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再戦

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 街へと戻ってきたスレイとラピスがまず目に入ったのは、瓦礫とかした町並みと、そんな街のなかで暴れまわっているとても巨大な身体をした魔物の姿だった。


「おいおいおい、いつから使徒との戦いじゃなくて大怪獣バトルになっちゃってたんだよ。ジャンルが違うだろジャンルが!ここってファンタジーの世界でしょ!?いつからSFの世界になっちゃったんだよ!」

「スレイさま、いったいなんなのですか、そのジャンルと言うのは?」

「うん。ただのボクの独り言なんで、気にしなくてもいいんですよラピスさん」


 一応わりとガチ目にツッコミを入れていたスレイだったが、これ以上は言わないつもりで空から街の様子を確認するが、街の至るところで黒煙が上がり魔法師団や冒険者たちが使徒の分体と戦っているのが見えた。

 ユフィたちの姿は見えない、巨大な魔物のような使徒と誰かが戦っているみたいだが、使徒の身体が大きすぎて誰が戦っているのかは分からない。見たところ外からの魔物を防ぐ結界があの巨大な使徒のせいで破壊されている。

 このままじゃ使徒だけでなく外からの魔物の襲撃まで有るかもしれない。早いうちにあの使徒だけでも何とかしなければならないが、そもそも使徒はいったい何体この場に来ているのか、それを知りたいと思ったスレイはもしかしたらそれが分かる存在に向かって語りかける。


「──さて、冗談はさておき、ウェルナーシュこの場所にいる使徒の数と、もしも分かればでいいんだけど使徒が今どこにいるか、正確な場所ってわかるかな?」


 スレイは黒い剣に向かって話し掛けると、横からラピスもスレイの剣を見ながら返答を待っていると、剣の中から低い声が聞こえてくる。


『そんなこと我に分かる訳がなかろうが、そもそも今の我はその剣を握るお主を介して世界の様子を見ておるだけだからな、使徒の感知など出来るはずがなかろう?』


 ウェルナーシュが呆れるように答える。

 声だけではあったがこいつバカなんじゃないのか?っとでも言いたいような声色で、さらには最後に鼻で笑われたのを聞いたスレイは力を借りている身の上なので言い返すことなどは出来るはずはなかったが、一瞬だけこいつ目の前にいたら一発ぶん殴ってやろうか?、そう思いながらこめかみをピクピクと痙攣させながら言葉には出さずに心の中で怒りに震えている。

 すると隣にならんで飛んでいたラピスがスレイの心の中を読み取ったのか、どうにかスレイのことを落ち着かせようとしてきた。


「あぁ。止めてくれてありがとうラピス………取りあえずウェルナーシュ。お礼だけは言わせてもらうよ。ありがとう、力を貸してくれて」

『ふん、先程も言ったが我は我の目的のためにお主に力を貸しておるだけだ。感謝はいらぬ』


 そう言うとウェルナーシュからの声は途絶え、再び語りかけようかと思ったがユフィたちのことが心配になったスレイは、ラピスの方を見た。


「行こう。今なら結界が壊されているからこのまま中に入って、出来るだけ空中の使徒を倒そう」

「はい。分かりました!」


 スレイの指示を受けてラピスが答えると、二人は周りを飛び回っている使徒へと攻撃を開始したのだった。



 巨大な使徒へと生まれ変わった魔眼コレクターと戦っていたリーフ、ライア、レティシアの三人は、蟹の甲殻を切り裂くごとにその巨体を肥大化させていく魔眼コレクターのことを、忌々しそうに睨み付けながら振り下ろされる鋏をかわしながら舌打ちをした。


「全く厄介じゃないか。妾たちがあの使徒を斬ったところで瞬時にその傷を再生されるだけではなく、その身体を肥大化させるとはのぉ!」

「それだけじゃありませんよ!巨大化するごとに硬度も上がっているせいで自分の剣も通りずらくなってきています。それに……不甲斐ないことですが自分の剣がいつまで持つか」


