながら泣き叫ぶ。

 悲痛の叫びをあげるラーレをノクトたちが優しく慰めるなか、黒幻を鞘に収めたスレイがその場から静かに立ち去ろうとしたのを見て、ユフィが後ろから抱き締めて止める。


「ユフィ、離してくれないかな?」

「ダメ。スレイくん、カッコつけないでいまここでちゃんと泣いて、でないと許さない」

「なんで、そんなこと言うんだよ?」

「いいから。悲しまなきゃ、ダメだよ。側にいるから、私も一緒に悲しむから、ねっ?」


 振るえる手でユフィの手に振れたスレイはその手の暖かさを感じ、ポロポロと両の眼から熱い涙が流れ出る。


「ユフィ………ぅぅっ、あぁ、ぅああああああああっ、うぁあああああああ――――――――ッ!」


 膝を突き師をこの手で斬ったスレイの悲しき慟哭が鳴り響く。


「いいよ。いっぱい泣いていっぱい悲しんで一緒に乗り越えていこう、スレイくんもラーレちゃんも」


 泣き続けるスレイの背中に額を当ててユフィも一緒に涙を流す。

 この悲しみを乗り越えていくために

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