勇者参戦
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スレイたちが騎士団、冒険者、そして傭兵たちを相手に戦いを開始した裏でユフィたちは密かにゾーイ、そしてユーシス陛下の案内のもと、王族が緊急時の脱出用に使用される秘密の抜け道──完全に隠し通路だが──の一つを使い、どうにか王城付近へと近づいていた。
「しっかし、隠し通路とかって本当に有るんだな」
「ヴィッ、ヴィーちゃん………しっ、しぃ~!」
通路を歩きながらヴィヴィアナが声を発すると、アリステラが涙目でそう懇願する。
一応は見張りなどはいないそうなのだが、洞窟や通路というのはやけによく声が通るものなのでもしものことを心配しているようだ。
「大丈夫だよアリスちゃん。シェルで確認してるけど見張りもいないみたいだから。声の大きさにだけ気を付ければ気づかれないと思うよ」
そうユフィがいうと安心しているなか、ゾーイが先ほどのヴィヴィアナの話について答える。
「王宮なんかはもしも攻めいられたときのために必要だからね。実際に知られているものの他に、今回みたいない王族専用のとはがいろいろあるんだよ」
「……………………………他にもあるのか?」
「まぁね。あっ、でも教えないからね?」
ゾーイが笑いながらそういっていると先頭を歩くユーシス陛下がコホンッと咳払いをした。
「もうすぐ出口だから話はそこまでにしなさい」
「はぁ~い」
ゾーイがそう答えてすぐにユーシス陛下が立ち止まった。
「ここだ」
「わかりました。ちょっと見てみますね」
隠し通路を抜けた先でユフィはもしも出たところを待ち伏せされて、囲まれて捕らえられる、なんて可能性も否定できないので先行して偵察用のシェルを使い出口の安全を確認していた。
シェルの視覚をプレートに送ってもらい、近くに人がいないことや何かしらのトラップが仕掛けられていないことを事前に確認する。
「一応は安全みたいですけど、いつどこから襲われるか分かりませんからみんな気を引き締めていきましょうね。特にライアちゃんとノクトちゃんはゾーイくんの護衛なんだからしっかりね」
「探知用の結界も張っていますから大丈夫です!」
「……ん。竜人族は感覚に優れてるの忘れたの?」
ノクトとライアが自信満々にそう答えるが、それが一番怖いんだけどなぁ~っと、声に出さずにそう思っているユフィにゾーイが呑気に答える。
「ぼくのことはノクトとライアがちゃんと守ってくれるみたいなんだし、ユフィがそこまで心配する必要もないみたいだよ?」
「そうやって安心しているのが一番危ないの!ほら、私とスレイくんで作った護身用のペンダントもあげるから、ちゃんと身に付けててよ?ユーシス陛下の分もこちらに用意してます」
「うむ、ありがとうユフィ」
あっけカランとしているゾーイに半ば押し付けるように守護のペンダントを押し付けたユフィは、用意していたもう一つのペンダントをユーシス陛下に渡すと懐から懐中時計を取り出して時間を確認する。
作戦の開始から約三十分、隠し通路が細かったことと見通しの悪い場で襲撃の危険を考えていたこと、そしてゾーイとユーシス陛下の進み速度を考慮したためこんなに時間がかかってしまった。
「時間をとられ過ぎちゃったね……大丈夫かな?」
「今は気にせずに行きましょう。スレイ殿やお義父様たちならば必ず無事なはずですからね」
いかに世界広しと言えども世界でたった数人しかいないSランク冒険者の集団を相手にして、並みの相手であればただです無はずもないし、あのメンバーで数で負けると言った姿が全く想像できないのも確かだが、ブランクのあるジュリアとマリー、それに戦場に立ったことのないミーニャが少しだけ心配なのもあった。
「リーフ、ユフィくんもそろそろ移動したほうがいいようだよ。なにやら人の動きが速くなっているように感じるからね」
