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鍛治屋の一族 ②

ブクマ登録、作品評価、ありがとうございます!

 ときは少しだけ遡り、バズールの工房でスレイたちと別れ杖の調節のためにクルファ効能に移動した。っといってもすぐ隣なのであまり移動した感覚がない。

 通された工房はなんだか鍛治仕事をするような工房ではなく、どちらかというとマルグリット魔法国の家のスレイの自室だ。あそこはスレイが魔道具を作るために様々な金属や作りかけのゴーレムの部品なんかが置かれているあの部屋にどことなく似ている気がしたユフィとノクトは、クルファは鍛冶師ではないのかと思っている。すると魔方陣が描かれたスクロールを持ってきて作業台の上へと広げた。


「これでよし。お待たせ。準備が終わったから君たちの杖を出してくれるかい?」

「えぇ。わかりました」

「はい。よろしくお願いします」


 ユフィとノクトは空間収納にしまっていた杖を取り出すしクルファに渡した。

 杖を受け取ったクルファはまずはユフィの杖をじっくりと観察を始め、ここからいったい何が起きるのか興味津々のノクトはジッとクルファの手元を観察していた。

 ユフィも杖の調整など始めてみるのでどうやるのかをしっかりと覚えようと見ていると、ノクトの杖を見終わって顔をあげたクルファがユフィの杖を持ち上げながら口を開いた。


「二つの杖宝珠は同じコアを使って作られているね。ここらでは見ることのない強力な魔物のコアだ。これは、海の暴君と呼ばれる魔物のリヴァイアサンのコアだね」

「すごいです。宝珠を見ただけで魔物の名前を言い当てるなんて」

「この仕事が長いからね。多くのコアを扱ってきたがさすがにリヴァイアサンコアは始めて見たから、正直なところ確証はなくて言ってみたんだったけど当たったみたいで良かった」


 笑っているクルファはやはり子供のような見ためなためユフィの庇護欲が一瞬顔を出そうとしていたが、ここは我慢と自制し、それを察していたノクトからは少ししらけた目を向けられた。そんな二人のやり取りを見ていたクルファは、何かあったのかと首を一瞬かしげたがすぐに杖の材質の話を始める。


「宝珠はリヴァイアサンのコアと七属性の魔石、そして杖の本体にはサンダー・バードの骨と、そっちはエルダー・トレンドの古枝かな?どれも珍しくいい素材だし作りもしっかりしているいい杖だ」


 クルファに自分たちの使っている杖が誉められたことに、なんだか嬉しくなったユフィとノクトはお互いの顔を見合いながら小さく微笑んでいるとクルファは杖を作業台の上に戻した。


「さてと。雑談はこれくらいにして、これから君たちの杖の調節を始めるんだけどそれに当たって宝珠を柄から取り外しても構わないかな」

「ちゃんと元に戻してくれるなら大丈夫だよね。ノクトちゃん」

「はい。お願いします」


 二人からの了承を得てクルファ杖を分解すると、固定されていた宝珠を二人の前に置かれているスクロールの上に置くいた。


「それじゃあ始めるけど……その前に二人とも得意な魔力の属性とか、あれば教えてもらいたいんだけどいいかな?あとは、多重発動と同時施行はどれくらいなら出来るかも教えてくれると助かるよ」


 魔法の多重発動とは、一つの魔法に対して同時にいくつまでならば同じ魔方陣を展開できるのかということで、一般的に普通の魔法使いの多重発動の最大数は十から十五の間と言われている。


 次に魔法の同時施行に付いて説明する。

 こちらは簡単に言うと一つの魔法を発動している間に、別の魔法をどれだけ使えるかということだ。

 例えば身体強化に加えて補助魔法のアクセルやブーストを同時に唱えることを同時施行という。

 こちらも人によってマチマチなのだが、基本的には多重起動と同等と言われている。


 だが、これは人によっても様々でスレイは多重発動と同時施行の才能が壊滅的で最高でも四つまでしか発動できない。



「わたしは……補助や回復の魔法が得意ですから無属性です。多重発動はそれほど多くやったことありませんけど、十くらいです。同時施行もそれくらいです」

「私は風と雷、後は水ですね。多重発動は一つの魔法なら五十で、同時施行もそれくらいはできるのでそれも合わせるなら七百、場合によっては千くらいは行けます」

「はっはっは、君、冗談で言っている訳ではなさそうだ……うん。だいたいのことはわかったから杖の、調整を始めよう。っと言っても、やることは簡単だ。君たちは宝珠に触れて魔力を流してくれればいい。後は僕がやっておくから」


