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久しぶりの帰郷とバカな奴ら ①

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 ユフィの叔父の襲撃から約一週間、改めて叔父のマルスと祖母のアシリアと、ついでに息子と止められなかったからとユフィの祖父のマリウス──ここで二人の母方の祖父母全員と対面したことになった──が謝りにきたのだが、そんなことよりも──そもそも一番の被害者はなんの関係もないはずなのに、アシリアによって蹴り飛ばされたマルスによって壁に大穴を空けられたご近所さんへだろう──ユフィには気になることがあった。


 それは祖父がいい年齢だと言うのに、叔父のマルスよりもさらに一回り大きいと言う点だ。

 ユフィは今まで初めて理解した。なぜ母のマリーがあんなに怖い顔のゴードンと結婚したのか、つまりは血筋と言うことなのかもしれないな、そう思いながらユフィとゴードンのことを知っているスレイたちは、一様になにかを悟ったような顔をしてマリウスとマルスに挨拶をしていたのだった。


 さて、ここまでが約束の週末までの間に起きたことで、その間にスレイたちは久しぶりに実家──はまた別のところなのだが、家族が今いるところが実家なのだと言うのなら中央大陸なのかもしれない──に帰ることになったので、家族のみんなになにかお土産を買って帰ろうと思いいろいろと探していたお陰で、すぐに過ぎていってしまったが、それでもいい物が買えたので良かった。


 街の出口の門でジュディスとミーニャ待ち合わせをしているスレイたち──トラヴィスは仕事があるらしく不参加となっている──は、開いている門の端で街に出入りする商人の馬車や、冒険者らしき人たちの姿を見ながら待っていると、奥の方からミーニャが大急ぎでやって来た。

 久しぶりに実家に帰るからなのか、少しだけ気合いを入れてセットしたであろう髪は急いでいたせいで少し乱れていた。


「ごめんなさい、実家に帰るっていったらお土産頼まれちゃって、なかなか解放してもらえなかったの」

「大丈夫ですよミーニャさん。お義祖母様もまだ来てませんから」


 肩で息をしているミーニャの背中を優しく撫でているノクトが、不安そうにしていたミーニャにそう語りかけている。

 そんな二人を横目に、スレイは懐から懐中時計を取り出して時間を確認してみると、約束していた時間を五分ほど過ぎてしまっていた。


「約束の時間、とうに過ぎてるけどおばあちゃん遅いな……」

「……ん。確かに遅い。お婆ちゃんに何かあったのかもしれない」

「ライア殿、それはいささか不謹慎ではありませんか?」


 リーフの言っていることは確かにそうなのだが、時間を指定してきたのはジュディスの方なので遅れるとは考えづらい。

 ならばライアの言った通りなにかに巻き込まれたのかもしれない、そう思ったスレイは空間収納からレイヴンを取り出して腕に止まらせる。


「ちょっとレイヴン飛ばして探してみるよ」

「なら、私たちも出した方がいんじゃない?」


 ユフィがそういうとオールを取り出し、それを見たノクトたちもスパローとカナリア、それにセキレイを取り出したところでラピスがうらやましそうな視線を向けていた。

 それを見たユフィがラピスに声をかけた。


「ラピスちゃんの分のゴーレムもちゃんと作ってるからね~」

「ありがとうございますユフィさま。ですが、わたくしに気を使っていただかなくても平気ですよ」

「いいのいいの。私とスレイくんが勝手にやってることだからね~」


 話を区知りスレイたちが一斉にゴーレムを飛ばそうとしたその時、スレイたちのすぐ側にゲートが開かれ、そこからジュディスが出てきたのを見たスレイたちは、空へ放とうとしていたレイヴンたちを慌てて止めると捕まえると、遅れてきたジュディスがスレイたちに謝罪をした。


「ごめんなさい、この子たちが直前まで行くのを渋ってて連れてくるのに苦労したわ」

「あの子たちっていったい」

「にぃ~に――――――――――――――――――――ぃ!」

「ぐふっ!?───って、スーじゃないか!」


 なにかが高速の弾丸になってスレイの腹部に向かって飛んできた。

 とっさに腹に力を入れて受けきったが、それでも多少にダメージが入ったのを感じて、子供にしてどんな脚力を持っているのか、成長したスーシーの戦闘力が少し気になってしまったスレイだったが、とりあえず抱き締めたままのスーシーをおろした。


「元気だったかスー?」

「うん!おばあちゃんにまいちにおいしいものいっぱいたべさせてもらったの!だからげんきなの!」

「そうなのか。それは良かったよ。ところでスー、お姉ちゃん。アニエスは一緒じゃないのか?」

「ここにいるわよ。あんたの目は節穴の?」


 そんな声をかけられたスレイはスーシーの後ろにいた犬耳の少女のことを見るが、こてんっと首をかしげたスレイがもう一度周りを見回してからもう一度少女のことを見て、もう一度首をかしげて見せた。

