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真夜中の襲撃者 ②

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 時は少し遡りスレイが窓ガラスを突き破って外に出た後、襲撃者は完全に標的をスレイと定めたのか先程からスレイにしか攻撃を加えては来なかったが、その代わりにスレイには容赦の無い攻撃が続いていた。

 黒幻の刃で降り注ぐ矢を切り落とし、置いてきた白楼の変わりに握っているアルニラムの銃弾で射ち落としながら前へと進もうとしたが、スレイが前へと踏み出そうとした瞬間に切り落とした矢とほぼ同じ軌道で、先に打ち出された矢に被せるように矢を放たれ、後退を余儀なくさせられてしまった。


「くっ、いったいどんな奴に狙われてるんだよボクは!」


 後ろに後退しながらも足元へと矢が射られるためスレイは鎖やらに後ろに下がり、悪態をつきながらも相手の弓の腕から並みの相手では無いことを身をもって味わっていた。目測ではあるが相手は普通の弓では到底出来ない三百メートルの距離から狙撃や、始めに射った矢と全く同じ軌道に次の矢を放ったり、こんな暗闇の中でピンポイントでヘッドショットを狙ったりしてくるため、この襲撃犯はただ弓の腕が立つというわけではなく確実に達人の腕前を持っている。

 そんな人物に狙われるようなことをした覚えは全く無い、今やマジでこの一ヶ月の記憶をざぁ~っと振り返って見ても、弓を持った相手と喧嘩したことはない──そもそも喧嘩してない。たまに襲ってくる盗賊皆殺しにしたり、店で酔って暴れてる奴を絞めたら次の日に仲間集めてお礼参りしに来たので返り討ちにしたくらいだ──ので全く身に覚えが無いので困っている。

 剣で矢を切り落とし銃弾で矢を打ち緒としたスレイは、このままでは埒が明かないので矢を打ち落とした体勢のまま、自分を矢で狙っている相手に向かってアルニラムのトリガーを引き絞った。


「くらえ!───エアロ・ストライク!!」


 銃口に浮かび上がった魔法陣を弾丸が通過すると、風魔法によって弾丸の回転速度と飛距離が飛躍的に伸びるのだが、弾丸が端に差し掛かったところで見えない障壁によって阻まれ弾丸は地面に転がってしまった。

 こんな小さな村だがちゃんと結界が備わっており、分かっていたことだが弾丸が障壁に阻まれてしまい相手には届かないはずだが、相手はどういうわけか普通にこちらを狙って矢を射ってくるのだ。

 訳の分からない状況にスレイは頭の理解が追い付けないでいると、すぐ目の前に次の矢が迫っていた。


「ちっ、やっぱりだめか………でもそれじゃあどうやってあいつは?」


 悪態をつきながらスレイは目の前に迫っていた矢を切り落としながら心を落ち着かせる。こういうときに焦って冷静さを欠いてしまえば決定的なミスをしてしまうものだ。


「よし、それなら!──シールド・リフレクション!」


 一度落ち着くためにっと言うよりも、スレイが頭の中で考えていることの検証のために目の前にシールド・リフレクションを張ると、放たれた矢が目の前のシールドをすり抜けてスレイの元へとやってくる。


「はっ、そういうことねッ!」


 スレイは剣の腹で矢を上へと払い除けると、力を失って力無く落下してくる矢を掴み取りそこに刻まれていた魔力回路を一瞬で読み取る。


「なるほど、魔力を吸収して自分の力に変換している。町や村を守る結界も魔法によるものだからな、この矢が触れた瞬間にその部分の魔力が吸い取られて矢が通るのか───だったら!」


 スレイは自分のことを包み込むように暴風で結界を造り出すと、相手は暴風の結界を破るべくさまざまな方向から矢を射るが、触れた瞬間に全てを粉砕してしまう暴風の前にどんな矢も効果がない。空間収納から取り出したのは対物ライフル型魔道銃 アトリアのスコープを覗きながらスレイは自分を狙っている相手の顔を確認すりが、相手はフルフェイス型のマスクによって顔を隠していて分からなかったが一番知りたかったことは知れたので良しとした。


