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仮面の二人

先に謝ります。今回の話は少し中途半端で終わっていますので、この後一時間後にもう一話投稿します。

今回も楽しんでお読みいただきたいと思っています。

 スレイとユフィが仮面の二人組と対峙しているころ、西方大陸のある村ではジュリアとマリーが未だに死霊山から帰ってこない、二人のことを心配していた


「二人共、遅いわね」

「そうねぇ~もしかしてぇ~ついにやっちゃったかしらぁ~?」


 のんびりと穏やかな口調でそんなことを告げるマリーに対して、ジュリアは鋭い眼光で睨みつけた。


「あなた、なにかしたの?」

「いやぁ~ねぇ~、ジュリィ~ったらぁ~、私はぁ~なにもしてないわぁ~」

「それが怪しいのよ。何をしたのか白状しなさい」

「何もぉ~、ただぁ~ちょぉ~っとかわいい我が子の背中を押しただけよぉ~」

「十分になにかしてるじゃない」


 スレイもユフィも十歳にしては利発で分別もつくが、年頃の男女が誰もいない場所で二人っきり、なにかの間違いが起こらないとも限らない。

 二人共お互いに意識し合っている節はあるので、想いが通じ合うのは喜ばしいことだが、手の届かないところでそういう関係にはなってほしくないのだ。


「私今からゲートで死霊山にいってくるわ」

「あらあら、ジュリーったら、そんなに寂しいなんてぇ~ダメよぉ~早く子離れしないとぉ~」


 死霊山に向かおうとするジュリアをマリーは後ろから羽交い締めにして押さえつける。


「うるさいわよマリー、それより離しなさい!」

「あらあらぁ~、そんなに暴れるとぉ~危ないわよぉ~」


 いい歳をした母親二人がじゃれ合いなんとも騒がしいやり取りをしているなか、カリカリと一人我感せずを貫いていた一人の女性がいた。

 その女性はこの家の家主であり、仕事があるからと断ったにも関わらずこうして二人に居座られていた。静かにしているならと思ったが、ここまで煩くなったら仕事にならない。


「あの、二人とも静かにしてくれませんか?」


 不機嫌そうな顔をしながら告げるのはこの家の家主、深い緑に特徴的な長い耳のエルフの女性クレイアルラだ。

 二人が騒いでいるこの家は、クレイアルラの診療所なのだ。


「あの子たちを心配するのもいいですが、ここは診療所です。病気じゃないなら帰りなさい」

「いいじゃない、暇でしょ?」

「確かに患者はいませんが、これでも仕事中です」


 ディスクに積まれた書類を指さしながらクレイアルラが答えると、ジュリアとマリーが並べられた書類の束を手にとって見てみる。


「あら、これって患者さんのカルテかしら」

「古い資料から過去の症例をまとめ直しいたんです」

「そうなのねぇ~、ところでぇ~お茶飲むぅ~?」

「はぁ……いただきます」


 ティーセットを片手に問いかけてくるマリーの顔を見てクレイアルラは大きくため息を付き諦めた。

 せってと新しいお茶を用意しながら、先程の話の続きを始める二人を横目に、未だに帰ってこないスレイたちへさっさと戻ってきてほしいと思うのであった。


 ⚔⚔⚔


 死霊山山頂に現れたのは謎の仮面の二人組、その口からルクレイツアの名前がでてきたのを聞いてスレイとユフィは驚きを隠せないでいた。

 二人の正確な年齢はわからないが、背格好からスレイたちと変わらないくらいかと推測するが、そんな彼らがいったいどういった理由でルクレイツアを探しているのか、それがわからなかった。


