表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
242/408

再会と思惑

ブクマ登録ありがとうございます!

 ユフィたちと別れたスレイは、先程の見た人物の気配を探して今来た道を戻りながら街の中を歩いていると、すぐにその人物の気配を見つける。


「あれかな?」


 視線の先にいるその人物は、旅をして薄汚れたマントを来て、雨よけよ黒いフードを深くかぶっているせいで顔はよく見えない。

 建物の壁を背にして休んでいるのではなく誰かを待っているようにも見える。

 スレイもその人物から少し離れたところで立ち止まり建物を背にして立つと、結界もなにも張っていないことに気がついた。

 周りにこれから話すことを聞かれないようにするためにサイレンスの結界を張ると、顔をあげた男が結界を見ながら呟いた。


「俺と話すためにサイレンスの結界を張るなんて、お前そんなに用心深い性格してたか?」

「別に、魔王のお前が勇者様のいる国で全く警戒していないみたいだから、用心のために使っただけだよユキヤ……ところでお前、なんでまた仮面なんかつけてるんだ?」


 そうマントの男はユキヤだったが、顔はクロガネと名乗っていた時と同じように仮面で隠されているが、以前のように顔をすべて隠してはおらず目元だけを隠しているタイプの仮面を着けている。


「今、仕えているお方のご命令でな、もしもの時のために顔を隠しておけとな」

「仕えているお方?まさかまた」

「違ぇよ。前に話しただろ、俺の親父がドランドラで帝に使えていたとな。そのツテを使って今回のパーティーに入ることにした」


 そんな話を前にユキヤから聞いたなと、スレイは思いながら街のそこら中に貼られているパーティーの告知の張り紙、あれには確か次のパーティーでは大陸中の王族が集まると聞いていたはずだ。

 そこにドランドラの帝までも来るんだなと、思いながら話を聞いているとユキヤのことを見ながらスレイはどうやって帝との協力を結びつけたのかを聞いてみた。


「その仮面、本当にそれだけの理由か?」

「何が言いたい?」

「目の部分に認識阻害の魔法をかけてある。魔道具だろ、それ」

「ちっ……あまり人には見せるなと言われているが、お前になら問題はないか」


 信頼してくれるのはうれしいが、そんな重大なことを勝手に決めていいのかと思っていると、ユキヤは仮面を外して右目を見せてくると、そこには幾何学な模様が浮かび上がったかと思うと、すぐに元の目に戻し外した仮面をつけ直した


「魔眼……じゃないよな、まさか写◯眼か!?」

「なわけあるか、バカ言ってっと張った押すぞ」


 地球の大人気忍者漫画の主人公のライバルの目の名前を言ったらユキヤに怒られた。まぁ、スレイも分かって言っているのでそこまで気にはしなかったが、その目はいったい何なのかを問いかけるとユキヤはもう一つ別の物見せてきた。

 それはスレイも見覚えの有るものだった。


「それは刻印か」

「あぁ。知ってるってことはヒロ、お前も持ってるのか?」

「ヴァルミリアさまの刻印だよ、ユキヤの前に会ったことあるだろ。それと、あんまり口に出しては言えないけど、暗黒竜ウェルナーシュの刻印だ」

「おいおい、伝説の竜の刻印を二つも、ってヒロ、お前どうやってウェルナーシュの刻印を手に入れた」

「話せば長くなるし、実はお前もそれを見てるから後で話すことにするとして、それで結局お前のそれはなんだよ?それとさっきの目についても教えろよ」

「お前、ドランドラに住まう鬼の話を聞いたことはないか?」


 ドランドラの鬼と聞いてスレイは昔、実家に居たときに妹たちのために読み聞かせたおとぎ話──もちろん父フリードの所蔵本──に、鬼の出てくる話が会ったなと思い出した。


 確かあの本は、鬼という理由で迫害を受けながらも、人に憧れていつしか人になりたいと願っていた心優しい鬼が、ある日神様から百の善行を積むことにより人になることを許される話だが、その最後で助けた人族に裏切られ死んでしまうという話だ。

 さらにこの話には続きがあり、死した後、神々の世界に招かれた鬼の魂はただ鬼だったという理由から地獄へと落とされ、そこで何百年もの間想像を絶するほどの苦しみを味わい、いつしか心の優しい鬼は姿だけではなく心までも鬼へと変えてしまい、地獄から自分を裏切った神々への怨みの叫び声をあげているそうだ。


 その話を簡略化して話していたスレイは昔のことを思い出していた。

 あれはまだミーニャが小さかった頃だったか、せがまれてこの話を読んであげたときに鬼が可哀想といいながら泣いて、それでいじめたと勘違いしたジュリアからしこたま怒られた。

