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共闘する二人

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時は遡り、スレイとラピスの戦いの場が山へと移った頃、ユフィたちは街の人々を守るために学園の敷地内から移動しながら、その都度現れる使徒の分体との戦いを開始したのだが、その途中で先に使徒と交戦しながら市民を避難所となっている王城へと誘導を行っていた魔法師団の面々と合流した。


「ここは危険です!王城への避難を急いでください!前の人を押さずに、迅速に行動してください!」


この国の王城にはもしもの時のために高位の守護結界を張られている。緊急時の場合にのみそれが発動し、住民の避難所として使われるとクレイアルラから聞かされていたが、遠目からでも見えるそれは使徒の攻撃にも耐えられると思われる。

ユフィたちは避難誘導を行っている部隊、それを率いて指揮を行っているトラヴィスの姿を見つけて駆け寄ってきた。


「ユフィちゃんたち、よかった無事じゃったんだな!何が起きとるんじゃ!この人と魔物を混ぜたような者はなんなんじゃ!いったい何が起きておるのか説明してくれ!それとその後ろのレイスのような女性はいったい誰なんじゃ!?」

「おじいさま!慌てすぎてていったいどれから説明していいのかわかりませんよ!あと同じこと二回もいっておられるのにお気づきでしょうか!!」


トラヴィスは混乱していた。それに受け答えをしていたリーフはと言うと、今までずっと探している使徒ベクターの姿が中々見つからないことに対して焦りを感じ、少しだけ八つ当たりのようにトラヴィスに向かって叫び返してしまっていた。


「おじいちゃん!今は私たちから言えることは少ないけど、これが終わったらちゃんとスレイくんと一緒に説明するから、今は街の人を守ることだけを意識して!スペンサーさんも……………あれ?いない?」


ユフィはキョロキョロとトラヴィスの副官であるスペンサーの姿を探したが、その姿はこの場のどこにもなかった。まさか、この状況で逃げた!?っとユフィたちが思ったが、実力的にはかなり有るうえに、前に簡単な手合わせでスレイと闘った所を見たことがあるが、魔法だけでなく武器の扱いもそれなりに有り、トラヴィスの副官をしているところから実戦経験もあるはずだろうに、こんなところで逃げる等は考えずらかった。


「スペンサーならば、ギルドにおるジャルナのババアのところに使いに行かせたは……ついでに、一般市民の救助をさせるために部隊を半分に分けてそちらの指揮についかせたんじゃ」


なるほど、そういう建前でスペンサーと良い仲のリタを助けにでも行かせたんだろう、最近なにかと厄介ごとを持ち込んできたり、いろいろと株を落とし続けていたトラヴィスの株がちょっとだけ上がった瞬間であった。だが、それと同時に無数の使徒の分体の気配がこちらへと近づいてくるのに気がつき、ユフィたちが一斉に武器を構える。


「おじいちゃん、魔物たちは私たちが相手をするから、早く街の人の避難を進めて!」

「それと学園のダンジョンの中に学院の生徒のみなさんがいます。今はルラさんとミーニャちゃんが守ってくれていますけど、怪我人が多いので襲われると大変ですから、救助に向かってあげてください!」

「うむ、任されよう。話は聞いたな!部隊をさらに別ける!治癒魔法を使える者を多く編成して迎え!」

「「「「「了解!!」」」」」


トラヴィスの指示を聞きすぐに動き出した魔法師団の面々、それを見たユフィたちはここではもうやることは無さそうなので、街の中へで暴ている使徒の分体を倒すために急いだ。


使徒に襲われていた街の人々を助けながら、この街に来ていたベクターに憑依した使徒イヴライムのことを探していたが、アストライアの探索を使って探してもらってるなか、ちょうど目の前にいた使徒の一体を蹴り倒したライアが倒壊した瓦礫の有る場所の近くから悲鳴のような声が聞こえたと言いだした。


「……あっちから、なにか悲鳴みたいなのが聞こえてきた!」

「リーフさんとライアちゃん、私とノクトちゃんはこっちの使徒を片付けたらすぐに行くから先行してその人の救護をお願い!」


今、ユフィとノクトは空から攻撃を仕掛けてきている使徒の分体を倒すのに忙しい、もう少しですべてを倒しきれるが、それでは今危機に陥っているその人は救えない。なので、ユフィは二人に先に行ってもらうように言うと、地上にいる使徒の分体を倒し終わったリーフとライアが一斉に答える。


「……ん!任された!行こうリーフ!」

「上の使徒はお二人にお任せします!」

「オッケー!任されました!──ライトニング・アロー!」


ユフィが雷撃の矢で魔物を打ち落としたのを見た二人は踵を返して走り出した。場所を知っているライアが先頭を走り、使徒の分体に襲われている人のいるところに向かおうとした二人、そんな二人のために一瞬だけ攻撃の手を緩めたノクトが、空間収納から取り出した物をリーフへと投げ渡した。


