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楽しい一日

 目の前で親友であるユキヤが和服美女に迫られているのを見て、スレイはムカッとしていた。

 別に親友が和服美女に迫られているから羨ましい、とか言う理由ではなくただユキヤの場合家の妹の件もある。

 ちゃんとそこのところを精算してくないと、お兄ちゃんからしたら可愛い妹の恋路をちゃんと応援したいし、いくら親友だからと言ってもそこのところはしっかり答えを出して欲しい。ダメならダメでミーニャに気持ちを伝えてもらいたい。

 まぁ、そんなわけでミーニャを差し置いて他の女の子に手を出しているような親友はここで斬る。


 空間収納から黒幻を取り出したスレイはポンポンと肩を叩きながらユキヤを見る。


「おいユキヤ、お前妹のことほったらかしにしてなに別の女の子、手ぇ出してんのじゃ」

「まてまてお前なにキレてんだ!?ってか、てめぇの妹ってミーニャだろ?俺は何もしてないんだが……」

「うるせぇ、人の妹をたぶらかして放っておいたあげく、新しい女の子に迫られてるお前は、親友であるボクが直々に成敗してやるよ──さぁ、お前の罪を数えろ」


 例え相手が魔王であったとしても、妹を泣かせる悪党には鉄槌を下す。それが兄である自分の役目、っと言うわけでスレイは鞘に収まったままの黒幻を振り下ろすと、ユキヤはずっと片手で持っていた黒刀で受け止める。


「てめぇ!こんな場所で斬りかかってくる奴があるか!」

「うるせぇ、妹を泣かせる奴には容赦はせん。そんなわけで、大人しくボクの剣の錆びになれ」

「誰がんなもんになるかってんだよ!」


 スレイがユキヤに向かって垂直に構えた剣を突きつけると、ユキヤは黒刀の鞘でなんとか突きをさばききった。だがそれでユキヤにも火が付き、ついには二人して剣劇が激しさを増していった。


 ついでに言うとスーシーとエンジュが、スレイとユキヤの喧嘩というよりバカみたいな理由での戦いを楽しそうには見ながらしゃいでいる横で、他のユフィたちはただただ、しらぁ~っとした目を向けているのだった。

 一応ゾーイからはここは人があまり来ないと聞いていたが、心配になりノクトとラピスがサイレンスの結界をはってくれた。

 なにやってんだろうな~っとスレイとユキヤを見ていたユフィは、隣に移動してきたアカネを見て頭を下げる。


「ごめんねアカネ。うちのスレイくん、ミーニャちゃんのことになるとすぐにあぁなっちゃうから」

「いいわよ。ミーニャのこと放っておいたレンカが悪いんだし……まぁそれは置いておいてそこにいるお二方、なんだか違う方向で口論がヒートアップしてるわよ」


 そう聞いてユフィがそちらを見ると、リーフとレティシアの二人がパチパチと火花を散らしあっているゾーイと紅葉に、おろおろとしながらどうにか落ち着かせようとしている。


「ええでっしゃろゾーイ殿下、うちの将来の旦那はん。豪快でそれでいて繊細な太刀筋、あぁん!さすがはうちのお慕えする旦那はんやわ、もう見てるだけでここが切なくなるわ」

「ふん。そんなのよりもぼくの親友のスレイの腕前を見てください。あれを見てもそんなことが言えるんですか?」


 なんだか変な言い間をしている中、いくら人が来ないからと言ってもそろそろ止めようと思ったユフィとアカネは、リーフとレティシアに二人を止めるように頼むが、それをする前にスレイとユキヤの喧嘩は終わってしまったので、二人とも必要なくなった。


「お前、この仕事が終わったらマジで一回ミーニャと話せよ?でないと次は斬るからな?」

「………分かったよ」


 喧嘩をやめるためにスレイとこの仕事が終わったら、マルグリット魔法国に行きミーニャに会うと約束したユキヤは、もう絶対こいつを怒らすようなことはしないと決めたが、まだもう一つ別の喧嘩が終わっていなかった。


「あんさん意外に強情やのぉ、ええかげんにみちめなはればよろし、うちの旦那はんの方が強くて魅力的なお方やってな!」

「ふん、そっちこそ。ぼくの親友は最高にかっこよくて強いんだって認めなよ!」


 喧嘩を終えたスレイとユキヤは未だに喧嘩をやめていないゾーイとクレハを見ながら思っていた。お前らなにしているの?っと、ついでにユキヤはスレイにこいつ男から好かれてるのか?っと、ちょっとだけスレイから距離を置こうとしていたりもする。


「しかしお前、そんな無愛想な顔して意外とモテるのな。あんな和服美女どうやってモノにしたのか、めっちゃ気になるところなんだが……まさか洗脳系の魔法を使ったとかか?」

「無愛想で悪かったな、この目付きは生まれつきでどうしょうもならねぇんだよ。それと姫をものにしたと言うか、なんか勝手に惚れられた……言っていくが手を出した瞬間に俺は社会的に死ぬからな?」