 誤解が解けた後、フリードになんでこんな本があるのかと聞いたら、珍しい本だから買ったが余りにも酷い話であまり読んでいなかったそうだ。

 そのあとは確か、ミーニャに大不評だったからという理由で古本屋に売ってしまったと言う。

 そこまでを話すとユキヤはウンウンとうなずきながら


「って、その鬼じゃねぇよ!」


 軽快なユキヤのツッコミにスレイはパチパチと拍手をしてしまった。


「よくボクが最後まで話終えるまでツッコミを待ったな」

「テメェが話したのは作り話で、俺が言ってんのは本物の鬼だ。地球でもあっただろ?」

「あぁ。ってことはそれって鬼の刻印なのか?」


 なにも言わずにうなずいたユキヤを見て、鬼って実在したのかと密かに会ってみたいかも何てことを考えていると、今度はユキヤの方から質問を投げ掛けてきた。


「そんでヒロ、テメェはなんでここにいる。単なる観光って訳じゃないんだろ?」

「お見通しですか」

「それにさっきテメェらがつれてた奴、あれはこの国の第一皇子だろ。どうやってこんな場所に連れ出した」

「ボクは仕事だよ。レクスディナさまの代理でパーティーに出席するためにね。それとゾーイ殿下については、完全にあの人の方からここに来たんだよ」


 スレイはユキヤに事情を説明していると、どうやら一度ゾーイとは顔を会わせているそうだ。

 その時にはもっと大人しい印象を持っていたそうで、今のスレイの話を聞いて少しだけ印象が変わったそうだが公務の時のゾーイを見たことがないスレイはその姿をイメージは出来なかった。


「そう言えばヒロ、お前異世界から来たって勇者と、その仲間にはもう会ったのかよ」

「あぁ。昨日ね。ついでにその内の一人に出会い頭にぶん殴られて治療院に連れていかれた」

「バカ言うんじゃねぇよ。テメェが殴られて治療院行きだ?竜の治癒能力があるんだから必要ねぇだろ?」

「ボクのことをよくわかってるじゃん。まぁ、治癒能力云々は良いとして、クライヴ国王陛下のご命令でデボラ皇女とボルディア殿下のことを聞きに行かされたんだよ。ついでにユーシス陛下のことなんかもね」

「お前、いい具合に使われまくってるな」


 ユキヤにそう言われたようなことと同じようなことを思っていたスレイは、へへへっと苦い笑みを浮かべながら笑っている。


「それでそっちはどうなんだ?勇者さまに早速魔王だってバレて聖剣で斬られたとか?」

「会っていない。なんでも訓練で忙しいんだとさ………ところでお前、勇者に会ったならなにかおかしいこと……いや、なにか変なことはなかったか?」

「変なこと?……そう言えば、なにか変な感じがしたような気がするけど、それを考えてたら殴られたり蹴られたりしちゃったもんでね、すっかり忘れてしまいました」

「てめぇ、いっぺん死ぬか?あぁ?」


 怒ったユキヤは空間収納から黒刀を取り出すと、スチャっと黒刀を抜いてスレイの首もとに当てる。

 スレイは空間収納からグローブを取り出してはめると、黒刀の刀身を下ろさせる。さすがは冒険者が多く存在する区画、いきなり武器を抜いても騒ぎにならないのはいいところだ……いいところなのかな?

 刀を下ろされたユキヤは流れるような動きで鞘に納めると、そのまま手に持ちながら腕を組む


「そんなことより、その質問にいったい何にか意味があるのかよ?」

「ちっ、お前にちょっとだけ期待してたんだが俺の宛が外れたみたいだ」


 壁から離れたユキヤを見てスレイも同じように離れると、その後を追うように歩き始める。


「なぁユキヤ、ボクから一つ質問させてもらうがお前はどうして帝に取り入ってまで、この国に来ようとしたんだ?」

「決まってるだろ、アルメイア王家に神のことを話すつもりだった。俺がアルメイア王家と話せる可能性があった唯一使えるコネが帝だったってだけで、対して理由はねぇよ」

「それは、神に対抗するためか?」

「そう………っと言いたいところだが、あのクソ野郎が別の世界から勇者を召喚しやがったせいで計画は全部パア。しかも、その勇者たちが呼ばれた理由は魔剣を継承した俺と、魔王を現代に復活させた悪神、つまりお前らが匿ってるアストライアを討ち滅ぼすことだとよ」


 なんだかユキヤがやけっぱちにでもなったように話しているが、サイレンスを使っていないので周りに聞こえていないことを祈りながら、スレイは心の中でユキヤの話に出てきた勇者が呼ばれた理由に感心した。