 リーフは右手に握る翡翠を確認すると、今まで刃こぼれ一つ起こしたことのなかった翡翠の刀身には無数の刃こぼれが起こっていた。リーフは自分の力不足と嘆いてはいるがそうではない。

 翡翠の刃が欠けているのは魔眼コレクターの硬度がリーフの翡翠にかけられている強化を上回っていくせいだ。そして、それはリーフだけではなくレティシアとライアも同じだった。

 レティシアの手に握られている剣杖の刃にも無数の刃こぼれが起こっており、ライアのガントレットに至っては歪みや亀裂が走るまでの損傷を受けていた。


「……二人はまだいい。私のパンチじゃも、うあの甲羅を撃ち抜けない」


 巨大な鋏と拳の振り上げや振り下ろしをかわしながら攻撃を仕掛けている三人だったが、甲殻が固くなりすぎてだんだんと攻撃が効きづらくなってきている。

 さらには、その巨体からは想像しずらいほどの速度と、振り抜かれた時に巻き上がる風圧のせいでなかなか攻められず、三人は防戦一方になっていた。

 だが、こうなっている理由はもう一つあった。

 それはこの使徒が有している恐ろしい能力が原因であり、リーフとライアはその恐ろしさを以前対峙したときに身をもって体験していた。


 鋏の横凪ぎをかわしその際に発生された風圧を受けたライアは、吹き飛ばされぬよう身を屈めて風圧を受け止めようとした。すると左目の魔眼が発動し、これから起こるであろう出来事が一瞬で頭の中に写し出されたライアは、同じく風圧に耐えていたリーフとレティシアに向かって叫ぶ。


「────ッ!二人とも、今すぐこの場から離れて!!」

「「──────────ッ!!」」


 ライアの叫び声を聞いたリーフとレティシアがライアの方を見ると、一足先に竜翼を出現させて上空へと退避していた。二人はすぐにライアの指示に従ってその場を離れるため、屈めていた身体を起こし地面を蹴ると闘気を使って空中に逃げるた。

 すると同時に、今まで二人がいた地面が割れたかと思うと一瞬にして地面がもとに戻る。もしもあのままあそこにいたら、いったいどうなっていたか、それを想像しただけでも恐ろしい。


 あれは魔眼コレクターが自分の腕に移植していた魔眼の力だ。

 投獄の際に腕に移植されていた魔眼はすべて証拠品と言うことで取り除かれたと聞いていたが、今は腕だけではなく身体の至るところに魔眼を移植している。そのすべてが使用の回数制限があると聞いているがそれがいったいどれだけなのかは分からず、魔眼の攻撃事態も先程のように発動されるまでは分からない。


 なので、攻撃を避けるためにはライアの未来視の魔眼の力が必要だが、魔眼コレクターとの戦いをはじめてすでに数十分が経過している。

 その間にライアは未来視の魔眼を使用した回数は三十回以上にも登った。今までにここまで連続して魔眼を使用したことのないライアにとって、これ以上の使用は肉体的にも酷な物となるので早急に戦闘を終了させなければならない。


「こうなったら上から攻撃を仕掛けましょう」

「それしかあるまい!」


 上からならどうにか倒せるかもしれないと思ったリーフたちは、全員で魔眼コレクターの頭部にまでかけ上がると、逆手に持ちに持ち変えた翡翠に闘気を纏わせると魔眼コレクターの甲殻へと突き刺す。


「これなら──烈震煌波激!!」


 突き刺した部分から闘気による振動を与えることで、あの固かった甲殻さえもひび割れ魔眼コレクターの全身から血が吹き出す。確実に聞いている娘の攻撃を見て、レティシアもリーフの技を真似て攻撃を始める。


