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ドランドラへ

ブクマ登録、誤字報告ありがとうございます。

 ドランドラの姫クレハからの王族誘拐の依頼を受けたスレイとユキヤは、クライヴ陛下とクレハをのせた馬車がその場から離れていったのを見ながらノクトたちに連絡をいれる。


『お兄さん!今度はなにをしたんですか!!』


 プレートで連絡を入れたと同時に叫ばれたため耳がキィーンっとなったスレイは、プレートを耳から放してユキヤの方に向ける。


「おいチビッ子か?」

『えっと、レンカさんでしたけ?なんでお兄さんのプレート持ってるんですか?』

「お前の旦那はお前のせいで耳にダメージを負ってな。そんでなにがあったか話せ」

『えっ、あっ、はい』


 ノクトから事情を聞いたユキヤは回復したスレイに事情を説明した。

 どうやら屋敷の周りにアルメイア王国の兵士たちが取り囲んでいるそうで、いったい何をやらかしたのかと問いただそうとしたらしい。

 今回は本当に関係ないところで起きていたため関係ないとだけ言っておいたが、みんなは全く信用されなかったので、詳しい事情は先に戻るであろうスペンサーとリタに詳説明をしてもらうように言っておいた。


 ノクトたちの方には当分そのままでいるようにいい、次にユフィたちの方へと連絡をいれた。


「ユフィ、そっちは今どこにいるんだ?」

『あっ、スレイくん。今ちょうど街の外に出れたよ。でもイザベラさまは無理だった』


 イザベラ王妃も一緒だったが滅心の首輪にかけられた誓約のせいで許可なく街の外には出られないらしく、そのまま馬車で引き返したのだそうだ。

 もしイザベラ王妃になにかがあってもローズがあるので夜道で襲われても平気だろう。それにイザベラ王妃は大事な人質だ、危害も加えることはないはずだ。


「王妃のことはわかった。ユフィたちはそのままそこで隠れていてみんなを守っててくれ」

『うん。りょ~かい。じゃあ切るねぇ~』


 通信を終えたスレイはユキヤの方を見ると、二人と話終わったのかちょうどスレイと顔を合わせ、転移魔法を応用して何時もの服に着替えるとその場から離れるために歩き始める。


「お前といるとヤバイことばっかり起こるよな」

「ボクもそう思うけど、まさか王族誘拐を依頼されるとは思わなかったよ……ところで、どうやって潜入する?このままでって訳にもいかないし、剣を使うわけにもいかないしな」


 スレイの黒幻と白楼、それにユキヤの黒刀は見る人が見れば一目で持ち主がわかるため、誘拐犯の特定される恐れがあるので使えない。二人は一目を避けるように裏路地に入っていった。


「お前なにか持ってねぇのかよ。顔を隠せる魔道具かなにかあるんじゃないか?」

「お前、自前の仮面着けてるだろう?」

「さすがにバレる。それと前のは捨てた」


 まぁ敵から貰った物をそのまま持っているはずもないだろう。


「有るにはあるんだけど、お前の好みが分からないし作ったは良いけどまだ試作品だから貸したくない。あっ、ドランドラについたら魔道具のモニターしてくれない?」

「やるわけねぇっての。そんで、他にはなにかねぇのかよ」

「フルフェイス型の仮面ならあるけど正直、息苦しいからつけるのはパスしたいから布でも巻き付けようぜ。そんで壁にZの文字を残すの」

「話題が古ぃよ!俺らが生まれるよりも前の映画だろ!」


 冗談でいっているわけではなくもうそれしか顔を隠せないのだ。

 あと残っているのは派手すぎるのと、後々クライヴ陛下に売りこむ予定の物なのでこんなところで使って変な誤解を与えてしまったら売れなくなってしまう。

 黒い布を二つ取り出したスレイは片方をユキヤに渡し、それと一緒に銀の装飾がされた黒いマントと金と銀の糸で刺繍された黒い帽子を取り出してユキヤにも投げ、ついでに剣もちょうどいいのはないかと探してみたがさすがにレイピアは持ってなかったので代わりに見つけた物を渡すと、マジマジとそれをみているユキヤくん。


