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それぞれの修行 ユフィ編 ⑤

先ほど言った通り、本日二度目の投稿です。

どうか楽しんでいってください

 あと一日、壁にかかっていたカレンダーを見ながら、私はそう思っていました。

 いよいよ明日、スレイくんが帰ってくる。


 あの日から明日で一年、なんだか長かったような短かったような……そんなあっという間のような時間が過ぎた。

 思い返してみても地球にいた頃から、スレイくんとこんなに長い時間を離れたことって今までなかった。だから、今の私は少しだけ混乱してるのかもしれません。

 だってなんだか、久しぶりに会うと思うとなんだか恥ずかしくなっちゃったんだもん!

 そもそも私って、今までどんな顔をしてスレイくんと話してたっけ?

 今までどんな話をしてたっけ?

 もうわかんなくなっちゃったよ!?


 えっと……そんなわけで、どんな顔して会えばいいのか、わからなくなってきたので取り敢えず頭を切り替えるために朝練に行ってきます!


 ⚔⚔⚔


 いつもの朝練を終えたユフィは、流した汗をお風呂で落とした。

 身体の水気を落として新しい下着に履き替え、汗で濡れたシャツやズボンも新しいものに着替え直した。部屋に戻ったユフィはタオルと風魔法を使って髪を乾かしていた。


「うぅ~ん。こんなものかなぁ~」


 髪が乾いたのを確認し鏡を前にリボンで髪を纏めて準備完了だ。


「よし!完璧!」


 身支度を整えたところで不意にユフィのお腹がなった。

 起きてからすぐに早朝訓練をしてお腹はペコペコ、身支度も済んだところなのでご飯を食べに行こうかと部屋を出た。階段を降りてリビングにやってきたユフィは、朝食の匂いにお腹はさらに鳴った。


