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夜中の決闘

ブクマ登録。作品評価ありがとうございます!

 武器屋の親父さんの口から聞こえてきたドワーフという単語、この大陸に来てたった数時間でドワーフについての情報を得ることが出来るかもしれない。もしかしたら居場所が聞き出せるかもしれない、そう思ったスレイとリーフはそろって親父さんに詰め寄った。


「すみません!そのドワーフについて知っていることを教えてください!」

「お願いします!自分たちはどうしてもドワーフのおられる場所が知りたいのです!」


 スレイとリーフの圧に武器屋の親父さんは思わずたじろいでしまった。それほどまでに二人の気迫がすごく、親父さんからしたら、いったい何が二人をここまで駆り立てているのかがわからずに困っている。

 すると、そんなスレイとリーフの襟首を掴んだライアとラピスは、二人のことを落ち着かせるべく後ろに引き戻し、それに入れ替わるようにユフィとノクトが、困惑している親父さんに簡単にドワーフを探している理由を説明してくれると、話を聞いた親父さんは腕を組ながらうねっていた。


「ふむ、そこの白髪のアンちゃんの剣がドワーフの刀匠バズールの剣で、それを直してもらうためでこの大陸にまで探しに来たと……悪いが、俺じゃ力になれそうにないな」

「でも、このお店でドワーフの造った武具を扱っていますよね?ってことは、ドワーフの方との取り引きがあるんじゃないんですか?」

「確かに、嬢ちゃんの言ってるようにドワーフの武具は置いてあるし、さっきも言った通り、そこのアンちゃんと嬢ちゃんたちに売った剣と短剣はドワーフが打った剣だが、それ俺は直接仕入れた訳じゃねぇんだ」

「……ん?それなら、どうやって仕入れてるの?」

「何ヵ月かに一度、街の領主さまん所にドワーフの集落から行商に来るんだが……まぁ、こういうのなんだが、あいつらは結構な変り者でなぁ。領主さまん所に下ろした金を全部アルもん変えて集落に帰っちまうんだよ」

「ドワーフは引きこもりが多いと聞きましたが、これは徹底した引きこもりでございますね」

「ラピスさん、普通引きこもりは何があっても外に出て来ないと思うので、ただ単にコミュ症なだけかと」


 まだあったことのないドワーフにたいする感想酷かった。ラピスの引きこもりはまだ周知の事実で、前にドワーフの友人から聞いた話では集落ごとに違うらしいが、大抵のドワーフの集落では周りの町や村への生活物資の購入以外では外に出ないらしいので、ラピスの言っていることも大いに正しい……正しいのだが、ノクトの最後の一言はちょっとどうかと思った。


「……でも、アルものってなんだろ?」

「そんなの酒だろ?」


 スレイがそう言うとさすがにそれはないだろ?っと思いながらも、ドワーフと言えば鍛治とお酒好きで有名な話を思いだし、本当にそうなのかもしれないと考え直してしまった。

 っと、ここまで話していると、親父さんが有ることを思いだしれくれた。


「そうそう、隣の街になんだがドワーフが一人住んでるんだ」

「その場所を教えてください」

「おい、ちょっと待ってろ」


 しばらくして親父さんが一枚の地図を持ってくると、それをスレイたちに見えるように広げてくれた。


「ここから三日のところなんだが、そこの家具屋の旦那がドワーフでな。もしかしたら集落の場所を教えてくれるかもしれねぇぞ?」


 ドワーフの居場所がわかるかもしれない、スレイたちは喜んでいる一方で、この街から三日もかかると聞いてライアの顔が絶望に彩られた。そりゃ、寒さに弱いライアからすると死活問題なのだろうなっと思っていると、目に生気のないライアがスレイにすがり付いてきた。


「……三日………スレイ、みんあも最後に一緒にいられて良かった、できれば、スレイの赤ちゃん産みたかった」

「待て待てライア!死なないって!ボクもユフィもノクトもシールド使えるから!寒波くらいならどうにかして防いであげれるから!」

「そうだよ!即席でだけど今使ってる魔道具よりも寒さをなくせる魔道具つくってあげるから!そんな世界に絶望しましたみたいな顔はやめて!」

「……ユフィ、スレイ、ほんと?」

「ほんとですか!ユフィお姉さん!?」

「あらら、やはりノクトさまもですか」


 スレイとユフィの元にノクトとライアがすがりより、それを見ていたラピスとリーフはクスリと笑いながらそう言っている。



 それから、宿屋に戻ったスレイとユフィはノクトとライアのために寒さを防げる魔道具の開発にいそしみ、ノクトたちはと言うと北方大陸に残ったアニエスに今日あったことを簡単に説明していた。


