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崩壊する迷宮

 スレイたちが学園保有の迷宮に入ってからすでに五日が経過していた。

 初めは魔物を殺すことに抵抗の合った生徒たちだったが、だんだんと数をこなしていくにつれて魔物を殺すことへの抵抗が薄れていき、今では我先に魔物と戦おうとしているほどだ。なんと言うかこの五日で生徒たちはたくましく成長していたなと、スレイは思ってしまった。

 ついでに魔物を狩ったら自分の手で解体させていた。はじめの頃は魔物の素材もなにも分からずに捨てようとしていたが、討伐の証明になる部位やギルドや道具屋などで売れる素材となる部位などを教えると、それを剥ぎ取りなども出来るようになった。

 だが、それでもまだうまくできずに素材をダメにしてしまうこともあるが、五日でだいぶん出来るようになって来ていたとは思った。


 この日も、スレイたちは生徒を引き連れて魔物の討伐を行っていた。

 少しは慣れたところで生徒たちと、今回はオークと戦っているのを見守っていた。その間、他の魔物が襲ってこないようにホーソンたちが警戒していたが、実際にはこっちを狙ってくる魔物はスレイが殺気で押さえ込んでいるので問題はないはずだ。


 オークの体は筋肉質で固いため武器では傷が付かない。それならば魔法で倒すしかないのだが、今のマナたちではオークを仕留めることは出来ない。

 その理由としては魔法の威力不足が原因だった。例えば一撃のために威力をあげるとスピードが落ち、逆にスピードを上げるようとすると威力が弱まってしまうのだ。そんな両極端なことしか出来ないマナたちだが、それでもアストンとトロンはこの五日で無詠唱の魔法を体得したので、大いに進歩していると言えるだろう。

 そうこうしているうちに、盾を構えたマナが後ろに吹き飛ばされそれをアストンが受け止める。


「マナさん、大丈夫!」

「うん、私は大丈夫………ありがとう。でも変なところ触らないで」

「ごっ、ごめん!?」

「コラ、アストン!こんなときになにいちゃコラやっとんだテメェ!」

「マナちゃん。アストン君に発情しちゃダメだよ~」

「そんなものしない」


 どうやら吹き飛ばされたマナを受け止めたときに、アストンがマナの胸を触ったらしい。こんなときにやるようなことじゃないだろうと、スレイたちも思っていたが、次にはまともな雰囲気に戻った。


「みんな、私の槍でオークに留め刺すから、どうにかしてあの腕を落としてもらえないかしら?」

「いいぜ俺があいつの腕を落としてやる。マナ!アストン!オークを押さえてくれ!」

「オッケー、まかせて。ウインド・ブラスト!」

「わかった!サイクロン!」


 マナとアストンが風の魔法によってオークの動きを止めていると、風の魔法を避けるようにして走り出したトロンは剣を握る手に力を込めると一気に走り出した。

 トロンが地面を蹴りあげオークに近づくと、オークが風の魔法に押されながらもその太い腕に握られていた棍棒を使ってトロンに振り下ろす。

 トロンは横に飛びながらすれ違い様にオークの腕を切り落とし、そこから壁と天井を蹴って反対側へと移動すると残っていた腕も切り落とすと、背後にからもう一撃を与えて後ろに飛んだ


「やれリアス!」

「やぁああああっ!!」


 槍の切っ先に強化を槍でオークの首を突き刺して止めを刺した。

 こと切れたオークが倒れたのを見てリアスとマナがハイタッチし、トロンとアストンが拳を付き合わせて勝利を喜びあっていた。


「いやいや、あいつらいいパーティーになってきたんじゃねぇか?」

「えぇ。そう見えるようにようやくなってきた、とは思いますけど………さっきのようなこともありますからちょっとばかし不安になりますけどね」


 ただでさえうら若き男女が近くで寝ているのだ。そこにさっきのアストンとマナのようなことがあったため、マジで夜になって間違いなんて起こらないよな?っと思いながらも、今夜はアラクネで警備を強化しておこうと思っていた。


「しっかし、五日もあっちの方がご無沙汰でまいっちまうな、ホーソン?」

「俺に振るんじゃない。そもそも俺は──」

「わぁーってるって、お前はムッツリ野郎だ。ポーラたちやガキどものいる前じゃそんな話出来ねぇよな?みなまで言うな。だが、お前だって男だ懇意にしている娼館の一つや、惚れ込んでる娼婦の一人くらい居るんだろ?言っちまえよな?」

「んなもんいねぇよ!」


 ここまで行くとメルクーリへの信用度と言うものが大暴落していた。元からパーティーを組んでいるポーラとベラロナでさえも、こんな迷宮の地下深くで性へのあれこれの話をしては自分たちへの身の危険が有るのではと警戒してしまうほどだった。メイリーンはメルクーリの妹なので安全だが、そこでホーソンにまで話を振られたところで身構える。

