久しぶりの帰宅
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結局、その日はドワーフの集落に泊まることになったスレイたちは、一宿一飯の恩義と言うわけではないがその日の夕食はスレイたちが作ることになった。メインは昨日の夕飯と同じように鍋物にして、ついでに昨日の熊肉と鹿肉、それにウサギの肉を使って唐揚げにハンバーグを大量に作りみんなに振る舞うと、その味を気に入ったクルファとアンジェリカのために、アイリーンがレシピを知りたがったのでレシピノートをあげた。
そのお礼にと、アイリーンとクルファがいろんな技術を教えてくれた。クルファはスレイとユフィに杖の宝珠の調整の技術などを教えてくれた。わかると思うがクルファは鍛冶仕事よりもこういう魔道具関係の仕事が得意らしく、こうして二人に技術を教えてくれ、アイリーンはリーフとライアの盾とガントレットの細かい部分についてのことを話し合ったり、アンジェリカに絵本を読むことをせがまれたノクトとラピスが読み聞かせをしたりと、それぞれが有意義な時間を過ごし、次の日の朝早くにマルグリット魔法国に帰ろうとしたのだが……
「やだぁあああ―――――――っ!!ねーちゃんたちともっとあそぶの~!!」
「だぁー!もぉ!!ユフィたちが帰れずに困ってるだろ!さっさとその手を放しなアンジェリカ!!」
ガッシリと手足でユフィの身体をホールドしたアンジェリカ、こう言うのはなんだがユフィの豊満な胸に顔を埋めている姿はなんだかうらやましいような気がするが、それを口にしたらスレイはノクトとライアに絞め殺されるので言いわしなかったが、なにかを察したノクトとライアがスレイを睨み付けた。そして、アンジェリカに抱きつかれてついでに毛皮のマントに涙と鼻水を塗りたぐられながら、困った顔をしてスレイの方に向き直った。
「あはは~。どうしよっか~、いつもはスレイくんなのに今日は私みたいだね」
「……ねぇユフィ。そのアンジェリカに揉まれて形を変えてるおっぱい、もいでもいいかな?」
「それは……やめて欲しいかな?」
ユフィがひきつった顔でライアを見ると、アイリーンがどうにかしてアンジェリカを引き離してくれたので、今のうちだと思いゲートを開いてみんなで駆け込む。
「お世話になりました。アンちゃん、また来るからその時遊ぼうね」
泣きわめくアンジェリカの声を聞きながらスレイたちはゲートを潜ると、世界は一転して極寒の世界から蒸し暑さの残る真夏の世界になった。
忘れていたがマルグリット魔法国ただいま夏真っ盛り、ではないがそれでもまだまだ暑い季節だ。そんなときに毛皮のマントに毛皮を縫い込んだコートなどを着ているのは馬鹿だ。
「忘れてた……まだここ夏だったっけ」
「あぅ~暑いです……」
じわっと汗の滲むスレイたちは、マントを脱ぎ捨てその下に着ていた厚手のコートやローブを脱ぐと、シャツの袖をまくりながら手で扇いだりタオルで汗を拭ったりしていた。
ユフィやラピスなどの髪の長い女性組は、髪を纏めたり纏めている位置を変えたりしていた。普段は隠れている首筋が見えるって言うのは中々にそそる物があるな、これは良いものが見れたと思ったスレイは心の中で手を合わせていると、なにかを察したリーフたちがユフィとラピスに髪留めを貸してもらう。
普段は髪を着飾らないノクトたちだが、こうして髪型を変えている姿にはとても新鮮でちょっとだけ理性を失いかけていたが、幸いなことに場所が良かった。
「あのアルファスタ君たち、いつまでもそんなところでいつまでもいないで中に入ったらどう?」
知り合いになった門番に中にはいるように促されたスレイたち、良かった理性の決壊する一歩手前で、そう思いながらスレイは久々の我が家へと向かうのだった。
家に帰るとなぜかカークランド家でお世話になって、ついでんkメイドの仕事をしているはずのアニエスが、これまたなぜかメイド姿で家にいた。
「お帰りみんな。以外と早かったわね」
