祖父からの頼み、暴走する本能
今回の話はかなりネタを入れました。
ランクアップ試験を終えてから数日後、学園での仕事を終えて帰宅したスレイとユフィだったが、家の前には例のごとく祖父の所属する魔法師団の馬車が止まっており、帰る道すがらご近所さんたちからなにやら同情にも似た眼差しを向けられていた理由を察した二人は、馬車から降りてきたトラヴィスに声をかける。
「やぁおじいちゃん。前々から言いたかったんだけどさぁ、魔法師団の人たち引き連れて家に来るのマジでやめて!最近ご近所さんから生暖かい目を向けられるようになってきてるから!ってかスペンサーさんも毎回毎回あなたも一緒に来るもんですからねぇ、ご近所さんたちから、次はあの人いつくるの?とか、いい人はいるの?いないなら家の娘が気があるみたいだからちょっとお話だけでも、なんて頼んで来る始末なんですよ?いい加減にしやがれってんだよこの野郎!!」
スレイくん、積もりに積もった積年の恨みと言うかいつか言おう言おうと思っていた言葉を、一気に爆発させて叫んだらしい。
これに関してはトラヴィスとスペンサーは申し訳なさそうな顔をしていたのだが、スペンサーはさっきのスレイの発言の中で気になることがあったらしく、ハッとして顔を上げたと思うと怒りで頭に竜の角を生やし悪魔に似せていたスレイの両肩に手を置いた。
「おっ、おい!お前、今の話しに出てきた娘と言うには、もしや角にある食堂の娘のことではないだろうな?」
「えっと、確かそうだったはずですけど………えっ、もしかしなくてもスペンサーさん、その人と面識があるどころか、思いを寄せてるとか」
「うっ、うるさい!そんなことはどうでも良いだろう!………四日後、俺は非番だ。そのときに昼食を食べに行くと食堂の主人に伝えておいてくれ」
「えぇ。分かりましたよ」
これは面白いことになってきたな~っと、今までの怨みからスレイは野次馬根性を丸出しにして、スペンサーのことを食堂のおばさんに伝えておこう、そう思いながらニヤニヤとしていると横からユフィがおもいっきり肘鉄を脇腹にいれてきた。
「──グヘッ!?ゆ、ユフィさん………いったいどうしてボクの脇腹に肘鉄を?というか最近のユフィって、魔法よりも体術のキレがいいから、結構痛いんですけど?」
「スレイくん、人の恋路を楽しんじゃダメでしょ。それと、私魔術師、武道家じゃないからね?」
そんな会話をしているスレイとユフィだったが、いつまでもこんなところで話しているのもなんだろうと思い、初めはみなさんにおもてなしをしようとおも思ったが、外で警護をすると言われたが、この日はかなり暑かったので冷たいジュースだけは差し入れしておいた。
ついでに、スペンサーはと言うとトラヴィスの命令で一時間ほどの休憩を命じられた。これによりスペンサーは少し受かれた様子で食堂へと走っていった。
さて、場所は変わってスレイたちの家の客間でトラヴィスの話しを聞いていた。
「スレイ、お前に頼みたいんじゃがセドリックさまのために守護の魔道具を作って欲しいんじゃ」
「魔道具を?別に構わないんだけど、なんでまたボクなんかに依頼するの?そんなの国のお抱えの魔導師にでも頼めばいいことじゃん」
「それがのぉ、困ったことに前々まで頼んでおった魔導師が王宮に納めておった魔道具の質を落としての、そればかりか費用を懐に入れてたことが発覚して打ち首になったんじゃ」
「ろくでもないですねその人」
「そうじゃろ?………お陰でワシはその責を受けてこうして代わりになる魔導師を探しておるんじゃ」
「トラヴィスおじいちゃん、お疲れ様です。これ、疲労回復にいいハーブティーですから、これでも飲んで休んでいってください」
「おぉ!ユフィの嬢ちゃんありがとうのぉ。スレイは果報者じゃ、こんなにいいお嫁さんをもらえるのじゃからな」
ユフィが淹れたハーブティーを飲みながら疲れたようにため息を一つ付いたトラヴィス、最近は忙しかったらしいのであまりこちらに来ていなかったが──その間もおばあちゃんずは遊びに来ていた──、久しぶりに見たトラヴィスの顔は少しやつれているようにも見えた。
頼まれたならばやるのはやぶさかではないのだが、その前にトラヴィスの疲労回復に効きそうな何かを作った方がいいのかもしれない、そう思いながら頷き合ったスレイとユフィだった。
「手元に有るにはミーニャのために作った守護のアミュレットくらいなんだけど、一応は上位の守護魔法を付与してあるし、状態回復なんかも付与してあるからこれでもいいかな?他のがいいのなら、新しく作るけど」