「さぁ。反撃の時間だ!」


 スレイが雷の魔力をアトリアの銃身に流し込みながら暴風の結界を解くと、スコープ越しで相手が弓を引くのを見てスレイがタイミングを会わせるようにトリガーを引き絞ると、銃弾が打ち出された瞬間に轟音と風圧によって地面がめくり上がり家を揺さぶりながら放たれる。

 地面を揺らしながら放たれた弾丸の直線上には相手が放った矢が、村の結界に穴を空けてこちらへと向かってくるところであった。スレイが狙ったのは相手が結界に穴を空ける僅かな瞬間を狙って、今まで好き勝手にこちらを射ってきた奴に最大の一撃を与えるためであった。


 襲撃者の元に放たれた弾丸が向かって飛んでいくと、木の上に立っていた襲撃者が飛び降りた次の瞬間にアトリアの弾丸が今しがた襲撃者のいた場所と吹き飛ばした。

 風圧で体勢を崩しながらもどうにか無事に地面に降り立った襲撃者は、次の矢を掴むべく背中の矢筒に手を伸ばし矢を手に取ろうとしたが、先程の弾丸で弓が壊れていた。これではこれ以上の攻撃は不可能だと思ったのか、この場を去るべく踵を返そうとしたそのときだった。


「見つけたぞ!」

「────ッ!!」


 襲撃者が振り向くとそこには上段に構えられた黒幻が振り抜かれると、一歩後ろに下がり空を切ったスレイに向かって蹴りを放つと、スレイはそれを魔道銃を握った左腕で受け止めようとしたそのとき、相手の靴の裏に細かい針のような物が光ったので空間転移で後ろに下がると、蹴り終わり体勢を整えた襲撃者が腰に差していた剣を抜き、後ろに下がったスレイも黒幻を正眼で構えると二人の間で闘気による鬩ぎ合いが行われると、スレイは気を張りながら襲撃者を観察していたそのとき、その手に握られている珍しい剣に思わず声を出してしまった。


「ククリ………いや、その形状からしてからしてマチェーテの類いか?」


 いやそもそもマチェーテは武器としても使われるが、もとは農業や林業で使われているもので、森に囲まれたこの地域なら有用性は高いかもしれないが、それにしては刀身がかなり分厚く刃には僅かだが刃文も見えるので、あれはマチェーテとは違うものだと言うことが読み取れる。


「確か、あれは………思い出した、あれはドランドラの剣鉈か」

『ほぉ。貴様、この刀を知っているのか?』


 これが相手側からの初めてかけられた言葉だったが、どうやらあのマスクは声を変える魔道具のようで聞こえてきた声は男か女かの判別はつかないが、フード付の黒いコートに白いズボンとブーツ、それに体格から見ても相手が男であることはわかった。


「友人にドランドラ出身の人がいましてね。その人から教えてもらったんですよ。向こうで猟師が木の枝を伐ったり護身用に使われるものだってね」

『だが時としては仕様と外れた使い方をすることもある。このようにな!』


 剣鉈の刀身に手を添えながら地面を蹴り突っ込んでくるのでスレイは黒幻を構えながら迎え撃つ構えを取ると、襲撃者の男は一拍の内に五度の突きを放ったが、スレイの動体視力をもってすれば見きれないほどのものでもなかったそれをかわし、黒幻の刀身で受け流しながら相手に向かって問いかける。


「お前の目的はいったいなんだ!どうしてボクのことを狙う?ってか顔を見せろよ、もう仮面はあいつら夫婦だけで良いっての」

『何をいっているかは分からんが、襲われる心当たりが無いとは言わせんぞスレイ・アルファスタ』


 名前を呼ばれたスレイは、これはなにか不味いことに巻き込まれているようだっと思ってしまったことを察したが、巻き込まれるにしてもこの大陸に来てから特に問題を起こした記憶がないので困っていると、相手がご丁寧に教えてくれた。


