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家族の再会、そして頼まれた依頼

 前回のあらすじ、狼人の里にたどり着いたと同時に槍を向けられました。以上!


 等と言うバカなことを考えている場合ではなく、もしかしたらアニエスの両親のいる里とはまた別の里にでも来てしまったのかもしれないと思いながら、スレイは自分たちを取り囲んでいる狼人族の人数を確認しながら非殺傷用の弾丸を込めた魔道銃を抜き、それにつられてリーフとラピスが剣と短剣を鞘ごと抜き、ライアもガントレットを構えた。心配そうにしているレイネシアとスーシーを守るためにユフィとノクトも杖を取り出しと、アニエスは子供二人を守りために抱き締める。

 最後にテオドールたちも武器を構えようとしたところで、狼人族の中からたぶん見知った──顔が狼なので判別は難しいので──狼人族の男性でアニエスとスーシー父マーカスだった。


「まってくれ!彼らは違う!うちの娘とその連れだ!武器を納めてくれっ!!」


 マーカスの登場によって槍を納めてくれた狼人族たちを見て、スレイたちも構えていた武器を下ろして警戒を解いたはいいが、なぜこんなにも敵意を剥き出しにしている──武器は下げられたが向こうはまだ信じきれていないのか殺気を向けられている──いったい何がどうしてこうなっているのかを考えていると、マーカスがアニエスとスーシーの名前を呼びながら駆け寄ろうとしたが、それよりも先にアニエスがマーカスに摘めよった。


「お父さん!なんでいきなり囲まれたりするのよ!なにがどうなってるのかちゃんと説明して!?」

「おっ、おぉ………久しぶりにあった娘が世知辛い………なぜだ?」

「当たり前でしょ!娘が出来たんだから母になると女は強くなるのよ!」

「なっ、ななな、なにぃいいいい――――――――――――ッ!?」


 バッとマーカスがスレイの方へと降り返ると、説明がとても面倒なんだよな~っと考えながら、スレイはレイネシアにこっちへ来るように手招きをしてこっちにこさせると、大きく口を開けながらスレイとアニエス、そしてレイネシアを指で指しながらふるふると震えていた。


「えぇっとですねぇ、ボクとアニエス………ではなくアニエスさんの実子と言うわけでなくてですね。ちょっと複雑ではありますがボクたちの養子みたいなものです。後ボクの隠し子とかでもないのでご安心ください」

「いっ、いや………さすがに一ヶ月会わないだけで産まれるとは思っていないし………君の実子でも歳が歳だから」

「わかっていただいて助かります………さぁ、レネ。アニエスママのお父さん、レネのおじいちゃんだよ。さぁ、挨拶して」

「はぁ~い!おじーちゃん!れーねしあです!よろしくです!」

「あぁ。マーカスおじいちゃんだ。よろしくな、レイネシア」


 レイネシアの笑顔でマーカスおじいちゃんは陥落、犬顔なのにもかかわらず情けないまでにでれぇ~んとだらしのない顔を見てアニエスがちょっとだけ引いていると、むぅ~っとした顔のスーシーがマーカスの元にまでやってくる。


「パパ!スーもいるのに!レネちゃんばっかりデレデレしちゃ、メッ!」

「おぉ~、スー!悪かった、パパが悪かったから怒らないでくれ」


 やはり父親というには娘に弱いのだと思いながら、スレイもだんだんとレイネシアに弱くなっているので人のことは言えない。


「まぁみんな、私に付いてきてくれ。妻にもアニエスとスーに早く会わせてあげたいからね」


 マーカスがスーシーを抱き上げて歩き始めると、スレイたちもそれに付いていこうとしたところで、テオドールたちが遠慮するように立ち止まっていたので、みんなに先に行くように言ってから三人の方に行きどうしたのかを聞いてみることにした。


「どうした、来ないのか?」

「いや、僕たちはお邪魔みたいですし、勝手について来たので今日は遠慮します」

「それにみたところ泊まれそうなところもなそうですから、俺たちはここらでも借りて野宿でもしますよ」

「それなら冷えるといけないし薪とか幾つか置いてよ。あと食料とかが入ってるリュックも置いてくから好きに使って良いからな」

「ありがとうございます!師匠!」


 空間収納から一通りの食材が入っているバックと、薪の束を幾つか取り出して三人に渡してから先に行ったユフィたちを追っていく。その際に何人かの里の住人とすれ違ったが、全員が警戒されというよりも、なんだか怖がられているような感じがした。