「それはいいんじゃが、アミュレットなどは賊に襲われたときにすぐに見破られる。じゃからのぉ全く新しい物を作ってはもらえぬか?」
「作ってくれと言われてもそんなにあっさりとは出来ないし………いや、バレないような物を作るならアレがあるし、でも作るならアレも必要になるし………ねぇおじいちゃん、魔道具を作ってもいいんだけど協力してもらいたいことがあるんだけどいいかな?」
「構わんぞ。材料費もこちらで持つし、必要なら作業場も提供するが」
「魔道具の代金は後で請求するからいいんだけど、おじいちゃんの力なしにはできないことを頼みたいんだ」
「いったいなにをするつもりんなんじゃ?」
「それは後で話すよ。あっ、ユフィ。ちょっと出掛けてくるけど夜には帰るから。さぁ行くよおじいちゃん!」
「えっ、あっ、ちょっとスレイく──あぁ。行っちゃった」
祖父の手を引いて家を出ていってしまったスレイを見送ったユフィは、伸ばしかけた手を引いてどうしようかと思いながらユフィは先程見たスレイの目を思い出しながら、こんなことを呟いてしまっていた。
「なんだかスレイくん、黒騎士を作ってたときみたいな目をしてたけど………変なもの作らないよね?」
なんだか心配になってきたなユフィは、帰ってきたらスレイが何をしていたのかを聞いてみよう、そう思いながらみんなが帰ってくる前に夕食の準備をしよう!そう思いながら一度部屋に戻っていったのだった。
スレイの祖父トラヴィスからの依頼が舞い込んできてから早二週間、スレイが全くといっていいほど部屋から出てこなくなった。一応、お風呂やトイレ、ご飯な学園の講師の仕事があるときは部屋から出てくるのだが、それ以外の時は全く部屋から出ようとしてこない。
なのでこの日の夜、ユフィが議長となり第一回のお嫁さん(仮)会議が開催されることとなったのだが、その会議のタイトルがこちら。
──第一回お嫁さん(仮)会議!スレイくんの謎の行動の理由を調査せよ!!
そんなことが書かれたタイトルが現れ、ここにスレイがいた場合は、これはいったいどこの謎の動物を探し出すドキュメンタリー番組のタイトルなんだろう?そんなツッコミを入れたに違いないが、あいにくとこの場にスレイはおらず、さらには地球のドキュメンタリー番組を見たことのある人がいないためそんなツッコミは入らなかった。
ついでに言うと、今のユフィは顔には色ガラスを使ったメガネに似せて作ったサングラスがかけられ、テーブルに肘を置き指を組んで口許を隠した、日本のロボットアニメで有名なあの人のポーズを──ちなみにユフィさん、そのアニメは見ておらずネタを知っているだけ──取りながら、雰囲気を作って口を開いた。
「みんな、よく集まってくれたね」
「……ユフィ、疲れてるんなら今日じゃなくてもいいよ?」
「大丈夫だよ~ライアちゃん、これも前にお話しした私のいた世界で会議をするときにやらなきゃいけない大事なポーズなだけだから」
ユフィさん、みんなが知らないからと言ってメチャクチャなことを言い始めていた。
ちなみに、ラピスとアニエスにもスレイとユフィが転生者であることと、女神アストライアと共に神と使徒との戦いを繰り広げていることを話したが、二人とも初めは信じておらずアストライアに出てきてもらい──ずっと眠っていたためそれなりに力を回復しているらしい──説明してもらい信じてもらった。
「ではユフィ殿、私たちも一緒にやった方がいいのでしょうか?」
「やらなくても大丈夫ですよリーフさん。………まぁ、それでなんだけど、スレイくんが今何してるかを調べてみようって、ことなんだけどライアちゃん、アニエスちゃん。スレイくんのお部屋でなにやってるか聞こえたりしてこないかな?」
「無理よ。この二週間全くスレイの部屋から物音一つ聞こえてこないわ」
「……ん。アニエスに同じく」
「えっ、それって怖くないですか?みなさん!お兄さんが生きてるか確かめに行きましょう!」
「落ち着いてくださいノクトさま。スレイさまは先程の夕食で生きているのは確認しているではありませんか」
「そっ、そうでした………でも、なんでお兄さんのお部屋から音が聞こえないのでしょうか?」
「サイレンスで結界を張ってるんじゃないかな~」
ユフィは前にジュリアとマリーにスレイと一緒に部屋に閉じ込められたときに、音漏れを防止するためにサイレンスの魔法がかけられていたことを思い出し、その事をみんなにも話していたのだが、今度はみんなも首をかしげることとなった。
