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ライアの過去と約束

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 意識を失ったライアを近くの宿屋に休ませたスレイたちは、介抱をノクトとアニエスに任せると、別に捕っていたユフィたちの使う部屋で先ほどライアが意識を失う前に言っていた言葉の意味を考えていた。


 ちなみに竜車の方はもうすでに出発している。その際にテオドールが寂しそうな顔をして、あげくの果てにはここに残るとかふざけたことを言い出したので、スレイは自分の家の場所を教えていつでも来るようにと伝えておいた。


 さて、そんなことはどうでも良いので、本題に戻ることにした。


「どう思う?みんなが死ぬって、まさかこの村に使徒が来て滅ぼされるとか?」

「あり得ますが、アストライアさまは未だに眠っておられますし、魔眼が発動したとい言うことはすでに近くまで迫っている、そう言うことですからアストライアさまが目覚めるのではないでしょうか」


 リーフが言っている通り、死視の魔眼は対象死が身近に起こるときに勝手に発動する。

 つまり使徒がアストライアの気配を見つけ近くまで迫っていた場合、同じように結晶内で眠りについているアストライアが目覚めるのだが、スレイが預かったアストライアの結晶に変化は見られない。

 つまりはライアが視たのは使徒に襲来ではないと言うことだろう。っと、ここまではすぐに分かったがどうしても分からないことがあったスレイは、ユフィたちのことを視ながら疑問を口にした。


「なぁみんな、ライアの魔眼が発動したときに誰かを視ていたってことはない。前にライアから聞いたんだけど、死視の魔眼が勝手に発動する場合は、死が身近に迫っている者を見たときだって」

「そう言えば、ライアさまが倒れる前にですね、わたくしたち教会のお庭で遊んでいた子供たちのことを見ていまして」

「みなさんは、そんなところでいったい何をしていたのですか?」

「そのときはちょうどスレイさまとの間に子供が出来たら、っという話していたんです」

「それでね、スレイくんは初めは男の子か女の子どっちが良いかな?」

「えっ、そうだな………女の子だと嫁に行くときは悲しいし、かといって男の子だと反抗期がキツそうだからちょっと………ってそうじゃなくて!」


 話がそれたと思ったスレイは、そこんところの話しはおいおいしていくとして、今はライアが倒れた切っ掛けとなった、かもしれない教会に死が身近に迫っている誰かがいる……かもしれない、っとここまでは分かった。

 わかったところでらさすがに教会に直接行って今の話をしても、頭のおかしい人か危ない人とでも思われるだけかもしれないので、早まった行動はできない。



 それから、話し合いも行き詰まったのでここから先はライアが目を覚ましてからにしようと言うことになり、スレイは自分の取った部屋で横になりながら物思いに更けていた。


 ──ライアはいったい何を見た?それにあいつって………


 みんなが死ぬ、そんな不吉な言葉に不安を駆り立てられたスレイは、この小さな村の中で何が起こっても言いようにアラクネによる情報網を引き、もしも何かが起きたときにはすぐにスレイの元に知らせれるようにと、プレートとリンクさせてある。


 アラクネから送られてくる映像を見る限りでは、今のところは全く異常はなさそうだが、いざというときのためにも警戒は興れない。


 プレートから映し出されている映像を見ながら、プレートの機能の一つを使ってある操作をしていたスレイの元に、扉をノックする音が聞こえてきた。


「だれ?」

「わたしです。お兄さん、ライアさんが眼を覚ましました」

「そうか。ならすぐに行くけど問題ない?」

「はい。それとライアさんからもみなさんに聞いてもらいたい話があるそうですから、お部屋はさっきライアさんが使っていた部屋で大丈夫ですから」

「わかったよすぐに行く」


 スレイは映し出されていた映像を閉じると、そのまま部屋を出て先ほどのライアの眠っていた部屋に向かった。


 一度ノックをして返事を待っていると、アニエスが扉を開けてくれた。


「ライア、気分はどうだ?」

「……ん。もう平気、心配かけてごめん」

「いいよ。………それよりもライア、早速で悪いんだけど気を失う前に言っていたあの言葉、いったい魔眼で何を見たんだ?」

「………………………………………………」


 ライアが何も言わずにうつむいてしまった。それを見てスレイたちはどうしようかっと考えていると、何かを思ったのかアニエスがライアの前に立つと手刀をライアの頭に振り下ろした。


「……痛い、なにするの?」

「そう思うならもう少し痛がんなさいよ」

「……ウソ、そんなに痛くない」

「でしょうね………ねぇライア、みんなあんたが心配なのよ。抱え込まずに打ち明けなさい、スレイも、ユフィも、ノクトも、リーフも、もちろんわたしだってあんたが悩んでるなら力を貸すわ」

