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学園迷宮への招待

最近、少しだけ忙しかったので更新が不定期になってしまいました。

これからはなるべくこんなことがないようにしたいです。

どうか、これからもよろしくお願いします!

 あの墓参りから早、二週間。

 長い夏休みももうすぐ半ばに差し掛かろうとしていたその日、魔法学園の新一年生たちは毎年の恒例行事が行われることが、新入生と、その家族に向けて知らされていた。

 期間は一週間、入学から今までの間に培った技術を用いておのが実力を示す。そういうコンセプトの元で開催される行事らしい。


 それはもちろん学園で講師の手伝いをしているスレイとユフィの元にも届いていた。

 もっともその行事の事をクレイアルラから事前に聞いていたスレイたちだったが、ダンジョンに入った経験がほとんどなかったため不安だったが、学園側からダンジョンについての資料が一式送られてきたので、二人で読んだりして知識を頭に入れていたのだが、ふと有ることに気が付いた。


「そういえば、ボクとユフィは学園の講師としてダンジョンに入るんだけど、みんなはその間なにをするの?」


 そう言えばと、ユフィもスレイと同じ資料を読みながら思い出してみんなの方を見ると、トレイを手に持ってお茶を運んでいたラピスがその問いに答えた。


「言っておりませんでしたか?わたくしたちも、冒険者としてダンジョンのご同行いたします」

「そうなの?じゃあ私たちも冒険者として同行すれば良かったね~」

「まぁ、学園側の給金って思ってたよりも少ないしね。ちなみに一週間でいくらもらえるの?」

「金貨五枚と銀貨三十枚ですよ!かなりいいお金になりますね」


 ちなみに週二日、四回の授業で金貨二枚と銀貨六十枚とダンジョンに一週間潜るの依頼の方がかなり良いのはいささか気に食わないが、まだ年端も行かない子供たちの護衛の料金にしては安い方かもしれない。


「このダンジョン、学生のためにかなり安全装置が備わってるらしいけど、念のため気をつけてね」

「……言われなくても分かってる」

「大丈夫ですよ。わたしたちだってそれなりに修羅場を潜ってきたことは自覚しいますから!」


 確かに今まで多くの死線を潜り抜けてきたことは自覚しているが、ダンジョンなど何が起こるかは分からないので、そこのことをしっかりと伝えておいた。


「じゃあ、アニエスは?おじいちゃんたちのところに泊まるの?」

「そうさせてもらうことになってるわ。スーも久しぶりにわたしと一緒に寝るって騒いでるわ」


 それなら安心だし、もしもこれからも旅に出なければならないとき、幼い妹を家族もいない場所に残して行けないアニエスを連れていくわけにはいけないので、必然的にここに置いていくしかなくなる。

 さすがに一人では良からぬ輩がアニエスに着いてしまうかもしれない。なので、旅の間は祖父母の屋敷でお世話になってもらうことになっており、そのことに関してもアニエスの承諾を受けている。