「へぇ~、勇者が召喚された理由てそうなってるんだ」

「んだよ、聞いてねぇのか?」

「あぁ、そこは次のパーティーで大々的に発表するとか言われたらしいから、今のお前の話は一応聞かなかったことにしておくよ」

「構わねぇと思うが、ところで勇者ってのはどんなんだったんだよ?」

「どんなのって、勇気に溢れて正義感が強くて、まさにラノベなんかに出てきそうな勇者だった。自分の信じたことを愚直にも信じすぎて、後で取り返しのつかなくなるタイプだね、ありゃ」

「はっ、クズが勇者に選ばれてたら速攻で殺してでも聖剣を奪ってやったのにな」

「クズはクズで面倒だよ。自分の身が危険になったら全てを投げ出してでも逃げるし、よく聞く定番の、勇者よ我が軍門に下れば世界の半分をくれてやろう、ってのにも喜んで食いつきそうなイメージあるから」


 そもそもこういうのは魔王の台詞なので、もしも勇者と戦うことになったら勇者に言ってみてくれないかとユキヤに頼むと、手加減なしで一発ぶん殴られ痛かった。


「今思うとラノベの勇者って爽やかイケメンが多いよな。学園でモテモテだったりとか」

「あぁ~そんな感じだったな。制服を着てたから高校生みたいだし」


 その言葉でユキヤの足が止まったのを見てスレイは、そう言えばまだ勇者にあってなかったのだと思いだした。


「おい……まさか、その異世界人、地球から来たんじゃないのか!?」

「あぁ。そうみたいだけど一つ訂正すると、ボクたちのいた地球とは別の地球らしい」


 昨日アストライアに尋ねた。あの勇者たちはスレイたちが元いた地球の、日本から召喚されたのではないか、そう尋ねたところアストライアの返事は、それはないと帰ってきた。

 アストライア曰く、勇者たちはスレイたちにいた地球とはまた違った別の神が管理する、別の次元の地球から呼ばれたのではないか、っと言われた。

 別の次元とは何なのかと言うと、なんでも世界は見えない糸で繋がっているような物らしく、その糸で繋がった世界を一つの括りとした場合、その括りの外にある世界を別次元の世界、つまりはパラレルワールドとなるらしい。


「つまりは平行世界の地球から来た勇者って訳ね」

「そう、だからもしかするとなにかヤバイ能力とか持ってきてるかもしれないよ」


 もしも戦うとなったら注意しないといけない話し合いながら、スレイとユキヤが同じ道を歩いていくが、いったいユキヤはどこまで行くのだろうか?


「なぁ、そう言えばアカネたちとは一緒じゃないのか?」

「一緒だぞ、ほらあそこだ」


 話していたせいでわからなかったが、いつの間にか広場の方に戻ってきていたようだ。そしてユキヤの視線の先ではユフィとリーフ、それにラピスがアカネとレティシアと楽しそうに話しており、そしてユキヤたちの娘のエンジュとスーシーが仲良く遊び、ノクトたちが二人のことを見ている。

 その中で、スレイはある一人の姿を見てユキヤに問いかける。


「なぁ、あの和服美人、誰?」

「………俺の雇い主の娘だ」

「あの額の角って、もしかして鬼人か?」


 鬼人族とは竜人族と同じように鬼の血を受け継ぐ一族であり、その特徴としてはエルフのように耳が尖っているのともう一つ、額に角があると言うことだろう。


「帝って鬼人族なんだ」

「あぁ。ちなみに今の帝は女だ」


 それは珍しいと思いながらスレイは話を聞いていた。

 確か国によっては王女が国を継ぐこともあるが、それは少数でしかなく少なくとも地球での帝は男しかいなかったはずだが、やはりそこは異世界なのだろう。

 そう思いならユフィたちの方に近づくと、ユキヤが帝の娘と言ったら和服美女がいきなりユキヤに飛び付いた。


「蓮華はん、もぉ急にどこか行ってしまうんやから、うちとっても心配したんよ?」

「姫、以前から申し上げている通りそのように気安く抱きつかないでいただきたい」

「ええやないですか、うちと蓮華さまの仲やろう?せやからうちのことは紅葉と呼んでくださいまし」

「ですから、そんな冗談はやめていただきたい。あおろそろ俺が帝に殺されてしまいます」

「かまへんかまへん、母さまもうちの言うことやったら許してくださるはずや」


 ユキヤに抱きついている帝の娘だが、スレイはちょっとキレていた。

 お前、うちの妹のことどうするつもりだ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