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時の精霊と暴虐の竜

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 それはスレイたちが教会へと向かっている途中のこと、さすがに分体の数が増えてきているせいで近いと思っていた教会までの距離がかなりあった。


「クソが、おいヒロ。お前の言ってた道を使ったらこんなにも使徒がいやがるじゃねぇか!しかもこいつら引きずってるからうまく戦えねぇし、マジで面倒じゃねぇかよ!あの十字架型の魔道具を使って放置してけばよかったじゃねぇかよ!!」

「そんなこと言うなよ!こんな状況でこいつら置いてって殺されたら目覚めが悪いだろ!それに輝ける十字架は発動するために消費する魔力が多いし、前に造った完成品はリーフたちに粉々に破壊されて使えないし、今あるのは費用を押さえて造ったスケールダウンモデルなんだから使えないんだよ!ってか戦ってるのボクだけなんだからめちゃくちゃしんどいんや、運んどるだけのてめぇは我慢しとけや!ぶっ殺すぞ!!」


 なぜかエセ関西弁を喋りながらぶちギレているスレイは、遠距離の攻撃手段が魔法しか使えず刀も振るえないユキヤの代わりに──二挺一対型魔道銃 カルトス&ポルクス──を久しぶりに使い、使徒の分体の眉間を太陽光収縮式特殊弾で正確に撃ち抜いているのだが、フルオートのサブマシンガンをセミオートで使い次から次へとやって来る分体を一発で仕留めているのだ。

 しかも相手は魔法が効かないからと言うことで造るのがかなり面倒な特殊弾を惜しげもなく使い、連続射撃を主体とする銃で単発射撃をするだけでなくなど確実に一発で倒さなければならないと言うプレッシャーまで感じながら、今のところ誤射をせずに倒すほど精神をすり減らしながらやっているのだ。だからユキヤの言葉にキレたとしてもいいじゃないかっと、誰に言ってるのか分からないことを思っていたりもする。


「しっかし、ゲートが使えりゃあかなり楽につくんだがな」

「ゲートの出口に使徒か分体がいたら、出てきたところをグシャリと潰されるかもしれないから、試すならユキヤ一人でやってよ。肉片は焼き捨てておくから」

「焼却処分するんじゃねぇよ。ってかお前、もしかしなくてもめっちゃキレてるか?」

「あははははっ、全く面白い冗談を言うよねユキヤは。ボクがキレてるかって?ぶちギレてるに決まってるじゃないですか。そろそろお前に誤射しちゃうくらいにね」


 どうやらかなりキレていらっしゃったスレイさんは、そろそろ交代しない限りは本気で親友の頭に灼熱の熱を内包した鉛玉をぶちこむつもりだったらしい。死因が親友からの誤射による頭部蒸発とはさすがに笑えないユキヤは、一人でグラビティを使い引っ張ってきた勇者たちを繋いでいた鎖を憔悴仕切ったスレイに渡すと、ユキヤは腰に下げていた刀を外して鞘ごと握った。


「バトンタッチだ。お前ばっかやらせてるといつか本当に殺られそうだからな」

「サンキューユキヤ。それを言ってくれなかったらこっちでお前の頭を吹き飛ばしてやるところだったからね」


 ガチャリとボルトアクションで──対物ライフル型魔道銃 アトリアの銃弾を装填してみせると、さすがにそれはヤバイと思ったユキヤはつくまでの間にどうにか落ち着いてもらいたいと思いながら大きく身体を傾けると、その場から一瞬で消え去ったユキヤが刀を鞘から抜くと同時に雷鳴がごとくすさまじい音が鳴り響くと、目の前にいた分体をすべて両断した。


「──居合いの型 雷鳴斬」


 ユキヤが過ぎ去った場にいた使徒たちが一斉に消滅する。それを見てスレイは今のうちにさっさと進もうと思いながら、引きずっていく。

 一応教われはするのでその度にアルナイルで狙撃しているのだが、その段階で気がついていたが相殺できるのは魔法だけではなく電磁加速された弾丸に纏っている雷撃も消えたが、弾丸の速度と回転エネルギーはそのままなのであの使徒の分体も元となった使徒は力は魔力の分解かもしれない。


「どちらにしろ、魔法が必要なボクの技は封じられたに等しいよな」


 スレイの技は魔力が使えることによってその真価を発揮するので今回ばかりはみんなに任せるしかない、そう思いながらユキヤのあとを歩いていくとどういうわけか襲ってくる使徒の分体の数が眼に見えて減っている。それになにやら戦いの音までも聞こえてくる。

 スレイとユキヤは顔を見合うとすぐにその場へと向かうために走り出した。


 構ってくる分体たちには目もくれず走っていく二人はすぐに教会の前へたどり着くと、そこにはすでに半分以上が何かに喰われたように消失したコアと、星をちりばめたようなドレスに時計の秒針のような長槍を構えたジュリアと、その後ろではスレイの黒幻やユキヤの黒刀よりもより深い漆黒の剣を握っているフリードがそこにはいた。