「人の動きってここら辺に人はいなかったと思いますけど?」
そんな馬鹿なっとユフィが思っていると、アルフォンソが答える。
「いや。いるさ。街の方から戦っていた兵士たちが戻ってきているみたいだね」
アルフォンソからそう言われてユフィたちは後方で闘っているスレイたちに何かあったのか、そう思ったと同時にユフィとノクトとリリルカ、それにアリステラの魔法使い四人は大気中に異様なまでの膨大な魔力が集まっていることに気が付いた。
「なに、この魔力?」
「これは………なにがなんでもおかしいです!?」
「こっ、これは、ダメ………だよぉ」
「ちょっと!いったいなにするきなのよッ!!」
ユフィたち魔法使いが揃って震えているこの状況でいったいなにが起ころうとしてるのか、場の空気が変わったことに気がついたリーフたちに緊張が走る。
「アリス、顔色が良くないようだが大丈夫かい?」
「うっ、うん………だいじょうぶ、だよ」
心配しているミハエルを不安にさせないために気丈に振る舞っているアリステラだったが、その行為が逆にミハエルの不安を駆り立てていたのだが、アリステラはそれに答えよとはしなかった。
「これだけの魔力となると、さすがに気持ち悪くなるわね………いったい何十人分の魔力を集めたらこんな量になるのよこれ?」
死霊山のそれとは違い、今この場にあるのは純粋に膨大な魔力が集まっている。その魔力に当てられて魔力酔いとでもいえばいいのか気分が悪くなっているようだ。
ユフィたちを心配していたルルが疑問を口にした。
「魔力のことわからないのだけど、あなたたちがそうなっている原因がその魔力だとしてそんな魔力をどうして集めてるのかしら?」
「可能性があるとすると……極大魔法ですか」
ノクトが小さく呟くとユフィたちはハッとして魔力溢れだしている場に視線を向けるが、かなり厳重な結界を張られているのか中の様子が全く関知できないのだ。なのでユフィたちが悔しそうな顔をしていると、アカネが前に出て話し始める。
「とりあえず、中に入ってみないことには何もわかりそうにないわね。予定通り私たちが先行して侵入していくわね。ついでにあなたたちが心配してることも探ってくるわ」
「お願いねスズネ。それにヴィーちゃんもくれぐれも見つからないように気を付けて!」
「おい、任せとけって!」
アカネとヴィヴィアナ、偵察などを主とする二人が先行することは初めから決まっていた。城の中に残っている人に数や魔法使い、目的の人物であるデボラ・アルメイアの居場所などの情報がなければ無闇やたらに動くのは得策ではない。
アカネとヴィヴィアナがその場から消えると、ユフィたちは二人が戻って来るまでの間どこかに隠れて戻ってくると言う兵士たちをやり過ごそう、そう思っていると城の一角から膨大な魔力の本流を感じユフィたちが顔を上げると、城の塔の一角から特大の魔方陣が展開されるのを見てゾーイが叫んだ。
「なんなんだあの巨大な魔方陣は!?」
「……ん。大きいだけじゃない、なんだか嫌な気配をすっごく感じる」
展開された魔方陣を見てユフィの表情が強ばった。
「みんな!集まって!ノクトちゃん!アリスちゃん!リリルカさん!シールドお願いします!」
「分かりました!──セイントレイン・シールド!」
「まっ、任せて!──アクア・シールド!」
「私のシールドなんて微々たるもんだけど──クアトロ・シールド!」
「みんな魔道具を起動させて!──ディストレーション・シールド!」
ユフィは重力魔法による空間を湾曲させるシールドを、ノクトが聖の回復魔法を付与したシールドを、アリステラが水の魔力を付与したシールドを、リリルカがシールドを重ねて展開させたと同時にユフィたちの元に膨大な光と衝撃が伝わってきたのだった。