「おい、なんでお前がこの剣を持ってるんだよ?」

「ちょっと入り用で作った。安心しろちゃんと鍛冶屋で作ってもらった物だからちゃんと斬れるし、ミスリルを混ぜてるからちょうどいいだろ?」

「だろうなけっこう重い」


 ユキヤは赤い鞘に収まった金色の狼の鎧を召喚するための剣を見ながら、もしかしたら本当に出来るのでは?そう思いながらも試すのは恥ずかしかったのでやめた。

 準備を終えた二人は裏路地から壁を駆け上がると、依頼のあった二人のいる離宮を見据える。


「さてと……それじゃあ王族誘拐の依頼にいきましょうか」


 次の日、アルメイア王国中に黒いマントにマスクを着けた黒衣の怪人がユーシス国王、セレスティア王妃そしてゾーイ皇子殿下を連れ去り離宮の壁には謎のマークを残して消えたという噂が流れるのだった。



 あの日より数日のうちに全世界に向けてボルディア・アルメイア及びデボラ・アルメイアによる連合国の設立が大々的に発表されたが、それに対抗するようにドランドラの当地者である帝より全世界に向けてユーシス・アルメイアの保護と、連合の設立の切っ掛けが王族を人質にした物であるという発表がなされた。


 その日から連日連夜、ユーシス陛下はドランドラの帝、そして連合に加入していない周辺国との会談に時間を裂いている中、国同士のことは専門外なスレイたちは暇をもて余していた………なんてこともなく、会議中や各地を納める領主との会談の席の護衛に、連合国が攻め込んできた時のための対策会議への出席など忙しい日々を過ごしているなか、ようやくこれからについての話が纏まりが見えてきた。


 会議を仕切っているのはドランドラを統治する帝、つまりは紅葉の母親である若葉とこんなことを起こしてしまったアルメイア王国の王としてユーシスが話し合っていた。


「でしたら、ユーシス殿はアルメイア王国を滅ぼしてもよいと?」

「どのみち戦争を引き起こそうとした責任は国王である私が取らねばなりません。例え妹や甥を殺すことになったとしても」

「最後の戦争が終わったのは四十年前、ちょうどあなたが国王に即位したのと同じときでしたね」

「えぇ。それを知る我らだからこそ今の世でもう一度戦争を引き起こしてはならないのです。今ならばまだ内戦として終わらせられます」

「ですが世界はそれを認めないでしょう。このままではアルメイアという国は滅びるしかありません」

「だからこそです。我が国の汚点は私のこの手で消さねばならない………どうか、そのためのお力をお貸しくださいワカバ殿」


 座った姿勢のままユーシスは若葉へと頭を下げる。


 ドランドラの帝 若葉とアルメイア王国 国王ユーシスの話し合いをしている母屋の廊下では、家を支えている柱に背を預けぐでぇ~んっとやる気の無さそうな格好をしていたスレイがいた。

 今は王族同士の会談の場のため通常なら不足の事態が起きた時のために護衛がいるのだが、そこはスレイがアラクネを使い侵入者の警戒に当たっているため不要となり、今はスレイが形だけ一人で護衛をしているのだ。


 他のみんなはどうしたかというと、ユフィたちは非常時ではあるがこの話し合いが終わらないことにはなにも出来ない、なのでせっかくドランドラに来たのだからとアカネの案内で、ついでにレティシアとエンジュも連れて町に繰り出している。


 ゾーイとセレスティア王妃は帝の屋敷で匿われている。

 戦争を引き起こそうとしているのは国王代理であるあの二人だが、それでもアルメイアの王族だ。帝の名の元にドランドラでは戦争はアルメイア王の意思ではないと触れ回ってはいるが、それでもやはりよくは思っていない人たちもいるかもしれない、なので今は半ば軟禁生活を送っている。

 ちなみにアルメイア王国では病に伏せていたユーシス陛下だったが、実際にはデボラが派遣していた医師から処方されていた薬に毒が混ぜられていたせいだと発覚し、いまでは元気を取り戻している。