「君たちはししょ………ルクレイツアにいったい何の要件があったんだ?というかあの人とは知り合い?ボクらとそう変わらなそうなのに」

「知らねぇよ。会ったことすらねぇただの他人だ」


 合ったことすらないただの他人を探すためにこんな危険な山を、こんな歳も変わらなそうな少年と少女が登ってきた。いったい何の目的で、そんな危険なことをするのか。


「君たちは、あの人にいったいなんの用があるんだ?」

「用があるのは俺たちじゃねぇ、ある御方からの依頼されてその代理としてここにきただけだ」

「ある御方?依頼?どういうこと?」


 この二人はギルド関係者、あるいはもっと別の、それこそ犯罪者組織の一員かなにかなのかもしれないがまだ情報が少ないせいで判断ができない。

 少しでも情報を獲るためにスレイは話を続ける。


「依頼って言うことは、ギルド関係者かなにか、ってわけじゃないよね?」

「えぇ。その通りよ。もちろん闇ギルドの暗殺者でもないわよ」

「見た目は完全にアサシンだけど、違うんだ」

「あぁ。暗殺者じゃねぇが、殺ることは変わらねぇか」


 仮面の少年の言葉にスレイは眉をひそめる。


「俺たちに依頼した御方の命はこうだ。ルクレイツア・ステロンを()()ってな」


 ルクレイツアを殺す、そうはっきりと口にした仮面の少年は血に濡れた黒い剣の切っ先をスレイへと向ける。

 剣を向けられたスレイとユフィは即座に武器に手をかけて構えようとした瞬間、仮面の少女が二人に向けて手を伸ばすとなにかが飛んでくる。

 何かはわからないが危険だということだけは感じたスレイが剣を抜いて応戦しようとした。しかし、投げられたそれのほうが速かった。


「───ッ!剣が抜けない!?」

「えっ!?何この糸!?」

「下手に動かないほうがいいわよ。私の糸は何でも斬るわよ」


 視線を下ろしたスレイは腕と剣を固定する細い糸を見る。

 ピアノ線のような細い糸状のそれは、あの少女の闘気が流れておりその気になれば簡単に腕を落とせるだろう。首だけ後ろに向けてユフィを見るが、同じ状態だった。


「お前たちが奴の関係者だと言うことはわかっている。答えろ、ルクレイツア・ステロンはどこにいる?」


 仮面の少年が問いかける中、スレイとユフィはお互いの顔を見合う。

 件のルクレイツアはすでにこの大陸から立ち去っている、


「あいにくと、今朝方ここを発ったよ。この国どころか、今じゃどの大陸にいるかもわからないよ」

「チッ、この状況で嘘を付く必要はねぇな。おい、放してやれ」


 仮面の少年が少女に指示を出すと二人に巻き付いていた糸が外れて戻っていく。

 拘束が解かれた二人だったが警戒を解くことなく、スレイは鞘から剣とダガーを抜き放ち、ユフィも二度と不意は突かれぬように杖に魔力を流し、ゴーレムも起動待機させている。


