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その頃のリーフとノクト

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 村から出て、久方ぶりにロークレア王国に帰ってきたリーフとノクトは、西方大陸と東方大陸の時差のことを全く考えておらずロークレアに着いたときには空が茜色に染まっていた。


 ついて早々にリュージュ家の屋敷にやって来たのだが、久しぶりにリーフが帰ってきたことによっていつものように勘違いから暴走したカルトスが、更にいつも同様大剣を持ち出して克ち込みに向かおうとし始めた。


 ちなみに以下がその際にカルトスが叫び散らしていた言葉なのだが………


『あの小僧!わしの可愛いリーフに何が不満があって追い出したりしたんじゃ!あんな見る目のないクソガキはこのわしが──(以下略)』


 こうなったときのカルトスの暴走は長くなってしまう上に、結末はいつも道理ですぐに解るためこの話しはここで割愛させていただきます。


 さて、そんなわけで暴走したカルトスから逃げるように──まぁ、本当のところはただ単に時間がなかったからなだけだが──用事を済まして、屋敷を出てきたリーフとノクトはそのまま城へと足を向けたのだ。


「カルトスおじいさん、お久しぶりにお会いしましたけど相変わらずでしたね」

「私の祖父が大変のことをしてしまい、申し訳ありませんでした」

「良いですよ。実害があったのはわたしではなくここにいないお兄さんの方ですからね。次に帰ってきたときが大変そうですね」

「そんなことはない………っと信じたいですが、そうは行きそうにないですね、やはり」


 リーフとノクトの脳内ではいつになるかは分からないがみんなでロークレアに遊びに来て、リュージュ家の屋敷の敷居を跨いだ瞬間にカルトスの大剣で斬りかかられるスレイの姿と、その後に訪れるであろうトリシアのボディーブローによって落とされるカルトス。

 その横で苦笑いを浮かべているアルフォンソと、あらあらと言いながら笑みを浮かべて見守るルル。

 祖父母が喧嘩をしている姿を見ておろおろとしているロア、そんな五人の姿をマジマジと想像してしまった二人は、そこに始めてみるであろうライアたちの驚いた姿までを想像したところで考えるのをやめた。


 二人は城に付くとすぐに騎士団の詰め所に行くと、ちょうど詰め所から一人の騎士が出てきたのを見てちょうど良かったと思いリーフが声をかけた。


「お忙しいところ申し訳ありませんが、少しよろしいでしょうか?」

「はい、なんでしょうかて、リーフ先生にノクト先生!どうしたんですかこんなところで!?」


 先生と呼ばれた二人は、はて?っと首をかしげながらこの人はいったい誰なんだろう?そう思いながら詰め所から出てきた騎士の顔をマジマジと確認すると、すぐにピンときた二人はアッと声を揃えて驚きの声をあげた。


「ベルリくんじゃないですか!その服装、もしかして騎士団に入団したんですか?」


 そう詰め所から出てきたのは二ヶ月の間だけ師事をした生徒の一人だったベルリがそこにいた。


「はい!あの後に再編された騎士団に入団して、俺だけじゃなくてロッドやソンフォンたちも入団してるんですけど、ここには………それよりもスレイ先生も一緒なんですか!?ずっとお礼を言いたかったんですけどすぐに旅立っちゃって何も言えなかったから……」

「そうでしたね。使徒の襲撃のあとから国の復興が終わる前に旅立ちましたからね」

「すみませんベルリさん、今日はわたしとリーフお姉さんだけでお兄さんは来てないんです」

「そうなんですか………残念だな」


 本当に残念そうにしているベルリを見て、今度ちゃんとみんなを連れて遊びにこようと決めリーフとノクトだったが、時間が限られているので申し訳なかったが速く案内してもらうことにした。


 アルフォンソの執務室に案内されたリーフとノクトは、ここに来て始めてアルフォンソが出世していたことを知った。


「お久しぶりですお父さま、遅くなりましたが騎士団の副団長就任おめでとうございます」

「ただ騎士団の欠員の穴埋めで押し付けられただけで、私としは早く辞めてしまいたいと思っているんだが、このところ休み無しで働いているからね」


 そんな軽口を叩いているアルフォンソだが、その手にはペンを握り目の前に置かれておる書類に何かを書き込んでいた。


「ところでリーフ、それにノクトくん。念のために聞くんだけど、スレイ君と喧嘩して帰省してきた、何てことはないよね?」

「そんなはずあるわけないじゃないですか。私とスレイ殿は毎日愛し合っているのですから!」

「リーフお姉さんだけではありませんからね!わたしもお兄さんとラブラブですから、忘れないでください!」


 リーフとノクトがいかにスレイとのイチャラブな日々を送っているのか、それをありありとアルフォンソに向けて話し出したが、自分の娘の夜の営みなど正直聞きたくはなかった。