「あれ?アニエスさん、何で家にいるんですか?」
「何でって、今日は掃除しに来たのよ。ほっといたら埃だらけになるし、そしたらあんたたちが帰ってきたらってわけ」
「そんなのアラクネにやらせたのに」
「いいのよ、奥さまと旦那さまから許しを得てるし、あとこれ、旦那さまからスレイにって」
はいっとアニエスから手渡された長細い箱を見ながら、なんだろうと思いながらスレイは箱を開けると、中には狼の顔の形をした鍔を持つ青色の剣と笛ような物と一緒に手紙が一枚入っていた。
スレイはそれを開くと、遊んでいて壊れから直して欲しいという旨が書かれていた。いや、あれってセドリック殿下を守るために作ったもので断じて遊ぶための物ではないのだが……それは凝りすぎてライ○ー・キックや、フエ○スルによるウェイクアップシステム──もちろん安全性も考慮済み──などを盛り込んだため、遊びたくなる気持ちもわかる。
だが、おもちゃではないのだから、遊んで壊してほしくはない。まぁ、そうしたいお年頃なのだろうと思いながら早速修理にかかろうと剣に手を伸ばすと、横からユフィが剣をかっさらった。
「えぇ~、ガル○セイバーまで作ってたの?」
やはりユフィは知っているか、まぁ日曜の朝には一緒に見ていたのだから知っていてもおかしくはない。
「そうだよ。壊れてるから返して」
「はぁーい。じゃあ、私たちシャワー浴びてくるから」
スレイに剣を返したユフィはみんなを連れてシャワールーム、と言うよりも浴場にいってしまった。
みんなを見送ったスレイは預かった剣の破損箇所を調べ、これならばそんなに時間もかからないし、夕食の後にでも直そうと思いながら、何かあった時のために代わりの笛と剣を渡そうと用意していると、仕事に戻るためにアニエスが家から出ようとしていた。
「アニエス、よかったら送ってくけど」
「いいわよ。スレイも疲れてるでしょ?」
「平気だって、おばあちゃんたちに帰ってきたことを教えたいし、ジャルナさんのところにも寄る予定だし、あの人に帰ってきたことを伝えなかったらあとが怖いからね」
実際にありそうなことで、しかも遅れたからという理由でなにか変な依頼を押し付けてくるかもしれないと、考えただけでも嫌なので早めに済ませたいと考えていると、アニエスが腕を組ながらフンッとそっぽを向いた。
「あら、わたしを送るのはそのついでなの?」
「まさか。アニエスが心配だから行くだけで、ジャルナさんへの挨拶はついでさ」
「口はうまいわねスレイ。それじゃあお願いするわよ。わたしの騎士さま?」
「えぇ。喜んで私の愛しの姫君……っといいたけど、ちょっと服を着替えてくるから待っててもらってもいいかな?」
「それくらい待ってるわよ。途中で倒れられても困るしね」
なんだか変な茶番を繰り広げたスレイとアニエスは、少ししてからみんなに置き手紙を残して家を出た。
その間久々に帰ってきたスレイの姿と、嬉しそうに尻尾を降っているアニエス。一目見ただけでデートでもしているように見える。
「ふふふっ、こうしてスレイとデートするの久しぶりね。最後はいったいいつだったかしら?」
「二ヶ月くらいじゃないか?」
「そっか、もうそんなに前になるのね」
学園の仕事でダンジョンに潜る前にみんなでデートしたが、そのあとすぐにスレイは怪我で寝たきりになり、回復してすぐに中央大陸、そして氷澪大陸に旅立ってしまったため、一ヶ月は会っていないことになる。
そう考えると、久しぶりに帰ってきて偶然にもアニエスがいてデートみたいなことが出来ているこの状況を作ってくれたセドリック殿下には、感謝しなければ、そう思いながら話している。
「そう言えば、ちょっと前にスーと奥様があんたの実家に行ったんだけど、帰ってきたらなんかスーがむくれてたのよね」
「えっ、なにスーとリーシャ喧嘩でもしちゃったの?」
「どうも、そういう訳じゃないらしいのよね」
ならばいったい、そう思いながらスレイはアニエスの話を聞いている。
