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帰宅と新たな同居人

 昨夜、夜空が綺麗だったから近くの空き地に作られた丘で、ラピスと一緒に夜空を眺めながら話をした次の日、スレイは朝早くにライアに叩き起こされ、そのまま引きずられるように下の部屋に連れてこられる。


「えっ、ちょっ、ライアさん?ボクまだ寝間着なんだけど?」

「……知ってる。着替えは後でして」


 ライアに問答無用で手を引かれて行くスレイは、連れていかれた先に集まっていたユフィたちと、なにやら頬を赤く染めて顔をそらしているラピス、尻尾を逆立てながら威嚇をしてくるアニエス、眼には光がなく完全なジト目でスレイを見ているミーニャ、ニヤニヤとなにやら怖い笑みを浮かべているジュリアとジュディス、あららうふふといつもの通りおっとりと笑っているマリーだった。

 ちなみにまだ朝早い時間なのでリーシャたち年少組はまだ寝ているらしく姿は見えなかった。

 これから何が始まるのか、そう思っているスレイの元にユフィがやってくる。


「あのね、スレイくん。まずは何で朝からみんなが集まってるのか説明するから、そこに座ってもらってもいいかな?」


 落ち着いた様子で話しているユフィだが、指で指しているのはソファーでも椅子でもなく床、つまりはそこに正座しなさいと言っているのだ。

 なぜに!?っと聞き返そうとしたスレイだったが、それをさせない迫力がユフィだけでなくノクト、リーフ、ライアからも放たれていた。

 なので早々に聞くことを諦めたスレイが大人しく床の上に腰を下ろし、なぜだか分からないが正座の方がいいなと思い正座で座ると、ユフィがゆっくりと話し始めた。


「あのね、朝起きた時からなんだかラピスちゃんの様子がおかしかったの」

「えぇっと、おかしいとは具体的にどのように?」

「なんというかね、いつもなら一歩引いてるような感じなのに、今朝は距離が遠くなってるような近くなってるような、なんと言うか距離がおかしくなってたの」

「…………………………………………………ごめん、意味わかんない?」


 どう言うこと?っとスレイがユフィの言ってることが分からない、そう言いたげに小首をかしげていると、ユフィの話を引き継ぐようにリーフが話し出した。


「なんと言いますか、いい意味でラピス殿が変わったと言いたいんです。それを私もみなさんも感じていたのですが、たった一晩で何がったのかが分からなかったんです」


 リーフがそう話しているとき、スレイはなんで女の子ってこう言うのに機敏に反応するんだろうな、魔眼かそう言うのがわかるスキルでもあるのかな?なんて関係ないことを考えていると、今度はノクトが話し出した。


「それでですね、わたしたちみんなで考えていたら一度起きてきたお義父さまが、こんなことを言っていたんですよ。昨日の夜中にお兄さんとラピスさんが二人っきりで出掛けるところを見たと」

「えっ、マジっすか!?」

「……ん、それを聞いてみんなで門番をつるし──うっん!門番に話を聞いた」


 今、ライアの口から吊し上げるって言葉が聞こえた気がしたが気のせいではないだろう、本当に吊し上げたんだと思い、心の中でご冥福をお祈りしておきました。


「それで、その事をラピス殿に訪ねたとこと事実であると確認がとれました」


 ごくりとスレイが生唾を飲むとユフィの笑顔が見えた。


「ねぇねぇスレイく~ん、昨日の夜中にラピスちゃんデートしたんだって~。ねぇねぇ何で教えてくれなかったのかな~?」

「いや、デートしたわけではなくてですねそのですね、ただ酔っぱらってたボクを一人で散歩に行かせるわけにはいかないという、ラピスさんがご厚意でついてきてくれただけです」


