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久しぶりの帰郷とバカな奴ら ②

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 ジュディスの頼みでノーザンスにやって来たユフィたちは、ジュディスが孫娘フィーバーしているのを見守ってから、久しぶりにユフィたちがみんなそろって温泉に浸かってのんびりとしているとき、トラヴィスによって半ば拉致される形で連れ去られたスレイはというと、なぜか王城の前に連れてこられていた。


「すまんがスレイ、その馬車に乗ってくれ、ホレ速く!」


 そこに止まっていた馬車に押し込まれると、さらになぜか乗った馬車は──乗ったと言うよりも押し込められて、もっと言うと逃げようとするも魔法で拘束されて──魔物のはびこる森の中に向かうという最低限の説明だけをされて、馬車に押し込まれる形で移動しているという状況であった。

 あえて言おう、ちゃんとした説明もされてないのにいきなりこの状況って、おかしくね?それも周り知らない人ばっかだし!っと思いながら馬車に揺られているのだ。


 事情を聞こうにも回りに知り合いもおらず、ついでに言うと乗り合わせているのは国の魔法師団の面々らしく、その上役であるトラヴィスが直々に連れてきたとあってか、変な目で見られるのは覚悟していた。ここまであからさまな敵意を向けられるとは思わなかった。


 こうなったらさっさと終わらせて帰ろうと考えてつくまでの間暇だったので、空間収納から読みかけの本を取り出して読もうとしたが視線が気になって全然本の内容が入ってこなかった。

無視して読んいても、馬車に酔って気持ち悪くなりそうなので読むのはあきらめて眠ろうとも思ったが、このボロ馬車、古いせいかかなり揺れて眠れない。

仕方ないので外の景色を眺めて過ごしてしばらして、ようやく目的地へ付いたのか馬車が止まった。


「ふはぁあ~、ようやく付いたかぁ~」


馬車の外に出れるのがこれほどうれしいことなのかと感動していた。


「おうスレイ、馬車の中はどうじゃったかの?」

「良かったなんて思うなら、おじいちゃんは一度頭をお医者さんに見てもらった方が良いって強くおすすめすることになるけど、それでもいいのかな?」

「………すまんかった」

「まぁ、それはいいんだけどさ。………そろそろここがどこか教えてもらってもいいかな?見たところ草原みたいだけどさぁ。いたるところに魔物の反応があるし、それもかなりの強さっぽいんだけどなんなのこれ?」


 スレイは馬車を降りたときから探知魔法を使って周りを警戒していると、魔物の反応が出るわ出るわ、至るところから魔物の反応があるし、そのすべてがかなりの強さを示していた。


 正直に言ってここに集まっている魔法使いで太刀打ちできるかと言われたら、確実に魔法使いたちが死ぬなっと思いながら、ここに来てスレイはまさかと周りを見回すとここにいるのは全員新人、それも全員魔法使いで腰には剣の一本も差していない。


 それを見たスレイはバッとトラヴィスの方を見ると、申し訳なさそうな顔をされて下を向いている。つまりはそういうことだ。

 何かの理由で魔法使いだけのパーティーが組まれ、しかも相手はかなり強い、このままじゃ不味いと思ったトラヴィスが出掛けようとしていたスレイに助けを求めて来た。

 そんなところだろうなっと考えたスレイは天を仰ぎながら顔を覆った。


「ねぇおじいちゃん、確認だけどここに近接戦闘が出来る人はいるの?」

「………………………………………………………………おらん」

「ねぇねぇ、なんで魔法使いの新人ばっかりなの?しかも何人か見たことあるし、ねぇねぇこの組み合わせ組んだ人バカなんじゃないの?もしかしておじいちゃんなわけないよねぇ?」

「………………………………………………………………すまんの、わしも上からの命令には逆らえんのじゃ……無能な祖父で申し訳ない」

「嘘だろ……」


 さすがにこのパーティーは無いわっと思ったスレイがトラヴィスに訴えかけると、けっこうガチな涙目で謝罪をしてくるトラヴィスの姿に心が痛くなり、慌てて謝り倒したスレイ。