極大魔法魔法の直撃を真っ向から迎え撃ったスレイ、ユキヤ、ヴァルミリアの三人は放たれ続ける極大魔法と拮抗するべく魔法と魔剣、そしてブレスによる攻撃を加え続けるが段々と押され始めていた。
「いったいどんだけの魔力が有りやがるんだ!」
「クッ、魔法が抜けてきたッ!」
相手は極大魔法だ。多少抜けてきただけでも被害は相当の物だ。
「やらせるかッ!」
スレイは魔法に割いている魔力の一部を使いソード・シェルを起動させ、複数枚を重ね合わせたシールドを起動させ抜けていった極大魔法の一部を防ぐが、ただのシールドを付与しているソード・シェルは一瞬で破壊されてしまい街へと降り注ぐ。
「ヤバイ、街がッ!」
「バカやろう!こっちに集中しろッ!」
「だけどッ!」
街に魔法が落ちるのを黙ってみているしかないのか、そう思ったとき直前に別のシールドによって防がれた。
「あれはっ、母さんたちかッ!」
下ではジュリアたちが防いでくれている。そう思いながらもここで防げなかったことに焦りを感じているとヴァルミリアからの叱咤の声が響く。
『下のことは気にせずに今は目の前のことに集中しなさい!』
「はいっ!」
「魔力が弱まってきた、あと少しだ!気張れよ!!」
ユキヤのその言葉の通りに魔力を込め直したスレイは最後の力を振り絞り魔法を放った。
「はぁ、はぁ………終わった、のか?」
「ぜぇ、ぜぇ………そう、だろうね」
しばらくして極大魔法の一撃が途切れると疲弊しきったスレイ、ユキヤ、ヴァルミリアはゆっくりと地上へと降りようとしていたのだが、体内の魔力と竜力を使いすぎたスレイは刻印の発動を維持できなくなってきていたため、背中に生えていた四枚の翼が消えかかっていたため落下に近い形で地面に落ちた。
その隣で仰向けで倒れたユキヤが魔剣から人の姿に戻ったエンジュを腹の上に乗せながら声を出した。
「クソが……俺の魔力と闘気が空っぽになってやがるぜ」
「ほら、デュアルポーションだ……多少は闘気も回復すると思う」
「とうさま、おじさま、大丈夫ですかとエンジュはお聞きします」
「「大丈夫じゃない」」
同時に答えたスレイとユキヤのことを心配してエンジュが、よしよしと頭を撫でてくれているとそこにラピスたちが駆け寄ってくる。
「スレイさま!お怪我はありませんか!?」
「旦那様!無事か!」
「あぁーラピス。怪我めっちゃしてます。ついでに手足に穴空いてます」
「これで無事だと思ってんなら眼科でも行ってくれレティシア」
倒れている二人からは血が流れ続けている。致命傷になりうる傷はなるべく避けてはいるものの、このまま血が流れ続ければ確実に死んでしまうだろう。
「ジュリア!ミーニャ!二人に治癒魔法を!」
「わかってるわ!」
「はっ、はい!」
駆けつけたミーニャとジュリア、それにクレイアルラの三人が今にも死にそうな二人に治癒魔法をかけると、上空からボロボロになったヴァルミリアが降りてきた。
「すぐに兵士たちが集まってきますいつでも戦えるようにしなさい」
「ミリアさん、あなたも傷だらけじゃない治療するからこっちに来なさいよ」
「これくらい平気です。七百年前にはこれ以上の怪我を負ったこともありますし、すでに治っていますからね」
そう言うと額から流れ出ていた血を拭ったヴァルミリア、確かに傷は塞がっているようだったのでジュリアは何も言わないでいると、虫の息のスレイとユキヤのそばに歩み寄ったヴァルミリアが唐突に自分の腕を噛みきった。
「ちょっと!」
「竜の生き血には治癒能力がありますし、治癒魔法を使うよりも速いです」
そう言いながらスレイとユキヤに一滴ずつ血を飲ませると、カッと目を開いたと思ったらガバッと起き上がった二人は、先程まで傷だらけだった身体を触診しながら驚異なまでの回復力に驚いた。
「すげぇ、魔法でも治癒に時間がかかってたのに一瞬かよ」
「傷だけじゃなくて闘気と魔力も回復してるぞ」
「ふふっ、どうやら元気になったようですね」