 そしてヴァルミリアとヴァルマリアの二人?も、軟禁生活を送っている。

 理由はドランドラという場所に由来する。この国は遥か昔、人語を理解する竜がドランドラに暮らす人々を助けたと言い伝えられており、そのため二人は生ける伝説としてここに来て早々に信仰の対象になってしまい、ひとたび外に出れば囲まれるのだ。

 あと、セドリック殿下はというと一応ヴァルミリア、ヴァルマリア母娘と同じ屋敷に厄介になっており、心配したスーシーがアニエスを連れて毎日遊びに行っているという。



 そんな話はさておき、特にやることこともないスレイはただぼんやりと空を見上げながら、ふすまの向こう出に話し合われていることに耳を傾ける。

 今ここでの話し合いが終わらなければなにも出来ない。言い換えてしまえばここ出に話し合いが終わったとき戦争が始まるのだ。

 そう考えていると不意に足音が聞こえたため、ソッと頭を起こしてそちらを見ると腕組をしたユキヤがたっていた。


「おい、護衛をサボって何してやがるこの不良野郎」

「暇なんだよ。中には入れないし、侵入者避けの結界は構築してるから問題はない」

「知ってる、だがなぁ端から見てるとサボっているようにしか見えねぇんだよ。護衛ならもう少しシャキッとしろ」

「それをお前に言われるとなんだか癪だからこのままでいる」

「そうかよ。それなら後でお前の嫁たちに頼んで説教してもらう」


 そういわれても全く姿勢を正そうとしないどころかさらにだらけているスレイを見ながら、大きなため息を一つついたとユキヤはスレイと距離を開けて腰を下ろした。どうやらユキヤも話し合いがどうなったのかが気になったのか、聞き耳を立てていた。


「なぁ。お前はさぁ~、四十年前の戦争がどうやって終わったか知ってるか?」

「戦争?………あぁ。帝国が降伏して終わったんだろ」

「正確にはそうせざるを得なくなったからだな」


 四十年前、前世の地球で言うところに世界対戦のような大規模な戦争がこの世界でもあり、学園の歴史書には大陸間対戦と呼ばれている。

 かつて南方大陸の大部分を有していたベルゼルガー帝国という大国があった。その国の皇帝や民はかなりの独裁的な思考が強く、南方大陸の領土はすべて自分達のだと主張し他国に対して領土を取り戻すためと称して戦争を引き起こし、ついには世界すべての国を巻き込み何十年にも渡る戦争を起こした。


 結果として帝国は世界との戦いに敗戦した。理由は至極簡単、大きくなりすぎた国はいつしか纏まりを無くし、内部から起こった内乱により国は崩壊、今ではかつての国の首都だけが小さく残っているだけだ。


「内部崩壊ねぇ………それで、お前はいったい何が言いたいんだよ」

「うぅ~ん。そうだなぁ~……お前さぁ、戦争に参加する理由はなんだと思う?」

「はぁ?……そんなの家族を守るとかいろいろあるだろ?」

「そうだよな、そうなんだよ。だからわからないんだ」

「だから何が言いたいんだっての!」


 一向に答えを言うでもなく自分の話を続けるスレイにユキヤは切れると、ようやくスレイはそれについては話をする。


「なんで勇者たちが戦争に参加する理由、それがいまいちよく分からないんだよなぁ~」


 スレイはあの日のパーティーでのことをユキヤから詳しく聞いていた。


 あの日、パーティーの参加者たちは大混乱に陥っていた。それは少し前、突如会場も床に魔方陣が浮かび上がりそこから現れた魔力の鎖が自分たちの首に巻き付いたのだ。

 これによりパーティーの参加者たちは混乱し取り乱しているなか、現れたデボラ皇女とボルディア王子に向かって先程の魔方陣のことや、自分たちの首に描かれた鎖のアザは何なのか、その場にいる全員がそれを問いただすか、あるいはこれを消すように叫ぶ。するとデボラは小さく、黙れ、そう呟くと魔力の鎖が現れ騒いでいた全員の首を絞めて黙らせた。


