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残された剣を前にして

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 謎のマスクの男の襲撃から一夜空け、村から遠く離れ興国と帝国の国境を越え帝国領の端にある森の中、そこでスレイたちがそれを見つけたのはちょうど朝日が上ってすぐのことであった。

 プレートに写し出されたアラクネの反応を元にたどり着いたそこには、木の幹や地面にはかなりの時間が経っているせいか染み付き乾ききってしまって血の後に、その周辺には無数も魔物や肉食の動物たちの足跡、そして極めつぇけは食べ残された無数の肉片と骨の欠片、それは昨夜の襲撃者が身に付けていた服の斬れ端と細かく切り刻まれたマスクの破片が散乱し、その前にはまるで墓標のように一本の剣が突き刺さっているのであった。


 朝早くから村を出ることにしたスレイは、昨夜に引き続き同行を望んだリーフと、どうしても気になることがあると言って付いてきたラピス、そして心配だから………ではなく、エンネアの指示で同行させられているラピスのよき四人は、スレイが付けたアラクネのから信号を便りにこの場所まで行き、見つけたのはまさに地獄絵図と行った光景であった。


「これはなんとも…………ひどい光景ですね」


 小さくそう呟いたラピスに同調するようにリーフとラーレも頷いていると、スレイはばらばらに切り刻まれた死体の前にしゃがんだ。


「どうにか手がかりを探そう。あまり時間はかけられないから手早くな」


 その言葉を聞いて見てリーフとラピス、それにラーレもこの犯人の手がかりになるものを探し始める。

 死体となった相手に対して一度黙祷を捧げてから、スレイは手に付けていた手袋を外して無数に散らばっている肉片に手を振れてから、その中に落ちていた血がベッタリとこべりついた仮面の欠片を一枚拾いそれをじっくりと観察してから、もう欠片をもう一枚拾って繋げてみていた。


「この仮面に付いている断面からして、剣で斬ったって訳じゃなさそうだな」

「あぁ?なんでお前は、んなことそれを見ただけでわかるんだよ?」

「うぅ~ん、何て言うか剣で金属を斬ると切り口の先が少し山みたいになるんだけど、これにはそれが見られないしそれに剣で斬ったにしては切断面がおかしい、まるで細いワイヤーかなにかで擦るように切断したみたいなんだ」


 拾った仮面の破片を投げ捨てたスレイは水魔法で手を洗ってから手袋をはめ直し、立ち上がろうとしたスレイは仮面の破片が落ちていた近くに、仮面や服の装飾とは別の物が落ちていたことに気がつきそれを拾い、それを見

 てどこか納得したような顔をしたスレイは、自分を殺すべく襲ってきた相手だったが事情があってしたことだろうと思い、遺品の代わりとある意味証拠に一つとしてそれを持っていくことにした。


「こっちはこれ以上なにも見つかりそうにはない…………リーフとラピスの方はなにかあったか?」

「いえ、後らはなにもありませんでした。ラピス殿の方はどうでしたか?」

「こちらは………すみません、少し長くなるかも知れませんので村に帰ってからちゃんとお話しします」


 一瞬ラピスが苦しそうにしながらスレイとリーフから視線をはずしたのを見て、これはなにか有ったと思ったのだが、本人が後でちゃんと話すと言っているので深くは聞かないことにしたした二人は小さく頷きあった。


「他になにも見つかりそうにないし、この場所に長居するのもアレだしもう村に帰ろうか」

「えぇ。そうした方がいいでしょうね。いまのところは魔物も近くにはいませんが、いつ襲われるかもわかりませんので」


 この場に長居しても良いことがないどころか死体を食べに魔物が集まってきたり、ついでにここは一応帝国の領地なので、いつ帝国の人間が現れるともかぎならい。

 なぜそれが悪いかと言うといまの帝国は先の戦争に参加し、さらには開戦前から隣国であるこの興国や神聖国をは初めとして、近隣諸国に対してかなり高圧的な声明を発表し、戦争終結後に今回の件も含めて四十年前からの未だに完済できていない賠償が吊り上げられたのだ。

 そのせいで国民を搾取する道具としか考えていない貴族や王族からは、自分たちの暮らしを守るためにと税の引き上げを行い、そのせいで今までもギリギリの人らしい生活を送れていた国民は更なる重税に苦しみ、今では帝国領内の各地で反乱が起き、それを武力で押さえるために金が必要となり更なる重税をっと、かなり国の情勢が不安定になり国として機能しているかも怪しいともっぱらの噂だ。