優しく声をかけてきたヴァルミリアを見た二人が揃って礼をいった。
「ありがとうございます、ヴァルミリアさま」
「助かったぜ」
「どういたしまして………さて、みながあなたの上にいる娘について不自然に思っていますよ」
クレイアルラとミーニャはエンジュの正体を知っているため驚きはしなかったが、フリードたちはその事情を知らないため、どこからともなく現れた女の子についての説明を求めるように視線を向けてきているが、スレイは全部終わってからの事後報告にしようと思っていたので面倒だと思いながらも簡潔に答えることにした。
「こいつ魔王、この娘魔剣。オーケー?」
「ちゃんと説明しろ!」
「うぅ~ん………時間かかるからさ、終わってから全部説明するから。今だけはこいつが魔王だって説明だけで勘弁してください」
立ち上がりながら黒幻を抜いたスレイは、ヴァルミリアの血を飲んで回復した竜力を使いもう一度刻印を使用してみると、問題なく刻印が発動して全身に登っていくのを感じたが、ここから先まだ戦いは続くので無駄な竜力の使用は押さえようと刻印の発動を解除すると、はじめて刻印を発動時の姿を見たフリードたちからの好奇の視線が集まっていた。
「お前、それ使うと見た目も相まってなんか悪い魔法使いみたいだな」
「スレイちゃん、お願いだから呪いの儀式とかはしちゃダメよ?」
「お兄ちゃん。何か悩みがあるなら聞いてあげるから、ねっ?」
「取り敢えず父さんと母さんは張った押す。それとミーニャ。お兄ちゃん、別にストレスからこんな格好してる訳じゃないからな?」
両親と妹に心配されたスレイは竜燐を発現させた拳をふるふると震わせている。
「あんたら、そんなことしてる場合じゃないさね。またこっちに近付いてくる一団がいる見ただよ」
「先程よりも数は少ないようだが、全員に変な気が混じっていますね」
時宗のその言葉を聞いてスレイたちも意識を集中させる。数は大体ではあるが十五六人ほどの少人数だが、確かに時宗の言う通りなんだかおかしな気配が感じ、さらにその中に途轍もなく巨大な力が混じっているのを感じた。
「この気配は………十中八九、勇者の聖剣の気配だなこいつは」
「わかるのかえ、旦那様?」
「あぁ。どことなくエンジュに似た気配を感じるからな………だが、それ以外の気配がよくわからねぇな。どこかで感じたことがある気もするんだが……」
「それは、神気だと思われます」
そう答えたのはラピスだった。そして、スレイたち使徒と戦ったことのある数人はすぐに思い出したが、フリードたちは神気とはなんぞやと首をかしげていたので、スレイはみんなのためにとっても分かりやすい簡単な説明をすることにした。
「神様の持ってる特殊な力で、ボクたちで言う魔力や闘気なんかのようなものですね」
「ちょいと待ちな、ってことはあんたら神なんて者が本当にいるって言ってるのかい?」
「悪りいんだが、こいつは本当のことだぜ?実際にこの世界を真に滅ぼそうとしているのも、この世界を創ったとされる神様なんだぜ?」
「ちょっと待て!それならお前たちは神様と戦ってるってことなのか!?」
「えぇ。信じていただけないのだったらそれでもいいですけど………来たみたいですね」
スレイがそう言うと現れたのはいつか王城で見た少年少女たちの姿であったが、あのときと違うこととして何やらおぞましい気配を宿した武具を身に付けていること、そしてやはり彼らの目だろう。
今は生気もまるで感じない、まるで操り人形のような虚ろな目をした彼らの先頭には、黄金の剣を携えた勇者 佐伯 劉鷹が立ちはだかりそして黄金の剣の切っ先をスレイたちの方へと向けると、確固たる意思を感じる強い言葉で劉鷹は叫んだ。
「貴様たちが魔王と悪神の使徒だな!女王陛下の命により、勇者であるオレたちがお前たちのその首をもらい受ける!行くぞみんな!魔王その仲間を必ず討ち取ってオレたちがこの世界を救うんだ!」
