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パーティーでの波乱

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 ゾーイと街で遊んでから一週間ほど経ったその日の夜、以前から言われていたパーティーへの参加する日べく、スレイは前に遊びに行った時に新調したスーツに身を包み、いつもは纏めているだけの髪をしっかり整えたりしてみんなの前に行くと、同じくスーツに身を包んだスペンサーがスレイのことをじっくりと見てから、はぁ~っとため息を吐いた。


「スレイ・アルファスタ。お前やはりちゃんとした服に身を包めばまともに見えるな」

「その言い方ですといつもの格好はおかしいとしか思えませんが……まぁ今日はなにも言いませんからご安心してくださいね」


 軽口を叩いているスレイの前にドレスに身を包んだユフィとアニエス、それにもう一人スペンサーの想い人であるリタがやって来た。


 今回のパーティーで女性を一人は連れていけと──スレイの場合二人だが──クライヴ陛下から命令され、特に誰かと交際をしているわけでなかったスペンサーはこれを機にリタに想いを伝え見事両想いになったらしい。

 そのときは事情を知っているスレイたちもいろいろと協力したので、交際を始めたと聞いたときはスペンサーとリタを交えてパーティーを開いたりもした。


 その時を思い返していたスレイの前にドレスを着たユフィとアニエスが立った。

 ユフィは白を基調としたドレスを、アニエスは淡いピンクを基調としたドレスを身に纏いあの日みんなで選んだアクセサリーを身に付けていた。


「どうかなスレイ、わたしドレスを着たり化粧するなんてこと生まれて初めてだから、そのあんまり自信ないんだけど……どこかおかしかったりしない?」

「どこもおかしくなんてないさ。どこからどう見てもとってもキレイだよアニエス。このままパーティーには行かずに連れ去ってしまいくらいさ」

「なによ。普段のあんたじゃ絶対に言わないようなセリフね」

「今夜くらいはそれくらい言わせてくれよ。惚れた女の子がとっても綺麗に着飾ってるってのに自信ない何て言われたら、これくらいのことを言わないと男が廃るってもんだからさ」


 スレイがアニエスを誉めていると嬉しそうに尻尾を降っていた。


「ちょっとスレイくん?アニエスちゃんだけじゃなくて私もドレス着てるんだから、なにか一言くらい言ってもいいんじゃないかな~?」

「ごめんユフィ。ユフィもいつにも増してキレイだよ、今ここで抱き締めてしまいたいくらいだ」

「ふふふっ、仕方ないなぁ~。今回はそれくらいで許してあげるね~」


 嬉しそうに微笑んでいる後でリーフたちが羨ましそうな視線を向けているのを見て、次にこういう機会があったらちゃんと連れていこうと心の中に留めるのだった。


 パーティー会場にたどり着いたスレイはいきなり背後からドスン!っと、なんだか知っている衝撃を食らった。


「うぉっと、えっ、誰?」

「おにいちゃん、ひしぶり」

「えっと、もしかしなくてもこの声って」


 聞き覚えの有る声を聞いてみんなが視線を向けると、スレイの背中には笑顔のヴァルマリアと、少し後ろの方でこちらを見ながら微笑んでいるヴァルミリアの姿を見つける。


「ヴァルミリアさまにマリアちゃん。どうしてここにいるんですか?」


驚いたユフィが二人にそう訪ねるとピョンッとスレイの背中から降りると、今度は正面から抱きついてきたヴァルマリアが答える。


「おかあさんがよばれたからいっしょにきた。おにいちゃんとおねえちゃんたちがいるとはいもわなかった」

「こっちも仕事でね。それよりも降りてくれないかな?回りの目が刺さる」


 一応は貴族の方々が出席するパーティーなので大人しく、そう言いながらスレイはそっとヴァルマリアを下ろすと、セドリック殿下にエスコートされていたスーシーがヴァルマリアを見つける。


「マリアちゃんだ!」

「あっ、おいスー!」


握られていた手を振りほどいて走っていくスーシー、セドリック殿下は涙目だった。

それに気づかないままヴァルマリアに抱きついたスーシー嬉しそうに笑っている。


「マリアちゃん、げんきだった~?」

「スー。ひさしぶり」


 スーシーとヴァルマリアが久しぶりに会えて楽しそうにしているのを横目に、スレイとユフィ、それにアニエスがヴァルミリアの方を見ると、ヴァルマリアが一度小さく頭を下げてから近づいてくる。