『──ガァアアアア―――――――――――――――ッ!?』


 リーフとレティシアの攻撃を受けて暴れ始める魔眼コレクター、そんな魔眼コレクターの頭部にしがみついている二人は何とか振り落とされないように、突き立てている剣にしがみついているが、二人の握る剣から何かがひび割れるような不快な音が聞こえた。


「ぐっ、このままでは剣がッ!?」

「妾のもだ!もう持たんぞ!」

「……二人とも、しっかり捕まってて!!」


 ガントレットが壊れても構わない覚悟で闘気を纏わせたライアは、ひび割れた甲殻に向かって全力の拳を叩き付けると、魔眼コレクターの甲殻に無数のひびが刻まれそこから止めどなく血が流れ続け、巨体がグラリと傾くとそのまま地面へと倒れようとしていた。


「まずい、飛び降りるぞ!」


 咄嗟にレティシアが叫び飛び降りると、リーフもそれに続こうとしたとき腕を押さえながらうずくまるライアの姿を見て慌てて駆け寄った。


「ライア殿!どうされたのですか!」

「……だっ、大……丈夫。ちょっと、腕の骨が砕けちゃっただけ……だから、平気」


 リーフがライアの腕を見ると、魔眼コレクターを殴り付けたときに砕けた無数のガントレットの欠片が腕に刺さり、その衝撃で拳と腕の骨が砕けているせいでライアの右腕が赤黒く変色して腫れ上がってしまっている。

 明らかに重症のはずなのにライアはうめき声一つあげようとしないが、表情は曇り顔には脂汗が滴り落ちているためなんとも痛々しい。


「自分がライア殿を抱えて飛びますから、しっかり捕まっててくださいね」


 リーフがライアをお姫様抱っこの形で抱き抱えると、そのまま地面へと降りると魔眼コレクターの倒れる場所から離れ岩影に隠れて衝撃から身を守る。

 しばらくして魔眼コレクターが倒れたときの衝撃と轟音が鳴り響いた。


 この二つが収まったのを確認したリーフたちは、先程の轟音のせいでよってくるかもしれない使徒の分体のことを警戒しながら、怪我を負っているライアの治療をおこなっていた。

 竜の血を引いている竜人であるライアは治癒能力に秀でているため、既に傷口が塞がしかけており腕の中に破片が埋まったままの状態となっていた。


「レティシア!すぐにこちらに来てください!」

「なんじゃ!大声を出すでない!」

「そんなことよりも、ライア殿の治療を手伝ってください!」

「むっ。そういうことは早よう言わぬか!」


 目に見えて飛び出している破片はすぐに取り除けるが、腕の中に残されたままになっている破片に関してはレティシアが魔力を浸透させながら取り除くこととなった。

 レティシアは炎の魔法で刀身を熱したナイフをライアに見せる。


「ちと強引なやり方ではあるがこれでもう一度傷口を開く。かなり痛いと思うが我慢してくれよ」

「……ん。我慢する。思いっきりやって」

「わかった。リーフよ、この娘をしっかり押さえていてくれ、お主はこの布を決して口からはずす出ないぞ」


 レティシアに言われてリーフとライアはうなずいたのを見て、レティシアが小さく、行くぞ、そう言うとナイフでライアの腕に突き刺さっている破片の近くを斬る。

 ジュゥッと音がなり肉の焼ける臭いが鼻をつき、少し遅れて痛みが襲ってきたライアは口に咥えた布を強く噛み締めながら暴れ始める。


「ん~~~~~~~~~~~~~~ッ!?」

「リーフ!しっかり押さえておれ!」

「わかっています!!」


 痛みのあまり暴れ始めるライアのことを力ずくで押さえつけるリーフ、それはしばらく続き最後の破片を取り除いたレティシアはすぐにポーションを振りかけた。すると、ライアの竜人の治癒能力とポーションの効果が相まって治療痕なども綺麗に消えていた。