「ついてねぇ、目標はすでにいねぇなんてな」

「そのほうが良かったと思うよ。あの人、自分に殺意向ける相手に容赦ないし、子供だろうと平然と殺しに来るから」

「はっ、それでも俺は殺す」

「無理だよ、諦めたほうが身のためだ」


 スレイと仮面の少年の間に見えない火花のようなものが走った、かに思えた。


「ちょっとスレイくん、なに煽ってるの!?」

「あんた、なにしてるのよ!」


 ユフィと仮面の少女がお互いの相方を諌めようとしたが、なぜか二人の口論はことはなかった。


「君なら一分持つかどうかじゃないかな?斬られるまでに」

「はっ、言ってくれるじゃねぇか。ガキが、テメェから斬り殺してやろうか?」

「やってみろよ。返り討ちにしてやる」


 バチバチに敵意を燃やし続けるスレイと仮面の少年、いったい何があの二人を戦わせようとするのか、まったく理解が追いつかない少女二人は、相方を止めるように追い縋った。


「ちょっと止めて、スレイくん!なんか変だよ!!どうしちゃったの!?」

「なぜだか知らないけど、あいつ見てるとすごく腹が立って」

「いや、まってどう言うこと!?」


 まったく理解できないことにさすがのユフィも理解が追いつかないでいると、それはあちらも同じようだ。


「あんた、なにムキになってるによ!?」

「わからんが、あの白髪野郎だけはどうしてもここで斬らねぇと気が収まらねぇ」

「だからどうしてそうなるのよ!?」


 仮面の少女が剣を構えて向かっていこうとする少年を引き止める。

 なぜかはわからないが少年二人が揃ってお互いに敵意を向け合っている。少女たちは理解の出来ない気持ちで殺し合いを始めようとする二人を止めることはできないあった。

 スレイと仮面の少年が闘気を全身に纏うと、少女を押しのけて同時に駆け出した。


 ⚔⚔⚔


 二人の少年が斬り結ぶのを横目に、取り残されたユフィと仮面の少女はいったいどうすればいいのかと見つめ合っていた。


「あなたはどうするの?戦う」

「私としては標的がいないなら帰ってもいいと思ったのだけど、相方があれだから」


 仮面で表情はわからないが、確認できる目の表情だけでもとてもげんなりと疲れた表情をしているに違いない。

 なんだか眼の前の少女に少し親近感が湧くような気がしたユフィだった。


「私としてはどちらでもいい、でもあんたには少し興味があるの」

「興味?」

「あんた、何かしら武術をやってるんじゃないかしら、多分拳法あたりね」

「齧っただけで、私の本職は魔法使いだよ」

「そう。だったら少しくらいは楽しませなさいよ!」


 ノーモーションから前へと駆け出した仮面の少女が向かってくる。


「嫌だって言ってるのに、もうッ!」


 懐に手を入れたユフィは、即座に手を抜き出すと握りしめたそれを少女に向かって投げる。

 投げられたそれはユフィの小型ゴーレム、空中に投げられ形を変えるとユフィは杖とゴーレムを繋げると、後ろに下がって距離を開ける。


「魔法使うのは許してよ───ウォーター・ボール!」


 杖の宝珠が輝き展開された魔法陣が四つ、同時に撃ち出された水の玉が仮面の少女を襲う。しかし、少女は闘気を纏ったダガーを一閃し水の玉を斬り裂いた。


「いい魔法だけど、効かないわよ!」

「だろうね、ならこれはどう!?───ファイア・ボール!」


 続いて撃ち出された炎の玉が少女の足元へと当たり、小さな爆炎と共に土煙を上げる。

 目眩ましで時間稼ぎして距離を取ろうとしたユフィだったが、煙の中から先ほども使われた金属の糸がユフィの腕を絡め取ると、少女が糸を掴んで引っ張った。


「キャッわぁッ!?」


 引っ張られて倒れかけたユフィ、少女は鉄の糸を戻してダガーで斬り掛かってくる。杖を掲げて防ごうにも体制が崩れているせいで守れない。

 ならばどうするか、答えはこうだ。

 パキンッと振り抜かれたダガーが見えないなにかに防がれる。

 ダガーの一閃を見えないなにかに防がれた仮面の少女はユフィから距離を取った。


「今のはシールドね。だけどどうやって発動させたの?」


 立ち上がったユフィは杖を構え直して距離を取った。


「私のゴーレムだよ。守り専門の小型ゴーレム」

「ゴーレム……ふふっ、本当に楽しませてくれそうね」


 嬉しそうに笑みを浮かべた少女は今使っている物よりも長い短剣を抜き放つと、今まで使っていたダガーをユフィに向かって投擲した。

 ノーモーションで投げられたダガーはユフィのゴーレムがシールドを展開して弾いた。が、その一瞬の隙を突いて仮面の少女が接近した。


「シッ!」


 息を吐く音が耳につく、防げないとユフィは思いながら身体を後ろに引いてかわすと杖を構えて魔法を放った。


「───ウォーター・カッター!」


 水の刃が少女に向けて放たれたが、少女は難なく刃を切り裂くと左手を大きく振ると、袖口からなにか取り出し指の合間で掴んだ。

 なんだろうとユフィの視線がそれに引き寄せられたと同時に少女はそれを投擲した。


「ッ───シールドッ!」


 ゴーレムでは間に合わないと杖を掲げてシールドを展開したユフィは、キィーンッと甲高い音と共に空中に弾かれたものを見る。

 投げられたの細長い針のような物だった。こんなものまで使うのかと、ユフィが警戒する中、背後でなにか嫌な気配を感じた。

 振り返りながら杖を向けるユフィだったが、背後から伸びてきた手がそれを払い除ける。


「残念ね」

「このッ!」


 腕を払われたユフィ、そこに仮面の少女の短剣が振るわれようとしたがユフィはとっさにその腕を掴むと、身体を翻し支点を作って投げ飛ばした。

 母マリーに習っていた護身術、こんなところで役に立つとは思わなかった。そんな感想を心のなかで思ったユフィだったが、その一瞬の隙をつくかにように少女は投げられた状態から先程の杭と同じものを投げる。