「あの娘が迷惑をかけました」

「いえ、それよりもお久しぶりです。以前はお世話になりました」

「その様子ですと、バズールには会えたようですね」

「えぇ」


スレイとヴァルミリアが話していると、クライヴ陛下とイザベラ王妃がヴァルミリアに挨拶をする。


「お初にお目にかかります聖竜ヴァルミリア。私はマルグリット魔法国国王 クライヴ・マルグリットともうします」

「同じくマルグリット魔法国王妃 イザベラ・マルグリットです。どうかお見知りおきください」


両親が挨拶しているのを聞いて慌てた様子で駆け寄ってきたセドリック殿下は、幼いながらも王族らしく礼をしながら頭を下げる。


「クライヴとイザベラの子セドリック・マルグリットです」

「聖竜ヴァルミリア、そしてあちらにいるのが私の娘のヴァルマリアです」


 三人に挨拶をしたヴァルミリアはセドリックを見ながらなにかを思い付いたらしく


「セドリック王子。よろしければ我が娘のエスコートを頼めますか?なにぶん彼らと知り合うまでは人とかかわり合いにならない暮らしをしていたため、このような場所は初めてですのでどうか」

「うむ!余にまかせるのだ!」

「これセドリック!このお方は私たちよりも偉いのですよ」

「構いません。マリア、セドリック王子にご挨拶なさい」

「よろしく」

「うむ!よろしくだ!」


 かわいい女の子二人をエスコート出来ることからセドリック王子も嬉しそうだ。小さくてもやはり男の子と言うことらしい。

 セドリック王子が二人の手を引いてパーティー会場の奥へと行き、そんな三人の後を追っていくようにクライヴ陛下とイザベラ王妃も歩いていく。

 このあとは他の国の国王たちにあいさつ回りらしい。王族と言うのは面倒な存在だ。

 一応スレイもレクスディナの代理ではあるが、出席するだけで良いと言われているのあいさつ回りなどする必要はないらしい。なのでデボラ皇女の挨拶のあとは適当に酒を飲んで適当な場所で帰るだけ、簡単なお仕事で大変に助かることこの上ない。

 早く始まらないかと思っているとユキヤとクレハの姿を見つけて声をかけようかと思ったが、それにもう一人紋付き袴姿に長い黒髪をポニーテールで纏め、額には一本の角を生やした鬼人族美女がいるのでちょっと様子を見ていると、ユキヤがクレハに断りを入れてからスレイたちのもとにやって来る。


「ようヒロ。お前その格好結構似合ってんな」

「そっちもな。洋装なのはちょっと意外だったけどな。着物じゃなのか?」


そういうユキヤの格好はスレイと同じような黒いテールコートに、先日会ったときに身に付けていた仮面を身に付けていた。


「姫にも言われたが、今さら着物を着る気にはなれねんだよ」

「とかなんとか言ってどうせそっちの方が楽だからだろ?」

「まぁな。ってか、俺んとこの家は十年以上前に焼けちまったから家紋すら残ってねぇもんでね」

「悪かったな変なことを聞いて」


 ユキヤは笑って許してくれたが事情は前に聞かされている。それを知っていながら無神経過ぎたとスレイは反省しているとクレハと付き人の女性が近寄ってきた。


「お久しゅうみなはん」

「クレハ姫お久しぶりです」

「相変わらず九歳児には見えないわねこの姫様」


 アニエスがクレハの子とを見ながらそう呟くと、後ろに控えていた着物を着た女性が間に入った。


「姫への非礼は拙者が許さぬでござるよ?」

「「「ござる!?」」」


 これまたキャラの濃い子が出てきたと思ったスレイたちは、ある意味日本に近いドランドラらしいしゃべり方かもしれない。


「これ朱鷺芽!皆はんはうちの旦那はんのお友だち。つまりはうちの友だちと言っても過言やあらへんのや!」

「うぐっ、拙者が悪かった。申し訳ない」

「いやわたしもお姫様に生意気な口聞いてごめんなさい」

「かまへんかまへん。うちの方が年下なんやしタメでええんよ」


 さすがに使用人としての仕事をしているアニエスからするとそんなこと出来ないので、いつも強気なはずのアニエスが狼狽えた様子でスレイとユフィに助けを求めてきた。


「クレハ姫、アニエスが困っていますのでどうかお戯れはお控えください」

「あら~。残念やなぁ~」


 なんだかユキヤの周りにはキャラの濃い女性が集まっている気がするスレイだが、それはスレイも同じなので口に出した瞬間にユキヤからツッコミを受けたことだろう。


 そんな感じで話をしているとようやく国王代理のデボラ皇女の挨拶と、世界を悪い魔王──ここでスレイたちとクレハたちが吹き出しかけた──と亜しき神より世界を守るべく召喚された勇者佐伯 劉鷹が紹介され恥ずかしそうにしながらもみんなに一言。