 ユフィとノクトが宝珠に触れながら魔力を流すと、それに合わせてクルファがスクロールの魔方陣を発動させたらく、スクロールに書かれた魔方陣が光始める。

 クルファから魔力を流し続けるように言われ、二人は宝珠に魔力を流し続ける。

 いつまで魔力をそそいでいればいいのだろうか、そう思いながらも魔力を流し続けているとスクロールから手を離したクルファが顔をあげた。


「もういいよ」

「えっ、これだけなんですか?」

「そうだよ。後はどこかで試してもらえればいいけど、ここじゃ止めてよ」

「やりませんよ~」


 直された杖を空間収納にしまった二人は、クルファにお礼を言ってから杖の調整の代金を聞いたところ、クルファからいらないと言われた。


「アイリーンを助けてくれたお礼だよ。彼女の命に比べたら杖の調整くらい安いものだよ」

「愛してらっしゃるんですねアイリーンさんのことを」

「まぁ、アイリーンがいなければ生きていけないし、そもそも僕生活能力が皆無だから多分アイリーンがいなかったら三日で死んでるかもしれないからね」


 そんなに生活能力がないとは思えないが、クルファがスクロールを巻き直して作業用の棚の扉を開き中に戻しそうとしたとき、ガシャンと棚の中から物が崩れ落ちてきた。いやいや、これなに?なにがあったのかと思っていると中にあった物がすべて落ちてきたらしい。

 落ちてきた物の中には拳大の鉱石やナイフ、他にもなにかいろいろと危ないものが落ちてきて、なんだかよくわからないけど、奇跡的な起動でクルファを避けて地面に落ちていった。

 いやいやいや、今のはいったいなに?なにが起こったのか説明してくれませんか?っとユフィとノクトが思っていると、バシン!っと奥の部屋の扉が吹き飛んだ。

 今度はいったいなに!?っとユフィとノクトがそちらを見ると、片足を上げたままの体制で手には救急箱、そして担ぐようにホウキを持ってきたアイリーンが、平気な顔をしているクルファの顔に救急箱を投げつけた。


「「!?」」


 なに今の?っとユフィとノクトはアイリーンのいきなりの暴力に対して、早く治療をしなければと駆け寄ろうとしたが、鼻から血を出したクルファが顔面に突き刺さっていた救急箱を片手にアイリーンに話しかける。


「アイリィ~ン、痛いよぉ~」

「ったく!毎日毎日、掃除した次の日になんでこうも散らかすのよ!」

「いや~、きみがいない間の杖の調整の依頼がいくつもあったから……それでね。掃除をしようと何度も思ったんだけど、見た目だけと思ってね」

「だ・か・ら!あんたたちはもうなにもしないで!これ以上はなにもしないでっての!」


 こういうのはあれだったが、夫婦ってこういうところはどんな種族もおなじなのだろう。

 つまりは夫婦の中で妻が強いと言うのはどの世界どころか、どんな種族でも共通なんだなっと思っているとアイリーンがぶち破ってきた扉の影から女の子が覗いていた。

 なんだかアイリーンをさらに幼くした容姿の女の子を見た二人は、もしかしてと思い小声で話始める。


「もしかして、アイリーンのお子さんでしょうか?」

「わからないよ。お母さんとかお婆さんかもしれないよ?ほらドワーフの人たちは年齢がよくわからないから」


 エルフと同じで老化の遅いドワーフは何百年も姿形が変わらないし、男性は低身長の老け顔、女性に至っては低身長と……あれ?今考えるとドワーフの集落って、ロリコンにとっては天国なのでは?っとユフィは、いやだな~っと思っていると、女の子がテチテチと二人の前にまで歩み寄りユフィとノクトのことを見上げた。


「おまえたち、かーちゃんをたすけてくれたってきいた!ありがとうなの!」

「わっ、わぁ~おぉ~……なんだかすごい上から目線でお礼を言われちゃったね」


 なんだかしゃべり方からして幼い気がする。そう思いながらユフィとノクトがどうしようか、そう思っているとホウキを方にかついだアイリーンがユフィとノクト、それに女の子の前にやって来ると


「アンジェリカ、なにしてんだいこんなところで?ここは馬鹿なとーちゃんが散らかしてて、二番目のアンちゃん見たいに全治半日の怪我したの覚えてないのかい?」

「やだぁ~!」

「そんじゃあ、奥に引っ込んでるんだぞ?いいか?」

「はいなのだぁ~!」


 元気に手を上げて奥へと引っ込んでいく女の子を見送り、どうやらあの娘はアイリーンの母親などではなく娘で確定した。


「娘さんお幾つなんですか」

「まだ十だ。ドワーフの中じゃ一番最年少でね」

「十歳……ってことはパーシーちゃんと同じ歳なんだ~」

「あんたら人間なんかに換算したらまだ生まれたばかりの赤子も同然の年でね、あんなしゃべり方なのは……上の兄貴どものせいで悪い」


 男所帯特有の女の子が男の子っぽくなっちゃうあの現象って本当にあったんだな~っとユフィは思い、多分お兄さんたちのせいじゃ無いような気が……、それに母親のアイリーンも男っぽい喋り勝たをしていますし……っと、ノクトは思っていました。

