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終結 ②

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 時は遡り、スレイとユキヤが魔眼コレクターとのリーフとライア、そしてレティシアの三人を助けるべくその場に現れた。二人の姿を見た三人は安心したような顔をしていた。


「二人とも、無事とは言いがたいけど、無事で良かったよ」

「おいレティシア、まだ生きてるな」


 そうスレイがリーフとライアの側に駆け寄り、ユキヤが遠くの瓦礫に背を持たれていたレティシアにむけて声をかける。


「たしかに無事……とはいいがたい状態ですけど、自分もライア殿もなんとかまだ生きています」

「……怪我もいっぱいして、ボロボロになっちゃったけどね」

「妾も生きておるわ」


 側にいる二人と、遠くで倒れているレティシアの返事を聞いたスレイとユキヤは、三人が無事であることに安堵の息を漏らしていたが、まずは戦えない彼女たちの安全を確保しなければと思ったスレイは、これから起こる戦いに巻き込まないように守護結界を張ることの出来る十字架型の魔道具を地面に置くと、魔力で構築され中にいる二人の元に癒しの光が降り注ぐ。


「二人とも、ボクたちはこれからあいつと戦うけど、この結界の外には出るなよ」

「この光は……治癒の光でしょうか?」

「……とっても暖かい」

「ユフィのエレメンタリー・シールドと、ノクトのホーリーレイン・シールドを元に、最上級のシールドを付与して作った設置型の魔道具だ。出来たばかりで特に名前をつけてなかったけど……そうだな、エクラ・スタウロス、輝ける十字架ってところかな」


 スレイは空間収納から輝ける十字架をレティシアの側に投げると、瞬時に二人を囲っている物と同じシールドが展開され、レティシアは自分には使ってくれないと思っていたのか少しだけ意外そうな顔をしていた。そんなレティシアの代わりにユキヤが。


「サンキューなヒロ、レティシアの分まで」

「ちょうど魔道具が二つあったから使っただけ、なかったらアラクネで代用してたよ」


 スレイがユキヤにそう返しながら今までジッと黙ってこちらをにらみ続けていた魔眼コレクターに視線を向けると、殺気をほとばらしながら口元には笑みを浮かべていた。その笑みの意味を知っているスレイは、魔眼コレクターに向けて遺恨返しのために笑みを浮かべて、挑発の言葉をかける。


「はははっ、ボクを殺すだって?前に戦った時にボクたちに負けたこと覚えてないんですか?あっ、そうだった。あのときのあなたっておじいちゃんでしたもんね。認知症とか、物忘れが酷くなってても仕方ありません。見た目はお若くなられたようですので記憶力も良くなってるのかな?って思ってたんですけど、やっぱりご年齢には敵いませんでしたか………あっだからと言ってお気になさらずに」


 スレイの渾身の嫌みと言う名の煽り文句を受けて、魔眼コレクターの額に青筋が浮かんだ。こんな安っぽい挑発に乗ってくれて良かったと思いながらユキヤの方を見ると、なんかこいつこんなこと言うキャラだっけ!?っと、驚き顔でスレイの横顔を見ている。

 その視線を感じたスレイは、ユキヤに向かって、この世界ではこれくらい言えなければ生きていけないもんで、っと小さな声でそう告げると、なんとも悲しそうな、またはマジかよこいつ、っと、そんな二つの感情が降り混ざったような表情をしていた。


「なんかお前、やっぱこっちに来て変わったみたいだな。いい意味じゃなくて、悪い意味で、だけどな」

「うるせぇ、世界最高峰の冒険者夫婦に世界最強の主婦のおばさんに、世界最強のお医者さんで魔法の先生、それに世界最凶の化け物じみた師匠の元で育ったんだぞ?そんなの今さら気にしてられっか、ってんだよ」

「そういやぁそうだったな、世界を守るために世界を作り出した神相手に、大手を振って喧嘩吹っ掛けちまったり、バッカみてぇに真っ直ぐに自分の意思を言える奴だったな」

「バカは余計でしょ?」


 軽口を言い合いながら剣と刀を抜いたスレイとユキヤ、それに対するように魔眼コレクターが身体の甲殻から蟹の脚のようなものを生やすと、それを掴み一気に引き抜いた。するとそこから延びていくのは無数の刺の生えた刀身に、その切っ先は蟹の足の爪を模した大太刀を作り出しその手に握った。

 使徒の力を手にいれたお陰で若返り、そして一度自分を破滅へと追い込んだ相手と合間見えたことに対しての感謝をしているのか、大きく天に手を差し出した。


「あぁ、ワシのこの力をお与えになっただけではなく、あの者ともう一度合間見えることができるこの幸福、ワシはこの時をどれ程待ったことか!」

「ボクとしては、もう二度とあなたの顔なんて見たくはありませんでしたけどね。どうでした牢屋での暮らしっていうのは、食事は美味しくありませんでしたけど、慣れれば結構快適ではありませんでしたか?」