 ついでにマナとリアスも身近な危険から──もちろんトロンとアストンのこと──自分を守るように身構えるが、そこはスレイが何かあったときに守るので安心してほしかった。


「ってか、スレイもそうだろ?若いんだし、溜まりに溜まってんじゃねぇのか?」

「いいえ、ボクは平気です」

「んだよホーソンもスレイも、まさかお前らこっちか?俺の尻みて欲情してんのか?いやぁ~ん、あたいの近くによらないで~!?」


 メルクーリが自分の尻と胸を隠しながらスレイとホーソンの側を離れる。ついでにアストンとトロンも二人から離れる。それを見てスレイとホーソンがブチッとキレる。


「すみません。ボクはちゃんと愛する婚約者たちがいますので………ところでメルクーリさん。死んだら火葬か土葬、もしくは獣葬か消滅のどれがいいか教えてもらえませんか?」

「悪いが、俺は嫁が帰りを待ってるんでなそんなところに行ったら離婚されるんでな……それよりもメルクーリ、お前、死にたいならもっと早く言ってくれ」


 スレイとホーソンが殺気立ちながら武器を構えなメルクーリを睨み付ける。すると、ここまでしたらさすがにメルクーリが涙目になって土下座をするまでに至ったのでそこでやめておいた。

 ただし、次に同じことをしやがったら確実に殺す。と視線だけで伝えておいた。ついでに、メルクーリに殺気を振り撒いたせいで魔物たちの圧が消えてこちらへと向かってきていた。

 その事はすぐに索敵を行っていたポーラとイザベラが瞬時にその事に気付きホーソンに話していた。数で言えば三十前後だが、そのほとんどが進行方向から来ていた。


「ちょっと数が多いですし、ボクが倒してきますからここをまかせていいですか?」

「えぇ、後ろのはあたしらにまかせな」


 頼みましたそう言ったスレイがその場から一瞬にして魔物の一団にまで近寄った。どうやら向かってきていたのはランド・マンチェスター、つまりは茶色い蟷螂の一団のようだ。あれの鎌は鋭利で鋭いので当たらないようにしなければならない。

 まぁ、当たる気は更々ないのだが。

 マンチェスターの懐まで一気に距離を詰めると、黒い剣を魔物を斬りかかろうとしたそのとき、ガラガラッとなにかが崩れるような音が聞こえそちらに視線を向けると、突如岩石の槍がスレイを突き刺そうとしていた。


 ドゴォーンっと石の槍がスレイとマンチェスターを押し潰し、天井にまで伸び土煙が上がった。


「おいおい嘘だろスレイ!?」

「スレイ先生!?」

「はいはい、なんでしょうか?」


 悲痛の声の後に間の抜けた返事を聞いて全員がそちらを見ると、そこにはなんともなさそうな感じのスレイがそこにおり、それを見た全員の顔が青くなった。


「「「「「イヤァアアアアアアアア――――――――ッ!?幽霊ぇええええええ――――――――――――ッ!?」」」」」


 スレイを見てポーラ、メイリーン、ベラロナ、マナ、リアスの五人が叫んだ。ついでに、ホーソンたちも驚いて武器を構えよいとしているほどだった。


「いやいや、死んどりませんは。ってか、ゴースト系の魔物がいるのに幽霊はないだろ?」


 幽霊などで驚く人を始めてみたスレイは、うちの嫁たちならばこれくらいではおどろかないのになと、そう考えながらもスレイはどうやって生き残ったのかを説明する。


「とっさに転移で逃げたんです。ってかベラロナさん、さりげなくバニッシュをかけないでくださいって!」


 さりげなく浄化にかかるベラロナに苦言を進呈したスレイ。


「ほ、本当に幽霊ではないんですね?」

「当たり前ですよ。とっさに強化と竜眼の動体視力で避けて魔物を倒してここに転移で戻ってきたんです」

「さらりと凄いことするのねあんた」


 感心したようにいうベラロナだが、三十匹程度を一瞬で倒すなど、死霊山の魔物を百匹単位で相手にするのと比べたら楽なものだ。ちなみに山頂部の魔物ならばスレイの最高速度にも着いてこれる魔物がいるほどだ。


「それはそうと、さっきのは何だったんですか先生?」

「…………………………………………知らね」


 あからさまに目を背けたスレイに全員が訝しんだ視線を向け、それを受けたスレイはというと全力で視線をずらしながら全身で冷や汗をかいていた。

 ちなみに、そんなスレイの心中はこちらです。


 ──だって知ってるもんこの現象!ダンジョンの地形操作能力でしょ!?これ、絶対に面倒臭くて、絶対に何度も死にかけて全部終わったあとにみんなから、またボクのせいにされるアレなんだもん!もう嫌だ!マジであんな化け物ミノタウロスのような奴と戦うなんてさ!しかも今度は、生徒たちやホーソンさんたち守りながら戦うなんて絶対に嫌だっての!!