 二人して頭を下げあっているがここで忘れてはいけないのが、すでに魔物に取り囲まれていることだ。


 手短に事情を確認すると、どうやらこの草原にいる魔物の正体は今前にスレイが関わった研究者の逃がした魔物の生き残りが繁殖してしまったらしい。

 なんでも研究の途中で繁殖力の強い魔物が産まれ、扱いきれずにこの草原に逃がしていたことが発覚したらしい。 

 それで討伐隊を組むことになったのだが、その際にとある有力筋の貴族から魔法師団にいる息子に活躍の場を与えろと圧力がかった。

ついでにそれを聞き付けた他の貴族も、魔法師団にいる息子や娘に活躍の場を与えさせるべく口利きを頼んだらしい。それなら仕方ないと予定になかったメンバーを隊に入れたところ、そこにさらにバカどもが余計な口を挟んできたそうだ。


 トラヴィス曰く、自分はいつか魔法師団の団長になる男が、ここで指揮官としての有能性を見せつけるためにも同期だけで魔物を殲滅してみせよう、なんてことを言い出すバカがいたらしい。

 さすがにこれには団長さんもお冠で辞めさせようとしたのだが、そのバカの親が魔法師団への多額の寄付金を納めている大貴族で、ついでに国の上層部との繋がりもあり、上からの圧力をかけられて勝手に申請を通してしまい、護衛として派遣を要求していた騎士たちも取り止められたそうだ。

 そこまで聞くともう同情の念しか出てこないスレイは、ただただ優しい目をトラヴィスに向けるのだった。


「おじいちゃんごめんね。おじいちゃんも十分過ぎるほど被害者だったんだね」

「スレイ!分かってくれるか、このつらさを!」

「分かるさ、分かるともそのつらさ。第一に、今も完全に被害を被ってるもん」


 スレイとトラヴィスが目尻に涙を貯めながら固い、とっても固い握手を交わしあっている。

 周りからは白けた眼を向けられたが、こうなった原因がこいつらなので無視だ。と言うよりも逆に謝ってほしいとすら思えてしまう状況なのだが、こう言うときに限って空気の読めない奴というのはいる。


「おいクズ、俺たちが活躍できるようにちゃんと魔物を引き付けろよ」

「俺たちの援護がなければ魔物一匹狩れないクズなんだから、せいぜい頑張ってくれよ」

「逃げ遅れて怪我しても文句は言うんじゃないぞ」

「じいさんも、こんなとこで死なれちゃ困るし、帰ったら?」


 ニヤニヤと嫌みを言ってくる新人魔法師団の面々に、引き吊った笑顔を浮かべたままのスレイとトラヴィスは心の中で、ぶち殺してやろうかこの野郎!っと心の中で叫んでいた。


 実際にぶち殺した場合二人とも揃って打ち首は確定しているので、そんなことはしないのだが本人たちがそこまで言うなら帰ってもいいんじゃないかと思ったスレイは無言でゲートを開いた。

すると背後からガシッと肩を捕まれる。

後ろを振り向くといつかみた新人魔法師団員たちが、大量の涙を両目にためてすり寄ってきた。ついでに、もう頭が取れるんじゃないかと思うほど頭を高速に下げて、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!っと呪詛のようにいい続けていた。


「………………………」


平民出の新人や下級貴族の嫡男や子女の人たちがすがるような眼を向けていた。

 どうやらあの新人魔法師団の人たちは、魔法使いだけじゃなにも出来ないことを知っているのか、今にも泣きそうな眼を向けられたので、仕方なく残ることにしたスレイがトラヴィスに予定を確認する。


