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ただいま

遅くなりましたが、ブクマ登録評価ありがとうごいます。これからも読んでいただく皆様には楽しんでいただける物語を作って行きますので、どうかそれからもよろしくお願いいたします。

今回は前の話の続きですが、次回からは日常の話を書いていくつもりです。後数話でこの章を終えるつもりですので、もう少しお付き合いください。

では今回もお楽しみください。

 死霊山から帰郷したスレイは、ユフィと共に両親の闘いが収まるのを待っているた。


「何で山から帰ってきたら両親がガチの喧嘩してるん?」

「さぁ、わかりません」


 遠くで喧嘩が収まるのを待っている二人を、現実から逃げていたクレイアルラが気づいた。

 そこからは速かった、クレイアルラが親たちを止めて怖がらせた村の人たちに謝らせた。もちろん誠心誠意、土下座でだ。


 帰ってきて早々に親のしでかしたことの後始末をする羽目になったスレイは、抉れた地面を土魔法で馴らしながら父フリードに向こうであった事を話していた。


「ってな事があったんだけど、いったい師匠はなにやったんだろうね?」


 パンパンッと土で汚れた手を払いながらスレイがフリードに問いかける。

 すると休憩と称してスコップの持ち手に身体を預けてサボっていたフリードが、うねりながら答えた。


「そうだなぁ~。あいつのことだから心当たりがありまくって、返答に困るんだよな」

「ほんとにさ、師匠ってまともな冒険者なの?どこかの犯罪者じゃないの?」


 自分の師匠が犯罪者と言うのは嫌だが、殺害を依頼されるような冒険者がまともな人間とは思えない。

 だが、よくよく思い返してみたらルクレイツアがこの村に滞在していた理由が、暴れたせいでの謹慎だったのを思い出してそっと目を伏せた。


「あいついろんな奴に喧嘩ふっかけまくったせいで、恨みばっかり買ってたからな」

「ほんッと、師匠ってよく冒険者首にならないよね」

「そんだけ腕が立つからな。ソロで一線張れるやつなんてそうそういねぇし、酒とポーションくらいしか金がかからねぇから意外と貴族の依頼が多いんだよ、あいつ」

「ウソでしょ?あの人が貴族の依頼を!?貴族なんざ知るかって、ぶん殴ってを地で行く人だと思ってた」


 ッと言うか実際にやっていそうだと思っているスレイがそう言うと、フリードがクスクスっと笑っていた。


「お前の言う通りあいつ、マジで貴族のボンボン殴りやがってな」

「ハァ!?マジでやってんの!?バカじゃないの師匠!?」

「そう言ってやんな。誰かを助けようとした結果、貴族を殴ってな。本来なら打首は免れなかったんだが、ギルドで精査してその貴族の不正やら何やらが出てきたんで無罪放免ってわけだ」