「お母さん、今日の朝ご飯なに~」

「あらユフィちゃん。今日はねぇ~、オニオンスープとぉ~パンとぉ~、ソーセージよぉ~」

「ありがとうお母さん。ところでお父さんたちは?」

「お父さんは斧の手入れをしてるわぁ~。パーシーちゃんはお友達と遊びに行ったわぁ~」


 そうなんだっと答えながらユフィが自分の席に座ると、マリーが朝食の乗ったプレートを目の前に置いた。

 いただきますと言って食べ始めたユフィ、しばらくしてお茶を淹れるといわれたので紅茶をお願いした。


「はぁ~い、紅茶よぉ~」

「ありがとう」


 紅茶を一口飲んで落ち着いたユフィは残りを食べ始めると、ふとマリーがこんなことをいい出した。


「そういえばぁ~明日ねぇ~」

「うぅ~ん?なんのこと?」

「ふふふっ、スレイくんが帰ってくる日よぉ~」

「あっ………うん……そだね」


 今朝のことを思い出して曖昧に答えたユフィを前に、マリーは小首をかしげてしまった。


「あらぁ~、ユフィちゃんったらぁ~、どうしちゃったのぉ~?」


 娘の異変にマリーは頬に手を当てながら首をかしげながら問いかけると、不自然なほど目を逸らしながらユフィは全力で話もそらそうとした。


「別になにもないよ?………うん。何でもないです」

「ふぅ~ん。へぇ~そっかぁ~」


 ユフィの話を聞いてマリー何かを察したらしく、その顔はわかり易いほどニヤニヤと笑みを浮かべながらお茶を飲んでいる


「もぉ~、お母さん何なのその含みのある笑いは?」

「いやぁ~ん、だってぇ~ユフィちゃんたらぁ~、久しぶりにスレイくんと会うからってぇ~恥ずかしがってるんだものぉ~」


 ズバリマリーの言っている通りなのでユフィはコクリと頷いた。

 すると、やっぱりかぁ~っと自分の考えが当たっていた事にご満悦のマリーは、さらにだらしなく破顔した。


「でもぉ~そうよねぇ~、ユフィちゃんとスレイくんがぁ~こぉ~んなに長い間離れたことなかったものねぇ~」

「うん……だから、明日なに話せばいいかわからなくて……」

「あらあらぁ~困ったわねぇ~」


 先程とは打って変わって困った表情を浮かべるマリーだったが、すぐになにか妙案を思いついたようだ。


「ねぇねぇユフィちゃん、ユフィちゃん」

「なぁに?」

「お母さんねぇ~、いいこと思いついちゃったわぁ~。いっそおもいっきりスレイくんのことを、ぎゅぅ~って抱き締めちゃえばどうかしらぁ~」

「ふへぇ!?」


 マリーの突然の思いつきは確かにいいと思ったが、今のユフィにはかなりハードルが高すぎた。だけど少しやってみたいという葛藤が産まれていた。

 ムムムッと悩ましそうにうねっているユフィを見て、これはもう一押しいりそうだと考える。


「久しぶりに会うんだからぁ~、それくらいはしないといけないわぁ~」

「そっ、そうなのかな?」

「そうよぉ~。感動的な再会にはぁ~、イ・ン・パ・ク・ト・が!大切なのよぉ~!!」


 いつもと違うマリーの熱弁にユフィもついつい聞き入り、そしてその熱に当てられてしまった。


「インパクト……うん、わかったよお母さん!私、がんばるね!」

「ふふふぅ~、そのいきよぉ~。頑張ってねぇ~」


 フスンッとガッツポーズをして頑張ろうとユフィが気合を入れている。

 娘の気合を入れている姿を前に、ニッコリしながら微笑ましい姿を目にしているマリーだったが、次の瞬間微笑ましい笑みが消え冷酷な眼差しを浮かべた。


「ところであなたぁ~。いったい、何をしようとしてるのかしらぁ~?」

「えっ、お父さん?」


 庭で斧を磨いていたはずの父ゴードンが扉の前に立っていた。

 顔を見たその時ユフィは小さな悲鳴を上げる。その理由はゴードンの顔が凄まじい形相で、両目から血の涙が流れ出ていた。

 いったいなにがあったのか、その血涙は治癒魔法をかけたら治るのか、割と本気で考えているといつもの三倍増しの低い声で呟かれた。


「出かけてくる」

「あら、どこへ行くの?」

「死霊山まで」

「あら、どうして?」

「ちょっと切りにいってくる」


 ゴードンの身体からどす黒いオーラが現れ、ユフィはいったい何を切りに行こうとしているのか恐ろしくて聞けなかった。

 まぁ、大体の想像はついていたのだが。


「あなたぁ~、お止めなさい。死ぬわよぉ~」

「あのいけすかないガキを斬るまで俺は死なんさ」

「あらあら、まぁまぁ。そんな言葉はぁ~、私を倒してから言ってくださいねぇ~?」


 一瞬で全身に闘気を纏ったマリーは、テーブルの物を一切揺らさずに、果には椅子が動いた音さえ出さずにゴードンの背後を獲った。

 眼の前で見ていたはずのユフィにも気づかれず、背後を取られたゴードンにさえも気づかれずに移動したマリーは、手刀でゴードンの首を叩いて気絶させる。

 気絶し崩れ落ちたゴードンの手から零れ落ちた手斧を脚の甲で蹴り上げ、空中で回転した手斧をキャッチして肩に担いだ。


「おぉ~、お母さんカッコいい」


 まさに神業的なマリーの所業に思わず手を叩いて喝采を送っている。