「………ねぇおじいちゃん。どうすればいいの、弱そうなのだけ見繕って後は始末した方がいい?」

「そうじゃのぉ、殺さん程度に魔物を痛め付けてくれんか?難しかったらスレイの言った通りで構わん」

「了解。ってか、そろそろ威圧を解いてもいいよね?」


 ここに来てからズッとスレイは魔物たちを近づけさせないために殺気の威圧を放っているのだが、さっきのムカつく新人たちを襲わせるために何度威圧を解こうと思ったことか。

このミスリルより固い堪忍袋の緒、誰でもいいから誉めてほしい。


「待っておれ、今からシールド張るでの」


 安全を確保するために必要だからなっとスレイも思っているとまたしてもバカが口を挟んだ。


「おいじーさん、なにシールド張ろうとしてんだよ?」

「まさか怖いんですかぁ~。ギャハハハハ!」

「じいさんには刺激が強すぎるしな、仕方ねぇよ死にかけの年寄りなんだし」


 魔物がいる場所でこんなに笑うとか、バカなんじゃないかとスレイとトラヴィスが呆れを通り越して、もはやバカすぎて感心してきた。

 もうこいつらどうなってもいいかも、そう思えてきたトラヴィスがシールドを張るのを止めたのを見てスレイもうなずいた。


「それじゃあ威圧を解くけど、少し荒れるから」

「任せる」


 もうトラヴィスはなにも言わなかった。




 今まで押し潰されるような強い威圧を一身に受けていた魔物たちは、威圧が無くなったのを感じて抑圧されていた補食の本能を解き放った。


「「「「「グラァアアアアアアアア―――――――――――ッ!!」」」」」


 そう、気配を隠すどころか自分たちのいる場所を主張し続けている獲物を食らうべく、魔物たちは一斉に魔法師団の面々が固まっている場所に走っていくが、魔物たちのその行動は軽率すぎた。


 向かってくる無数の魔物を見た瞬間、口元を限界まで吊り上げたスレイは全身から殺気を迸らせながら、空間収納から二振りの木剣を取り出す。


「魔物のみなさん、ボクのストレス解消に付き合ってくださいね」


 そう言ったスレイは殺気を一瞬だけ解くと、次の瞬間にはもうその場所から消える同時に辺りを取り囲んでいた魔物たちが宙を舞った。


「ふぅ、すきっきりした」


 ちょっとやり過ぎたかもしれないなっと思いながらスレイは血に濡れた木剣を軽く振って血を落とした。

 木剣を空間収納に仕舞うと、魔法の準備ができたらしいのでトラヴィスの方に戻ると、極大の炎魔法によって草原は焼け野原に変わったのを見て、スレイは改めてこいつらバカだなっと思った。


 燃える大地を鎮火したトラヴィスたちは、焼け野原になった草原に落ちていたコアの回収をおこなっていたのだが、素材になりそうな物は全部灰になってしまっていた。


「あ~ぁ、全部丸焦げ。もったいね」


 適当に転がっていた木の棒を使って灰になった魔物の中からコアを取り出していた。

 見たところ売ればそれなりのお金になりそうな魔物のが多くいたのに、残念だなっと思いながらコアを拾っていると、横から強い衝撃を受けた。


「うわっと!?」


よろけながらもなんとか踏ん張ったスレイが顔をあげて振り返ると、そこにはニヤニヤと笑みを浮かべたバカがいた。


「おい無能な冒険者、お前コアをちょろまかすなんてことはするなよ?」

「これは俺たちが狩った魔物だからな、なにもしてないお前に分ける義理はないんだよ!」

「もしちょろまかしてたりしたら、お父様に言いつけるからな?わかってのか無能!」


 本当に殺してやろうかなっとスレイは今日何度目かの殺意を心の中で燻らせていると、言い返さないことをいいことに次々と言葉を投げ掛けてきたが、スレイはそれを聞かなかったことにして無視を決め込んでいた。