「みなさん。俺たちはみなさんの世界を救うべくこの世界に来ました。どうか安心してください!かならず邪悪な魔王と神を倒し、俺たちが再びこの世界に光を取り戻すと誓います!」


 不安もなにも世界のみなさんに魔王の復活は知らされていないし、その魔王もなにも悪さをしているわけではない。そもそも魔王さますぐ近くにいるっていうのに神様はなにも言わない時点でおかしなものだ。

 そう思っていると


「皆さま。ユタカさまたちは近々、我が国が保有するダンジョンにて最後の修行を行ったのちルーレシア神聖国の聖女さまと共に復活した魔王を打つ旅へと出発なさいます!今夜はその門出を祝した祝いの席、みなさまどうか存分にお楽しみください」


 デボラ皇女の乾杯の音を聴くと同時にスレイたちはワインのグラスを片手にバルコニーで夜風に当たっていた。


「どうすんだ魔王さま。最初の標的にお前が選ばれたぞ~?」

「知らねぇよ。ってかあのクソ野郎散々てめぇんところに使徒を送り込んどいて今度の標的は俺って」

「お前が極悪非道なロリコンの魔王だからだろ?」

「ヒロ。てめぇ今ここでなますにされてぇのか?」


 ユキヤが空間収納から黒刀を抜こうとするのを見たが全く気にしない。だって殺気がないからだ。


「冗談はさておき、ユキヤくんはどうするの?ドランドラにはいられないでしょ?」

「あら。うちは問題あらへんよ。旦那はんのためでしたら世界でも相手に戦争するつもりやさかい」

「姫、その折は是非とも拙者もお供させていただきたく。拙者の技が世界の剣豪相手にどこまで通ずるのか武士の血が騒ぐと言うもの」

「いやいや、あんたは止める側でしょ」


 武人としてはそれでいいかもしれないが護衛としてはどうなのだろうか、スレイたちがトキメにそんな感想を抱いていると冷静なアニエスのツッコミをスレイとユキヤはうんうんと頷いている。


「どうする、お前出ていかなかったら世界大戦の引き金を引くことになるぞ?」

「やなこと言うんじゃねぇよ」


 スレイとユキヤがいつものように軽口を言い合っていると、バルコニーに誰かが来たので結界を解いてその場を去ろうとしたが、どうやらゾーイのようだ。


「スレイ、ユフィもアニエスもこんなところにいたんだ。ずっと探してたんだぞ?」

「すみませんね。せっかく来たんですけどこういうばの空気はどうも苦手で、それでみんなでこちらに来たって訳なんです」

「敬語は止めてって前に頼んだけど……まぁいいや。それよりもスレイたちにちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」

「私たちに?」

「うん。それでさぁ、悪いんだけど会わせたい人がいてさ、ぼくについてきてもらってもいいかな?」


 正直今の話をしていたせいでユキヤたちの側を離れるのはいささか不安があったが、ゾーイの頼みなので行くことにした。



 案内されたのは城の中ではなく別の場所にある離宮だった。そのためまさか馬車で移動するはめになるとはさすがに思っても見なかったが、離宮に着くなりメイドや執事がゾーイを出迎えるなか、側の木々の上や屋根の上などから殺気を放った刺客みたいなのがいる。


「なぁゾーイ確認だけど、ボクたちをちゃんと無事に帰してくれる気は有るんだよな?」

「なに言ってんの?殺すつもりならとっくに殺ってるよ」

「かなり物騒なことを言うわね………わたし、結婚もせずに死にたくはないわよ」

「いや、殺さないし。彼らはぼくの護衛だから、キミたちがぼくに何かしない限りそれはない」


 護衛のはずなのになぜかバンバンにスレイに殺気を放っている。殺気を殺気で返してやろうと考えていたが要らぬ喧嘩はしない方がいいのでなにもせずにゾーイの後を追っていこうとしたその時、背後から覚えのある気配を見つけたスレイは大きなため息を一つつき腕に竜燐を纏った次の瞬間。