 時は遡りフリードと寵愛の使徒 アイルベインとの戦いは激化の一歩をたどっていた。

 迫り来るアイルベインの木々の蔦を交わしながらフリードの剣がそれを切り裂くと、一歩中へと間合いを詰めようとしたその時、下から掬い上げるように振り抜かれる鋭い鞭を背面飛びの要領でかわしながら空中で身を翻しながら蔦を切り裂くが、切り裂いたところからまた別の蔦が出現するがそれをフリードは闘気を纏った剣が切り裂くと、地面に足を着けたフリードは一瞬で後ろにまで下がり距離をとるとアイルベインはさらに蔦を出現させて攻撃を仕掛ける。


「イイワイイワ!コンナニ楽シイ戦イハ初メテヨ!」

「こちとら災厄な一日だっての!」


 使徒の蔦を受けるごとにフリードは自分が握る剣の刃が欠けてゆくのを横目に、少しずつ増えて行く蔦をいなしていくフリードは今まで戦ってきたどんな魔物や人とは違う、一瞬でも気を抜いたその瞬間には確実に殺されるこの状況でフリードは久しぶりの死を直面しながらの攻防に口元がつり上がる。

 真っ直ぐ向かってくる二本の蔦の槍先を剣と鉄製の鞘で受け流し、もう一度アイルベインに向かって近付こうとしたそのとき後ろに受け流したはずの蔦が背後から迫ってくるのを感じ、上へと飛ぶと少しして足元を蔦の槍が通りすぎていったのを見たフリードは空中で身体を引き絞り、回転するように身体を回転させながら自分の足元にあった蔦をすべて切り裂いた。

 今までの攻防の中でアイルベインの攻撃がすべて、両腕を変化させたあの蔦のような物からの攻撃だとわかったフリードは、攻撃をいなしながら一度アイルベインから距離を取ると、アイルベインも攻撃の手を緩めて


「コノ状況デ笑ウナンテ、アナタモシカシテ楽シイノカシラ?」

「さぁな。どうだろうな?」

「ウフフフッ、イイワイイワ!トッテモイイワ!アナタヲ愛スレバ愛スル程アタシノ力ハ強クナルノ!愛ハ力ヲ与エル物!ソウハオモワナイ」

「お前からの愛なんていらないがね」

「アラツレナイ。ナラバコンナノハドウカシラ?」


 突如両手を広げたアイルベイン。するとアイルベインの頭部に一輪の花が咲き誇り背中からは腕から映えていた物と同じ蔦がはえ幾栄にも折り重なり翼を形成し、そこには頭部に生えたら物と同じ花がいくつも咲いていた。


「ドウカシラワタシノオ花ハ?」

「昔、ドリアードって種族に会ったことがあるがあんたよりはましだったと思うぜ?手足は木々のそれに近かったがお前と違って人だったしな」

「アンナデキ損ナイト一緒二シナイデクダサルカシラ?」

「そうだよな。お前みたいなバケモンと比べちゃあいつらがかわいそうだよな」

「アナタ以外二不愉快ナコトヲ言ウワネ?モウイイワ、死ニナサイ」


 突如アイルベインの背中にはえていた花が枯れ始め実をつけ始める。それを見たフリードはなにかが来ると思い無闇に突っ込むのは得策ではないと考えながら、剣の柄を両手で握りながら様子をうかがっていると、一つの実からなにかが高速で打ち出された。

 あれがなにかは分からないが取り敢えず切り落としておこうと考え、飛んでくる実にタイミングを合わせて剣を振り抜いたその時、フリードは自分でも思ってもみないことが起きた。

 それは完璧に合わせたはずの剣が空を切り、打ち出された実が自分の左足の太股に撃ち込まれたのだ。


「ぐっ!?」


 足を撃ち抜かれ痛みにこらえるフリードは闘気を身体に巡らせて出欠を止めながら、今なぜ自分の剣がズレたのか、完全に見切れていたはずの攻撃を失敗したのか、その理由を考えようとしたところですぐにその理由について昔、戦ったトレントの亜種の中に花を咲かせていた種類がいたことを思い出した。


「なるほどな、お前がさっき咲かせたその花の花粉がオレの神経を麻痺させてるのか」

「アラモット手コズルト思ッタノニスグニ正解ヲダスナンテツマラナイワネ」

「昔戦った魔物にお前と同じことをした奴がいたからな、あのときは匂いですぐに気づけたんだが辺り一面焼け野原のこの状況じゃさすがに気付けねぇよ」

「フゥ~ン。花粉ノコトハ知ッテイテモソノ足ノ実ノコトマデハ知ラナイミタイネ」


 アイルベインのその言葉を聞いたフリードが自分の足に視線を向けようとしたそのとき、突如左足から激痛と共にベキッと何かがへし折れる音が鳴り響く。


「なっ!?こいつは!?」


 フリードが見たのは左足の太股の内部からはえてくる木々の樹と根っこだった。先程切り損ねて足に撃ち込まれていた身の中の種がフリードの足の中で発芽し、肉を突き破りながら樹がはえ根っこが足の骨をへし折ったのだと考えたフリードは、このまま成長を続けた樹に足どころか全身を潰されるところが頭を過った。