「「「「「おぉ!!」」」」」
堂々たる立ち振舞い。これぞまさに勇者の風貌………ッと言いたいが、スレイとついでにユキヤは呆れて何も言えないでいた。
いくら洗脳によって操られてるとはいえ、仮にも勇者が今さっき国民もろとも極大魔法で消し去ろうとしていたデボラ皇女についている時点で、普通におかしいところだがそこはスルーしておこう。
「父さん母さん、他の皆さんもここはボクとレンカに任せて、さっきの魔法で被害を受けた住民の救護をお願いします」
「それは構わぬが、君たちは二人だけで平気なのかね?」
「時宗殿、ご安心を私たちはこれまでに使徒との戦いに身を投じて来ましたからね」
「………二人とも気を付けろよ」
フリードとジュリアがうなずき会うとその場から離れようと踵を返すと、不気味なオーラを放つ弓を持った少女の一人が二人に向かって矢を放った。フリードはとっさに身を翻しながら矢を切り落とそうとしたが、それよりも先に動いたスレイが矢を切り落とした。
「行って」
「頼むぞスレイ」
「お願いねスレイちゃん。ミーニャちゃんもマリーも行くわよ!」
「うん!お兄ちゃん!レンカさん、頑張ってね!」
ジュリアの声を聞いてミーニャやマリーたちもその場を去り、残ったのはラピスとレティシア、朱鷺芽の三人だった。
「ラピスもここは任せてよ」
「お前たちもださっさと行けよ」
「えぇ。わかっておりますが、どうかご武運を」
「旦那様、無事に帰ってきたらご褒美をやるからの!トキメ、お主も付き合え!」
「よく分からぬが、拙者もお付き合いしてしんぜよう」
「おいレティシア、てめぇ帰ったら説教だからな」
「はははっ」
スレイは笑いながら放たれる魔法を切り裂くとその影からなにかが飛び出して来たので、一歩後ろに下がりながらその人物の方を見るとと凛々しい顔をした少女であった。
シュッと風を斬る音と共に放たれた一閃をかわしながら少女に向けて言葉をはっする。
「流麗でそれでいて力強い。とても綺麗な太刀筋をしているね」
「敵に誉められても嬉しくないわ」
「だろうね───ッ!?」
少女の剣を受け止めるたスレイはいつもの涼しい顔から一転、まるで強い恐怖に襲われたかのように顔をこわばらせると正面に斬り合っていた少女を蹴り飛ばしていた。
少女の身体がくの時に折れ曲がり勢いよく吹き飛ぶのを見たスレイは、ヤッベッと言いたげな顔をしながら固まっている。
するといつの間にか隣に立っていたユキヤがシラケた眼を向けながら。
「お前、操られて武器持ってるからと言って、ほぼ一般人のあの女を容赦もの欠片もなく蹴りやがったな?」
「悪い、条件反射見たいんもんだし、どうやらあの武具に何かあるみたいだ蹴った時の感触がおかしかった」
そうスレイが言うとユキヤも先程蹴飛ばされた少女を目で追うと、多少の怪我はしているようだがほぼ無傷の少女がそこにはいた。
「なるほどな、こいつは厄介そうだ」
「どうもそれだけじゃないみたいだ。さっき剣を合わせてよくわかったんだけど、あの武具には使徒の力が宿ってる。あの感じからして殺意と武芸………たぶん他にもう一体くらいの使徒の力を宿してるんだと思う」
「んだと?」
ユキヤもがスレイの方をじっと見てから大きく舌打ちをした。どうやら魔眼で真偽のほどを調べたのだろう。
「なるほどなぁ………あの野郎がここにか、んなら存分に殺りあわねぇとな」
「みたいだね。ボクもあいつと会えると思うと心が踊るようだね」
スレイとユキヤはうっすらと笑みを浮かべていると、仲間を傷つけられた勇者 劉鷹が叫びながら斬りかかってきた。
「お前!よくもミホを───ッ!?」
劉鷹は前えと踏み出した足を後ろに後退させた。
たった一睨み、たった一度視線を会わしただけで劉鷹だけではない、この場にいる全員が思った。
この二人にはどうあっても勝てない
っと