「はい。捕まえた」

「むっ。つかまってしまった」


 スレイの脇に抱えられるようにしているのはヴァルマリアだった。彼女の登場にさすがのゾーイや護衛たちも驚いたが、同じく気配と匂いを感じ取っていたユフィとアニエスにはさして驚きはしていなかった。


「マリア。あんたどうやって付いてきてたの?」

「もちろん飛んできた」

「じゃあねマリアちゃん、もう一つ聞くけど………スーちゃんとセドリック殿下はどうやって連れてきたの?」


 そう、この場にいるのはヴァルマリアだけではない。後ろの木の枝の上にはスーシーとセドリック殿下がまでこの場所にいた。

 ついでに付け加えると、セドリック殿下は高いところが苦手なのか幹にガッシリとしがみついていたので、竜翼で飛んだスレイが下ろしてあげた。


「スーはわたしが、セドリックはドラちゃんがかかえて飛んできた」


 ドラちゃんとは決して未来から来た青いネコ型ロボットなどではなく、前にスレイがヴァルマリアのために作ったゴーレムのことだ。


「おねえちゃん!おそらとんでたのしかったの!こんどにぃにと、とんでみたいの!」

「ダメよ。ってかこれって王子誘拐罪とかにならないわよね?」

「あぁ~、どうだろぉ~……ねぇゾーイくん。王族だからわかるよね?」

「………………………………………」


 ゾーイくん、ソッと目を反らした。

 つまりそういうことらしい。


「セドリック殿下、すみませんかサードをお借り出来ますか?」

「いいぞ!ほら、出ておいで」


 セドリック殿下が空間収納を開くと一体の蝙蝠を模したゴーレムが飛び出てきた。


『よお~うスレイ!久しぶりだな、元気にしてたか?』

「なっ!?ゴーレムが喋った!?」

『なんだ~、俺様がしゃべっちゃいけないってのかいお嬢ちゃん?』

「お嬢っ……ぼくは男なんだが」

『おっと!こいつはすまねぇな。俺様はリリアック・サード。気軽にサードって呼んでくれ!』

「スレイ、なんなのこいつ?」


 スレイはゾーイたちに簡単にサードについて説明して、サード越しにクライヴ陛下の持つセカンドに伝えてもらおうと思ったが


「その必要はありませんよ」


 みんなが声のした方に振り向くとヴァルミリアがいたのだが、ユフィたちの顔には疑問の色が出ていた。


「ねぇユフィ。ヴァルミリアさまの気配に気付いた?」

「ううん。全然わからなかったよ………」


 気配には敏感のはずのユフィと、匂いや物音に敏感なはずのアニエスがここまで近付かれなければ気付かなかったが、実はスレイはヴァルミリアの気配に気づいていた。


「おかあさんどうしているの?」

「あなたたちが出ていくのが見えましたから追ってきました。それに二人には事情を伝えてあるので問題はありませんが、マリア。あなたは帰ったらお説教です」


 ヴァルミリアのお説教宣言をされたヴァルマリアだったが特に答えていないどころか、ゾーイのことをジィ~っと見ていて全く聞いていなかった。


「えぇっと、マリアちゃん?お母さんが凄く怒ってるけど聞かなくていいの?」


 ユフィがヴァルマリアに声をかけたが、どうやら聞こえていないらしい。子供にじっと見つめられているゾーイはどうしよう?みたいな顔をしていると、突然ヴァルマリアが飛びあがりゾーイにしがみついた。


「えっ!?えぇ!?」

「こらマリア。やめなさい」


 ヴァルミリアがゾーイにしがみついているヴァルミリアをひっぺがし、ヴァルミリアが娘の非礼を詫びている。


「マリアちゃん。どうしたの?」

「わかんない。でもあのおねえちゃんからなつかし匂いがした」


 懐かしい匂いとはどういうことか、スレイたちはその答えを知っていそうなヴァルミリアの方を見るが、ヴァルミリアは小さく首を降っているので語る気は無いのだろう。


「予定よりも人が増えちゃったけど、みんな。ぼくに着いてきてもらうよ?」


 ゾーイの後をみんなで着いていくと一つの部屋の中に案内されると、そこには病気のため痩せ細った初老の男性と年若い女性が一人いた。


「紹介するよ、ぼくの父と母だ。どうしてもスレイに話があるって言われてさ、こんな形で紹介することになったのは謝るよ」



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