「お前、何で牢屋のメシなんて食ったことがあるんだよ?」


 以前投獄された経験が有ります、等とは口が裂けても言いたくなかったスレイは明後日の方向を見ながら口を紡いだ。だってこいつにそんなこと知られたら絶対に後で大笑いしてくるからだ。

 そんなことを思っているスレイをよそに、魔眼コレクターは続ける。


「居心地がよいわけなかろう!薄暗い地下の牢屋で過ごしてワシが今までに取り返してきた魔眼たちを奪われ、来日も来日も和らぐことのない痛みに耐え続けてきた!だが、それ日々も今日で終わる」


 魔眼コレクターがスレイに視線を戻すと、その手に握る大太刀を構えてその切っ先をスレイへと向ける。


「貴様には、私にこのような地獄を与えてくれた怨み、その全てを刻み付けて殺してくれよう」

「それは全部あなたの被害妄想でしょうが!多くの人の命を、尊厳を、全てを踏みにじってきたあなたが受けるべき罰だ!人のせいにして、またこうして多くの人を傷付けてきた」


 この場で、ユキヤはスレイたちと魔眼コレクターとで、いったい何があったのかが分からなかったが、今の話を聞いてようやく何があったのかを察してきた。ソッとユキヤは刀を鞘に納め、大きく腰を落として居合いの構えをとった。


「お前があいつと何があったのかは察した。とりあえず、あいつを倒すのに手を貸してやっから、かっけぇ決め台詞の一つでもいってやれよ」

「おい、ユキヤ、お前って奴はこんなときに──いや、それも良いかもね」


 ユキヤにむけてお礼を言ったスレイは、黒い剣を後ろのに、白い剣の刀身を横に構える。


「行くぞ魔眼コレクター──さぁ、お前の罪を贖え!」


 スレイとユキヤが同時に地面を蹴り距離を積めようとすると、魔眼コレクターが大太刀の柄を両手に握り頭上に持ち上げるながら叫んだ。


「あがなう罪など、この私に有るわけがなかろうがぁあああああ――――――――――っ!!」


 魔眼コレクターが大太刀を振り下ろすと、大太刀の刀身が分離して無数の刃がスレイとユキヤへ襲いかかる。

 向かってくる刃を前にしても進むことを辞めないスレイとユキヤ、二人は足を止めるどころか逆に速度をあげて魔眼コレクターへと迫りながら、スレイは黒と白の剣に白銀の冷気を纏わせ、ユキヤは闘気を刀の刃に纏わせゆっくりと鍔に指をかけ微かに抜いた。


「双牙・氷刃ノ斬華・乱」

「居合いの型 絶影斬り」


 スレイの白銀の冷気を纏った黒と白の双剣の二閃が煌めき、冷気を振り撒きながら大太刀の刀身を凍らせ次にユキヤの闘気の輝きを纏った黒刀が煌めくと、まるで影を置き去りにしたかのような鋭い斬激が放たれ魔眼コレクターの放った無数の刃を砕き斬った。

 二人は一気に地面を蹴り魔眼コレクターへと距離を積める。


「逃げんなよ!」

「お前を生かしているとライアが悲しむんだ──ここで死ね!」


 スレイとユキヤが次の技を放つべく剣を構えると魔眼コレクターは残った柄だけとなった大太刀を投げ捨て、魔眼で埋め尽くされた左腕を二人に向かって掲げる。


「今さら効くか!」


 魔眼コレクターのその行動を見たスレイは以前と同じように魔眼が発動する感覚と、以前戦ったときに助けてくれた魔眼に残された魂の声を聞き取れる。そう思ったスレイだったが魔眼が伝えようとして来たのは、魂の声ではなかった。

 それは残された魂が赤黒い煉獄の業火に燃やされる苦しみにもがき、スレイたちに助けを求めて必死に手を差し伸ばして来る姿だった。


 ──助けて、熱い、苦しい、痛い、──


 耳を押さえたくなるような魂たちの苦痛の叫びがスレイの魔眼を通して聞こえてくる。あの時、押収するのではなく、確実に潰すように頼んでおけばとスレイは激しい後悔の念に蝕まれてしまった。

 助けれなかった、謝っても謝りきれないこの状況に、スレイは激しく自分を攻めながらも魔眼コレクターを殺す、その一心でユキヤに向かって叫ぶ。


「ユキヤッ!上に飛べぇえええ―――――――――っ!!」

「─────────ッ!?」


 ハッとしながら横を並走するスレイを見たユキヤは、たった一瞬の間にスレイに起きた変化に驚きながらも、その指示にしたがって真上に飛ぶと、透明な何かが通過したのを感じながら足元にシールドを張り、それを足場にして右往左往移動しながら魔眼コレクターに近づく。