 決して浮気ではありません!変なこともしてません!もしものときは責任を取るつもりだが、昨日はそんなに飲んでいないので記憶はちゃんとあると断言出来る。

 そもそも記憶がなくなるまで酒を飲んだことはないので大丈夫。

 なのでので間違いは起こっていないと自信を持って言えるスレイだが、疑われるようなことをした自分が悪い、一応スレイには罰を受ける覚悟はできている。

 さぁ、思う存分怒りの雷を落としてくれさぁ!そうスレイが覚悟を決めるなか、いつまでたってもそれが降ってくることはなかった。


「ねぇスレイくん。別に怒ってるわけじゃないんだよ?」

「えっ?そうなの?」

「……ん。ラピスが変わった。それはいいこと」

「ライアさんの言う通りですよ。まぁ、わたしたちも誘って欲しかったですよ」

「まぁ夜中だったと理由で仕方がありませんが、私もスレイ殿と行きたかったですね」


 最近は仕事にもまれて忙しかった訳ではなくみんなでデートもよくしていたが、夜にデートに行くと言うのはしたことがない。

 次の日に仕事だったり、魔道具を作っていたり、みんなが夜のお誘いをしてきたり、夜になるとみんな自然と家から出ることがなく、夜に出歩くのは仕事で遅くなった時だけかもしれない。


「なら、今度みんなで夜のデートでもする?」

「「「「する!」」」」


 全員が賛成だったが、行ってくれれば夜にデートに行くくらいどうってこと無いのだが、夜のデートとなるとどこかに演劇を観に行ったり、夜景の見えるレストランでディナーが良いだろうな、なんて考えながら、帰ったら夜景の見えるレストランでも探しておかなくちゃな、そう思いながらようやく正座から解放されたことに安堵の息をついた。

 ちなみにミーニャとアニエスが怒っていた理由は、フリードの話しか聞いていなかったかららしく、後でスレイとラピスが誤解を解いたことにより事なきを得たが、ミーニャが怒った理由は分かるがアニエスが怒っていた理由が全く分からずに首をかしげていた。


 それからスレイたちは温泉に入りに行ったり、スレイとリーフでパーシーの剣を見てあげたり、ユフィとノクトでリーシャの勉強を見たり、ジュリアがミーニャに魔法の手解きをしたり、マリーがライアとラピスに実戦で使える体術の型を教えるために、自分の身体を使って教えようとしてみんなで全力で止めたり、セバスやアルファスタ家のみなさんがアニエスに家事を教えたりと、楽しい休日を満喫したスレイたちだった。


 それはそうとして昼食のとき、人数が多いこととヴァルマリアと獣人姉妹、それにライアがかなりの大食いのため、いつにも増して料理が並んでいる食卓で、スレイは今まで特に気にしていなかったが、改めて考えるとおかしなことがありちょうどフリードが降りてきたのでそれを聞いて見ることにした。


「そういえばさぁ、ここに来てからずっと思ってたんだけど、じいちゃんどこに行ったの?もしかして父さん追い出したとか?」

「あぁ、親父ならお袋んところに行っちまったよ。なんでも寄りを戻すんじゃ!、とかなんとか言って出てっちまってさ。んで、この前写真送ってきやがったんだけど、ちょっと取ってくる」


 フリードが一度部屋に戻って写真を取ってきたスレイに見せると、次の瞬間スレイが吹き出した。


「ぶふっ!?」

「はぇ!?スレイさま、どうされたんですか!?」

「ちょっとあんた汚いわよ!料理に入ったらどうするのよ!」


 近くに座っていたラピスに心配されて、アニエスからは怒られた。


「おにいちゃん、ごはんのときはしずかにしてて。それとお腹すいたからごはん食べよう」

「スーおなかすいた~!」

「そうですね、フリードさん。子供たちがお腹を空かしていますからお先にいただいてよろしいでしょうか?」

「あっ、はい!お義母さんどうぞお召し上がりください!」


 どうもフリードは義理の母のジュディスには頭が上がらないらしく、というよりもタジタジになりながらでしかコミュニケーションが出来ていない。

 そんなフリードのことは置いておき、いきなり吹き出して笑うほどの写真がなんなのかと気になったユフィたちが、スレイからその写真を取り上げて見てみると、そこには立派なお髭に真っ白な髪の毛のおじいさんが、日に焼けてさらに南国で着るような派手な衣装で、顔にはサングラスまでかけてピースサインをしている写真だ。