 このままでは不味いと思い左足を切り落とそうと剣を逆手に構えようとしたところで、鞭のようにしなった蔦がフリードの剣を弾いた。


「無駄ナコトハシナイホウガイイワヨ」


 このままじゃ本当に不味いと思ったフリードは闘気を纏った手刀で足を切ることを考えていると、突然フリードの足元に時計の秒針のような物が現れ、ハッとしたフリードがそちらを見ると白く輝くブレスレットを掲げるジュリアがそこにいた。


「──時の精霊よ 彼の物の時を戻せ!」


 タンッとジュリアが杖の石付で床を叩くとフリードの足元に現れた時計の針が逆向きに回り始めると、足に巻き付いた蔦が瞬時に種へと戻っていくと、ポーチの中に閉まってあったナイフを取り出し足の傷跡に突き刺すと、撃ち込まれた種を足の中から切除しポーションを一気に煽った。


「全く。美女に迫られちゃって油断しちゃったのかしら?」

「いやいや、ジュリアさん以上の美女なんてこの世にいるはずないさ」

「あらそんなこと言って、実際は鼻の下伸ばしてたりして」

「ジュリアさぁ~ん………信じてれって~」


 情けない声を出して眼に涙まで浮かべているフリードと、つぅーんっとそっぽを向いてしまっているジュリアの二人の目の前で、何を見せられているのか分からないとったアイルベインはムッとしていた。


「アナタタチナニヲシテルノカシラ?」

「あら、人の旦那を誘惑した泥棒猫は黙っててくださいます?」

「ジュリアさん。誘惑されてないからねオレ?それとこいつ倒さないといけない奴だから話してないで早く倒さないかな?」

「仕方ないわね。フリードさんもいい加減本気を出してくださいよ?」


 ジュリアに言われてフリードは小さく口元をつり上げると、フリードはポーチの中から一本の剣を取り出したのを見てジュリアはブレスレットに手を触れる。


「──時を司る精霊よ 我が身と共に 精霊憑依 クロノス!」


 ジュリアの背後に二本の槍を握った銀色の髪をした女性が現れ、後ろからジュリアを抱き締めたと同時にジュリアの手に握られていた杖が時計の秒針を模した槍に変化し、ローブは夜空に星をちりばめたような蒼いドレスへと変化し、肩からはレースケープのようなマントが現れる。


「バカナ!時ノ精霊ナドイルハズガナイ!」

『「いるわよ。あなたの現に目の前に存在するわ」』

「どうせ死ぬんだ。こいつも見て驚きな」


 精霊憑依を発動したジュリアの横に並び立ったフリードはゆっくりと漆黒の剣を抜いた。


「ナッ、ナンナノ………ソノ剣ハ!」


 あの漆黒の剣は時の精霊以上に恐ろしい、アイルベインは全身から恐怖を感じていた。


「遥か悠久の昔、まだこの世界が生まれたばかりの頃、世界を喰らい尽くそうとし神々によって世界の狭間へと追放された漆黒の暴龍 バハムート。お前でもその名くらいは知ってるよな?」

「ナゼソノヨウナ物がコノ地上二残ッテイル!?」

「さぁな?大昔の遺跡が元になったダンジョンの地中深くに封じられたのをいただいてな。」

「アリエナイアリエナイアリエナイ!我ラガ主ガ封ジタアノ忌マワシキ竜ヲ人間ゴトキガ使エルハズガナイ!」

「知らねえよ………それよりもおしゃべりは終わりだな」


 フリードがそう言うとアイルベインは自分の身体に起こった変化に驚いた。

 それはアイルベインの身体が枯れ始めたのだ。


「チッ、力ガ抜テイル!?ナゼッ!!」

『「あなたの時間を止めて力を使えないようにしているの。アストライアさまから聞いているわよ。あなたたち使徒にはコアがあって、それがあなたたちの姿を形成しているってね。だから、あなたのコアの時間を停止させて力を使えないようしたのよ」』

「ソンナコトガ認メラレルワケガナイ!アタシノ力ヲ停メルナド」

『「それが出来るのが時の精霊 クロノスよ」』

「そんじゃあまぁ終わらせますか。──喰らえ暴虐の剣よ」


 フリードが漆黒の剣を振るうと突如アイルベインの意識はこの世から消え去った。


 それは暴龍の腮、たった一振りで全てを消し去る最恐の一振り。ゆえにフリードはこの一撃に名前をつけるとするなら暴龍(ラゼムート)()鋭刃(ベイテゥン)っと



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