 すると犬耳の少女が怒りに震える。


「あんたねぇ、わたしのことを忘れたとは言わせないわよ!アニエスよ。あなたに助けてもらった」

「あっ、いや………えぇっと………ごめん、前会ったときは痩せ細ってたから見違えてわからなかった」


 別に太った訳ではないのだが、あのときのアニエスは本当に痩せ細っていたが今では健康そのもの、血色もよくほどよく肉もついているし、前は薄汚れていて伸び放題だった髪もきれいに切り揃えられ、艶やかな灰色の髪に黒い三本のストライプが入ってた。

 ついでに言っておくと、あのときにはわからなかったが胸も結構ある。

 それは同じ歳くらいにノクトやライア、それにラピスの三人よりもあるのだ。

 そのためか三人が自分の胸を押さえてからガァーンっと影を落として落ち込んでしまった。


 なぜ女の子って胸の話になるとこうも暗い影を落とすことになるんだろうなっと、スレイが思いながら時間もそんなにないので早く行こうと言いった。


 みんなで門を出て外に出ようとしたその時、街の中から大きな声をあげてやって来る人物がいた。


「スレイ!待ちなさい!スレイ!」


 名前を呼ばれたスレイとそれを聞いたみんなが声のする方を見ると、なにやら大慌てで走ってきたトラヴィスの姿がそこにあった。


 いい歳なんだからそんなに無理すると体に悪いんじゃないか、そう思ったスレイたちだったが、なにやら急いでいるようなのでなにも言わなかった。


「……お爺ちゃん大変そうだから、スレイが行ってあげたら?」

「あぁ、そうだなライア。ちょっと話し聞いてくるから待ってて」


 こう言うときは絶対にろくでもないことだと決まっているが、あんなに走っているお爺ちゃんがかわいそうなので行ってあげることにした。


「おじいちゃん、どうしたのそんなの急いで」

「よかった!すまんがスレイ、今からわしと一緒に来てくれ!」

「いや、今からみんなで出掛けるんだって。帰ってからじゃダメなの?」

「ダメなんじゃ!ほれ行くぞ!」

「あっ、ちょっ、おじいちゃん!?そんな引っ張らないで!」


 なんだか凄い力でスレイのことを引っ張っていくトラヴィスに、間の抜けた声をあげるスレイだったがそんなことで止まる訳もなく、トラヴィスが開いたゲートでどこかへと消えていってしまった。


 それを見ていたユフィたちは、子のままここで待つのもあれなので門番の人に伝言だけを残して行くことにしたのだった。


 久しぶりの帰郷──と言っても暮らしたのはほんの数ヵ月だが、それでも家族のいる大切な場所──に少し浮わついた足取りで街の中を歩いているミーニャと、なんでも旅行は久しぶりらしいジュディスも観光地ノーザンスと言うこともあって、足取りが浮き足立っている。


 ついでにアニエスは興奮して勝手にどこかに行こうとしたスーシーを抱き抱えて止めると、腕の中で暴れている幼い妹の扱いに困惑しきっているようだった。


「ねぇねぇ、私温泉って入ったことないのよ。後でゆっくり入ってみたいの」

「じゃあ後でいいところ知ってますから、一緒に入りにいきましょうね」


 そんな会話をしていると領民の人たちがミーニャの姿を見て次々と領主さま、つまりはフリードのためにと手土産を手渡される始末だった。

 そんな人混みを歩きながら屋敷についたユフィたちは、改めて領主館としてフリードが建てた屋敷を見て感心した様子のジュディスと、こんな大きな屋敷は初めてと言った感じのアニエスが驚き、初めての温泉街、さらには初めての旅行と言うことで興奮していたスーシーが大きなお屋敷を見てさらに大興奮、お姉ちゃんは妹のパンチやキックを受けて若干涙目だった。


「ミーニャお嬢様!おかえりなさいませ!」

「お嬢様はやめてください。それより、お父さんとお母さんは屋敷の中にいる?」

「はい!こちらですお嬢様!それに若奥様方もどうぞ!」


 そう言われて案内されるときアニエスがショックを受けた顔をしながら歩いていた。

 それを見たユフィたちがピィンっと言った感じでなにかを感じ取ったらしいが、今は聞かずにスレイのいるときにでも聞いてみようと思ったが、あの朴念仁には全く自覚がないので聞くだけ無駄かもしれないと心の中で思っていた。


 屋敷の中に入り前にこの屋敷にいたときにお世話になった老執事の案内で通された部屋に行くと、そこにはスレイの母ジュリアだけではなく、ユフィの母マリーとクレイアルラが一緒になってお茶をしていた。