「わぁ~、確かにこれは笑っても仕方ないかも~、というか多分引いちゃうな~」

「………私の祖父も同じ格好をしてたと思うと………笑う自信はありますね」


 同じ年頃の祖父がいるユフィとリーフがそう言うと、ちょっとだけ自分の祖父で想像したのか顔を下げてクスクスと笑い始めた。


「なんだかこの写真を見ていると、始めにお会いした時とかなり印象が違いますね。初めはもっと、硬派なイメージでしたけど、以外とお茶目といいますか」

「………ノクトの中ではそう言う評価かもしれないけど、ボクの中では違うからね?あのジジイには敬意は一欠片だってない。ってか喪に伏してるんじゃなかったのか?ってかここどこだよ?」


 若者向けの衣装で写っているバンの後ろには、なんだか南国の島にあるヤシの木のようなのが写っており、ついでに青い空に青い海まで見える。本当にバカンスに行ってるんじゃないのか?


「なんでも南方大陸の島国に行ってるらしいわよ。お手紙にそう書いてあったらか」


 本当にバカンスに行ってた。

 これにはさすがに物が言えなくなっていると、いつの間にか料理が無くなっていっているのに気が付いたスレイたちは、慌ててご飯を食べ始めたのだった。


 その日の夕方、スレイたちはまた北方大陸の我が家に帰るために街の門の前に出ていた。見送るという理由だけでフリードたちも来ているのだが、案の定というべきかリーシャとヴァルマリアがなかなか離してくれなかったため、最終的にはフリードが二人を引き離してくれた。


「こっ、こら!リーシャ、暴れるな!危ないだろ!?」

「やぁー!おにーちゃんのおうち行くのー!」

「いや、お兄ちゃんだって大変なんだからさ──痛い!?えっ、なにってヴァルマリアさん!?なんでオレの腕を噛んでいるんですか?」

「ガブガブ…………ガブガブ」

「無言で噛むのだけはやめていただけませんか──あっ、ちょっ、ギリギリやめて、血がね、血が出ちゃってるから!って、リーシャもしれっと噛むんじゃない!」


 どうやらフリードさん、ヴァルマリアに噛まれて腕の肉が抉れたらしく血が滴りだした。ついでにリーシャもヴァルマリアの真似をしてフリードの腕に噛みついていた。子供と言ってもさすがはドラゴン、人間の肉など簡単に噛み千切れるのだと証明してくれたが、さすがにグロいのでアニエスはスーシーの両目を隠して見えないようにしていた。


「じゃ、じゃあ父さん、リーシャとマリアのことよろしく。頑張ってね!」


 ちょっと酷いかもしれないが、ここにいればフリードの被害が増えてしまうのでスレイは、そうそうにこの場所から立ち去ることを選んだ。

 ゲートにみんなを押し込んだあと、最後にもう一度だけみんなの顔を見ると、ジュリアが泣いているリーシャとヴァルマリアを泣き止ませているのを見て、心の中でごめんなっと伝えてスレイもゲートをくぐる。


 北方大陸のマルグリット魔法国に戻ってきたスレイたちは、いろいろとあって疲れたのと明日のために早く休もうと思ったのだが、なぜかここで例のごとくやってくる人がいた。

 なぜか家に帰るとジャルナが待ち伏せをしていた。


「邪魔するよ。スレイあんたに頼みたいことがあるんだがね、今いいかい?」

「お引き取りください。明日は学園の仕事があるので無理ですから。それじゃあ」


 ジャルナを追い返して家の中に入ろうとしたそのとき、ガシッと頭を捕まれたスレイ。


「逃がすと思うか?あんたらも、スレイを置いて逃げようとするんじゃないよ!」

「あははは~、やっぱり逃げちゃダメですか?」

「当たり前だろユフィ。んで依頼なんだが、近くでワイバーンの集団が出てだな、討伐を頼めないかね?ことがことだけに並みの奴らじゃ、みんな仲良くワイバーンの腹ん中に収まってしまうからねぇ」