 っと内心では幼子のように駄々を捏ねまくっていた。だってマジで面倒だから。


「………しかし、ちょっと心配だな」


 小さくそう呟いたスレイは、懐からプレートを取り出してユフィたちへ通信を入れようかと思ったそのとき、突如としてダンジョンが揺らぎ始めた。


「なっ!?」

「こっ、これは!?」


 突然の地震に生徒たちが叫び始めた。ダンジョンで地震なんて起こるのかとスレイが驚いていると、ガラガラと土埃が落ちてきた。


「マズ、シールド!」


 スレイは自分たちを覆い尽くすようにシールドを張った。ちなみに先程のダンジョンからの攻撃もあるかもしれないので、足元から覆うようにシールドを張った。

 揺れはしばらく続き、ようやく揺れが収まった時にはシールドでおおわれた部分が半分半分以上、倒壊したダンジョンの瓦礫に埋もれてしまっている。これ、どうやってそとに出ようかと思ったが、外に空間収納の出口を開きそこから魔法付与型のアラクネを出し、魔法で吹き飛ばしてもらってシールドを解くと肩の上に乗ってきたアラクネに声をかけた。


「サンキューアラクネ」


 ビシッと前足で敬礼をしたアラクネ、ちなみにこれはスレイが命令を与えたり、しぐさを教え込んだから出来るわけではない。

 実は最近作りたいゴーレムがあったため人工精霊を乗せたアラクネの研究をしていたのだが、地球でAI、人工知能の存在を知っているため、そこら辺はもしものことが無いようにかなりシビアに調整しているのだが、最近はなんだかコミカルに動けるいうになってきた気がして怖い。

 っと、アラクネのことはここまでにして、スレイは生徒たちの方に視線を向ける。


「さて、みんな怪我とかは無さそうだね」

「無いけど、地震なんて起こるんだなダンジョンって」

「いや、そんなはずはないわ」


 そう答えたのはメイリーンだった。


「そうなんですか?」

「あんたも冒険者でしょ、一回もダンジョンに潜ったことはないわけ?」

「有るにはありますけど、死んだダンジョンの調査で一回だけなのでそんなに経験はないですね」


 今思うとかなり片寄った経歴だなっと、自分の冒険者として経歴を思いかしてしてみたスレイだったが、憧れていた冒険とかけ離れてきていたので考えるのをやめた。


「しかし、それならなんで──ッ!?」


 スレイが不意に言葉を切ったのは足元から突如として光が放たれたからだ。まさか、今度は転移のトラップでも発動したのか、そう思ったスレイだったがそこに写し出された術式を読み取ってそれとは別の物だと悟った。


 視界が暗転した次の瞬間、スレイたちはダンジョンの外、つまりは学園の敷地内へと転移させられていた。

 スレイは近くにユフィたちがいないか探そうと思ったが、すでに先に転移させられていた生徒や他の先生方が、周りで突然の転移について騒ぎまくっていたので、みんなを探すのを止めたスレイは、ひとまず自分の受け持っていた生徒たとだけでも落ち着かせておこうと思い、みんなの方へ向き直ろうとしたときに後ろから名前を呼ばれた。


「スレイくん!良かった無事だったんだ!」

「ユフィ!そっちも無事そうで良かった。ところで他のみんなはどこにいるか見てない?」

「分からないよ、私たちもついさっきこっちに飛ばされて、それでスレイくんを見つけたから」


 つまりはユフィたちも転移させられたばかり、そういうことかと思っている。


「そこにいたのか!」

「ん?レクスディナさま?」

「それと……ルラ先生とノクトちゃんたちだね」


 スレイとユフィは、この事態に一番詳しそうなレクスディナとその後ろから一緒に走ってくるクレイアルラ含めたノクトたち四人の姿を見ていた。

 すると近寄ってきたライアが、再会して間もないにも関わらず


「……スレイ、今度は何したの。怒らないから素直に話して?」

「ねぇ、なんか五日ぶりに会った嫁からやってもないことの自白を迫られるんだけど、こういう場合はどう切り抜ければいいと思います?」

「スレイさまが原因では無いのですか?」

「ラピスさんや、ボクだって何がなんだかわからないんですよ?ってか、それ誰情報?」

「皆さまからです」


 スレイはノクトたちのことを見る。すると、全員がいっせいに視線をそらしたのだが追求はしなかった。なぜかというと、レクスディナの表情がかなり険しいものだったからだ。


「不味いな………ダンジョンが崩れる。あいつが目覚める」


 レクスディナの言葉に、どういうことだ?そう思ったスレイたちは地下から響く地鳴りと共に地下から何かが這い出てきた。

 そしてスレイたちはその何かが放つ気配に恐怖する。


「………こっ、これは……この気配は───ッ!!」


 スレイが視線をあげると、長く白い長髪にすらりと細い手足、そして両腕には蒼炎のような入れ墨、そして背中には純白の翼が広げられた、まるで人のような姿だがアレは人なんかとは断じて違う。


「アレは……使徒!」


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