「まぁ、帝の娘だからな、平民のお前が手を出したら打ち首か切腹申し付けられるな」

「それもあるんだが、クレハ姫なあれでまだ一桁代なんだ。確か今年で九歳と言われたな」


 ピシャリとユキヤの呟きを聞いたスレイ、そしてユフィたちとゾーイに一斉にその衝撃がほとばしるとその視線はすべてクレハに向かった。そして、ユキヤによって年齢をバラされてしまったクレハは、恥ずかしそうに頬を染めながら


「もお、堪忍やわぁ旦那はん、乙女は年齢と体重は秘密やのにそんな大声だして。これはもう、うちのことを嫁にもろおてくれなあきまへんな~」


 年齢について否定しないどころか、恥ずかしそうにしている辺りで本当のことだと分かる。ついでにスレイは魔眼を使って嘘を言っていないか調べてもたりしたが、真実しか言っていないのを見て絶句していると、お前の気持ちはよく分かると、同じことを思ったらしいユキヤとアカネ、そしてレティシアの三人が頷いていた。

 ついでに付け加えておくと、クレハが幼子でありながら驚異的なプロポーションを誇っていること、そしてたわわに実った二つの胸の膨らみを見て、胸に自信のないノクトとライアが自分の貧相な物に手を当てると、認めたくない現実を認めて膝から崩れ落ちてしまった。


「ふふふっ、わたしたちって九歳児の子供にも負けてしまうほど貧相なんですねライアさん………」

「……ノクト、これが持つものと持たざる者の違い。悔しいけど敗けを認めるしかない」


 二人が悔し涙を流している横で、歳の割に胸のあるラピスとアニエスはまだ大丈夫と安心しているが、クレハはまだ九歳ということはこれからもっと成長するかもしれない。


「ねぇラピス。わたしたちはその…………まだ大きくなるわよね……きっと」

「えぇ。大丈夫ですわアニエスさま。わたくしたちはまだ十代の前半ですからね……希望はありますよ」


 十五才のラピスと十三才のアニエス、二人ともまだまだ大きくなると信じていたいお年頃なのだ。


 年下組の四人が一様にダメージを受けているのを見ていたスレイたちだったが、ここでいきなり大勢の鎧の兵士たちがやって来た。

 まさかさっきの喧嘩を見られて衛兵を呼ばれた!?っと思ったユフィとアカネが、スレイとユキヤの首根っこを捕まえて取り押さえると、頭を押さえつけて土下座をさせようとしたが……


「ゾーイ皇子!至急我々と共にお越しください!」


 ゾーイの目の前で頭を垂れる兵士たちを見てユフィとアカネは良かったっと胸を撫で下ろす。


「何があったかを話せ」

「はっ!申し上げます!デボラ皇女殿下よりゾーイ殿下に至急王宮にお戻りになられよとのことです」

「叔母上がぼくを呼んでるのか……また何かやらかしたのか?………まぁいい。用件は分かったがどうやってぼくの場所を知った。行き先は誰にも言っていないはずだが?」

「殿下のお顔は国の住人ならば視間違いようございません。ましてやこの街の住人ならばなおのこと」

「ちっ。今度からは帽子でも被るか」


 一度舌打ちをしたゾーイは申し訳なさそうな顔をしながらスレイの方を見る。


「ごめんよスレイ。予定が出来ちゃったから今日はこれで。服はまた明日にでも返しに行くから」

「はい。ゾーイ殿下、またいつでもお待ちしております


 公の場ではないが王族であるゾーイに向けて丁寧に返すスレイ。これにはゾーイも寂しそうな顔をしたが仕方がない。それからゾーイは紅葉にも同じ挨拶をして帰っていった。

 残されたスレイたちはこれからどうするかを話し合い、観光スポットもゾーイおすすめの場所も全部回ってしまったのでもう見るところもない。じゃあどうしようかと言うことになったところで、遊び疲れたらしいスーシーとエンジュがうとうと船を漕ぎ始めてしまった。


「ちょっとスー!あんた、こんなところで寝ちゃうと風邪引くわよ?」

「うぅ~、ねむいの~。おねえちゃんだっこ~」

「しょうがないわね。ほらこっちに来なさい」


 まだ六歳なのでお昼寝はしたいお年頃、アニエスは腕の中でスヤスヤと寝息を立て始めたスーシーに優しい目を向けている。ふと、同じタイミングで寝落ちしかけていたエンジュはどうなったかのかを見ると、レティシアの腕の中で静かな寝息を立てていた。

 こういうのは失礼かもしれないが起きているときはアカネにベッタリ……とまではいかないが、どちらかというとレティシアよりもアカネにくっついているエンジュだが、眠るときはアカネではなくレティシアなのだなっと思っていると、その視線から何が言いたいのかを察したアカネがスレイたちに向かって答える。