その理由は、なぜ魔道具を作るに音漏れを防止する必要があるのか、ユフィたちはあれこれ話し合うこととなったが全く理由が解らず、その事についに痺れを切らしたライアが立ち上がった。
「……もう我慢できない、直接スレイの部屋に乗り込んで理由を確認してくる。そろそろ私、欲求不満、我慢の限界、アニエスも同じはずだから一緒に行く!」
「ちょっと待ちなさい!なんでわたしが一緒に行くことになってるのよ!」
「……もしも、私が一人で行ったらスレイを襲う自信がある。だからアニエスも一緒にスレイを襲おう」
「やめなさいよ!わたしはそこまで欲求不満じゃないわよ!」
「……アニエス、我慢はよくない。溜まったらしっかり解消しないとよくない」
「わたしはそんなにエッチな女じゃないわよ!」
さっきからライアのボケにアニエスの鋭いツッコミが入るのだが、ちなみにユフィたちもチラチラと視線を合わせないようにしている。その視線の意味は押して知るべし。
さて、取り敢えずスレイの部屋まで行ってスレイがなにをしているのかを確かめに行くことになったのだが、確かめに行くのはライアとノクトの二人で、アニエスは先程のツッコミの嵐で疲れたためパスすることとなった。
「それじゃあ行ってきますね」
そうして二人は今、スレイの部屋の前にいた。一度扉をノックしてスレイの名前を呼んでみたが全く反応がなかったので、今度はドアノブを回してみると、どうやらカギはかかっていないようだった。もしもカギがかかっていた場合は、ユフィから扉の破壊を許されていたがその必要はないらしい。
ノクトが扉を開けて扉の隙間から部屋の中を覗いてみた二人は、そこで見た光景に絶句した。
部屋の中ではなにやら身体のラインがよく出るボディースーツのようなものに、腰にはメカメカしいベルトを付け、胸には三匹の動物の絵の書かれた胸当て、鳥の顔を模したヘルメットを被り、腕には鋭いカギヅメのようなものが折り畳まれた手甲が、足にも足甲が付けられた誰かが鏡の前に立っていた。ついでになにやらポージングをしていたりもしてた。
アレは誰だろう、もちろんそんなの始めっから解っている。アレはスレイだ。
「うぅ~ん、やっぱり激しい動きをするときは服が引っ張るな………やっぱりもう少し布の部分を増やして、動きの阻害を減らしてみるか」
そんなことをスレイが話しているのを聞いたノクトとライアは、ソッとドアを閉めてからいったいなにを見たのかと首をかしげながらもう一度ドアを開けると、いつもの服装のスレイがそこにいた。
「あれ、ノクトにライア?どうしたの扉開けて」
そこにはスレイだけがそこにいて、部屋の中には先程見た鎧のような物がどこにもなかった。ノクトとライアが部屋の扉を閉めて、再び開けたのはすぐだった。そんな短い時間であんな物がすぐに脱いだり隠すことができるのか?そんなこと出来るはずがない。
ノクトがジと目になりながらスレイのことを見る。
「………お兄さん、さっきの鎧はどこにやったんですか?」
「………………………ごめん、ちょっとなに言ってるか分からないんだけど」
「……私たちしっかりと見た、スレイがその手に持っている物を腰に付けて、へんな格好をしているのも見た」
「………………………ごめん。ちょっとなに言ってるか分からないんだけど」
もう一度スレイが同じくセリフを口にし、なにやら気まずそうに視線を横にずらし手に持っていた物を後ろに隠した。
これは怪しいと思ったノクトとライアが阿吽の呼吸で頷き合うと、ノクトが杖を使わずに魔法を発動した。
「お兄さん覚悟ッ!アイス・バインド!」
「えっ、ちょっとノクトさん!なにを──」
「今ですライアさん!」
「……ん。ナイスアシスト、ノクト!」
手足に氷の蔦が巻き付いてきて身動きがとれないスレイ、その一瞬の隙を付いてライアがスレイの手の中に合った物を奪いさると二人が部屋を出ていった。
「待ってノクト!ライア!あぁもう!」
スレイは業火の炎で氷の蔦を溶かすと慌てて下に降りていくと、声のする方に向かうとそこにはベルトを装備しているユフィとこれからなにが起きるのかとワクワクした顔をしているノクトたちだった。
スレイが階段から降りてくる前、ノクトとライアがユフィたちのいる部屋に戻った。
「みなさん!お兄さんこんなの作ってました!」
「……ん。ユフィ、これなんなのか解る?」
「えぇ~なにそれ」