「今ので最後だ。妾はちと残してきた剣を回収してくるからの、ここで待っておれ」

「えぇ。ついでではありますが自分の剣も頼めますか?破片だけでも回収しておきたいので」

「任されよう」


 魔眼コレクターに刺さったままの剣を回収しに行ったレティシアを見送る。治療を終えてグッタリとしているライアの側で看護を引き受けたリーフは、ポーチの中から果汁水の入った革袋とタオルを取り出してライアの額から滴っている汗を拭っていた。


「ライア殿、果汁水です。飲めますか?」

「……ん。ありがとう。でも大丈夫だから気にしないでいいよ」

「ダメですよ。今のライア殿は怪我人ですから、いくら治癒能力があるからといって無理は行けません。それに先程の一撃で闘気も使いきっていますよね?」


 先程の魔眼コレクターを撃ち取った一撃、あれはライアの全闘気を撃ち込んだ気弾だ。

 持てる全ての力をあの一撃に込めたため今のライアは指先一つまともに動かすことができないほど衰弱している。


「どのみち、私の翡翠はあの巨体の下敷きになってしまいましたかたね。戦線への復帰は……」

「……ん?リーフ、どうかした?」

「いえ………使徒や分体は……死ぬと消えますよね……ならば、なぜあいつは消えないのかと」


 ひきつった顔でそう答えるリーフの言葉を聞て、ライアもその意味を悟った。つまり、魔眼コレクターはまだ生きていると言うことを、ならば魔眼コレクターの近くにいるレティシアが危ない。


「様子を見てきます!ライア殿はここにいてください!」

「……私も行く」


 少々休んだお陰で体内の闘気が回復したライア。怪我は治っているとはいえ戦わせることにいささか抵抗のあったリーフだが、今は急がねばならないのでライアを連れていくことにした。


「わかりましたが、無茶だけはしないで」

「……ん。わかった」


 立ち上がりながら予備の剣を引き抜いたリーフと砕けたガントレットの代わりに竜麟を纏ったライアが一斉に飛び出すと、甲殻の側に立っていた若い男、そして首を捕まれて苦しそうにもがいているレティシアの姿があった。


「その手を放しなさい!」


 ゆっくりとこちらへと視線を向けた男、その目を見たときリーフとライアは全身を恐怖が駆け抜ける。恐怖に震えている二人を見た男は、レティシアを投げ捨てるとゆっくりと二人の方へと歩み寄る。


「……お前は、だれ?」

「だれだと?はっはっはっ、わかっているだろ?ワシだよ」


 そう、分かっている。なぜならばあの男の腕には魔眼コレクターの腕にあった魔眼と、体には先程の蟹の甲殻のような鎧を身に付けている。つまりはこの男が魔眼コレクター本人だ。


「感謝しているぞ。竜の小娘がワシを殺してくれたお陰でこうして若返って甦ることができたわい!」

「甦った?どういうことですか?」

「言わぬよ。さて、そこの小娘。ワシの魔眼をそろそろ返してもらおうか」


 とてつもないプレッシャーにリーフとライア、そしてレティシアの三人は恐怖を露にしているとそんな彼女たちのもとに声がかけられる。


「へぇー、ならボクたちも参加させてもらってもいいかな?」


 その声を聞いたリーフとライアが振り向くと、そこにはボロボロになりながらもここに来てくれたスレイと、その隣にたっている青年が口を開いた。


「ただし俺たちが殺るのは、てめぇに対する断罪だけどな」


 次に聞こえた声を聞いて起き上がろうとしていたレティシアがそちらを向くと、刀を肩に担いだ格好をしているユキヤの姿であった。

 二人の姿を確認した魔眼コレクターは、スレイの姿を見て不適な笑みを浮かべた。


「そこの白髪の小僧はあのときの……そうか、予定変更だ。貴様から殺してやろう」


 魔眼コレクターの標的がスレイへと変わると、隣に立っていたユキヤが愉快そうに笑った。

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