「リーフお姉さん!これポーションの入ったバッグ、持っていってください!」

「助かりますノクト殿!」


その場所に向かうと使徒の一体が薄汚れたマントを被った人に斬りかかろうとしたところだった。


「だっ、誰か助けてくれ!?」


声からして男だろう、そう思いながらも即座にその男性を助けるためにリーフとライアが走り出した。

分体が助けを求める男に向かって鋭い爪を突き立てようとしているが、二人との距離はかなり離れているために確実に倒すことが出来ないが、一瞬だけ気を逸らせれることくらいはできる。


「ライア殿、一瞬だけあの分体の気を反らさけます!──飛翔閃!」


使徒の分体に無かちぇリーフが闘気の斬激を横に一閃、放たれた斬激が分体へと向かって真っ直ぐ飛来したが、一目だけ男に爪を突き立てようとしたその手を止めて一瞥した分体だったが、リーフの放ったあまりにも真っ直ぐなその斬激を見て、避けようともせずに掌で受け止めるようにして斬激を打ち消した。だが、その一瞬の隙が分体の命取りとなった。


「……死んで、炎破剛激掌」


一瞬で近付いたライアが使徒の腹部に手を当てると、そこから闘気の衝撃波と共に炎の爆炎が吹き荒れ完全に使徒の分体は灰と化して消えてしまった。

その光景を下から見上げていた男性がポカーンと間の抜けた顔をしていると、ライアがそっと地面に腰を落としている手を差しのべる。


「……おじさん、大丈夫?怪我とかしてない?」

「えっ、あぁ平気だ。助けてくれてありがとう」


ライアの手を取って立ち上がった男、そのすぐ後にリーフもやって来てた。


「ここは危険です!あちらで避難誘導を行っていますのでご案内します」

「あっ、ありがとう。だが、私にはどうしてもやらなければならないことがあるんだ、済まないが、ここは失礼させてもらうよ」

「……そうだとしても、ここは危険。武器も持っていない人がうろうろしてたら命が危ない。だからダメ」


有無を言わせずに男の手を掴んで、避難誘導を行っている場所まで引っ張って連れていこうとしたライア、抵抗している男だったが竜人の胆力に並みの人では太刀打ちできず引きずられていく。その後ろからリーフも後を追って歩こうとしたそのとき、黒い影がリーフの後ろから差し、振り替えるとそこには使徒の翼をその背に生やした巨体があった。


「───ッ!ライア殿!その御仁を抱えて飛んでください!!」


リーフの指示を聞いたライアも背後からの気配を察し、その事に気づいていない男の腕を握る手に力を込めながら背中に翼を発現させ力強く羽ばたかせて飛び立つと、空中で身を捩って後ろを確認したライアは目を見開きながら驚愕した。


「……魔眼……コレクター」


そう、そこにいたのは少し前にライアたちの手で捕らえたはずの魔眼コレクターの姿、そしてその巨大な拳を盾で受け止めているリーフの姿であった。

背中には白い翼、人の身を遥かに越える巨体、甲殻類特有の固い甲羅、その隙間の至るところからはギョロギョロと動く無数の目玉が身体の至るところから見えて、以前スレイによって切り落とされたはずの左腕には巨大な蟹の鋏のような物が生えていた。

使徒の分体と化したことで姿形は変わっているが、あの無数の魔眼を移植された腕や、禍禍しい気配を見間違えるわけはない。

男を安全な場所にまで逃がすために、魔眼コレクターの視界に入らない場所に男を下ろすと、そこから王城の有る場所を教えてからリーフの戦っている場所に戻ると、すぐ横を何かが飛んでいった。バッと視線を向けると、瓦礫の中にリーフが埋もれているのを見つけ駆け寄った。


「……リーフ!大丈夫!?」

「えっ、えぇ。少々背中を打ち付けてしまいましたが………なんとか平気です」


瓦礫の中からリーフを助け出したライアは、使徒と化した魔眼コレクターの姿を見据えると、ライアの姿を視たコレクターが言葉を発した。


『くっくっくっ、久しいな竜人の小娘。どうじゃこの姿は、至高なる神の神業によって得たこの肉体!以前は負けたが今回は違うぞ!わしの可愛い魔眼、今日こそは返してもらう!!』

「……還すも何も、この魔眼は私の物。だからイヤだ、このストーカー変態ジジイ」

「ライア殿、いったいどこでそのような言葉を覚えてきたのですか………?」


魔眼コレクターの言葉に対するライアの返しにリーフが呆れていると、コレクターが無言で二人に向かって攻撃を仕掛けてきた。

リーフは闘気で、ライアは竜力と闘気を合わせて身体強化を行うとコレクターの拳を受け止めるのではなく、かわすようにその場から離れると、すぐに体勢を立て直しライアが一直線にコレクターに向かっていった。