 もう十年家族を続けていたユフィにとっては、もはや見慣れてしまった光景ではあるがふと思い返して見ると、なかなかに容赦のない。


「二人の感動的な再開を邪魔しないようにぃ~、お父さんは明日まで起きないようにしとくわねぇ~」


 肩に担いだ斧を壁に立てかけたマリーは、片手でゴードンの巨体を持ち上げて肩に担いだ。

 その時、マリーは闘気をまとわずに素の力でゴードンの巨体を持ち上げてしまった。


「あっ、そうそうユフィちゃん」

「なに?」

「今晩は、おうちに帰ってきちゃ~ダメよぉ~」


 マリーの顔は笑っているはずなのに、目がまったく笑っていなかった。

 これは聞き返したり、反論したりしたらダメな奴だと察したユフィは頭を何度も縦に振った。


「うっ、うん!わかったよ!!」

「お願いねぇ~。あっ、そうそう。ユフィちゃん、お着替えパーシーちゃんのも持っていってあげてねぇ~」


 これはナニをするのか察してしまったユフィは、残っていた朝食を急いで片付けると自分とパーシーの着替えを空間収納に収めて家を出た。

 その時、家の奥からゴードンの悲鳴が聞こえてきたので、ユフィは心のなかで謝りながら家全体に消音の結界を張っておいた。


 ───お父さん、ご愁傷さま。


 ⚔⚔⚔


 慌ただしく家を出たユフィはこれからどうするかを考える。

 まずはパーシーに今夜は帰れないことを伝えて、それから今夜の寝床を探しもしなければならない。

 泊まるところはお隣のアルファスタ家でもいいかもしれないが、そうした場合、絶対に事情を勘ぐったスレイの父フリードがゴードンをからかって喧嘩に発展することは目に見えていた。


「うぅ~ん、やっぱりあそこのほうがいいよね」


 っということで、困った時の強い味方。魔法の師であるクレイアルラの診療所にやってきた。

 他に頼れるところもないので、どうにかしてお願いしようと決めたユフィは、診療所にやってきたがノックをしても返事が帰ってこなかった。


「あれれ?今日って休診日じゃなかったよね?」


 診療所の看板はオープンがかかっているのに鍵が閉まっている。この場合、大体は緊急の要件があったかあるいは裏手にいるのかの二択だ。

 ここは後者だと思いながら裏手へと回ると、案の定庭に作業台を用意して何かをしているクレイアルラの姿があった。


「先生、おはようございます。何してるんですか?」

「あらユフィ、おはようございます」

「あっ、お姉ちゃんだ!」


 クレイアルラの正面、ちょうど影になって見えなかったが弟のパーシーがなにかしている。


「あれ?パーシーくん、お友達と遊びに行ったってきいたけど」

「一緒に先生に魔法を教わってたんだだけど、みんな先に帰っちゃった」


 五歳の子供がずっと勉強するなんて出来るはずがない。仕方ないかと思いながら、ユフィは何をやっていたのか覗き込んでみる。


「へぇ~、魔道文字の書き取りか~。あれ、パーシーちゃんって魔力あったっけ?」

「ありますよ。生まれつき闘気の量が多いようですので、微々たるものですがね」

「そうだったんだ」


 闘気があることは知っていたがパーシーが魔力を持っていることは知らなかった。


「そう言えば不思議に思ってたんですけど、家の両親って魔力持ってないのに、なんで私は持ってるんだろう?」

「ゴードンの家系はわかりませんが、マリーの家系は闘気だけでなく魔力を持っていましたから、遺伝でしょう」

「へぇ~」


 知らない我が家の一面を知ってユフィが驚いる。


「ところでユフィ、今日は何をしに来たのですか?」

「あっ、そうだった。先生、今晩先生のお家に泊めてください」

「理由を教えてください」


 カクカクシカジカ、今晩帰れない理由を説明するとそれを知ったクレイアルラが頭を痛める。


「わかりました。二人共、こんばんは家で預かりますが、一つ条件があります」

「条件ですか?」

「あなたが作ったという小型の魔道具を見せてください」

「シェルをですか?良いですよ!」


 それくらいで一泊できるなら万々歳だ。


 ⚔⚔⚔


 クレイアルラの家の庭の土の中には特殊な護符が埋められていた。

 護符とは術式の書かれたお札のことで、作ろうと思えば簡単に作ることのできる魔道具の一種だ。

 そんな護符だが、この庭に埋められているものは自己修復の護符で、どれだけ魔法を放って地面を凸凹にしようとも次の日には元通りに出来る護符だ。

 そこでユフィは、前に作った魔道具を使用する。


「さぁ、やろうか───起動(オン)!」


 ユフィは手の中にある小さな貝殻のようなものに魔力を流し、起動の語句を述べると小さな貝殻は形を変えて空中に浮かび上がった。

 ユフィは浮かび上がったそれに向けて魔力の糸を繋げる。


 これは遠隔操作型のゴーレムで普通のゴーレムならば内部に魔石を埋め込み自動で動くことが出来るが、このゴーレムは所有者であるユフィが繋いだ魔力の糸から魔力を流し続けなければならない。