「済まないけどリーフ、ノクトくんもそういう話しはよしなさい」

「うっ、申し訳ありませんお父さま」

「すみません、アルフォンソさん」


 改めて自分たちがどれだけ恥ずかしいことを話していたのかを理解した二人は、顔から火が出るのではないかと思うほど顔を赤くしていた。


「いやいや、これは良いものが見れてうれしいよ。君たちと出会う前のリーフは恋人どころか男の友人もいなかったからね。もしかしたら一生独身を貫いてリーフの孫の顔は見れないのかと思っていたが、この分なら問題は無さそうだね」

「あははっ、すみませんが結婚するまでは子供の方は………」

「いいさ、今はララとリリルカが孫の写真を送ってくれているからね。見るかい?」


 懐から写真を取り出して破顔しているアルフォンソ、その横でノクトが首をかしげている。


「リーフお姉さん、ララさんってもしかしてお姉さんですか?」

「えぇ。ララ姉さまは夫婦で探検家をやっていまして、大昔の遺跡などを調査をするために世界中を渡り歩いているんですが、今もどこにいるのやら」

「今は東方大陸の方にいるらしいよ。なんでも勇者レオンが残した手記を見つけたとか手紙に書いてあったけど本当かどうか………それよりも、これを見てよ、なんでもテオとローズが始めて──」


 孫の成長が楽しいのか、アルフォンソが写真を見せながら手紙で知った孫の成長を話してくれるのはいいのだが、時間がないリーフとノクトはアルフォンソの話を途中で切った。


「お父さま、申し訳ありませんが私たちも時間がありませんので、その話しは今度ゆっくりお聞きしますからその辺にしてもらえませんか」

「えっ、あぁ。そうだったね。改めてその話を聞かせてもらえるかい?」

「はい………お父さま、今日ここに来たのはぶしつけとは存じますが、騎士団で所有しているこの国で過去に起きた魔眼保有者絡みの殺人事件、その捜査ファイルを見せていただきたいのです」


 ノクトはようやくリーフがこの国に来た理由を察した。元々なにかあるとは思っていたが、まさかこの国で起きた魔眼保有者の殺人事件を調べに来ていたとは思いもよらなかった。

 そして、リーフの話を聞いていたアルフォンソは先程までとは表情を一転させ、目元からはいつも浮かべられていた笑みが消え、鋭い眼差しがリーフとノクトのことを見つめていた。だが、ノクトはアルフォンソの目の中になにか怒りのようなものを見た気がした。


「また懐かしい事件のことを引っ張り出してきたね、リーフ。………すまないがどういう経緯があったのかを教えてもらえると助かるんだが」


 リーフとノクトは今関わっている事件についての詳細をアルフォンソにむけて話した。話を聞いたアルフォンソは大きく息を吐いてから、外で待機をしていた付き人の騎士に資料を持ってくるように頼む。

 資料が届けられるまでの間、アルフォンソはジッとなにも言わずに黙り込み、リーフとノクトも同じように黙って待っていると、騎士の一人が資料を持ってやって来た。


「ご苦労、今日はもう帰ってもらっても構わないから、お疲れ様」

「はっ!失礼いたします!」


 騎士がアルフォンソに一礼してからリーフとノクトの方に振り返り、アルフォンソに気付かれないようにそっとウィンク、リーフとノクトは薄気味悪くなり鳥肌が立つのを感じたが、もう会わないだろうと思い引き釣り顔で笑顔を返しておいた。


「お父さま、とりあえずあの騎士の素行調査をしておいた方が良いかと思いますよ」

「あぁ。前々から女性騎士の間で変な噂があったけど本当みたいだね。私の娘たちに色目を使った報いは受けさせるよ」

「ちょ、リーフお姉さん!?アルフォンソさんがキレたときのお兄さんみたいな目をしていますよ!?」


 ノクトのツッコミを聞きながらアルフォンソは手元に置かれている資料に目を落とした。


「これがその事件の資料だが………これを見せる前に一つだけ言っておきたい、この事件は私も捜査に加わったことだから言えるんだ。その間に何人もの死者を出してしまった」

「………お父さま」

「済まない。この犯人とリーフたちの関わっている事件の犯人が別人かもしれない………けれど、これだけは言わせてもらいたい。頼む、犯人を捕まえて被害者たちの無念を晴らしてもらって欲しい」


 座っていた椅子から立ち上がったアルフォンソは、リーフとノクトにむけて頭を下げていた。リーフとノクトは顔を見合いながら頷きあうと、必ず犯人を捕まえることを約束した。


 アルフォンソから受け取った資料を確認し終えたリーフとノクトは、アルフォンソにお礼を言って城を出ようとしたが、空は真っ暗になっていたので久しぶりに家に帰るからと、門の近くまで送ってもらえることになった。