「そんなことよりも、仕事明日からなんでしょ?準備は終わってるの?」

「出来てるぞ。っと言うよりも、服の一部は空間収納に入れてあるから」

「私も入れてるよ~」

「わたしもですね。便利ですから」

「あんたら、それちゃんと洗濯はしてるのよね?」


 この家の家事の一部を預かっているアニエスが怪しみながらそう訪ねると、ユフィとノクトは当たり前のようにうなずいていた。

 だが、スレイだけはうぅ~んっとうねりながら、最後にさぁ?っとちょっと笑いながらそう言うと、アニエスさすがにそれはないと言いたげな顔をされた。

 ついでにユフィたちからも、それはちょっと、っと言いたげな顔をされたのだった。


「いやぁ~、定期的に水魔法で洗ってはいたんだけど、洗剤とかは使ってなかったから」

「それならいいのですが、スレイさま帰ったらちゃんと洗濯物は出してくださいね」

「はいはい。ちゃんと出しますよラピスさん」


 スレイがラピスとそう約束すると、ほかのみんなが小さな声で笑っている。それに吊られてスレイとラピスも笑っていた。

 この日、家のなかには楽しい笑いが響いた。


 次の日の朝、スレイたちは揃って学園の敷地のかなり端の方にある建物、その前に集められていた。

 集められていたと言ったが、集合時間よりもかなり早い時間にやって来たスレイたち、そのためまだほとんどの生徒も教師も来てはいなかった。

 なぜ早く出たかというと、アニエスが仕事に行く時間に合わせたからだ。


 そろって目の前にそびえ立つ廃墟のような建物を見上げ、スレイが今まで気になっていたある疑問を口にした。


「前々から気になってたけど、この建物っていったいなんなんだろうな?」


 そう、この建物に行く道自体が人目に着きづらい。

 前にスレイとユフィが暇なときに散策してた時に見つけ、たまに様子を見に来るが道に人が入った形跡が全くないどころか、この建物が使われた形跡が見えないのだ。


 不思議に思ってクレイアルラに聞いたところ、これでもしっかりと使われていると言われた。そして今日この場所に来ることになり、ようやくその秘密が分かるかと思ったが結局前来たときと変わっていなかった。


「……ねぇこの不気味な建物なに?」

「うぅ~ん。わかんない」

「教えてもらわれないのですか?」

「前に先生に聞いたけどはぐらかされちゃってさ」

「だから前に、スレイくんと入ってみようとしたんだけど、魔法でガッシリと鍵がかかっちゃってて入れなかったんだ~」

「お二人でも解けない魔法とは、いったい誰がお掛けになった魔法なのでしょう?」


 ラピスの呟きに、みんなが揃ってうなずいていた。

 実際には二三時間くらい時間をかければ解けないことはなかったが、面倒だったのでパスしただけだが………正直に言わない方がいいなと、スレイとユフィは思った。


「しかし、今さらだけど本当に誰がこの結界を張ったんだ?」


 改めてそうおもあった理由は、この建物に施されている結界を構築している魔方陣は今までにない革新的な組み合わせであった。

 性能だけで言えば、通常の物の十倍以上の効力を有するのだが、それが誰が気になっていると、背後から人が来る気配と共に


「それを張って術式を組んだのは私だ」


 その声を聞いて振り返ったスレイたちの私選の先にいたのは、この学園の学園長であるレクスディナだった。

 なぜここにいるのか等は聞くまでもなく、学園の行事だからいるのだろうと思っていた。


「お久しぶりですレクスディナさま」

「さま付けは止めろと言っているだろ………まぁ、それはいいとしてお前らここでなにしてんだ?」

「なにて、集合場所がここだったから待っているんじゃないですか」

「時間の二時間前だぞ?………まぁいい。それよりも、さっきの話が聞こえたんだが、お前たちこれがなんなのか気になっていな。教えてやるから少し離れてろ」


 レクスディナが手でスレイたちをドケドケ、と言うように払って見せた。

 それにしたがってスレイたちがその場から退くと、レクスディナが結界の表層に手を触れながら魔力を流し込んだ。すると、円形に転回された魔方陣ががダイヤルロックのような動き、実際のガキだったら物だったらカチカチと音がなっていたかもしれない。

 しばらくその動きをじっと眺めていると、ようやく動きが止まり結界が消えたと思ったら突然建物が消え、小さな神殿の入り口のような作りの建物に変化した。

 その建物の中から漂ってくる独特の雰囲気には覚えがあった。それがなんだったのか、すぐに思い出したスレイとユフィはバッとレクスディナの方を見ながら、震えるような声でスレイが訪ねる、


「これって、もしかしてダンジョンの入り口ですか?」

「あぁ。その通りだ」


 やっぱりかと、スレイとユフィがそう思いながら神殿を見ていると、話しに驚いていたリーフたちがハッとした様子でレクスディナの方を見ながら疑問を投げ掛ける。


「あの……もしかして、この街はダンジョンを覆うようにして作られているのですか?」

「あぁ。っというよりも、街の下にダンジョンをつくったって言った方が妥当だな」

「それって、大丈夫なのですか?もしも地中から魔物が這い出てきたりしたら………」


 確かに、この街は魔法使いが多いため自衛の面では他の街よりも優秀だろうが、戦える人が多いかと言われればそうではない。もしもそうなったときどうするのか、それについてどうなのかとノクトが聞きたかった。


