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魔眼が見せるもの

作品評価ありがとうございました!

 先程、業火の炎によってローブの袖を焼かれた魔眼コレクターが、炎を燃え移るのを防ぐために炎に燃やされた袖を破り捨てた。

 そのときに見えたのは腕に埋め込まれた無数の人の眼だ。その眼の一つが動いたかと思うと、スレイの左目、魂視の魔眼が焼けるような痛みが襲い、呻き声を上げながら左目を押さえながら倒れそうになると、ライアがスレイの背中に腕を回して支えると、周りを確認しながらユフィたちのいる方へと竜翼をはためかして飛び上がる。


「……スレイ!しっかりしてスレイ!」

「うっ、あぁ。大丈夫だよ。………ところでさぁライア、さっきのあれ見たか?あのコレクターの腕に合った無数の眼を」

「……ん。見た。それよりもスレイ、魔眼でいったい何を見たの?」


 肩を担がれながらライアの質問を受けたスレイは、痛みの続いている左目に手を当てしばらくの沈黙を挟みながら小さく首を横に降って答える。


「…………………分からない。見たのは一瞬だったから、魔眼が発動するまでのタイムラグのせいで写し出されなかったみたいだ。だけどもう一度あの眼を視ることが出来たら分かる筈だ」

「……ん。分かった。だけど一回後ろに下がろう、スレイ怪我してるよ。大丈夫?」


 ライアはスレイの脇腹から流れ出ている血を見ながら心配そうに見ている。実は先程コレクターに斬りかかったとき、コレクターが何か魔法を発動したのかすれ違い様の一瞬で脇腹をえぐられていたらしい。

 本来ならば致命傷の傷だったが、どうやら竜の治癒能力が凄いのか既に傷は塞がりかけている。そのため痛みなどはあまり感じない。

 ……ただ、これで血を流しすぎたから感覚が鈍っている、何てことは嫌だったので、スレイはそっとエクス・ヒーリングをかけて傷口を完全に塞ぎ、失った血を補うために血液増強剤を飲んでおいた。


「うへっ、やっぱりマズッ」

「……お願いだから吐かないでよ。吐いたらおろすから」


 空中で簡単に応急手当を終えたスレイは、最後に飲んだ血液増強剤のあまりの不味さに顔を青くさせて口元を覆っていた。その反対に肩を貸していたライアが少しひいた顔をしながら、ユフィたちのことを真上から伺っていると、どうやらユフィたちも上にいた二人に気付いたらしく、大丈夫と言っていたので降りるとユフィたちがスレイの怪我を見て驚いていた。


「お兄さん!どうしたんですかその怪我!それに顔も真っ青ですよ!?」

「平気だよ。ちょっとかすっちゃっただけだからさ。ライアもありがとう」


 ここまで運んでくれたライアにお礼を言ってから、ユフィとノクトが張っているらしいシールドの外を見る。どうやらユフィのシルバー・ミストの効果が切れかかっているのか、かなり霧が薄くなってきていた。


「ライア、みんなも、悪いけど次はボク一人でいかせてもらってもいいかな?」

「なぜ、なのですか?スレイさま」

「……もしかして、さっき見たあの眼が気になるの?」


 うん。そうスレイは頷いてみせると、ユフィたちはなんの事なのか分からない、そう訴えかけると、時間が無かったがスレイがみんなのために簡単に説明して、さすがに魔眼が発動した理由を知りたいからと言う理由で一人で行こうとしているスレイに、あまりいい表情はしなかった。


「スレイ殿、それは無茶………なのではないでしょうか」

「そうですわ!魔眼が発動してしまったら、ライアさまのように動けなくなってしまわれますし、それにあの見えない守りはどうするのですか!」

「大丈夫だよ。ラピス、その時は転移魔法で戻るし、見えない障壁の方にもなんとかする目処はついてるから」


 全く根拠のない自信、というわけではない。ちゃんと算段はついているスレイがそう言うと、みんなは呆れたように大きく呟くと、ユフィが空間転移を開きながらゲートシェルを取り出した。


「はぁ。空間転移じゃそれほど遠くまでは飛べないでしょ?ゲートシェルでこっちに戻してあげるから」

「ありがとう。………でも大丈夫だ。まだ練習中だったけど、連続転移と長距離転移が出来るようになってきたからさ」

「………はぁ。わかったよ、でも本当に危ないと思ったら私たちも行くからね?」

「あぁ。………それじゃあ、行ってくる」


 霧が完全に消える前にシールドの中から出たスレイは、探索魔法で魔眼コレクターの位置を確認してながら魔道銃をホルスターに収め、その代わりに白い剣を抜きながら黒い剣を握った手を真っ直ぐ突き出すと、走りながら魔法の名前を口ずさんだ。