「───ッ!?」


 そんな体勢でよくも返せるものだと思いながらゴーレムのシールドで杭を弾いたユフィは、投げ飛ばした少女の事を見ていると、空中で回転して見事な着地をして見せる。

 あまりにも見事な着地の仕方にユフィは思わず声を上げてしまった。


「リアルアサシン、スッごッ!」

「言ってる場合かしら?」


 着地したと同時に前へと駆け出した少女が逆手に握りしめた短剣を一閃、するとユフィは身をかがめてかわすとそのまま脚を回して足払いをしたが仮面の少女は上へと飛んだ。

 上へと飛んだ仮面の少女は懐から抜いたナイフを一斉に投げる。


「シッ!」


 真上から投げられたナイフはユフィにゴーレムが防ぐと、着地の瞬間を合わせて魔法を放った。


「まだまだッn───ホワイト・ミストッ!」


 杖の宝珠に展開された魔法陣から溢れ出た白い煙が、ユフィと仮面の少女の姿を覆い隠した。


「こんなもので、目眩ましは効かないわよ!」

「そんなんじゃないよ」


 仮面の少女は声のした方へと駆け出そうとしたその時、空気中でパチッとなにかが弾ける音がして遅れて体中に衝撃が走った。


「あがっ!?」


 体中が痺れる、今までに体験したことのない痛みに仮面の少女は震えながら地面に倒れた。


「あっ………うっ、な、にが……」


 地面に伏せた仮面の少女は、身体が痺れてうまく立ち上がれず喋ることも出来ない。いったい何が起きたのか、分からないといったい状況だ。


「威力は抑えたけど、結構ダメージがあるみたいだね」

「あん、た……なに、した」

「水魔法で霧を出して、雷魔法を撃ったの。ホントは少し痺れさす程度のつもりだったのに、ごめんね」


 ユフィは仮面の少女を殺さないように注意しながら魔法を使った。だけど、仮面の少女はユフィのことを殺すつもりで戦ったよいうのに。


「手加減……されて、まけ……たの、ね」

「最後のだけね。これでも結構ギリギリだったんだよ?」

「つぎ、は………まけ、ない……わ」

「私はもう嫌だよ~」


 やるにしてももう少し武術が出来るようになるまでは勘弁して欲しい、そう思いながら仮面の少女を拘束したユフィはスレイと仮面の少年の方はどうなったのかと視線を向けると、どうやらあちらの決着もついたようだった。


 ⚔⚔⚔


 時はユフィと仮面の少女が戦いを始めた頃、先に始めていたスレイと少年は激しい斬り合いを繰り広げていた。


「テメェのヌるい攻撃なんざ効くかッ!」

「なにを───ッ!?」


 仮面の少年の剣を短剣で合わせて防ごうとしたスレイだったが、受けた瞬間に短剣を通じて伝わってきた力にまずいと感じ後ろに飛びながら力を逃がす。

 トントンッと数歩、後ろに飛んでから前へと強く踏み込んだスレイは、上半身を回して右腕を大きく引き絞りながら剣を水平に構えると、身体を前のめりになりながら駆け出した。

 身体強化から来る凄まじい速度で駆け出したスレイの渾身の突きが仮面の少年に襲いかかる。


「チッ!」


 これは受けれないと感じ取った少年は突きを受けずに横に飛んでかわすと、踵を返してスレイの後を追った。

 突きをかわされ反転するために停止した瞬間を狙って背後から奇襲をかける。少年の目論見通り足を止めたスレイを前に、少年がさらに距離を詰める。


「終わりだ、死ねッ!」


 上から斜め下への切り下ろし、かわせるものならかわしてみせろと少年が心のなかで叫ぶ。

 黒塗りの刃が背後から迫りくるなか、スレイは剣が振り下ろされるよりも速く回るように移動し、短剣を少年に向けて投擲する。


「チッ!」


 投擲された短剣を前に少年は、振り抜こうとした剣を引き戻して強引に大勢を崩してそれをかわした。

 地面に倒れそうになりながらもどうにか踏みとどまり、体勢をを立て直した少年だったが一歩遅かった。ジャキッと重苦しい音と共に向けられた魔道銃の銃口がそこにはあった。


「ヤベッ!?」

「チェックメイト、ってね」


 引き金にかけられた指がゆっくりと引かれ、魔道銃の銃口から撃ち出された雷の魔力を纏った魔力弾が少年の身体を撃ち抜いた。

 雷撃を浴びた少年が倒れ意識がないことを確認したスレイは、魔道銃をホルスターに収めてから少年を拘束するのだった。



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