 だが、そこに運悪くそこに誰かが来るのを感知したスレイが顔をあげる。


「おいクズ聞いてんのか!」

「すみませんが少し静かにしていてくれませんか?」


 魔物ではない、そう感じたスレイはすぐに祖父の方に走っていく。


「おじいちゃん!誰か来る」

「わかっておる、ここらは冒険者の狩り場が近いからのう、先ほどの爆発を見てやってきたのかもしれん」

「いや、それにしては殺気が駄々漏れなんだよ。明らかに敵な気がする」

「──ッ!総員杖をとれ!盗賊かもしれんぞ!」


 トラヴィスが指示を出すと同時に魔物を狩ったことに気を大きくしているバカどもがまたしてもバカをした。


「なに慌ててんだよ!」

「今の俺たちにかかりゃ盗賊なんて瞬殺だね」

「ぶっちゃけ、オレら最強だしなぁ!」


 バカだバカだと思っていたがここまでバカだとは思っていなかったスレイは、もうこんなバカを気にかけるのも億劫になってきたので、空間収納からシールド付与型のアラクネを取り出して粋がっているバカを除いていつでもシールドを張れるように準備している。

するとそこに馬に乗った男たちがやって来た。


「お頭!当たりでっせ!魔法師団のボンボンがわんさかいやがる」

「よぉ~し、俺たちは夜霧の旅団だ!抵抗する奴らは殺す!大人しくしてろよ!」


 こっそりとスレイはトラヴィスに確認してみると、どうやらこの辺りに出没する盗賊団らしくかなりの懸賞金が掛けられた奴らで、残虐無道を地で行くことで有名だそうだ。

 その名前を聞いて大半の団員は震え上がったが、正直に言って倒せない相手でもないと思ったが、ここは彼らの無事が兎に角大事なので相手にするよりも隙をうかがって逃げた方が先決か。

なんにせよ、なにもしなければひどい結果にはならない………そう、なにもしなければだが


「何が殺すだ!俺たちをなめんじゃねぇぞ!」

「テメェらなんてオレらが討伐してやるぜ!」

「オラオラ!かかってこいやぁッ!」


 はいバカがいました。

あえて挑発しながら前に出ていったバカたちを前に、盗賊さんたちは額に青筋を浮かべて剣を抜きました。

 もう完全に戦闘が確定したのでスレイは笑顔で関係のない団員に付けたアラクネのシールドと、ついでに自分とトラヴィスと一緒にあのバカたちにもシールドを張ってから音を遮断するサイレンスを発動させる。