そう言ってライアが手に持っていた物を見せると、リーフ、ラピス、アニエスの三人がなんだろうと首をかしげている横で、ユフィの顔が驚きに彩られた。
「嘘でしょ?オ○ズ・ドラ○バー!?それにオー○キャナー!?えっ、なんで!?」
「もしかして、ユフィ殿はこれがなんなのか知っているのですか?」
「なによそれ?」
「ユフィさま、いったいどう言うものなのですか?」
「うぅ~ん、説明するよりもやってみた方がいいかも」
そう言いながらユフィはライアからドラ○バーとオー○キャナーを受け取ったが、そもそもベルトはどこなんだろう?そう思いながも、らもしかしたらと言う考えから腰に当てるとどこからともなくベルトが現れユフィの腰に装着された。
「スレイくん、ここまで再現しちゃったんだ」
と言うことはアレも出来るんじゃ、そう思いながらベルトのメダルケースを探ってみるとやはりあの赤と黄色と緑のメダルがあった。
そう思っていると遅れてスレイが入ってきた。
「ユフィ、待って!それ試作品でまだ実験段階だから!変身はやめて!」
「えぇ~、変身してみたいからヤダよ~。そんなわけでリーフさん!ラピスちゃん!アニエスちゃん!三人のおっぱいでスレイくんを籠絡しちゃって!」
本当に変身が出来ると言うなら是非もない、ユフィは最終手段として巨乳三人娘を投入した。
「いや、ユフィ殿、それはちょっと………って、ラピス殿もアニエス殿もなにをしているのですか?」
「リーフさま、久方ぶりのスレイさまとのスキンシップのチャンス、逃すてがございません」
「………さっきのライアの話じゃないけど、そういうことはしたいから」
「おい二人ともやめないさい──って、リーフさん!?あなたもですか!?」
「………すみません、自分も最近はご無沙汰でしたので」
右腕にはラピス、左腕にはアニエス、背後からはリーフ、三人の大きな胸が三方向から押し付けられると言う幸福と一緒に、ノクトとライアからの氷点下の視線も一身に受けるはめになった。
ダメだ、最後は一月前位だったがここまで酷くなるとは、彼女たちの豹変ぶりに戦々兢々していると、ユフィの方からこんな声が聞こえてきた。
「それじゃあみんな見ててね、変身!」
「あっ!待ってユフィ!!」
スレイが手を伸ばしながら叫んだ次の瞬間、ユフィの周りに大きな三枚のメダルの影が現れたと思ったら、どこからともなくチリンチリンチリン!っと音がなり、聞き覚えのない声が聞こえてきた。
『ホーク!タイガー!ホッパー!』
なんか聞いたことのあるものと違う!そんなツッコミを心の中でしたユフィだったが、次の瞬間身体に重質感のある鎧が装備されたのがわかったが、ユフィはもう一度アレ?っと子首をかしげ、スレイに質問しようとしたがそれよりも先にノクトたちが騒ぎだした。
「ユフィお姉さん!それどうなってるんですか!?」
「……ノクト落ち着く、作ったにはスレイ、ユフィじゃなくて聞くならスレイ!」
「ライアさま落ち着いてくださいまし!それよりもなんですかアレ!?」
「ちょっとスレイ!わたしもやりたい!他にないの!」
「スレイ殿!私も是非にやりたいです!変身してみたいです!」
アニエスとリーフが変身したいと言い出し、ノクトとライア、それにラピスも一緒になって変身したいと言い出した。以外にも女の子が変身したいと言い出すとは思わなかったスレイ、一応他にもベルトは作ってあるが、全部試作品なので貸すわけがなかった。
なのでユフィにも早くベルトを返してもらいたかったが、その前にユフィから疑問が上がった。
「ねぇスレイくん、このスーツ、全部黒いけどどうしてなの?」
「だから試作品なの、だから下の金属の色がそのままになってて………もういいでしょ返してよ」
「じゃあ返す代わりに、なんでラ○ダーベルト何てもの作ってたのか教えなさい。でないとこのままみんなでベッドの中で聞き出しちゃうけど?」
「………あの、ユフィさんそれってボクにとってはご褒美なのでは?」
健全な青少年としてはむしろウェルカムなのだが、そう思っているとライアがスレイの裾を引っ張った。
「……スレイ、私たちみんなを一斉に相手して朝まで持つと思うの?」
そう言うライアの目には発情期の時に見た妖艶さが再び現れており、ハッとしたスレイが回りを見回すと同じく発情期のあるらしいアニエスや、ノクトとリーフ、それにラピスにユフィまでもライアとアニエスと似たような目をしていた。
──いや、君たち発情期なんてないよね!?