『ふぅ~ん。あんたらも大変そうね。帰ってきたらわたしが美味しいもの作ってあげるから』

「……ん。楽しみにしてる」

『そうしなさいな。じゃあ、もうスーを寝かさないといけないから、今日はもう切るわね』

「えぇ。しばらくは通信できないと思いますけど、またこちらかしますから。次はスレイ殿とユフィ殿も一緒に」

『なら頼むわね。お休み』


 アニエスからの通信が切れたのを確認したノクトは、通信機をサイドテーブルに置くと同時にスレイとユフィが入ってきた。


「ノクト、ライア、魔道具の改良が終わったから、渡しておくな」

「それと、みんなのブーツにスパイク付けておいたけど、一回履いて試してみてね~。キツかったりしたらすぐに直してあげるから」


 二人から渡されたブーツと靴を履いて具合を確かめていたノクトたち、するとリーフとライアがブーツの爪先になにかがあることに気がついた。


「二人のブーツの爪先には鉄板を入れておいたから、ライアちゃんも蹴り使うし鎧が使えない分それで我慢してね」

「いえ、これでも十分過ぎる装備ですよ」

「……ん。二人ともありがとう」


 一通りの装備確認も終わるとスレイとリーフは夜も遅いというのに、新しい剣を試すために宿の外で剣を打ち合わせていた。

 やはり新しく手に入れたばかりの剣をすぐに戦いの場に持っていくなど、愚の骨張、なのでスレイとリーフは日が暮れているにも関わらず剣を打ち合わせているのだが、スレイとリーフの剣は端からみると本気で斬りあっているかのように見えるが、身内からするとまだまだ遅い部類だった。


 横からリーフが剣を払いスレイは剣と逆手に握られた短剣を重ね合わせて受け止めると、リーフの剣を押し返し体勢を崩したところで一瞬で距離を積めたスレイがリーフの懐に入り、短剣を一閃する。だが、リーフは引き戻した剣の柄で短剣の一撃を防ぐと、剣で二激目を放とうとしたスレイの目の前に盾を前にだし、殴りかかるようにしてスレイを牽制する。

 盾が目の前に向かってくるのを見て、一瞬で後ろにとんだスレイは剣と短剣を構え、同じように距離を取ったリーフは剣を両手で握る用に構える。


「リーフ、そろそろ体も暖まって来たし、ちょっと本気でやってみるか?」

「それも良さそうですが、明日はまた旅に出なければいけないのですから今日はこの辺りでやめておきませんか?」


 リーフはソッと剣と盾を下ろすと、スレイもそうだなっと答えながら剣と短剣を鞘に納め、宿に戻ろうと思ったところで別の冒険者らしい一団が来たので二人は避けようと思い道を開けるが、一団はわざとスレイの方にぶつかって来ようとしたので、リーフに触れながら空間転移を使って避けると、さすがにこれには驚いている冒険者たちをよそに、二人はすたすたと宿屋に戻ろうとしたが、


「まてやこら!」

「何ですか?」

「何ですか?じゃねぇ!ここはなぁ俺たちの場所なんだよ。使いたきゃ金払いな」


 こいつらなにいってるんだろうね?っと、スレイとリーフが首をかしげながらそう思っている。なぜならここは宿屋の裏手で、さらには宿の女将さんに剣の稽古をするから場所を貸して欲しいと頼んだ結果、この場所を貸してくれた。なので決してここはこいつらの場所なんかではない。

 なので金を払うつもりなどはもうとうないし、そもそもこいつらと問題を起こしたらあの女将さんのことだから追い出されかねないので、どうにか穏便に済ませてもらえるように話し合い、もしくは殺気を放って追い返すかを考えていると、仲間の一人がリーフの方に手を伸ばして来たのでソッとスレイが間にはいる。


「すみませんが、ボクの連れに手を出さないでいただけますか?」

「おい小僧あんまなめてっと痛い目をみることになるぞ?なんたって俺たちはこの街最大のクランのメンバーだからな、歯向かうと容赦しないぜ?」


 これはまた盛大なる大見得を切っている男にあきれた顔をしていると、スレイの背後で隠れているリーフがソッとスレイに耳打ちして訪ねてくる。


「スレイ殿、クランと言うのはいったい?」

「数十人単位の冒険者のパーティーの一団をクランって言って、ある一定の評価を受けることで小さな街の自警団として国から町の警護なんかを任せられることがあるんだ。ボクも実際に会うのは初めてだし、かかわり合いになるようなことはないと思ってたんだけどね」


 自警団と名乗っている手前、ちゃんとしているのかとも思ったがやっていることは荒くれ者と変わらない、っと言うよりも完全に荒くれ者だろ?