 なのでこんなところには長居するのはごめん被りたいのだ。

 それに、この現場をそのままにして人の味を覚えた魔物が増えたりしたらいけない。


「死体は燃やしてから埋めるとしてそっちの剣は回収しておいた方がいいかもな。見たところ結構業物だし、魔物に使われる訳にも行かないし、遺品の方も回収はしておいたから」

「はっ、この死体の主はオレの村を襲った犯罪者だろ?んなもん捨てとけよ」

「ダメだ。これもある意味証拠になるし、それに盗賊や根っからの犯罪者と違ってこいつは自分の信念のためにやったことだろうから。出きることなら丁重に弔って上げたいんだ」


 スレイがそう言うとラーレは勝手にしろと言わんばかりに後ろを向いてしまった。

 それからスレイたちはもう一度死者への黙祷捧げた後、業火の炎によって残った遺体の一部を焼却しゲートを使って村へと帰ることになった。

 村へ帰るためにゲートを開くと我先にラーレが潜り、とれに続くようにリーフとラピスもゲートを潜っていき、最後に残ったスレイはもう一度だけ周りを見回して誰もいないことを確認してから、証拠として持ち帰るために持ってきた抜き身の剣を自分の眼前にまで持ち上げると小さくこう呟いた。


「なんでこの剣がこんな場所にあるんだ?」


 険しい顔をしながら心のなかで、まさかそんなことはあるはずないっと頭の中を過ったある可能性を否定しながらゲートを潜るのであった。



 村に帰ったスレイはリーフとラピスと別れると、ラーレと共に早速ギルドマスターのエンネアにの元へ向かい、あの場所で見たことを説明しすることにした。

 ギルドマスターの執務室であの場所で見たことを話終えると、話を聞いていたエンネアが顎に手を当てながら小さく呟いた。


「ふむ。今回の件はあんたを狙ったってことは昨日聞いたから分かってるんだが、なにか狙われるようなことに心当たりってのはないのかいスレイ?」

「心当たりがあるかどうかと聞かれればかなりの数が有りますけど、今回狙われた件とは全くの別物ですから関係ありませんね」


 まずこれだけは確かなのが、今回の襲撃の犯人は神と使徒の思惑の範囲外、つまりは直接関係してはいないということだろう。もしも今回の犯人が神に繋がりがあるのならこんな村など、昨日襲撃を受けたの段階で地図の上からこの村が綺麗さっぱり消されていたとしてもおかしくはないからだ。

 この憶測に付いては昨日の段階でユフィたちと共に女神アストライアに確認を取り、アストライアも今回の件で神が関わっていることはないとキッパリ否定した………のだが、これはあくまでも今回の襲撃の実行犯がというだけで、実際にあいつに指示を与えていたであろう人物に付いてはわからない。


「そじゃあ次にだが、犯人はどこの誰かに付いては分かっているのか?」

「えぇ。初めは帝国の刺客かとも思っていましたが、昨日のあいつはルーレシア神聖国の手の者だと思います」

「あぁ?あの宗教国家のか?なんでそんなお上品な国がお前を狙うんだよ?」


 そう聞き返してきたラーレに続いてエンネアもそれについては知りたいらしく、二人してスレイの方へと視線を向けている。


「ボクは神聖国、そして帝国が喉から手が出るほどに欲しがっているある物を所持しているからです」

「なんだいそのある物って言うのは?」

「それは言えませんが、昨日の内に神聖国側からアプローチがあったので、今日辺りには帝国から何かしらのアクションがあるかもしれませんが…………とりあえずこんなことをしてくれた方々に連絡して問い詰めてきますから、失礼しますね」


 顔は笑顔だったがその声には微かに怒気を混じらせたスレイは、それだけを言い残すとギルドマスターの執務室を後にした。部屋のなかに残されたラーレとエンネアはと言うと、出ていったスレイに対して、問い詰めるっていったい誰に?っと心の中でそう呟いたのであった。



 壊された貸家戻ってきたスレイはユフィたちを集めると──レイネシアには難しい話なので今はライアとラピスが外で遊ばしてくれている──昨日の件に付いてわかったこと、っと言うよりに預かり知らぬところで勝手に人を巻き込みやがった人たちに事実を確認するためにプレートであるところに通信を入れる。