そんなツッコミを入れてしまったスレイは、こういうときはかなり厄介だなっと思いながらゴクリと生唾を飲みながら、これは言っても言わなくても厄介なことことになりそうだと思もいながら、彼女たちがこんなになるまで放っておいた自分が悪いと観念し、すべてを話しはじめた。
スレイ曰く、アミュレットではなく一目では分からないような物を作る、ならば半自動的に着脱が出来る鎧型の魔道具にしよう、だけどセドリック殿下は年端もいかない少年、ならば子供心をくすぐるような物を作ろうと決めた。
ならば、日本の男の子ならば一度は憧れた仮面のヒーローを作れば、セドリック殿下も喜ばれるのではないか、そうと決まればいろいろ作ってみよう!
何て理由から作られたのがあれだそうだ。
「もちろん、遊び心を忘れないのと一緒に機能面にも拘りを込めて、今付与できる多重の防御機能にもしも怪我をしたときのためにオートヒーリング機能を取り付け、さらには装着者の性別、身長、体格に合わせて鎧のパーツを調整したり、装着者の年齢に合わせて重さを減らせるグラビティーを付与してあります。そしてここからが重要で、なんと鎧の下に着ているボディースーツは金属繊維になっており、夏や冬を見越して体温調節機能に加え、鎧の部分と同じ付与魔法を施しているため簡単なことでは中の人に傷付くことはありません」
なにやら商品の売り込みに来たサラリーマンのような説明を始めたスレイに、ユフィたちは聞き流しながらもなにやらすごいことになている変身ベルトを回しながら一人一回ずつ変身をして遊んでいた。
「ところでスレイさま、今のままでも十分スゴいと思うのですがこれで未完成なのですか?」
「あぁ。もう少し金属繊維の量を増やしてサイズをあげる必要があってね、後もう少しこだわりたい」
「こだわりの問題なのですね。ところでラピス殿、そろそろ自分にも変わってください!」
「……むぅ、リーフズルい次は私」
「ちょっとあんたら、わたしだってやりたいわよ!ラピス、次はわたしね!」
「みなさん!わたしを忘れないでください!」
未知なる体験に心引かれているノクトたちは、一本のベルトを奪い合っていた。そんな彼女たちのことを見ていたスレイの横にユフィがやって来る。
「ねぇねぇスレイくんなんでオ○ズにしたの?」
「なんでって、何が?」
「だって~、スレイくんってオーズよりもダ○ルやディ○イドの方が好きだったじゃん?まぁ、それ以降はあんまり見てなかったけど」
「あぁ~、一応ダ○ルは作ったけど、やっぱり一人で変身してもつまらないからしまってある。ディ○イドは………構想は出来てるんだけどどっちで作るかを悩んでてまだ作ってないです」
ドラ○バーが二種類あるベルトで、どちらを先に作るかを考えた結果、作るのが面倒だったので後回しにすることになった。
「まぁ、当分はこっちで我慢かな」
そう言ってスレイはスロットが一つしかないドラ○バーと、黒いUSBメモリーのような物をユフィに見せると
「あぁ~!ロ○ト・ドラ○バーとガ○ア・メモリーだ!」
ユフィがそう叫ぶと、新たな変身ベルトの出現にノクトたちが気付き群がってきた。
この日はユフィたちによる大変身パーティーと、二週間ほどほったらかしにした罰としてみんなをベッドで慰めることとなった。
それからさらに二週間後、ようやく完成した変身ベルトを祖父のトラヴィスに頼みセドリック殿下に直接渡しに行ったところ、大変喜ばれた、ついでにクライブ陛下もそれを気に入ったため、スレイは陛下にもドライバーをプレゼントした。
ちなみに、二人に渡したドライバーは仮面ライ○ー・キ○とダ○ク・○バのベルトで、もちろんキ○ット・バ○トⅡ世とⅢ世を模したコウモリ型のゴーレムを付けてだ。
後日、クライブ陛下とセドリック殿下が揃って変身して遊んでいると聞き、それを見て羨ましがった王妃のイザベラ様からの依頼で新しいベルトを作らされることになったのは、その日から三日後のことであった。