 どちらにしろ冒険者何てやっていると粗野な連中が多いのであまり気にしないユフィとノクト。そんな二人の元に再びアンジェリカがやって来る。


「なぁなぁでっかいねーちゃん、あそぼぉ~!」

「だぁ~かぁ~らぁ~!あんたは!もうかーちゃん怒るからねぇ!?」

「やだぁ~!アン、でっかいねーちゃんたちとあそぶの~!」


 でっかいねーちゃんとは私たちのことだろうか?二人とも同年代の娘の平均的な身長だが、ここだったらでかいんだろうけど、それがまだ小さい子供の思ったままの言葉だったとしても、でかいと言われたのはちょっとだけショックだった。

 すると、アイリーンのお説教から逃げたアンジェリカが、ノクトのローブにしがみつくと必死に懇願する。


「なぁなぁでっかいねーちゃん、いいだろぉ~?」

「アンジェリカちゃん。遊ぶのはいいんですけど……そのでっかいねーちゃん、って呼び方は止めてもらってもいいですか?」


 キョトンっとしたアンジェリカの目線に合うように二人はしゃがんだ。


「私はユフィ・メルレイクだよ~。よろしくねアンジェリカちゃん」

「わたしはノクト・ユクレイアです。決してでっかいお姉さんではありませんからね?」

「わかった!ユフィに、ノクトだな!アンのことはアンでいいぞ!」

「この馬鹿娘!そこはユフィお姉ちゃんとノクトお姉ちゃんでしょうが!」


 一発ゴツンッとアンジェリカの頭に拳を落としたアイリーン、ドツかれて涙目になったアンジェリカ、さすがになれているのかお返しにベーっと舌を出した。


「本当にすまないよ。適当なところで切り上げてもらっていいから。あたしはクルファの監視をしなきゃなならないから、奥で遊んでやって」

「わかりました」


 どうやら工房の奥には住居スペースもあり、そこで遊ぶこととなった。


「それじゃあアンちゃん。なにして遊ぼっか?」

「んとね~、アンね。ゆーしゃさまやるの!それでね、ユフィとノクトはね、わるぅ~いまじょやるの!」

「えぇっと、つまりはごっこ遊びですね?」


 普通女の子ってごっこ遊びよりおままごとの方がいいんじゃないかと思ったが、木製の剣のおもちゃに鎧と、準備を整えたアンジェリカを前に、断ることはできなかった。


「よぉ~し!それじゃあやろっか!」


 っと言うわけで二人はアンジェリカと勇者ごっこをすることになったのだった。


 っと、ここまでがことのあらまし、さて、その後事情を聴いたスレイたちがどうしたかと言うと。


「勇者アンジェリカよ、よくここまでたどり着いた。だがしかし!貴様では魔王であるこの我は倒せんぞ!」

「そんなことはない!ゆーしゃのちからは、こんなもんじゃないの!!」


 黒と白の入り交じった髪に頭には禍禍しい角、血のように赤黒い瞳、顔には竜の鱗に幾何学的な模様を表したスレイはいかにも魔王といった出で立ちでアンジェリカの相手をしていた。


 どうしてこうなったかと言うと、ユフィたちに声をかけてついでにアンジェリカにも挨拶したところ、スレイを一目見て


『でっかいにーちゃん、まおーやって!』


 っとせがまれ、せっかくなので刻印を発動して髪と眼の色、それに角の形を変えて魔王役をやっていた。

 ついでに言うとリーフたちの配役も決まっており、アンジェリカに言われるがままの配役で遊んでいた。


「おぉ~い、あんたらもう昼だけど食べるか?」

「……お昼?食べたい!」

「ライアさま、がっつきすぎです」

「すみませんアイリーン殿。ですがよろしいのですか?」

「構わんさ、昨日の夕飯と朝食の礼だ。ライアがいっぱい食うから作りごたえもあったしな」

「それじゃあ、お言葉に甘えていただこうか」


 アイリーンのお手製の昼食を食べた後、アイリーンからリーフの盾とライアのガントレットの製作を打診された。


「あたしは鎧なんかを作るのが得意だからな。作ってやるよ」

「では、お願いしたいのですが」

「……ん。おねがいします」


 結局、リーフとライアの盾とガントレットの製作のために一日ドワーフの集落に止まることとなった。




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