「サンド・エアリアル・ストーム!」


 自分の周りに風と土の二属性を合わせた魔法を発動すると、スレイの周りを砂の嵐が渦巻き始める。これによってあの見えない障壁があったらすぐに分かる。

 ジグザグと見えない障壁をかわしながら走っていくスレイは、確実にコレクターの側まで近づいていく。

 見つけた!スレイは靄のかかったような視界で魔眼コレクターの姿を確認したが、すぐにそれは違う。そう勘がささやきかけてきた。瞬時に魔眼を発動させたスレイは視認した影に魂の色が確認できない、つまりは偽物、本当のコレクターはどこに、そう思ったと同時にスレイの身体が動いていた。


「風牙・大嵐!!」


 スレイが気配を感じた方へと大嵐を放つと、風の嵐が見えない障壁に書き消されて消えてしまった。

 大嵐は書き消されてしまったが、それでも魔眼コレクターの位地を把握できたスレイは、そこに向かってもう一撃与えるべく、こんどは白い剣に魔力を込め始めると、純白の刀身に灼熱の色に染まっていく。


「風牙・炎嵐」


 スレイが剣を振るうと同時に暴風の嵐の威力を内包した炎の斬激が吹き抜けると、周りに残った霧の水分を蒸発させていき、ようやくその姿を視認しするとこんどは黒い剣に魔力を流し込み、黒い刀身が赤黒い輝きを放ち出したのを確認するよりも先に地面を蹴ったスレイは、一気にコレクターまでの距離を積めると黒い剣を真っ直ぐ構えて突き立てる。

 ──見えたッ!

 そして、スレイの左目がコレクターの腕に存在する無数の目を見つめると、先ほどと同じように突き刺すような鋭い痛みが走り、スレイの剣の切っ先がわずかにブレるが、気合いで痛みを無視して剣のブレを正すと、業火の炎を黒炎に昇華させ突き出す。


「業火の突激!!」


 スレイが黒い剣をコレクターに突き付けると、ドゴォオオン!!っと轟音が鳴り響いた。

 黒い剣の切っ先とコレクターの前に現れた透明の障壁がぶつかり合い火花を散らし、黒い剣と障壁の間で漆黒の業火が流れ出しながら、ガチガチッと障壁とぶつかり合っている黒い剣の切っ先が震える。

 今一度スレイと魔眼コレクター、二人の視線が重なったと同時にスレイの左目から更なる痛みが襲いかかってくる。だが、こんな痛みなど師匠のもとで何度も経験しているスレイは耐えられる痛みだ。

 だから、この眼が映し出すその()()決して聞き漏らさないようにスレイは耐えていると、コレクターの口から笑みが零れ出てきた。


「ふぉふぉふぉ、小僧、お主のその眼、魔眼じゃな?」

「えぇ。そうですよ。だったらなんだって言うんですか、魔眼を集めるサイコキラーのお爺さん?」


 スレイが渾身の力を込めて剣を押し込むが、いったいこの障壁はどれ程の硬度を持っているのか、最高の切れ味を持つはずの黒い剣の切っ先さえも食い込まない。


「無駄じゃ無駄じゃ、どうあってもこの壁は突破できんよ。それよりもその眼、わしに返してはくれんか?」

「はぁ?返す?嫌に決まってるじゃないですか、これはあなたのじゃない!」

「いいや、わしのじゃ。お主のその眼も!あそこの教会で眠る娘のも!前は取り替えせなんじゃが、あの赤毛の竜人の魔眼のすべてはわしのものじゃ!」

「っ!ライアのこと、覚えていたのか?」

「眼を見るまでは忘れておったよ。わしの眼を持ったまま逃げおったあの小娘のことなどはなぁ。じゃが、ようやく見つけた、今度こそは返してもらうぞ」

「させるわけ、ないだろ!!」


 突きを中断させて剣を真横に一閃させると同時に!真下から白い剣を切り上げる。スレイが二振りの剣を巧みに操り、切り上げ、切り下ろし、横薙ぎ、縦横無尽に切りつけるが見えない障壁は一向に傷つくことはない。

 その事に焦りを感じ初めはスレイは、一気に押すべく自身の出せる最強の一撃を放つか、そう考えていると不意に耳元に声が聞こえてきた。

 ──後ろだ、今ならそいつに後ろにその盾はない

 初めて聞いた声だったが、どういうわけかスレイにはその声がとても信頼できる。そう直感した。転移魔法を発動させて魔眼コレクターの背後を取ったスレイは、白い剣に純白の冷気と荒れ狂う暴風を纏わせる。