すると盗賊たちの剣がシールドに当たって跳ね返ると、バカたちは縮こまってから剣が当たらないことに気づき叫ぶ。


「ハッ!びびらせやがって!お前ら魔法の詠唱だ!」

「そんな魔法の前じゃ無力なんだよカス!おい!こんな奴ら蹴散らすぞ!」


 バカどこが叫ぶが音を消しているので他の団員には聞こえない。

 仲間からに返事がかえって来ないのに気がついたバカたちは、安全なシールドの中にいる仲間を見て叫び声をあげようとするが、それを遮るようにスレイが声を放った。


「君たちさぁ、いい加減にしなよ?なんで盗賊たちを挑発するかな、君たちのせいで彼らが危険な目にあってるって自覚ある?」

「こっ、これスレイ!なんてことを言うんじゃ!」


 いろいろと我慢の限界だったスレイが怒りながら言葉にすると、バカたちが反論した


「あ゛ぁ!?」

「無能の癖になに粋がってんだゴラ!」

「お前なんか俺たちがいないとなにもできないクズだろうが!」

「お父様に言いつけてやるぞ!」


 言い返してきたバカどもにスレイは笑顔を浮かべながら話を続ける。

 ってか、お父様って誰やねん。


「そっか、それじゃあ君たちを守っているこのシールド、消すけどいいんだね?」

「あ゛ぁ!?なんでお前が消すんだよ!これはこいつらの誰かが張ってんだろ!」

「はぁ!?お前が張ってるんじゃなのか!?」

「いやお前が──」


 ここでバカたちが今自分たちを守っているシールドが、散々無能と罵ってきたスレイが張っているのだと知り慌て始める。

なぜならバカたちは安全なシールドの中で魔法の詠唱をして盗賊たちを倒そう、そう考えていたがそのシールドが消される、その恐怖に震えながら叫ぶ。


「まっ、ま──────」

「じゃあ、頑張ってねぇ~」


 スレイ、渾身のいい笑顔と共にシールド範囲を狭めてバカたちだけをシールドの外に、出した瞬間悲鳴と叫び声が上がった。


 しばらく盗賊たちによるバカたちのリンチショーを見学していた。

はじめは死なない程度に剣や槍で突かれ、泣き叫んだら拳で殴られたりしていたがスレイは、自分なら爪を剥いだり、焼いたナイフの先を指と爪の間に指したり、爪先から順に輪切りにしたり、考えただけでも数十種類の拷問が思い当たる。

まぁ、そのほとんどは師匠から教わったことだ。

ついでに、あのバカたち失神する度にスレイのアラクネがちょっと効果の強い気付け薬をプスッと指されるため気絶できないため、もはや泣き叫ぶしかない。

他の団員はというと、何人かは目を反らしている者もいるが大半は狂ったように笑っている。

 どうやらあのバカたちにいろいろとやられていたんだろうなっと思っている。


「おい見ろよこいつ失禁しやがったぞ!」

「こいつもだぜ、情けねぇな!」

「ほらほら僕ちゃんたち、さっきまでの威勢はどこ言ったんでちゅかぁ~」


 盗賊たちが殴られ過ぎて膨れ上がった顔をしたバカどもを笑っている。


「すっ、スレイそろそろ助けんと死んでしまうぞ!」

「そうだね。──エクスヒーリング」


 スレイが最上位の回復魔法で全員を癒すと、バカたちが叫ぶ。


「おっ、おいお前ら!みっ、みみみっ、見てないで助けろ!」

「たっ、助けないと全員死刑だぞ!!それでもいいのかッ!?!」

「お、おおおっ、お父様が黙ってないぞ!」


 どうやら懲りていないらし、盗賊たちは魔法で回復したバカどもをもう一度殴ろうとしたがスレイがアラクネを使ってシールドを張ったことで防いだ。


「助けてもいいけど、その前に君たちの犯した罪を贖おうか。つまりは謝罪さ」

「俺たちになんの罪があるってんだ!」

「贖うのはお前だ!この無能が!!」

「そうだぞ!こんなことをしてお父様が黙ってないぞ!」


 せっかく助けるチャンスを棒に降ったバカたち、これはもう少しお仕置きが必要だなっと思ったスレイ。


「そうかそうか、全く反省していないと。それなら──パワーブースト」


 スレイは筋力増強魔法を盗賊たちにかける。


「みなさん、もう一回お願いしますね」

「なにバカなこと言っとるんじゃ!?今度はあやつらが確実に死ぬぞ」

「大丈夫だよおじいちゃん。死にそうになったらエクスヒーリングかけて治すから。あっ、そうそう、ボクは回復系統の魔法はそこまで得意じゃないけど、時間が経ちすぎた傷じゃなければ後遺症は多分残らないと思うから安心してね」

「どこが大丈夫なんじゃ!?」


 その会話を聞いたバカたちが震え上がる。ついでに下半身からは出るものがすべて出てしまっている状態で非常に汚いことになっている。

 まぁ、ここまでやればもういいかなっと思ったスレイは、一人シールドの外に出る。


「仕方ないから助けてあげるけど、その代わりしっかりと謝ろうか」

「てめぇなに言ってやがる!」

「大丈夫、わかっていない君たちのためにちゃんと教えてあげるからね。まずは一つ目ね、人の忠告を無視しして自分たちだけで魔物の討伐に来たこと」

「だからなに言って────」


 ドスッ!近寄って来た盗賊の一人の胸にスレイは手刀を突き刺す。吐き出された血がスレイの髪を赤黒く染め上げる。


「次に二つ目──」

「やっ、野郎!」

「うるさいな」


 スレイの近くで倒れていたバカの一人のマウントポジションを取っていた盗賊が立ち上がろうとした瞬間、スレイの鋭い蹴りが盗賊の両足を粉砕し、蹴り抜いた脚を引戻しながら踵落としで盗賊を縦に切断した。