『よく聞け!今この時、この瞬間よりお前たちの命はあたしたちが握ったわ。あたしに従わぬもの、歯向かうものの末路は死有るのみよ。それを知った上で歯向かうというのならこの場で殺すわ』

『ふっ、ふざけるな!そんなことが許されるわけないだろ!』

『そう、なら切り捨てなさい』


 デボラがそう短く言い捨てるとどこからともなく抜き身の剣を握った勇者ユタカと、その仲間である少年たちが現れ、デボラに異を唱えた貴族の男を切り捨てた。

 ――――首を切り落とされ何度もその体に剣を突き立てられ、飛び散った血が他の者たちにもかかりそして


『いっ、いや……いやぁああああああ―――――――――』


 無数に叫びを声がパーティー会場にこだました。その後に再び騒ぎだした参加者を静めるために滅心の首輪の効果を使い大人しくさせたあと、デボラは参加者全員に連合国の設立と全世界に向けての戦争を仕掛けることを大々的に発表し、歯向かう場合は即刻処刑等々、まさに暴君と言っていいことを延々と話しそれに続くように勇者もその連合国へと参加を表明したらしい。



 ユキヤから聞かされたパーティー会場でのことを思い返してみたスレイだったが、やはりよくわからない。話によれば勇者ユタカはデボラの命令で歯向かおうとした貴族を何の躊躇いもなく斬り殺していたらしいが、あのスーパー善人っぽい勇者でそんな命令一で人を殺すかどうかだ。


「やっぱり、どう考えてもおかしいんだよな~。あの勇者とその仲間が人を殺すことがさ」

「それもお前の魔眼のせいか、それともお前の勘か……いったいどっちなんだ」

「お前さぁ。剣を握ってると手に豆が出来たことあるだろ?それがあの勇者たちの手にはなかったんだよな」

「そんなもん治癒魔法でも使えば後が残らねぇよ」

「まぁそうなんだけど、どうも腑に落ちないって言うか……なんかこうおかしいと言うか………平和な世界で暮らしていた子供が、たった数ヵ月訓練をしただけで戸惑いを見せずに人を殺せると思うか?」


 ユキヤも改めてスレイに言われて疑問に思ったと言うよりも、こちらの世界に長くいすぎたせいですっかり忘れてしまっていたが、争いもないような平和が日常の世界で育った者がそんなこと出来るはずもないのだ。


「確かに不自然だな……」

「だよな~。あそこに使徒がいたってんならアストライアさまが気付かないわけないし」

「相違って前に蒼髪の女のこと使徒だって気付けなかったんだろ?」

「いや、あれはボクたちに近付くために記憶と使徒としての力を封じてたからで、逆にそこまでしなくちゃ気付けるらしいし、ラピスのこともあるからアストライアさまもそこら辺は敏感になってるらしいけど」

「そんじゃあ使徒が関わってるってことはなさそうだな……ってことは魔法か?」


 魔法で意識を刈り取り催眠魔法かなにかを使えば可能かもしれないがっと、そこまで考えているとスレイは前にも似たようなことがあったのを思い出した。


「あぁ。出来たわ。人の心を魔法で支配すること。ついでにそれと同じような奴らの解呪もやったは」

「なんだよ。答え出てんじゃねぇかよ」

「いやぁ~。あのときは特にかかわり合いのない事件だったから記憶の彼方に飛んでた」

「一度お前が関わってきた事件をじっくりと聞いてみてぇよ」

「全部が全部なにも面白くない面倒な事件だったとだけ言っておくよ」


 そう答えたスレイは後ろの部屋から人が出てくる音を聞き、出迎えるときくらいは立っておこうと思い立ち上がるとユーシス陛下とワカバが出てきた。


「お話は纏まりましたか?」

「あぁ。………スレイ君、君にもう一つ依頼をしたい」

「何でしょうか?」

「私をアルメイア王国につれていって欲しい。今一度、デボラと話しがしたい」


 真剣な顔でユーシス陛下に頼まれたスレイだったが、この場では考え出せていただきます。

 そう答えるのだった。

今年最後の更新です。

今年も本作品を読んでいただいた皆さま、ありがとうございます!

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