「もらった!風牙・氷嵐ノ息吹!」


 見えない障壁の存在しない背後に向けて、冷気を纏った風の刃を斬りつける。確実に決まった、そう思ったスレイだったが、コレクターがグルリと背後に腕を回しながら叫んだ。


「甘いわ小僧がぁあああああああ―――――――――――っ!」


 コレクターの腕にある眼の一つが輝いたかと思うと、放たれた氷の嵐が突然かき消されかと思うと別の眼が輝きを放ったかと思うと、突然なにか強い衝撃が正面から現れスレイを民家の前にまで吹き飛ばす。


「───ッ!グアァアアアアアアアアッ!?」


 突然放たれた衝撃波と、民家を守るために張ってあるシールドに挟まれて、ビシビシっと骨が軋んでいる音が聞こえてくる。このままじゃ挟まれて圧死する、スレイは民家を守っているアラクネに命令して、このシールドを解いてもらおうとしたその時、またしても声が聞こえてきた。

 ──ダメだよそれを解いちゃ!転移魔法で逃げて!

 聞こえてきた声にしたがって転移魔法を使ったスレイ、咄嗟のことで気が動転していたがあのままシールドを解いていたら民家が危なかった。


「ハァ………ハァ、ッあ、危なかった、なっ!」


 衝撃波とシールドに板挟みの目に合ったときに骨にヒビが入ったのか、竜の因子が治癒を始めパキパキと音を鳴らしながら再生していくが、腕の再生や脇腹の治癒も痛かったが、骨の再生はダイレクトに治るときの痛みが来るなっと思ったスレイは、あそこから助けてくれた謎の声の人物に心の中でお礼をいいながら、探知魔法でコレクターの居場所を探るが民家の影などにコレクターの気配が全くない。どこにいるのかを探していると、またしてもスレイの耳元に声が聞こえてくる。

 ──上よ、気をつけて

 再び別の声が聞こえてきた。その声にしたがってスレイが真上を見ると同時に、コレクターが杖から魔法を発動された。


「────────ッ!?」


 真上からの攻撃では先ほどのリーフやノクトのようにシールドを通過させられる、そう思ったスレイはここまでやったが仕方がない、後ろに下がることを決めた。

 ──くそ、やっぱり一人で出来るのはここまでか!

 奥歯を強く噛み締めながらスレイは、真上から降り注ぐ魔法の着弾に会わせて後ろに飛ぶと、さらに転移魔法を乱用してユフィたちのいる方へと戻った。


「たっ、ただいま……みんな」


 転移魔法で戻ってきたスレイを見て初めはみんな安心したが、先ほどの無茶な戦いかたに加えて、今も止めどなく左目から流れでる血の量と見てみんなは揃って絶句すると同時に、どうしようもないほどの怒りが胸の中に渦巻いてきたが、すぐにノクトが治癒魔法を唱えながらスレイに向けて怒鳴り付ける。


「お兄さんは無茶しすぎです!もっと自分のことも労ってください!!」

「ごっ、ごめん。でもこうでもしないと見えなかったし………どうしてもボクが倒さなくちゃいけないって思ってついね」

「………ついじゃない、それとあいつを倒すのは私の手でやる。出ないと………みんなの敵がとれない」


 ライアが家族の敵である魔眼コレクターの姿を思い浮かべたのか、どす黒い殺気を撒き散らしたのを見て、本当なら敵討ちなどは止める方がいいのかもしれないが、止めたくても止めれない。

 その事は重々承知しているのでスレイたちは何も言わないでいると、コレクターの追撃を予見して守りを固めてくれていたラピスが、スレイに問いかける。


「……仕方ありませんわ、スレイさまをお叱りするのはまた後にして、いったい魔眼でなにがお見えになったのかおっしゃってください」

「……あぁ。この眼がボクに見せていたのはあいつに殺された人たちの生き霊、いいや。思念の残滓だ」

「思念ですか?」

「あぁ。何百と言う思念の残滓がボクに向けて語りかけてきた。死にたくなかったい。もっと生きたかった。家族のもとに帰りたい。そんな声が聞こえてきたんだ」


 これ以外にも、ずっと戦いの最中にスレイに語りかけて来た声、あれは魔眼の持ち主たちの声だとスレイは確信していた。こんな見ず知らずの人に頼ってくる、ならばその声に答えてあげたいと、スレイは思ってしまった。


「ボクは、ライアのことだけじゃない、どうしてもこの声の人たちの願いを無念を晴らしてあげたいんだ」


 スレイの言葉を聞いてユフィたちはニッコリと微笑み返してから、みんなを代表してユフィが語りかける。


「ねぇ、スレイくん。当たり前のことを聞かないでよ。私たちはスレイくんのお願いなら、断れないよ?」

「……ありがとう、みんな」


 みんなにお礼を言ったスレイは、もう一度コレクターと戦うべくそっと決意を固める。

 必ずあいつを倒す

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