 つまりは適当な人がいないので代わりに倒してくれ、そう言われているは今までのことで慣れてきたが、最近よく思うことなのだがこれではもうBランク冒険者の依頼内容を越えている気がする。


「分かりましたけど、ユフィと……あとノクトは残していきますよ」

「構わんが魔法使いが二人も抜けて」

「高位の治癒じゃなければボク一人で問題ないですし、なんとかなると思いますよ」


 スレイがジャルナにそう説明していると、話を聞いていたノクトが話しに割り込んできた。


「おのお兄さん。わたしも残るんですか?」

「あぁ。ボクの代わりに学園の方の手伝いをお願い。ユフィはその辺の話を先生に伝えておいてよ」

「わかったよ~」


 依頼についてジャルナにいろいろと確認したあと、話しも終わったとジャルナが帰っていきようやく落ち着いたのでスレイは今まで気になっていたが聞けなかったことを聞いて見ることにした。


「なぁ、なんで平然とアニエスがこの家にいるんだ?」

「なぜって、そりゃあ今日からここに住むからに決まってるでしょ?」


 さも当たり前のように答えるアニエスに、スレイはユフィたちに視線を向けると全員がヤバッと言いたげに顔を一斉に反らした。つまりはみんなはあとで言おうとして忘れていたらしい。


「部屋は余ってるから住むのは良いんだけどさぁ。見たところアニエス一人だけみたいだけど、スーのことは良いのか?」

「本当ならスーも連れてきたかったんだけど、奥さまが引き留めたのよ。私の孫は連れてかさないわ、って、なんかキリッとした顔で引き留められたのよ」

「おばあちゃん、ボク以外に孫がいたっけ?」


 アニエスがその孫と結婚してスーシーが義理の孫娘になる、そう思ったスレイは嫁入り前のアニエスをここに住まわすのは不味いのじゃ?そう思ったがどうやら違ったらしい。


「その……わたしと、あんたがってこと」

「はぃ?」


 意味が分からない、そう言いたげに首をかしげているスレイくん。いつものことだが全くもってそう言う話しに疎い。


「だからその……わっ、わたしが、あんたのこと好きだってことよ」

「はい?」

「好きなの!あんたのことが、これだけ言ってるんだから分かりなさいよ」


 顔を赤くしてそっぽを向いたアニエス、そんなアニエスに向かってスレイは心の中で、なに言ってんのこの子?そう疑問を思っていると、ユフィがスレイの肩を軽く叩いた。


「はい?じゃないでしょ?スレイくん、ちゃんと答えてあげなきゃ?」

「いや、でもさぁボク、アニエスのことなんにも知らないよ?ってか、どう言うこと!?」


 全く話しについていけていないスレイにユフィたちは大きなため息を一つついた。


「やはりスレイ殿はなにも気付いていないらしいですね………いつものことですが、どうにかならないものでしょうか?」

「仕方がありませんよ。リーフお姉さん。アニエスさんだけじゃなくてライアさんも全く気づかれていませんでしたからね」

「……ん。私まったく気づかれなかった」

「みんなそうだからねぇ~」


 ユフィたちがなにかを語りだしたが、スレイはその内容が聞き取れないでいると今度はラピスが小さく手を上げる。


「それでしたら、わたくしもスレイさまにお伝えしておきたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「この流れで言いたいことって言われると不安でしかないけど一応聞くよ。なんだい?」

「スレイさま、わたくしはあなたのことをお慕いしています」


 これ、いったいどうすれば良いんでしょうか?

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