『私がここに来たのは貴様が不当に持ち歩いている物があるな。それは貴様のような物が持っていて良い物ではない!即刻我らに明け渡せ!』


 物、そのワードだけでスレイはようやく今回の襲撃の真相を理解することができたのだが、それでも一つ問題があるとすればどうしてここに来ることがわかったのか、スレイたちの予定を知っている者など限られた人しか知らない………っということはだ、今回の襲撃はその人が仕組んだこと。

 こう言うのはあれだが、心当たりが二人ほどあったので多分確信犯だろうなぁ~っと思っていた。


「へぇ~、そういうことか………それじゃあ教えてくれたついでに君はいったいどっちに雇われたんだい?」

『いえるわけなかろう』

「そうだよね。まぁどうでもいいことだよね。あなたを倒して直接聞き出せばいいことだし」

『貴様………私を倒すと本気でいっているのか?』

「えぇ。その通りですよ」

『そうか。ならばやってみろよ!』


 襲撃者が山刀による高速の連激がスレイへと振るわれると、黒幻の刃がそれを全て打ち払うと返した刃で相手にむけて斜め下からの切り上げを振るうが、一瞬早くそれに反応した相手が後ろに身体を傾けてかわすと、黒幻を振り上げた体勢のままアルニラムの銃口を真っ直ぐ向けると、相手はスレイがトリガー引き絞る前に後ろへと飛び弾丸が打ち出されると山刀の刃がそれを切り捨てる。

 弓の腕だけでなくどうやら剣の腕も立つ相手を前にして、黒幻を振り上げながら地面を蹴るスレイは自然と小さく口角をあげながら相手の剣をさばいていた。久しぶりに純粋な戦いを楽しめるかと思っていたスレイだったがなんだか村の方が騒がしいと思い、一瞬だけ視線をそちらへと向けると村に明かりがついていた。


「あぁ~、さっきのアトリアの銃撃で起こしちゃったかな?」

『ちっ、人が集まるのは不味いな』


 スレイと同じように村に明かりが灯ったのを見た襲撃者が小さく舌打ちをすると、スレイの黒幻の刃を弾き返し後ろに飛ぶといつのまにか持っていたナイフを投擲すると、黒幻で切り落とすべく振るうとナイフの切っ先が剣の刃に触れた瞬間、ボンッと爆発を起こして剣を弾いた。


『この勝負、預けるぞ!』

「くっ、ナイフの刀身に爆薬をっ!?」


 爆発の威力は大したことはなかったが発生した煙と音で一瞬だけ怯んでしまったが、すぐに体勢を立て直して襲撃者を追おうとした。


「あっ、おい待て!」


 魔法で夜目に強くなっており襲撃者の背中はまだ確認できる。もしも見失ったとしても魔法で探すことも、相手がそれほど離れていなければ気配を追うことも可能なのでなにも問題はないし、念のためにアラクネを付けておいたのでもはや逃げるなど不可能だ。


「さってと、あいつはどこにいったかな?」


 懐からプレートを取り出して逃げた襲撃者の居場所を確認しようとしたそのとき、背後から草を踏みしめ走ってくる音が聞こえてきたので、ユフィたちかもしくはギルドの誰かが来たのだろうと思った。

 先程のアトリアの銃撃の件もあるので、先に事情を説明することにしよう振り返えろうとしたそのとき、剣を振るったときに聞こえてくる独特の風斬り音が聞こえスレイは踵を返しながら黒幻を斜め下から振り上げると、スレイの黒幻と一振の剣がぶつかり火花を散らした。


「─────ッ!ラーレ!どうして攻撃してきた!?」

「─────ッ!スレイ!てめぇ腑抜けやろうがなにしてやがる!」


 剣の刃を重ね合わせたままの状態でスレイは、自分の眼前でショートパンツに胸元から上が全くないインナーとかなりの薄着に腰には手に握っている曲刀と同じ剣が下げられたベルトをつけたラーレを前にすると、二人は自分が剣を向けた相手が敵ではないと分かるとそろって剣をおろした。


「何してるんだラーレ、こんな遅い時間にそんな格好で、子供は早く寝なさい!」

「てめぇはオレの母親か!」

「君くらいの妹がいるからついね。取り得ず女の子が肌を露出するのはいただけませんのでこれをちゃんと着なさい!」


 空間収納からマントを取り出しラーレにかけて上げるために一度黒幻を鞘に………戻そうと思ったが、どうやらあの家を出るときに鞘を投げ捨ててしまったので仕方がないと思いながら地面に突き刺し、ラーレの肩にマントをかけようとすると、ラーレがマントをひったくりそしてスレイに投げ捨てた。