 数秒の間、待機音が流れたと思ったらすぐに映像が浮かび上がりそして写し出された映像にはソフィアの顔が浮かび上がった。


『やぁみんな。連絡の時間には早いみたいだけどどうかしたのかい?』

「ちょっとあってね。それで早速で悪いんだけどさぁ、ユーシス陛下を呼んでもらっても良いかな?早急にお聞きしたいというか、どうしても問い詰めなくちゃならない案件がありましてねぇ」

『なっ、なんだかよくわからないけど、ちょっと待っててすぐに呼んでくるから』


 画面越しのソフィアは少し怯えたような顔をしながら走り去っていった。

 その理由は言わずもながら、顔は笑っているはずなのになぜか物凄く怖く感じてしまうスレイを目の前にしているからであり、これは逆らわない方がいいと思ったからだったりする。


「あのぉ~、一つ確認なのですがもしもユーシス陛下が関わっていなかった場合は、いったいどうされるおつもりなのですか?」

「安心しなさいリーフさん。今回の騒動には絶対にユーシス陛下も一枚噛んでるさ。ついでにこれを思い付いて実行したのはクライヴ陛下とジャルナさんで、多分事前にこの国の国王には話を通して今頃帝国を潰す計画を綿密に積めてるんだよ。絶対にそうだ」

「どうしましょう。お兄さんが両陛下への疑いを完全に確定してしまっています」

「まぁ、やりそうと言う理由からはして間違いなさそうだし、毎回のように駆り出されちゃったからそうなるよね~」

「ですが実際のところはどうなのでしょうか本当にあの襲撃者はその、ノクト殿には申し訳ないのですが………神聖国の手の者だったのでしょうか?」


 リーフの言葉にノクトが顔を強ばらせた。

 そう、昨日の段階でスレイは今回の襲撃が帝国か神聖国のどちらかといい、そして今日の調査を終えたときには神聖国からだと断言したのだ。いったいなぜ断定することが出来たのか、それを未だに話さないスレイにユフィたちは不振に思っていたりもする。