「そこんところは心配ない。人工ダンジョンではある程度の魔物の制御ができるからな、魔物の生む出すのを一旦中止させてからあとはダンジョンを潰せばそれで終わりだ」


 全員思った、何て言う豪快な魔物の討伐方法!何てことを考えながらスレイたちはレクスディナがダンジョンのコアに指令を与えて魔物を生み出す瞬間をその目で見るという、なんとも希少な体験をさせてもらえることとなった。



 一時間後、まばらではあったはようやく先生と生徒たち、そして雇われの冒険者たちがやって来た。ミーニャが来てないか探しに行くためにユフィたちと別れたスレイは、生徒たちの間を歩いていると前から見慣れた老教師が来るのを見た。


「おや、スレイ先生、お早いですな」

「アドモア学部長、おはようございます。学部長もダンジョンの引率を?」

「いいや。わしは生徒たちの激励を送りに来たんじゃ」

「そうでしたか」

「あっ、スレイくん!こんなところにいたんだ」


 名前を呼ばれスレイが振り向くと、ユフィたちが揃ってやってきた。


「ミーニャちゃん。お友だちと一緒にあっちにいたよ~。あっ、アドモア学部長おはようございます!」

「ユフィ先生おはよう。お嬢さんたちも」

「「「「おはようございます」」」」

「……ん。おはよう」


 ユフィたちも挨拶をしたのだが、まぁ、ライアが失礼なことを言ったためノクトとラピスがライアの頭を押さえつけて挨拶をさせる。

 すると、アドモア学部長が愉快そうに笑った。


「ホッホッホッ、お嬢さん方、このような老いぼれにかしこまらんでもよいよい」

「……ん。ならそうする」

「そうしないでくださいませ!アドモアさま、申し訳ありません」

「……むぅ~。ラピス、痛い」


 再びラピスに頭を押さえつけられたライアがちょっとだけ涙目になっていた。


「ほれほれ、やめなさい。それよりも赤毛のお嬢さん、飴ちゃん食べるかね?」

「……ん。食べる!ありがとう」

「ホッホッホッ、そうかそうか………そっちの黒髪のお嬢さんと碧髪のお嬢さんもいかがかね」


 アドモアから受け取った飴玉を口にいれて幸せそうな顔をしているライア。それとどうすればと思ったノクトとラピスがスレイの方をうかがってきたので、もらっておきなと言うと二人とも飴を受け取って食べ始めた。


「すみません、いただいてしまって」

「構わん構わん。これもわしの楽しみの一つじゃからの」


 そう言えばと、スレイとユフィは前にミーニャから聞いたアドモア学部長噂を思い出した。っと言っても、変なものではなく、アドモアにとって生徒たちは自分の孫のような存在らしく、ノクトたちもそれと同じ感覚なんだろうなっと、そう思っているとアドモアがスレイの姿をマジマジと見ていた。


「えっと、どうされました?」

「いやのぉ。その格好では学園の教師ではなく冒険者のようにしか見えんぞ?」


 そう、ダンジョンに行くと言うことで今回は完全に、いつもの黒のロングコートに黒と白の剣、完全に冒険者スタイルのスレイだった。ちなみに、ローブは家においてきたのでしかたがない。


「まぁ、ローブよりもこっちがボクらしいので、このまま参加します」

「そういうならいいんじゃが、他の先生方から何かあるかもしれませんのでお気をつけて」

「ご忠告どうもありがとうございます」

「それではお気をつけて」


 小さくお辞儀をしたアドモアが生徒たちの中に消えていった。

 ついでにユフィたちからの視線がどこか強くなってきた気がしたスレイは、あえてその事を聞かないようにしていたのだ。


「スレイくん」

「お兄さん」

「スレイ殿」

「……スレイ」

「スレイさま」

「なんでしょうか?」

「「「「「お願いだから問題は起こさないでください!」」」」」


 ユフィたちから、もうお決まりになってきたその言葉を受け取ったスレイは、取り敢えず気をつけて置こうとだけ心の中で思っていた。


 その後、ようやくミーニャを見つけて話をしたスレイたちだったが、レクスディナが学院の教師と雇われた冒険者を集め始めていたため、そちらに向かうことになったのだが、そこでスレイは案の定何か問題を起こすことになった。

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