 そして、先ほど槍を向けてきた人たちも手が震えていたことを思いだし、これは何かあるのかもしれないと思いながら少し小走りで歩いていくと、一つの家………っというか地球での遊牧民の移動式住居のような物の前で待っていてくれたユフィがスレイに向かって手を降っていた。


「あれっ、テオくんたちは?」

「三人ともキャンプするって、それよりこれって何て言うんだっけ?」

「さぁ?忘れちゃった」


 まぁそんなことはどうでも良いのでスレイとユフィも中に入ると、外から見たときは先に入っていったみんなと入ると手狭になりそうだと思ったが、意外にも中はかなり広く作られているの住人ほどが入ってのそれほど狭いとは感じられなかった。

 そんな家の中ではみんなが地面に座り、奥にはマーカスとその隣にはアニエスに似た女性が座っており、その腕の中にはスーシーが安心しきった様子で座っていた。女性がスレイの顔を見ると、一度スーシーを膝の上から下ろしてペコリと頭を下げていた。


「初めまして、あなたがスレイさんですね?」

「はい。初めましてスレイ・アルファスタと申します」

「私はアニエスとスーシーの母で、狼人族のクロエと申します。あなたのことは主人や娘たちの手紙から聞き及んでおります。娘たちを救っていただいただけでなく、主人までも命を救われたとか」

「あぁ、いいえ、そんなことはありませんよ。どうか頭をおあげください」


 始めっから好印象なのはありがたかったが、自分の彼女の母親に頭を下げられるといろんな意味で気まずいのでどうにか頭を上げてもらい、スレイも座ろうとしたらみんなが中央を開けてくれたのでそこに腰を下ろす。


「それでスレイさん。あなたうちのアニエスと婚約してくれたそうですが」

「はっ、はい。その、ご挨拶が遅れてしまいまして申し訳なく思っておりまして」

「ちょっとスレイ、別に責められてる訳じゃないんだからシャンとしなさい」

「こら、アニエス。自分の主人になんて口の聞き方をするの?ごめんなさいね、昔からこの子は気が強くて、子供の頃なんて男の子に混ざって草原を駆け回ったり──」

「お母さん!いつの話をしてるのよ!!」


 アニエスがみんなの自分の恥ずかしい?過去を暴露されて大慌てで止めようとしているのを見て、みんながクスクスと小さく笑いをこらえている。


「ちょっとあんたたち、笑う必要ないじゃない!」

「申し訳ありませんアニエスさま」

「想像してみたら思っていたよりもよく想像できてしまいしたからつい」

「……ん。ワンパクそうだけど可愛い」


 ラピス、ノクト、ライアの順での感想を漏らしていると、アニエスがプルプルと震える拳を掲げながら怒りのあまり犬歯を向けている。


「アニエス殿、レネの前でそんな姿はよしてくださいよ?」

「まま、メッです!」

「うぐっ、分かってるわよ」


 リーフにたしなめられ、娘のレイネシアからのメッを受けて怒るのをやめたアニエスだった。


「スレイさん、そして皆さんもこんな娘ですが、どうかよろしくお願いします」

「はい。アニエスはボクが、いいえボクたちが幸せにします」


 アニエスの両親からも正確な交際を認めてもらったスレイたちは、ようやく落ち着いて話が出きるなと思いながら、どうして先ほど槍を向けられたのかと聞く。


「ごめんなさいね。以前襲撃があったときも同じような日で突然だったからね。我々も未だに気を引き締めているんだよ」

「まぁ。いきなりこんな大人数で来れば、そうなりますよね」

「皆には明日にでも私から説明する。今日はもう遅いしここに泊まってくれ」

「それは助かります」


 行きなり押し掛けて来たが今夜一晩泊めてくれるということだったが、世話になりっぱなしというのも申し訳無かったのでスレイたちで夕飯を作るのであった。



 次の日にはスレイたちがマーカスとクロエによってスレイたちが里のみんなに向けて正式に紹介されたのだが、やはりまだ警戒されているのか目を合わせてはくれそうになかったので、当分はこの里に滞在する予定だったので気長に受け入れてもらおうと思っていると、その日のうちに里の族長がスレイたちを訪ねてやってきた。