 そう思いながら、話をすればこんなことをやめてくれるのではないか、そう言う淡い考えからどうにか話し合いをしてみるとことにした。


「別に、歯向かっているつもりはありませんけど、町の人々を守らなければならないクランの方々がそんなことをしていると町を追い出されてしまいますよ?」

「そんなことされる分けねぇよ。俺たちがいなきゃ町は終わりだからな、多少のことは黙認されるんだよ」


 かなり腐ってやがるこいつら……取り敢えず、用が済んだらジャルナにこの事を報告しておこうと思いながら、こっそりとアラクネを放ち映像をとらしていた。

 これで証拠は十分だとおもいながら、せっかく代金を払って止まろうと思ったが今夜中にでも宿を引き払い町を出なければならなくなった、そう思いながらまずはこいつらのことをどうにかすることを考えている。

 だが、先程のこいつらの話からすると、もしも相手から手を出してきた返り討ちにしても悪いのはこちらで、金払え、女をよこせ等といってくる可能性もある。


「白金貨一枚、それが払えないならお前がつれてる女たち、一晩俺たちによこせ。たっぷり可愛がったら返してやるからさぁ」

「まぁその頃にゃ、俺たちのアレ無しじゃいられないようになってるかもしれないがな?」


 下品極まりない会話にスレイは絶句、リーフに至っては腰の剣に手を伸ばし必死にこの男を必斬ろうとする自分を押さえていた。

 ってか、そもそもなぜユフィたちのことを知っているのか、そう思いながらもいろんな人にユフィたちと一緒にいるところをみられたので、そのうちの誰かがリークしたんだろうと思い、もう一度転移で逃げようとしたが、ドォーン!っと真横から扉が爆発したかの用に吹き飛び、飛び散った扉の一部がクラン所属の冒険者の顔面に命中し吹き飛んで気を失った。

 いやいや、あんたらクラン所属の冒険者なんでしょ?避けなよそれくらい。

 スレイとリーフが呆れるように倒れた冒険者たちをみていると、ドスン!っと地面を踏みしめた巨大な女性が冒険者たちを掴みあげる。


「あんたら、次問題起こしたら出禁だって言っておいたよね?さっさとここから出ていきな!!」

「うるせぇババァ!誰のお陰でこの町が平和でいられると思ってやがる!」

「いいから出ていきな!それとけんか売るんなら、相手の力量を計れるくらいになってからしな!」


 女将さんが掴みあげていた冒険者を投げ飛ばすと、ついに冒険者の一人がちょっと豪華な装飾が施された武器に手をかけ一気に引き抜いた。

 見映えだけは良さそうさが、刀身の色からして見映えだけだろう。そんな剣を女将さんに向かって斬りかかる。


「死ねぇ!ババァ!!」


 ついに一般人に剣を抜いて斬りかかってしまったので、スレイはこれで証拠もしっかりと撮れているし、あとでしっかりと裁いてもらおう、っと思いながら短剣を抜いて受け止める。


「いや~、一番やっちゃいけないことをやっちゃいましたね?」

「だからなんだ!この町じゃ俺たちがルールなんだよ!」

「知らん、と言うわけでいくぞ──さぁ、お前の罪を購え!」


 ちゃっかり決め台詞を言いながら剣を押し返したスレイは、バランスを崩した冒険者の腹部に一発拳を打ち込んだ。すると、その一撃が決まったのか一瞬で延びてしまった。

 なんともあっけない終わり方に、本当にクラン所属の冒険者なのか疑いながら、リーフと女将さんの方を確認すると、残りの奴らも揃って延びていた。後で逃げられるのも勘弁して欲しいので、空間収納から取り出した黒鎖を使って雁字搦めにして拘束しておいた。


「いや、済まなかったね。うちの若い奴らが面倒をかけて」

「あぁ~、やっぱり女将さんクラン所属の冒険者だったんだ」

「そうさ、まぁとっくの昔に辞めちまったけどね」

「えっ、そうだったんですか!?」


 リーフは気付いていなかったらしい、っというよりもちゃんと話したのは今が初めてなので気付かなかったらしいが、すぐにリーフもスレイの言っていることがわかったらしい。

 女将さんの手には古くなってはいるが無数のたこがあり、あれは武器を長年握っていた証拠だ。そしてあの腕っぷしの理由も説明がつく。


「まぁ、クラン所属のってところはハッタリかましたんだけど教えてくれるとは思いませんでしたよ」

「はっ、こんな迷惑をかけておいて話さないわけはないよ」


 そこから教えてくれた話は、大きくなったクランで下っ端が勝手な行動をしだし、こうして脅して金をせびったりもしてたらしい。


「ちゃんと裁いてくれるならボクはなにも言いませんが、ボクの連れに手を出したら命がないとだけ言っておいてください」

「分かってるよ幻楼の」


 どうやらスレイのことを分かっていたため、もしかしたらわざと情報を流し襲わせたのかもしれないなっと、そう思いながらスレイは短剣を鞘に納めるのだった。

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