 あふれでた血と臓物が倒れていたバカの上に降り注いだ。


「ギャァアアアアアアア!?」

「だからうるさいって。それで二つ目、目上の人に対しての横暴な態度」

「何人かでまとめてかかれ!」


 複数の盗賊がスレイを取り囲むが、そんなの関係ない。


「三つ目、自分の実力を誇示して相手を見くびったこと」


 指に竜爪を発現させ、向かってくる盗賊たちに向けて闘気の斬激を放った。これはユフィとライアの風牙爪に、前にリーフに見せてもらった闘気の飛ぶ斬激を会わせた技だ。

 飛ぶ爪激を受けた盗賊たちは細切れのブロックに成り果てると、今まで人だったそれがバカたちに降り注ぎ、再び悲鳴が上がったが気にしない。


「四つ目、わざわざこいつらを挑発して無意味な戦闘を引き起こした」


 盗賊たちが逃げ出した。スレイは即座に放っていたアラクネの目を使って盗賊たちの足元にゲートを開き、上から下に落とした。

 盗賊たちは逃げられない。


「五つ目、自分たちが撒いた騒ぎの種を人に刈り取らせてること」


 手足を切断し首に手刀で貫き、背後から迫ってきた戦斧を構えた大男の一撃をかわして背後から首を締めてへし折り、大男にグラビティーをかけて他の盗賊たちに向けて投げると綺麗な血の華が地面に咲いた。


「六つ目、他の団員の反応を見る限りいろいろと横暴な態度を取ったみたいだな、人を見下したこと」


 上段に構えた大剣を振り上げて走ってくる男を縦に切断し、向かってくる盗賊の胸に手刀を突き刺し心臓を掴んだまま手を貫通させる。どうやら心臓を抉ってもまだ生きているらしく、微かに動いている心臓を見てスレイは一瞬の迷いもなく握り潰した。


「七つ目、人のことをよくも知らずに無能やクズと罵ったこと」


 スレイは最後に残った頭と呼ばれた男の前に行く。


「やっ、やめろ!来るな化け物!?」


 化け物と罵ってくる頭と叫んでいる男は、地面に腰を落とし下半身からは大量の水溜まりを作っているそいつの頭を掴み、バカたちの側に引きずっていく。


「わかったかな?それが君たちの罪だ。よく覚えておけよ」


 スレイは殺気を放ち脅すとバカたちが一斉に首を縦に降った。


「最後はあなたですけど」

「たっ、頼む!助けてくれ!死にたくない……死にたくないんだ!!」

「えっ、イヤですけど?」

「金か、それとも女か!?女ならアジトにいる!拐ってきたばかりの生娘だ!お前にやるから」

「だから要らないですって、それに拐ってきた女性に手を出したらボクまで犯罪者だ。それに、あなたは命乞いをした相手を助けたことがあるんですか?どうせ侮辱して、犯して、狂わせて、最後は殺して終わり、なのにあなたは死にたくなから助けろ?ずいぶんとまぁいい根性してますね」

「わっ、分かった!罪は償う、アジトの場所も教える!だから助けて」

「仕方ないですね。それじゃあアジトの場所は何処なんですか?」

「あっ、あの森の奥だ、そこにある、見張りもいない、中の物は好きにしてくれて構わないだから──」

「えぇ、ありがとうございました」


 いい笑顔を浮かべながらスレイは男の心臓を抉り取ると、その心臓をバカの手に乗せる。


「今日のことを誰かに話したり同じことをしたときは、次は自分がこうなると思えよ」


 最後の脅し文句を言うとバカたちは首がもげるのではないかと思いほど首を縦に降った。

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