「……アニエス」


 アニエスが諭すようにそういっているにを聞いて、スレイたちも何も言わずにうなずいて見せる。


「それに、わたしたちの旦那ってそういう事件に自分から首を突っ込んでくんでしょ?ならもう関わる気は満々なんだから、隠すだけ無駄よ」

「ん?おい、アニエス?ちょっとなに言ってるんですか?なんか途中まで良いこと言って無かったか?そこでどうしてボクのディスリが入ってるんだ?」

「……ん。確かにそうかもしれない」

「ちょっとライアさん?なんで否定してくれないんですか、しかもなんでちゃっかり肯定までしてるんですか?それとそこ!なんか申し訳なさそうに視線をそらしてるんですか?こっち見てください!」


 スレイがアニエスとライアにツッコミを入れ、さらに叫ぶように眼をそらしたユフィたちにもツッコミを入れるという、なんともツッコミのオンパレードのスレイくん、さすがにこれ以上はないだろうと思ったスレイは、もう一度ライアの方を見る。


「なぁライア、何があったのかボクたちに教えて。大抵のことなら何とかしてあげれるから」

「……スレイ…………でも、みんなに迷惑をかけたくない」

「なにいってるのライアちゃん?迷惑もなにも、私たちは家族なんだから。家族に迷惑をかけるには当たり前、それ以上に隠し事をされるのが一番悲しいって………あれ、これなんかデジャビュな気がする?」

「ユフィ殿、それは前にスレイ殿に言った言葉に似てますからね。まぁでも、その通りです」

「はい!そうですよライアさん!微力ながらわたしもお力になりますから!」

「わたくしも、みなさんとはまだ付き合いは短いですが………それでも力をお貸ししますね」

「当然、わたしもよ」


 スレイたちの言葉を聞いてうつむいたライアは、目尻に小さな涙の粒を貯めながら顔をあげると目の前にいたスレイに抱きついた。


「……私の話し、聞いてくれる?」

「あぁ。聞くよ。それで、やれることは全部やってみんなを救ってみせる。って、こんなのボクのキャラじゃないけど、ライアやみんなのために戦うよ」


 全く締まらない言葉を口にしたスレイにみんなは苦笑したが、その中でライアも小さく笑ってから離れると、みんなの顔を見ながらライアが話し始めた。


「……私が孤児だったって話しは前にしたよね?」

「うん。前に聞いたよ」

「……物心ついた時にはヴァーチェアよりも、もっと北の方にある国の小さな村の、ちょうどここみたいな村の教会に捨てられてたの」


 スレイたちはヴァーチェアよりも北の村ときいて、アーガシア帝国を思い浮かべたがあそこには竜人族の集落はないはずだ。


「……そこで十歳まで暮らしてたの、孤児院のみんなは私の家族で大切だったの…………でも、ある日ねあいつが来たの」

「あいつ?」

「……名前は知らない………でも、あいつは私の家族を殺した」


 ライアのその話を聞いてスレイたちは驚いた。


「……初めは孤児を引き取りたいって言ってたけど、あいつの顔を見たときに魔眼が発動したの。炎で焼け落ちた村と死んじゃった家族の死体、そして私のこの眼を持って高笑いをあげているあいつの顔が………」

「眼……そいつは、魔眼を狙ってるってことなのか?」


 静かにうなずいたライア、つまりはこれからこの村にやって来るという相手は魔眼を狙う。

 つまりはヴァルマリアから受け継いだこの魂視の魔眼も危ない。そう思っていたスレイの横でリーフがなにやら難しそうな顔をしながら考え事をしていた。


「リーフ、どうかしたの?」

「あっ、いえ。ちょっと今のお話で少々気になったことがあったのですが………すみません。お気になさらず」


 そう言ったリーフだったが、その顔にはまだ険しいものがあった。だが、今はリーフのことよりもライアの話しの方が重要なので視線を戻した。


「……今でも忘れない、あのときの顔を………殺してやりたい、どうしても私自らの手で」

「ライアさん」


 ギリッと手を強く握りしめて血が流れる。それを見てノクトが優しくヒールをかけて治していた。


「……私は魔眼で視たことをみんなに言ってけど信じてもらえなくてそれで逃げた。あいつは私の魔眼を狙って

 るから、私がいなければって……でも違った。あいつは、私がいないとわかると教会を燃やして村のみんなを虐殺した」


 その話しにはあまり驚きはしなかった。なぜなら魔眼で視た光景が現実の物となった。


「……私が知ったのはそのあとすぐ、近くの町で噂を聞いた」

「それからどうしてたんですか?」

「……羽で飛んで、どこか遠くの街に行こうとした。でも、お腹がへって倒れたところを女将さんに助けてもらってワーカーとして働いてた」


 これがライアの過去だった。すべてを聞き終えたスレイはどうしてもライアのことを抱き締めたくなったが、それよりも先に動いたユフィたちがスレイを突き飛ばすと、無言でライアのことを抱き締めていた。