「あらミーニャ、それにユフィちゃんたちもお帰りなさい」

「お母さん、ただいま。これ向こうのお土産だよ」

「あら、ありがとう。懐かしいわね。ここのお菓子、お母さん好きだったのよ。マリーも懐かしいでしょ?」

「あらぁ~、本当に懐かしいわぁ~」


 ジュリアとマリーの二人が嬉しそうに話しているのを黙って見ていたユフィたちだったが、そこにジュディスが話しに入ってきた。


「あらあら、二人とも年を取ったわね~」

「えっ、お母さん!?なんで!?」

「あらぁ~、おばさまお久しぶりですぅ~」


 ジュディスの登場に驚いているジュリアと、いつものようにのほほんとした感じで挨拶をしている。

 実は前日にクレイアルラに伝えておいてもらった。だがジュリアにはジュディスが来ることは伏せてあったらしい。

 ついでに帰ってきたことを知って仕事をほっぽり出して降りてきたフリードが、ジュリアからジュディスを紹介されて固まったりとしたところで、マリーがラピスとアニエス、それにスーシーにライア──メルレイク家にはライアのことをまだ報告していなかったのを忘れていた──がいることに気がつき、ついでにフリードとジュリアもいったいどういう関係なのかと訊ねて来た。


「……始めまして、私ライア。スレイのお嫁さんになる予定です」

「わたくしはラピスと申します。みなさまに助けていただき一緒に暮らしています」

「アニエスです。この子はスーシーで、えっと、奥様のお屋敷で住み込みのメイド見習いをしています」

「スーっていいます!」


 四人が挨拶を済ましたとことで今度はフリードが辺りを見回しながら、ここにいると思っていたはずの人物が一人足りないことに気がついた。


「なぁユフィちゃん。うちスレイはどこにいるんだ?まさか、あいつが何かやらかしてみんなで家に家でしてきたとか!?」

「それはないですよ~。みんな仲良く暮らしてますよ~」

「スレイ殿でしたら急用で遅れてくるだけですから、お義父様はご心配なさらずとも大丈夫ですよ」


 ユフィとリーフのその言葉を聞いて安心した様子のフリードに、ジュリアが優しくその肩に触れている。うらやましい限りの様子だったが、今度はユフィがマリーに疑問を口にした。


「ねぇお母さん。何でここにいるの?」

「お母さんねぇ~、家でしてきちゃったのぉ~」

「えっ………えぇええええええ――――――――――――――――っ!?」

「こらマリー、そんな冗談言うもんじゃないでしょ?」

「あぅ、もぉ~妊婦いじめ反対ぁ~い」


 ポコンっとジュリアが杖の先でこずくと、大袈裟にマリーが怒る素振りをしたが全く起こっている様子もなく、冗談を言っていることはわかるのだが、そんなことよりも気になるのがさっきのマリーの発言だった。


「そんなことよりもお母さん!今のって冗談だよね!ねぇ!」

「冗談よぉ~、お母さんねぇ~、寂しいからパーシーちゃんとお泊まりに来てただけなのぉ~」

「えっ、なんで?お父さんはどこ行っちゃったの?」

「お父さんは遠くの街にお仕事でお出掛けしちゃったのぉ~、でねぇ~、お母さんに何かあるといけないからぁ~ってことで、ルラがここに連れてきてくれたのぉ~」


 マリーの話を聞いてそう言うことなのかと、安心して胸を撫でたユフィが改めてフリードとジュリアにお礼をいってみると、二人からは気にしなくていいと言われてしまった。


「そもそも、この屋敷オレたちだけじゃ広すぎるからな、今さら一人や二人増えたところで全く問題はない」

「ミーニャちゃんも家を出ちゃったし、リーシャちゃんとマリアちゃんは小さいからお部屋も二人で一つのお部屋を使ってるのよ」


 前に聞いた話だが、フリードが冒険者として今までに稼いで貯めたポケットマネーで建てた屋敷だ。

 土地も合わせてかなり広さを有しており、それに比例して屋敷の部屋数も多く、住み込みの使用人の部屋を合わせてもかなりの部屋が余っているらしい。なので今さら一人増えようが問題はなかった。


「ねぇジュリア、そんなことよりもリーシャは?私孫の顔を見に来たのに」

「庭でマリアちゃんとパーシーくんと遊んでるわ。案内してあげるからついてきて」

「ちょ、ジュリアさん!お腹の子とも考えて!お義母さんはオレが案内するから」

「あら、大丈夫よフリードさん。これで四度目なんだから体の状態はよくわかってるわ」

「相変わらず模様ですが、あなたもこれから私と冒険者の仕事がありますよね?早く準備しなさい」

「すまんルラ、今日は休ませて──」

「フンッ!!」


 ゴシャッ!という鈍い音が響いた。休ませてほしいというフリードの発言にキレたクレイアルラが、杖の宝珠でフリードの後頭部を殴打、よほど強く殴ったからなのか気を失って倒れた。


「それでは、フリードを少しお借りしていきますね」


 気を失っているフリードを引きずっていくクレイアルラの後ろ姿はかなり恐ろしかったと、みんな声を揃えていったのだった。


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