「なんでもあんたがリーシャに送った誕生日プレゼントを見せてもらって、それで一緒に遊んだまではいいんだけど、なんかスーもそれを欲しがっちゃったのよ」
「あぁ~、なるほどそう言うことか……仕方ない、アニエス、スーの誕生日にでもプレゼントするよ」
「悪いわね。妹のわがままで」
「構わないよ。ところでスーの誕生日っていつなの?」
「十一の月の六よ。ちなみにわたしは二の月の五だから、忘れないでよ」
「来年はちゃんと祝いますよ」
誕生日で思い出したが、もう少しでリーフとパーシーの誕生日が近かったなっと思い出しながら、何を贈ろうかを考えながらスレイはスーシーのために創るプレゼントの構想を練るスレイだった。
少しより道をしながらアニエスを送り届けジュディスと、ついでにアシリアに帰ってきたことを報告したスレイは、冒険者ギルドに寄ってジャルナに帰ってきたことを報告するために、人混みを歩いているのだが、家を出た辺りからずっと後を付けられている。
ここ最近は特に目を付けられるようなことはしていない………はず、なのだが、氷澪大陸での一件もあるので、知らず知らずのうちにと言うことはある。だがいつものように相手は巧妙に気配を消している訳でもなく、全くのド素人、気配は駄々漏れで隠れるのも下手のため周りを歩いている人も不信に思って、憲兵を呼ぼうかと囁いているのまで聞こえる。
関わり合いになりたくないし、撒いてもいいかと考えたが、家がバレている可能性があるので撒いたところで無駄だし、イーグルを付けているとはいえアニエスに何かあっても困るので、ここで片付けておくことに決めた。
そうと決めたスレイは人を避ける振りをしながら路地に入ると、強化した脚力で左右の壁を蹴り手頃な壁に黒鎖を壁に刺して上で待っていると、少しして案の定追跡者が追ってきた。
「どこだ、匂いは近いまだ近いはず」
「えっとボクってそんなに匂いますか?」
黒鎖を放して飛び降りはスレイは、ずっと後を追ってきフードの男の首筋に魔力剣の刃を当てると、フードの男は腰を抜かしてしまった。
こうもあっさり腰を抜かされてはスレイもどう反応して良いのかわからないでいると、フードの男が後ろに後ずさりながら情けない声で命乞いこする。
「すっ、済まない!そんなつもりじゃないんだ!殺さないで」
「人聞きの悪い。後を付けられてたから、妙な真似をしないようにって思っただけですよ」
──まぁそれも無駄だったみたいだけど
そう心の中で呟いたスレイは剣を鞘に納めながらマントの男の格好を見る。
あからさまな素人の追跡な上に、着ているマントやその下に着ている服に至るまでかなりくたびれており、至るところがほころび、多分裁縫には馴れていないのだろう縫い直されてはいるが、継ぎ当ての布もほつれて小さな穴も空いている。
履いている靴も底が磨り減りすぎている。かなりの長旅をして来たか、それとも浮浪者の類いか、その判別は今の段階では出来ないが、それでも手荒な真似をするような部類の人では無さそうだと思いながら剣を抜く必要もないと判断したが、スレイにはやはり心当たりは全くなかった。
なぜなら敵意を向けてくる様子も全くない相手に付け狙われるなど初めてだ。
「いったい何の目的でボクの後をつけていたのとか、いろいろと聞きたいことはありますけど、まずはそのフードを取って顔を見せてもらえますか?」
顔を見せてもらうためにフードをとるように頼むと、スレイは驚いたように目を開いた。
フードから出てきたのは黒い犬の顔だった。ますます付けられる理由がわからないスレイだったが、犬の獣人と言うところでもしかしたら、そう思いながら口を開こうとしたその時、グゥ~っと誰かのお腹が鳴る音が聞こえてきた。
「すまない、俺だ」
獣人は体力の消耗が激しいこんな身なりだ。満足に食べれていないのだろうと思いながら、スレイは近くの定食屋を指差しながら
「良ければ食事をおごりますから、なんでつけていたのかを話してもらいますよ?」