「……先手必勝!ファイヤー・ナックル!」


大きな身体と巨大な甲羅による首の可動域の狭さを見越したライアは、瞬時にコレクターの視界の死角に入ると両手に炎を纏わせた無数の連打をお見舞いした。

だが、キィーンっと拳を打ち付けるごとに響く金属をぶつけたような甲高い音、そしてガントレット越しにも伝わってくる甲殻の固さ。

この甲殻は以前の時に自身の体を高質化させる魔眼以上の固さを持っていることを察したライアだったが、拳を打ち付けていた場所が突然蠢き出したのを見て何かが不味いと竜人としての感が告げ、そして未来視の魔眼が数秒後に突然生えてくる鋭い先をもった脚に腹部を貫かれる未来を見せた。


「──────ッ!!」


未来視の魔眼によって未来の光景を見たライアは咄嗟に身体を屈めると同時に、今までライアのいた場所に蟹の脚が飛び出し空を貫いた。


『ほぅ、うまくかわしおったか』

「……くっ!こいつ!」


悪態をつきながらもコレクターの追撃を恐れたライアは、そのまま地面を転がって片手で地面を突き上げて逆立ちの要領で身体を持ち上げ、立ち上がりながら後ろに下がると今度はライアと入れ替わるように走っていったリーフが走り出した。


「行きます!──秘技・煌刃連双撃!」


闘気を纏った翡翠を一瞬にして二閃させる最速の剣劇が、魔眼コレクターの強固なる甲殻に振るわれる。だがしかし、振るわれたリーフの剣が魔眼コレクターの甲殻に当たった瞬間、無惨にも火花を散らしながら弾かれる。


「くっ!なんて固いっ!」

『無駄じゃ無駄じゃ!わしの身体は簡単には斬れぬは!』


魔眼コレクターの鋏がリーフを真っ二つに引き裂こうと伸びてくると、リーフは上へと飛び上がり魔眼コレクターの背後を取った。


「ならばこれならどうですか!──秘技・烈震煌斬!」


左斜め下から切り上げられるリーフの技を、魔眼コレクターは腹部から出現させた数本の脚が受け止め、そのままリーフのことを切り殺すために再び鋏を広げて振りかぶろうとしたところで、魔眼コレクターが眉を潜める結果となった。


『なに!?』


驚きの声をあげる魔眼コレクターが見たのは、剣が弾かれることなく僅かにだが甲殻に食い込んでいたのだ。魔眼コレクターの顔に驚きの表情を浮かべながら、リーフのことを振り払うように鋏を振るおうとすると、そこに割り込みように入ってきたライアが、全身に自分の持てる闘気と竜力を解放しながら、魔眼コレクターの鋏を掴んで出せる力の限りを尽くして押し返した。


「……やっちゃえ、リーフ!」

「はぁああああああ―――――――――――――ッ!!」


リーフが翡翠の柄を両手で握り直して一気に力を込めると、強靭な固さを誇った魔眼コレクターの脚を一刀の元に切り飛ばした。


『─────ッ!?ガァアアアアアア――――――――――!?』


脚を切り飛ばされた魔眼コレクターが叫び声をあげながら後ろに下がっている。

あの脚を斬るだけでもかなり体力を消耗したリーフとライアは、荒い息を整えながら次に備えて剣と拳を構えながら、小さな声で話し合う。


「……リーフ、技を使いすぎてるけど闘気の残りはまだ平気?」

「えぇ、まだまだやれます。ですが、自分よりもライア殿こそ先程から平気ですか?飛ばしすぎていますが」

「……ん。ちょっと使いすぎてるけど、無理をしなきゃ大丈夫」

「不安な言い方ですが分かりました。………身に付けたばかりの闘気です。あまり無理はしないでくださいね」


一度頷いたライアを見たリーフは先程と同じようにもう一度あの技で魔眼コレクターの甲殻を切り裂こう、そう思いながら闘気を練ろうとしたそのとき、遠くから何かが爆発するような音が聞こえ二人が振り替えるとそこはユフィとノクトが分体の足止めを行っていた場所の近くだ。

あの二人ならば大丈夫、そう思ってはいるが心配でしかがたがなかった。


「……リーフ、行ってもいいよ」

「……いいえ、ここをライア殿お一人に任せるわけにはいきません」


二人は魔眼コレクターから目を放さない、なぜならば、魔眼コレクターの身体が先程よりも巨大になっているからだ。


『貴様ラハ、ワシノコノ手デ必ズ殺シテクレル!』


明らかなまでに先程とまで違う気配にリーフとライアが身構える。こいつはここで仕留める、そう強い意思で魔眼コレクターを睨み付けていると


「なんじゃ、久しぶりに会うたと思おたら存外にピンチのようだなリーフ」

『ナニ者───』


魔眼コレクターが振り向くと同時に、その巨体が上下に二つに別れた。

あれだけ固かったあの甲殻をいったい誰が、そう思った二人が魔眼コレクターの背後にいた影を見つめリーフはその姿を見て驚いた。


「あっ、あなたは、レティシア?」


そこにいたのは、燃えるような真っ赤な長髪に中に一房だけ黒い髪に、左側頭部には独特な意匠の仮面を付け、黒を基調にしたバトルドレスを見に纏った女性 レティシアがそこにいた。


「ふふふっ、妾のことを覚えてくれていたみたいでうれしいぞ」


そういってレティシアは小さく微笑むのだった。

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