「それについてはこの後でするよ。ほらソフィアとユーシス陛下も来られたみたいだ」


 スレイがそういうとプレートから写し出された画面の中に、ユーシス陛下とその少し後ろにソフィアが写し出される。


『お待たせ、父上を呼んできたよ』

『ふむ。呼ばれて来てみたはよいが、いったい私に用事とはなんなのかな?』

「単刀直入にお聞きしますが、ユーシス陛下。クライヴ陛下と共謀していったいボクになにさせようとしておりますか?」

『うむ。すまない君の言っている話の意味が私には全く意味がわからない』

『ちっ、父上?いったいどちらを向いて言っているんですか?それとスレイはそっちでなにかあったの?ちょっとユフィ?リーフ?ノクト?』

「ごめんね~。ソフィアちゃんにもちゃんと説明するから、向こうでお話ししよっか~」


 実はこちらに来れないアニエスとソフィアのためにとユフィが新しく作った小型プレートで腕時計のようなそれで通信を始めるのであった。


『いやすまない、クライヴに口止めされていてね。黙っていた方がことはいいように進むと』

「あの愉快犯めぇ~、セカンドの変身機能緊急時以外はアンロックしてやる」


 怒れるスレイは止められない。

 やると言ったからには必ずやってやると心に誓うのであった。


『それでどちらから襲われたんだい?』

「神聖国でしょうね。帝国側からのアプローチはありませんが、近い内にでも間違いなく軍を動かしてくるでしょうね」

『そうか………こちらから仕組んだとは言えなにも知らない君たちを巻き込んですまなかった』

「大丈夫です。これについては後でゆっくりとクライヴ陛下と交渉して、十分な迷惑料をいただきますから」


 スレイがかなり真面目な顔をしてそう言うと、ユーシス陛下の後ろからひょっこりとソフィアが顔を出した。


『事情はみんなから聞いたけど、大変だったみたいだね』

「いつものことだから平気」

『ならいいんだけど、ところで父上はなぜスレイの情報を流したりしたの?今さらだけど、そんなことする必要ないんじゃない?』

『それについてはそうだな。ソフィア、ルーレシア神聖国が国に勇者召喚の儀式の方法を伝えたのは覚えているね?』

『あぁ。覚えてるよ………って、まさか!』

「そう。ソフィアの想像通り神聖国も聖剣を、レネを狙ってきたんだ」


 改めて的が狙ってきたのはレイネシアだと伝えたスレイにみんなが息を呑んだ。


「帝国がレネちゃんを狙ったのはわかりますが、なぜわたしの国がレネちゃんを?そもそもその証拠だって」


 ノクトが信じられないと言った顔をしながらスレイに問いかけると、スッと懐から取り出したある物をノクトに見せる。


「それは、斬られたロザリオ?」

「さっき死体の側で見つけたんだ。ノクトの物とは形は違うけど神聖国のだよな?」

「えぇ。ですがこんなロザリオは見たことがありませんけど確かに神聖国のロザリオです」


 そう言ってノクトはスレイからロザリオを預かってよく見ていた。するとそこにリーフから質問が投げ掛けられた。


「ロザリオにも種類があるのですか?」

「はい。ロザリオにはその人の役職に応じて様々な種類がありまして、わたしが持っているのは見習いのシスターに贈られるロザリオなんです」


 そう言うとノクトはスレイにロザリオを返すと、今度は自分の持っているロザリオを掲げて見せてくれる。

 やはりスレイが拾って来た物と見比べてみてもやはり形が違っていた。


『でもそれが神聖国のってのは確定なんだろ?なんか似た奴とか無かったのかい?』

「そうですね………似ているのであれば神聖騎士団の物と、確か審問官の物でしょうか」

「っと言うことは、その二つの役職を合わせた場に付いている、そう言う可能性が有る方だったと言うことですか?」

「でも話を聞いた限りじゃその謎の役職を持った人、完全に暗殺者みたいだったけど?」

「剣の腕も中々だったし、弓に関しては完全に達人の粋だったからな、惜しい人を亡くしたね」


 改めてスレイがそう言うとみんなが意外そうな顔をしていたのだが、それを突っ込む前にユーシス陛下が口を開く。


『すまないが、私も色々と立て込んでいてね。ここらで失礼させもらうよ』

「陛下、お忙しいなかお時間を取っていただきありがとうございました。ソフィアもこっちの件が片付いたら会いに行くから」

『あぁ。楽しみにしてるよ』


 通信が切れたのを確認したスレイは、プレートを片付けてもう一度ユフィたちの方に振り返った。


「さて、みんなも他になにか説明はいるか?」

「わたしはありません………だけど、まだ信じられません」

「ノクトちゃん。元気だして」

「くよくよしてても埒が明きませんよ。それよりも先にやるのは、スレイ殿が認めるほどの手練れを撃ち取ったものがこの場にいることです」


 落ち込んでいるノクトを気遣いながらも次のことを話し始めるリーフの言葉に、スレイは先ほど見つけて預かっていた剣をみんなに見せるとユフィがあからさまに眉をひそめる。


「ねぇスレイくんその剣、どうしたの?」

「件の死体の側に突き刺さっていた剣だ。ユフィは見覚えがあるよね?」

「うん。だってその剣は───」


 ユフィが答えようとしたその時、スレイがユフィの肩を抱きしめそして自分の方に引き寄せる。その瞬間ユフィは後ろから殺気の塊が飛んでくることを感じ、また誰かから攻撃を受けたことを遅れながら感じ取った。そしてリーフもスレイと同じものを一早く感じ取ったのか、近くにいたノクトを抱きしめて守るようにしていた。


「リーフ!使え!」

「助かります。スレイ殿!」


 スレイが握っていた剣を投げると、リーフは受け取った剣に闘気を流し少し遅れてスレイも空間収納か黒幻を抜くと、闘気と暴風の魔力を流し二人は同時に剣を振るう。


「───風牙・大嵐!」

「───烈震・飛翔閃!」


 漆黒の剣には黄金の輝きを織り混ぜた荒れ狂う嵐が、借り物である紅い剣からは僅かに振動が部屋の壁を切り裂いていった。

 すると少しして部屋の外から途轍もない振動が伝わり、ユフィとノクトは何者かから受けた攻撃をまともに受けていたらと思うとゾッとしていた。

 そんな中でスレイはユフィ掴んでいた手を離し砂塵の舞う外を見る。


「今の闘気、やっぱり」


 スレイは小さく呟くと砂塵の中でたたずむ一つの影をじっと見つめているのであった。

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