 族長は真っ白な体毛を持った老狼といった感じで、その真っ白で大きな尻尾を見たレイネシアが手を伸ばしてもふもふしたそうにしていたが、そんなことさせられないのでスレイが捕まえて膝の上でガッシリとホールドしている。しかし、まさかとは思うが、族長直々に里からでていけといわれたるのかと思い、少し身構えているとどうやらそういうわけではないらしい。


「お客人にこんなことを頼むのは忍びないんじゃが、実はそこにおるマーカスより。皆様は冒険者だとお聞きしました」

「えぇ。そうですけど………いったい何があったんですか?」


 とりあえず追い出されることだけはないので安心して胸を撫で下ろしてから、スレイたちは改めて話を聞いてみることにした。


「この近くに魔物が出現しておりまして、最近では村の作物や家畜にまで被害がありまして………このままでは私どもも餓えてしまいます」

「確か放牧でしたよね?」

「えぇ。この時期は魔物の繁殖時期だから毎年のように襲われてたわ。まぁ、今年は本気で死活問題だからね」

「そうみたいだねぇ~、さっきちょっと見たけどまだ子供が多いみたいだったし」


 先ほど少しだけ里の様子を確認させてもらったが、やはり家畜や畑は一から作り直しているらしくそこまでの数が揃っていないとは思ったが、そういう理由だったのかと思う一方でこれからこの地方も冬になると厳しいものになるのは目に見えている。


「大まかでも構いませんので魔物の種類と数なんかを教えてください。さすがになんの情報もないまま戦うのはちょっと」


 魔物とは言ってもこの近くだけでもどれだけの種類がいるかも分からない。中にはそれを全て倒すとなるとどれだけの時間がかかるかさえさだかではないので、数は分からなくても種類だけでも教えてほしい。


「それでしたらゴブリンとオーク、それにオーガ等がよく現れます。他にもブラッディー・イーグルも」

「イーグル系もいるとなるとちょっと面倒だけど、なんとかなりますね」

「……ん。それじゃあ誰がいく?」

「あっ、私とノクトちゃんは用事が出来ちゃったからお留守番するね~」

「何かあったのですか?」

「実は、里の人たちのためにポーションを作ってくれないかと、クロエさんに頼まれまして」

「今作れる人がいなくて足りなくてね、ちょっと二人に作ってもらえないかって頼んでみたの」


 そういう事情があるのならば仕方がないのだが、パーティーから二人も魔法使いが抜けると言うのは


「そうか。まぁ、聞いた魔物だけなら二人がいなくても問題はないけど、念のためにラピスが残ってあげて。討伐はライアとリーフでいくからさ」

「はい。分かりました」

「えぇ。準備をして来ます」

「……了解。ちょっと待ってて」


 魔物狩りに行くために鎧とガントレットを着け始めるリーフとライアを横目に、スレイも空間収納からいつものコートと黒幻と白楼を取り出したベルトに下げると、レイネシアがちょんちょんっとスレイのコートの裾を掴んで引っ張っていた。


「どうしたんだレネ?」

「パパ~。レネもいく?」

「いやレネもママたちとお留守番。今回は使徒が相手じゃないからな。いい娘でお留守番してたらパパが作ったお菓子をあげるからな?」

「わぁ~い!やったぁ~!」


 レイネシアが嬉しそうにピョンピョン跳ね回っているのを見ながらスレイは小さく笑っていると、リーフとライアの準備が出来たらしいのでスレイたちは討伐に向かおうとしたところ、テオドールたち三人も着いていくと言い出したので一緒に行き、近くの森や平原にいたゴブリンやオークを一通り倒し終えたスレイたちは、思いの外早く片付いたので近くにいた食べられる魔物を数匹狩って戻ると、肉に餓えていた里の人たちにとても喜ばれたとだけ言っておこう。

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