 それと同時に、転移魔法を使用して魔眼コレクターに位置を補足されないように動いているスレイ。

 行動の読めないスレイとユキヤの動きを目で追いながら、魔眼コレクターは怒りの叫びをあげる。


「こしゃくな小僧どもがぁああああ――――――――――っ!!」


 叫び声とともに魔眼コレクターが衝撃波を放つと、スレイは転移魔法で衝撃波をすり抜けて魔眼コレクターの目の前に現れると、硬化の魔眼により拳を硬化させスレイに拳を放ち、それに合わせるようにスレイが業火を纏った黒い剣を振り抜こうとして、スレイは竜の感が強く引くように促した。

 魔眼コレクターが拳を振り抜くと、衝撃波がスレイを襲った、ように見えた。


「ちっ、うまくかわしおったか」


 忌々しそうに後ろを振り向くと、警戒した様子で魔眼コレクターのすがたを睨むスレイが現れ、そして再び転移魔法に寄って姿を消した。


「どうだ驚いたか、以前の私は老体だったゆえ複数の魔眼を同時には使えなかった。だがこの体なら、全盛期の若々しいこの肉体に加え、使徒という素晴らしき力によって以前とは比べものにならぬ力を手に入れたのだ!」


 魔眼コレクターの話を聞いたユキヤは、ならばと思い魔眼コレクターの目の前に姿を表すと、そのまま直進上に進んでいく。


「バカめ、その様な単調の攻撃で私が倒せるものか!死ね、愚か者よ!」


 甲殻を刃のように変化させた右腕を真上に掲げ、まだ遠くにいるというのにユキヤに向かって振り下ろした。するとユキヤの体が上下で分かたれる。


 自分の周りから約一メートルの空間を切り裂くことのできる必殺の魔眼、それと使い確実にユキヤを仕留めた。そう思っていた魔眼コレクターだったが、突如、切断されたユキヤの体が霞のように消えていった。


「───何ぃ!?」

「こっちだよ、バァ~カ」

「なにっ、をどうやって─────ッ!?」


 背後に現れたユキヤに向かって今度は空間切断と合わせて、空間振動を合わせた拳を放ったが、拳に伝わってくる感触はとても軽い。

 拳がユキヤの体を捉えると、まるで煙を散らすかのように消えていった。


「体移動の型 朧霞。まずは、その厄介な目を潰させてもらう!」


 朧霞によって魔眼コレクターの死角へと現れたユキヤは、魔眼コレクターの腕を狙って無数の斬激を放ったかのように思えた。


「っ!?──────?」


 斬られたそう思った魔眼コレクターが目を積むってしまったが、いつまで経っても痛みは襲ってこず。不思議に思った魔眼コレクターが目を開けると、全くの無傷であった。


「なんだ、こけおどしか、それとも技を失敗したか。どちらでもよい。まずは貴様からだ!」


 魔眼コレクターが目の前に佇むユキヤに向かって拳を振りおろすが、ユキヤは避けるでもなくただそこに佇みながら刀を鞘に納める。

 どうしたのかと思いながら、スレイは助けるためにユキヤの前に現れようとしたそのとき。


「悪いな。お前のその腕はもう斬ったんだ──斬激の型 夢想影斬」


 振り下ろされた腕、そこに移植された無数の魔眼全てに切れ込みが入り血が吹き出した。


「ぁああああああああ―――――――――――っ!?私の魔眼が、あぁっぁあああぁっ―――――――――――っ!?」


 魔眼を全て失った魔眼コレクターが叫び声をあげる。そして、そんな魔眼コレクターとユキヤのすぐ側に現れたスレイは、移動中に見た不可解な現象を思い出していた。


 振り下ろされると途中、サァーっと線を引くように魔眼に切り込みが入り血が吹き出していったのだ。

 今までユキヤはあの技を使って来なかったが、もしも今まで戦った中であの攻撃を受けたらと思うと、背筋が凍る思いをしていた。


「おい、こいつを殺るけど構わねぇよな?」

「あぁ」


 魔眼に囚われていた魂たが解放され、消えていくのを確認したスレイは、ユキヤに魔眼コレクターを殺すように頼む。これで終わる、この場にいる誰もがそう思った。

 そのときだった。


「なんだ、ずいぶんと楽しめそうな奴等が残っているじゃないか」


 声と共に降り注いできた圧倒的なまでの威圧を受けスレイとユキヤは振り替えると、そこにいるだけでただ射殺されてしまうような鋭い殺気にスレイとユキヤは全身から吹き出る恐怖に、自然とあふれでる強敵との戦いに身を震わせながら口元を歪める。


「おいおい、こいつはヤバいな」

「あぁ。久しぶりにゾクゾクするよ」


 二人の目の前にはこの戦いを招いた元凶である、始まりの使徒が立っていた。

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