「この子、眠るときはレティシアの方がいいみたいなのよね。何でかはわからないけど」

「アレではないか?妾の中には魔王の血が流れておるからのぉ。こうすることでエンジュは妾の中に居るリュークのことを感じられて安心するから……っと、勝手に考えておる」

「……単にその胸が安心するから、なんじゃないの?」

「わたしもそう思います。子供って母性の象徴に引かれますもんね」


 話を綺麗に話をまとめたな、そう思ったスレイたちだったがノクトとライアには通じなかった。っと、言うよりも胸の大きい女性に敵対心を持っている二人からすると、巨乳の分類に入っているレティシアも十分敵と見なせるらしい。

 そして、レティシアよりも胸の小さいアカネはこれぞ真実と言わんばかりの正論を聞かされ、柄にもなく落ち込んで居るのだった。


「なぁ。お前の女二人、なんかこう……巨乳に対する恨みが深すぎやしねぇか?」

「それは前からそうなんだけど、二人とも胸よりも魅力的なところがあるのになぁ~」

「へぇ~、あのちびっ子二人の魅力ねぇ~どこなんだよ?」

「教えてもいいけど、お前もアカネの魅力を言えよ?」

「ったく、しゃあねぇな言うから教えろよ」


 ここで話すのは不味いと思ったスレイとユキヤはチラリとみんなのことを見て、全員スーシーとエンジュの寝顔を見るのに忙しそうだが少し離れたところに移動した。


「そうだな……やっぱりノクトは腰からヒップのラインが魅力的だし、小さくて丸いお尻がなかなかそそる。ライアはあの瑞々しい手足だな。触るとまるで吸い付くような感じですでいつまでも触り続けられるからちょっと困る」

「はぁ~そいつはまた」

「おい、お前もちゃんと言えよ」

「わ~ってるっての。そうだな……アカネは腰のくびれやムッチリとした太ももだな。俺と一緒に鍛えてるはずなのに触るとスッゲェ柔らけぇんだ」

「それ分かるな。ユフィもリーフも良く走り込みを一緒にするんだけど、触っても柔らかいし膝枕してもらったときもすごく柔らかい」

「だよなぁ。レティシアも胸は当たり前なんだが尻がメッチャ柔らけぇし……それよりも他の女はどうなんだよ?あの狼人族の女と蒼髪の女の方」

「そうだな~……ラピスは絹のようなきめ細かいあの髪だな。アニエスはすらりと長い脚が綺麗だ」

「なんだよ。てめぇ脚フェチだったのか?」

「違うし今ので脚フェチなら、お前だって太ももフェチや尻フェチになるんじゃないか?」

「そりゃあ、あいつらの魅力的な場所なんだから仕方ねぇだろ」

「それならボクもそうだけど」

「だよなぁ~」


 スレイとユキヤは真顔でエロトークを続けている。その背後では顔を真っ赤にした嫁たちが聞き耳を立てておるとは知らずに……


「そんで、お前胸はどうなんだよ?やっぱデカイ方がいいと思ってるのか?」

「なに言ってるんだユキヤ。胸は大きさより形だ。世の中の男は女性の胸を大きさだけでしか見ないが肝心なのは形だとボクは思うね。小さくても美しい形をした胸をもっと知るべきだと思うんだ」

「はっ、分かってるじゃねぇかヒロ。確かに男って生き物はデカイ胸に惹かれるもんだが、あえて俺はその言葉に異議を唱えよう。例え胸がデカくても形が悪ければそんなのただの脂肪の固まりだとな」

「あぁ。そうだよな。さすがはボクの親友だ」

「はっ。そっちこそ。さすがは俺の親友だな」


 ここに男同士の熱い握手が交わされる。

 例えそれが、個人的な観点からのエロトークだとしても、そこでわかり合えたとき男の友情と言うものは固く、そして強く結束することが出来るのだ。


 ただし、それは周りに自分たち以外、特に自分の嫁がいる場合はどうなるか……


「スぅ~レぇ~イ~くぅ~ん~?」


「レぇ~ン~カぁ~?」


 ビクッと握手をしたままの姿勢で固まっているスレイとユキヤは、ギギギッと音を鳴らしながら後ろを振り替えると、笑顔だったり、怒っていたり、目を伏せていたり、表情は全員違うが共通していることで全員顔を真っ赤に染めてその手にはハリセンを持っていることだ。


「あの……とりあえずみんなその手に持ってる物を置いて話し合いませんか?」

「お前ら、目が怖ぇんだけど?」


 スレイとユキヤが後ろにたじろぐがみんなからの返答はない。


「とりあえず、逃げるぞユキヤ!あのハリセンはかなり不味い!」

「逃げるってどこにだ!?」

「知るか!とにかいく──」


 スレイが逃げることを提案したが逃がさないように、ユフィが魔法で、アカネが硬糸で二人を拘束していた。


『『『『『逃がすか!』』』』』


 全員が一斉に動くとスパン!っと大きな音が鳴り響き


「「いってぇええええ―――――――――――――っ!?」」


 街中にスレイとユキヤの叫び声が鳴り響いたのだった。


 ついでにそれから五日ほどスレイとユキヤはみんなと口すら聞いてもらえなかったのだった。

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