 みんなの突然の行動にライアは驚きの表情を浮かべている。


「ライアちゃん。辛かったね、悲しかったよね。もう私たちがいるからだからね、泣いていいんだよ」

「……えっ?なんで?」

「いいから、悲しいときには泣いてね。そうじゃないと、私たちだって困っちゃうよ?」

「…………………………………いいの?泣いて」

「はい。いいんですよ。弱音を吐きたいときには声を出して泣いて、助けてほしいときには助けてほしいと言ってください」


 うんうん、っとみんなに頷いていると、ライアの目尻に貯まっていた涙を流しながら嗚咽を漏らしながらポツポツと声を発し出した。


「………お願い、助けて」


 ようやく聞けたその台詞にスレイは小さく笑みを浮かべると、それを視たユフィがノクトたちに小さな声で離れよっか、っというとノクトたちも離れると、スレイがライアの方に近づくとポンポンっと優しく頭に手を置いてから頭を撫でると、もう一度ライアに笑いかける。


「ライア、家族が助けを求めたら助けるのなんて当たり前なんだからさ、へんな意地を張ってないで助けを求めるならいつでも言って」

「……うん。ありがとう………スレイ」


 ライアがスレイの胸にポスンっと頭を当てるとしばらくの間静かに泣いていた。



 ライアが泣き止んだタイミングを見計らい、魔眼で視た光景について聞いてみたところ、どうやら教会にいた子供の魔眼を狙ってその相手が来るらしい、そしてこの村を焼き払われてしまう、そしてその犯人が来るのは夜かその前、もしくはすでに来ているかもしれない。

 ようやくすると、こんなところなのだが、ライアの魔眼が視れる未来の映像はかなり断片的で、時間についてはどんなに遅くても一日以内に限定されているそうだ。


 ここまでのことを整理してプランを纏めてみたのだが、問題はスレイたちの言っていることをどうやって教会にいた子供の親、もしくは教会の聖職者に伝えるかだ。


「さてさて、どうやってこの状況を打開する方法を見つけましょうかね」

「それなら旦那様に頼めないの?魔法師団のお偉いさんなんでしょ?」

「頼みたいのは山々なんだけど、ここってマルグリット魔法国とヴァーチェア王国の国境の村でさ。ここにマルグリットの魔法師団を派遣するといろいろと厄介なことになると思うし、犯人がわからない以上迂闊には呼べないし、もし呼ぶならヴァーチェア王国の方に言わないといけなくなる」

「ややこしいですね」

「仕方ありません。そうしないと国際問題に発展しますし、賠償問題になりますね」

「そうだよね~いつもみたいに偶然にも、ってことはなさそうだし」

「今回ばかりはなにも出来ない、何て訳じゃない。おじいちゃんに連絡してこの事を伝えて、ついでだからヴァーチェア王国の方にも一緒に連絡を入れておく」

「これからヴァーチェアに行かれるのですか?」

「……でも、王城行ったことないのにどうやって?」

「実は、ヴァーチェアの騎士団の人に知り合いがいてさ、機能をかなり限定したプレート渡したまま返してもらってないから、それを使えば連絡だけは取れるんだよ」

「あぁ~ヨハンさんだね」


 実はなにかと急がしそうだったので事件の報告を受けとるためにプレートを貸し出して、報告などもすべてプレートを使って受けていた。

 一応、プレートの設計者であるユフィの許しは得てのことで、あの人なら大丈夫だろうと言う理由でそのまま貸し出したままになっており、こっちで破壊も可能だ。


「まぁそんな訳なんだけど、おじいちゃんの方には直接話をしに行く。っと言うわけで、ボクのプレートに村の入り口に入ってくる人の写真撮ってもらってるから、ライアには辛いかもしれないけど顔がわかるのがライアだけだから、眼を通しておいてくれ」

「……ん。わかった。がんばる!」


 ふすん!っと鼻息を荒くしてやる気をみせるライア、その姿を見たスレイは懐から懐中時計を取り出して時間を確認すると、今は十二時半、今は夏なので夕暮れは七時過ぎくらいだ。


「じゃあ………三時間後には戻ってくる」

「なんでそんなに時間かかるのよ?」

「調べたいことがあるんだ。じゃあちょっと行ってくる」


 みんなにそう告げて宿を出ようとしたそのとき、リーフがスレイにあることを告げる。


「スレイ殿、私も少し調べたいことがあります」

「リーフも?いいよ一緒に──」

「いえ、違います。私が行きたいのはロークレア王国、私の祖国です」

「………わかった。ノクト、リーフと一緒に言ってあげて」

「わかりましたお兄さん!」


 行き先は決まった、やることも決まった。

 スレイたちはこれから、絶望の未来を塗り替えるべく、そして悲しき過去に終止符を打つべく動き始めるのであった。

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