「えっ、なら何で師匠は謹慎処分になったの?」


 フリードの話を聞いていたスレイが小首をかしげた。

 全部聞いた話では、やらかして謹慎処分になったからと聞いていたが、今の話では特に処分されることはないんじゃないかと思ってしまった。

 しかし、それを聞いたフリードは杖にしていたスコップを持ち上げて肩に担ぐと、物凄い勢いで目を泳がせた。


「実はな……無罪放免になったまではいいんだが、その後ギルドで盛大に飲み会開いて、酔いに任せてギルドを半壊させた」

「あの師匠、酒飲んだらほんッとろくなことやらねぇなッ!」


 まさか無罪からの有罪判決までの経緯があれだったため、スレイの口が普段よりも悪くなった。ちなみにフリードも同じ感想だったらしく、首を縦に振って力強く頷いていた。


「荒くれ者が多い冒険者の間じゃ酒飲んで暴れるなんざザラだぞ……まぁ、酔って暴れて仲間半殺しでギルドの建物倒壊させるような奴、あいつ以外居ねぇけどな」

「父さん、もはや師匠のことかばう気無いよね?」

「あいつとは付き合いは長いが、酒癖の悪さと女癖の悪さ、あと粗暴さだけは養護できねぇんだわ」

「それ、師匠の大半を否定してね?」


 そっとスレイから視線を外すフリードはどこか遠くを見ていた。


「しっかし、それだけやってるなら心当たりがありすぎるってのも納得」

「直接あいつに聞いても分からずじまいだろうがな」

「そういえば、本当に師匠は出てったんだね」


 死霊山にゲートが開かれてから時間にして約四時間ほど、それほど経っていないとは思っていたが、もうこの村の中にルクレイツアの姿はどこにもない。

 本当にいないのだと改めて思ったスレイは、残りの作業も速く終わらせようと地面に手をつき魔力を流しはじめた。


「しっかし今ごろあいつはどの大陸にいるのやら」

「それ、どういうこと?」


 作業する手を休めたスレイは、今の話についでに更に問いかける。

 この国に居ないならわからなくもないが、大陸にいないとはどういうことか、そう尋ねるとフリードは普通に答えた。


「それがな、あいつに指名の依頼が入ってそのまま他の大陸行ったんだと」

「へぇ~。じゃあ、先生が師匠を送ったの?」

「いいや、ギルド専属の魔法使いが直接迎えに来たらしい」

「専属の魔法使い、そんなのいるんだ」


 だがそうだとスレイは思った。

 緊急時に即現場に向かう必要があるときに、ゲートを使える魔法使いが専属でいれば即座に移動出来る。なんてことを考えているとフリードは笑いながらスレイの頭を乱暴に撫でる。


「しっかしゲートが使えるお前やユフィちゃんは凄いよな、ホント」

「いやそんなことは………ってか父さんそれやめて」


 撫でられる度に伸びた髪が目に入って痛いと訴えると、フリードが慌てて手を離した。


「おっと悪い悪い、にしても改めてよく見るとすごい頭だな」

「えっ、あぁうん。手入れなんてできないからね」


 改めて自分の格好を確認したスレイはフリードの言葉に同意した。


 一年もの間、まともに散髪できていない髪は伸び放題で、手入れもなにもしていないためボサボサのぼろぼろになっている髪を後ろで縛って誤魔化しているのだ。


「うぅ~ん。髪、せっかく伸びたのに切るのもな」

「なんだよ、伸ばすのか?」

「そうしようかなって……あっ、でもちゃんと整えてもらってからにするから」

「ジュリアさんに頼んでやってもらえよ。でねぇと女の子にもてねぇぞ」


 二人でたわいもない話しをながらも、着々と後始末の作業を終えていった。


 ⚔⚔⚔


 スレイとフリードが話しながら作業をする場所から遠く離れ、折れた木々の治癒を終えたユフィは一息つきながら母マリーとジュリアにも死霊山であったことを話していた。


「そんなわけです」


 話を終えたユフィは同じように、作業を終えて一息ついている二人のことを見ると、二人共真面目な顔をしながらうねっていた。


「ルクレイツアの命をねぇ~、ありえるわねぇ~」

「心当たりも、あり得すぎて反応に困るわね……」


 なんだか聞きたい答えと全く違う答えが帰ってきたことに今度はユフィは反応に困った。


「ルクレイツア先生って、そんなにやらかしてたの?」

「昔パーティー組んでたときにねぇ~、お酒の飲みすぎてぇ~喧嘩なんてぇ~、しょっちゅうだったしぃ~」

「その度に私やフリードさんがフォローに回ってたのよ?マリーとルラはあいつを止める役でね」


 本当に大変だったんだな、とユフィはそう思っていると作業を終えたスレイとフリードがこっちに歩み寄ってきた。


「スレイくん。そっち終わった?」

「あぁ。ユフィたちも終わったみたいだね」

「うん」


 綺麗に治っている木々を見ながらスレイが呟き、それにユフィが元気よく答える。


「ところでなに話してたの?」

「さっきのこと」


 ユフィがスレイにジュリアとマリーが話したことを言うと、スレイもフリードから似たようなことを言われたのを教えた。


「あっ。そうだ母さん、明日でいいから髪切ってもらいたいんだけど……いいかな?」

「良いわよ。でも髪の毛もだけど、お洋服も新しくしなきゃね」


 ジュリアがスレイの着ている服を見ながらそう言う。

 一年前に旅立ったときに来ていた服は、度重なる魔物との戦闘や連日連夜の山歩きのせいでボロボロ、加えてこの一年で背それなりに伸びている今のスレイには少し小さい。

 家に残してきた服もサイズが同じなので、どちらにしろサイズを直すか新しい服を用意する必要が出てきた。


「明日みんなで王都に買い物にいきましょう!」

「王都?えっ、行ってみたいな」


 今まで王都には行ったことがなかったスレイは、二つ返事で行くと答える。


「あの私も行っていいですか?」

「もちろん。構わないわよ」

「やった!スレイくん、紹介したい人がいるのとってもいい人なんだよ」

「わかったよ。楽しみにしておくね」


 嬉しそうに話すユフィを見ながらスレイも嬉しそうに答える。


「そうと決まれば、さっさと帰らないとな。お前も疲れただろ?」


 フリードに言われてスレイは考える。

 帰るだけだと思っていた日にルクレイツア絡みの襲撃者と長時間の戦闘を行い、帰ってきてから親のやらかしたことの後始末の手伝いと、帰るだけのはずなのになぜか労働をする羽目になっていた。