「寒かねぇよ。んなことよりも、オレの村を攻撃した野郎はどこ行きやがった?」

「逃げた。取り敢えず後を追うことはできるから」


 プレートを取り出そうとしたそのとき、後方からスレイの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。


「スレイくん!無事?また無茶とかしてない?」

「スレイ殿!あいつは逃げたのですか?」

「あぁ。平気………なんだけど、なんで開口一番それなの?」


 ユフィのその言い方では、まるで毎回のように無事じゃ済まないことに巻き込まれているようだと思っている。


「まぁまぁ、いつものことなんだからぁ~。あっ、それとリーフさんから預かった剣と、こっちに来るとちゅうで拾っておいた鞘返すね~」

「おっ。ありがとうユフィ。リーフも白楼を持ってきてくれて」

「いえそれほどのことはありませんでしたが………スレイ殿よくその剣を降れますよね?」

「慣れだよ、慣れ」


 どうやら白楼はリーフには重すぎたらしくゲンナリしているのを見ながら、ユフィから黒幻の鞘と白楼を受け取ったスレイは腰に帯剣のベルトを巻いて剣を下げているとラーレがスレイに話しかける。


「そんで、逃げた野郎はどうするんだ?まさか、このまま何て分けねぇよな?」

「なわけないだろ?ちゃんと追えるし………今日はもうやめよう。明日でも奴は追えるし、先に村の人に説明しなくちゃな」


 スレイが落ちていたナイフを拾って村に返ろうとすると、ユフィとリーフもフッと笑ってからその後を追う。


「なっ、おい!」


 先を行く三人から少し遅れてラーレも走って後を追う。

 ───さて決着は明日ゆっくりと付けようじゃないか。

 そうスレイは思いながら村でこの騒動とアトリアの砲撃で叩き起こされた村の住人と、冒険者ギルドのエンネアにどう説明しようか、スレイはその事を考えながら村に帰るのであった。




 暗い宵闇の中、微かな月明かりに照らされながら仮面の男は自分の側に生えていた木の幹に強く拳を打ち付けた。


『スレイ・アルファスタ。クソッ!この俺が標的を殺せなかっただと!ふざけるなよ!!』


 男がもう一度拳を打ち付けると木々が揺れると、落ち着いたのか男が木の幹に背を預けてゆっくりと座った。


『俺はいったい本国にどう説明を………』

「貴様のような三下が、あいつに勝てるはずがない」

『───ッ!?誰だッ!!』


 男が立ち上がり様に剣を抜いて辺りを警戒するが、人の姿どころか気配すら感じないことから一瞬で気が抜けてしまった。


『………なんだ、気のせい───』


 男の次の言葉は永遠に聞こえることがなかった。

 なぜなら男はもう既にこの世にはいない。正確にはたった一瞬で男は切り刻まれ、文字通り物言わぬ肉塊へと姿を変えてしまったからだ。


 人の姿をとどめれないほど細かく切り刻まれた男のすぐ側に、薄汚れたフード付のマントを見に纏った一人の男が立ち、自分が殺めた人だったそれを見下ろす。


「おやおやおや、そのような物を見て感傷にでもひたっているのですか?」

「まさか、そんなわけない」


 マントの男の背後に突如として現れた赤毛の男はが小さく、そうですか、そう呟いたのを聞いてマントの男は、腰に刺していた剣を抜きまるで自らが殺めた男の墓標にでもするように紅い刀身の剣を突き刺した。


「おや、よろしいので?それ、かなりの業物ですよ?」

「かまわねぇよ、どのみち今の俺には必要ねぇ物だ。それに………」

「それに?なんですか?」

「ふっ、俺がここにいることをあいつらに教えるためにな」


 マントの男が暗闇の中へと姿を消すと、赤毛の男口元を吊り上げながら同じように消えていくのであった  


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