 一見このゴーレムは失敗作ととられるかもしれないが、このゴーレムはこれでいいのだ。

 ユフィは土魔法を使って数メートル先に人型の人形を作ると、その近くにゴーレムを飛ばした。


「よぉ~し、まずは───ファイヤボール!」


 ユフィが魔力の糸を通して魔法を発動すると、人形の近くにいたゴーレムから魔方陣が展開され、そこから小さな火の玉が打ち出された。

 このゴーレムは魔石の代わりに杖に使われている宝珠を埋め込んでいる。

 つまるところこのゴーレムは、ゴーレム型の魔道杖なのだ。

 今は片手で五個しか扱えないが、将来的には片手でこの倍の数は使えるようになりたいと、ユフィは考えていたりする。

 ファイヤボールの他にもいくつかの魔法を試したユフィは、手元にゴーレムを戻した。


「やっぱりもう少し威力ほしいかなぁ~、でもこれ以上威力を上げちゃうと魔力の問題が……」


 手元に戻したゴーレムを見ながらぶつぶつと呟くユフィ。


「それでも十分な気がしますがね」

「ルラ先生」


 いつの間にか後ろにいたクレイアルラ。


「ゴーレムによる複数箇所からの同時攻撃など、並みの相手には驚異でしかありませんからね」

「そうですか?」

「えぇ、複数の相手に囲まれることはあるでしょう、ですがこんな小さなものに背後から魔法を撃たれるなど、考えただけで恐ろしいですよ」


 クレイアルラの説明を聞いて、なんだか危ない物を作っちゃった気がするユフィだが、別に悪いことには使わないからいいか、とどこかお気楽に考えているユフィだった。


 ⚔⚔⚔


 次の日の正午、ルラ先生がゲートを開くために庭に出ました。

 そこには私とルラ先生、それとおじさんとおばさん、ミーニャちゃんとリーシャちゃん後はお母さんが集まっていた。ここにいないのはパーシーちゃんとお父さんだけで、パーシーちゃんはお友だちと一緒に遊びに行ったけど……お父さんは……?


「お父さんでしたらぁ~、昨日こぉ~ってり、時間を懸けて絞めておいた(お説教した)ので来ませんよぉ~」


 ……なんだろう、お母さんのお説教が別の言葉に聞こえるんだけど……ちょっと心配になっておばさんの方を見ると、なんとも言えない顔をして目をそらしていた。

 ……気にしないことにしよう。


「ではゲートを開きますね」


 私が前を見るとルラ先生がゲートを開いた。それを見ていると私の背中を誰かが軽く押した、後ろを振り返ってみると、押したのはどうやらお母さんのようだ。


「ほらぁ~、早く行きなさい」

「え?でも」

「いいからいいから、ねっ、みんな」


 おばさんたちの方を見ると、みんな笑顔で頷いてくれた。

 ……なら、行っていいのかな?

 ゆっくり歩きだした私は、気づかない内に早足なりながらゲートを潜ると、一年ぶりに見た幼馴染みの少年、スレイくんの姿をみて駆け出してしまう。


「スレイくん!久しぶり!!」


 手を広げてスレイくんの胸の中に飛び込むと、スレイくんから驚きの声をあげた。


「えっ、ユフィ!?───って、うわっ!?」


 私が抱き締めると、スレイくんが後ろに倒れると、ゴツンっと嫌な音が聞こえてきました。


「あだッ!?」


 スレイくんがガクリと力無く倒れる。


「えっ、ウソ!?スレイくん!?」


 倒れたスレイくんの頭の下には大きな石があった。

 もしかしてやっちゃた!?


「───ひっ、ヒール!」


 慌てて回復魔法をかけたから多分大丈夫……大丈夫……だよね?

 後、なんだかルクレイツア先生からもの凄くあわれみの表情を向けられました。

 ……なんでこうなっちゃったのかな!?

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