 戦闘と労働のコンボのせいで死霊山にいたときと何ら変わらないくらいに疲れた。


「確かに疲れたかも」

「なら帰るぞスレイ」

「そうね、早く帰らないとあの子達が心配しちゃうから」


 ジュリアの呟き声を聞いてスレイは首をかしげる。


 ──あの子達って……あぁパーシーくんのことか。


 そう思ったスレイは取り敢えず気にしないことにした。

 家の近くに着くと、ユフィとマリーが隣の家に入っていった


「じゃあねスレイくん」

「またあとでねぇ~」


 手を振りながら先に隣の家に入っていくユフィとマリー、その手の先にはぐったりと意識を失ったままのゴードンが引きずられていた。

 ゴードンの姿はいつものことなのだが、スレイは最後にユフィに言われた言葉に首をかしげる。


「ねぇ母さん、この後何かあるの?」

「あら、そう言えば言ってなかったわね」

「お前が帰ってきたから、パーティー開いてみんなで飯を食べようってことになってな」

「スレイちゃんの好きなもの一杯作ってあげるわね」

「わぁ~ありがとう」


 一年ぶりのちゃんとしたまともな食事にスレイはとっても喜んだ。楽しみにしながらスレイは久しぶりの我が家の中に入っていった。


 ⚔⚔⚔


 久しぶりに家の中に入ったスレイを待ち構えていたのは、妹ミーニャの強烈なタックルだった。


「お兄ちゃんお帰りなさい!!」


 扉を開けると同時に見舞われたミーニャの強烈なタックル、腹に力を入れて受け止める事もできた。だけどそれだとミーニャが痛かろうと思ったスレイは、全力で腹の筋肉を緩める。


「───グハッ!?」


 飛び込んできたミーニャの頭がスレイの溝尾にクリーンヒットした。

 ガクリと身体が傾き膝をつきそうになるスレイ、その辺りで見守っていたフリードたちが慌ててスレイを支えようとした。


「おっ、おい……大丈夫か、スレイ?」

「鳩尾、入ってたわね」


 痛みで苦しみながらも抱きしめたミーニャを落とさないスレイは、よくやっているとフリードたちは思った。



「お兄ちゃん?ごめんね、大丈夫?」

「だ、大丈夫……平気、だよ。うん」


 完全に引き吊った笑みに途切れ途切れの言葉に、両親二人はやせ我慢であると見破り苦笑いを浮かべた。


「ミーニャ、久しぶり。随分大きくなったね」


 抱きしめていたミーニャを下ろしたスレイは、背の高さが変わった事に気づいた。

 別れたときよりも確実に成長しているミーニャの頭を撫でながら、微笑みかけるスレイにミーニャは胸を張って答えた。


「もうお姉ちゃんなんだから、いつまでも子供じゃないよ!」

「そっかそっか、ミーニャもお姉ちゃんになった───うん?」


 スレイは妹の言葉に首をかしげる。


 ──お姉ちゃんなんだから?………なんかおかしいな?


 スレイは後ろに立っているフリードとジュリアのことを見る。


「ねぇ父さん、母さん、ボクに何か伝えることはない?」


 その言葉を聞いたフリードとジュリアは顔を見合わせて、しまった、といった顔をした。

 これで確信を持ったスレイはお顔で二人に詰め寄るとあっさり吐いた。


「あぁ~いい忘れてたんだが……お前に妹ができた」

「ごめんね……すっかり忘れてたわ」


 ハッハッハッ、と笑いながら告げてくるフリードとジュリア。そんな二人の軽いノリにスレイは、新しい妹が出来たという喜びが薄れてしまった。


「取り敢えず、荷物置いて休んできてもいいかな?」


 荷物と言っても剣やら銃とかだが、一番はもう疲れたのでベッドにダイブしてゆっくりしたいと思いながら自分の部屋に行こうとする。


「あぁ。そうしろ」

「ご飯になったら起こして」


 スレイが部屋に向かうために歩いていこうとして歩き出したその時。


「あっ、ちょっと待ってスレイちゃん」

「どうしたの?」

「まだアレを言ってないじゃない」

「おっ、そうだそうだ」


 フリードとジュリアに呼び止められたスレイは、一体何だと思っているとミーニャも合わせて三人が一斉に告げた。


「お帰り。スレイ」

「スレイちゃん。お帰りなさい」

「お兄ちゃん、お帰りなさい!」


 今まで色々あって忘れていた言葉を言われ、なんだか今更ながら少しくすぐったい気持ちになった。


「うん。ただいま!」


 すこし恥ずかしそうに笑いながらスレイは答えたのだった。


 その後、豪勢な夕食を食べ終えたスレイは、初めて見たリーシャと対面したが、やはり兄妹が増えるというのは良いものだと思ったスレイだった。

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