「先に資料庫の方に資料を返しに行ってくるから、先に外で待っていてくね」


 アルフォンソが城の外とは逆の方に向かってあるいて行く。リーフとノクトも言われた通りに出口の方に向かってあるいて行くと、歩いている方からフルフェイスを被った騎士が歩いてきた。

 あんなに仰々しい鎧姿と言うことはこれから任務に行くんだろうな、そう思いながらリーフとノクトが横にずれてすれ違う。


「ん?お前、確かアルの娘のリーフではなかったか?」

「えっ、今のお声は」


 ぎょっとしたリーフが振り返り、ノクトも今の声にどこか聞き覚えのあるような?っと疑問を覚えながら振り替える。


「やはりそうだ!お前、嫁に行って国を出たと聞いていたが……帰っていたのか?それとそっちの娘はノクトだったな」

「えぇ、ですが、そのような格好で何をなさっておられるのですかヴィルヘルム陛下………?」


 そうこの方こそ、頭部の鎧を外して素顔を表したのはこの国の国王陛下であらせられる、ヴィルヘルム陛下だ。それと、あなた本当に何でそんな格好をしているんですか?っとツッコミを入れたくなった。


「夜の散歩だ、気にするなすぐに戻るゆえな……ところで、お前たちの旦那のスレイだが、あやつは来てないのか?」

「お兄──スレイさんは来ておりません。わたしたちだけにございます」

「普通に話せ、お前たちには命を救われた借りがある」

「そう言うことでしたら……ですが陛下、なぜスレイ殿を?」


 リーフが質問をすると、ヴィルヘルムが間の悪そうな顔をして頬を掻いていた。


「あぁ~、そうだな………まぁ、一言で言えばあいつのことが気に入った。あいつさえよければうちの国で貴族の爵位を与えてやろうと思っていたんだがな」


 なんかとんでもないことを聞いてしまったと、リーフとノクトが思ってしまったが二人は同時に多分本人に聞く前から無駄だろうなっと思っていた。


「陛下、申し訳ないのですが、スレイ殿は貴族には多少ではありますが苦手意識がありまして………多分ではありますがお断りするかと思われます」

「前にお聞きしたことなんですが、お兄さん。貴族は面倒ごとを運んでくる害悪でしかないし、そもそも派遣争いとかが嫌だから、絶対に貴族にはなりたくないって、ご自分のお家を継ぐのも断るくらいですからね」


 リーフとノクトにはスレイがこの話を絶対に、いいや確実に断りをいれると言う確信があった。それは少し前に実際に言っていたからだ。

 前に中央大陸に遊びに行った時に、領主の仕事がいやになったフリードがスレイに、家を継ぐ気はないか?っと聞いてみたところ、満面の笑みでお断りした後、その事をジュリアとクレイアルラに報告していたほどだ。

 ついでに言っておくと、その後にスレイとフリードによる仁義なき全力の斬り合いによって屋敷の庭が荒れ果て、二人の剣戟の衝撃が街にまで届いていたらしく街の住民は大混乱に陥っていた。


「ふむ、そうか。それは残念だな。あやつにならば俺の後を継がせることも考えていたんだが………この分ではそっちの方も無理そうだない」


 後を継ぐと言うことはロークレア騎士国の王になると言うこと、だがそれもそれで無理だろうとおもっていた。


「うぅ~ん。無理でしょうね」

「まぁ、そうだろうな。っと、こうしちゃおられん。すまんが俺はもう行く、ここでモタモタしていたらアルの奴が感づいて来るかもしれん──」

「へぇー、私に感づかれたらなにか悪いことがあるんですか、ヴィルヘルム陛下?」


 背後から怒気のこもった声がヴィルヘルムに届くと、恐る恐る背後を振り返ったヴィルヘルムの目に写ったのは、腕を組ながら黒いオーラを身に纏ったアルフォンソの姿であった。


「いやー、陛下が夜な夜な街に出ては酒場を梯子しているって報告は上がってたんだけど、私が仕事に追われているってときに、君はなんともいいご身分だね」

「う、うるさい!これは視察だ!遊んでいるわけではな!」

「嘘言うんじゃないよ。ほら、私が椅子に縛り付けてでも仕事をしてもらうからね」

「やめんか!不敬罪で処刑だぞ!」

「やれるもにならば殺ってみればいいでしょ?私が処刑されたら私に管理を任している複数の領地の経営に、今の騎士団を誰が支えているのか……分かっているのかなヴィル?」


 暗い笑みを浮かべて逃げ出したヴィルヘルムを捕まえにかかったアルフォンソは、そのままヴィルヘルムを連れていってしまった。

 あれは当分戻っては来ないだろうなっと思いながら、リーフとノクトは自分ただけで帰ろうと思った。

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