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単独での依頼

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 ジュディスとアシリアの二人を見送ったスレイは、すぐに家の中に入りユフィにノクトたちのことを説明し、みんなに必要な物を用意してもらうことにした。

 キッチンに入ったスレイは、二人の使っていたカップを洗っていたユフィに声をかけた。


「ユフィ、ちょっと頼まれてもらいたいことがあるんだけど、今って構わないかな?」

「ん~、いいよ~。ちょうど洗い物も終わったところだし。それよりもみんなは?帰ってきてたんじゃなかったの?」

「それがさぁ、みんな仲良く泥だらけになってたから今外で水浴びしてもらってる」


 今のノクトたちの状況を知らないユフィが、どういうこと?っと、スレイに説明を求めてきたためスレイは先程ノクトたちから聞いた話しをユフィに説明した。

 すると、ユフィはすぐに事態を理解してくれたらしくノクトたちにタオルを持っていってくれた。


 外に行ったユフィを見送ったスレイは、いくらタオルで拭いたとはいえ濡れたままじゃ風邪を引いてしまうので、すぐに暖めれるように風呂を沸かしておく。

 沸かすと言っても、スレイが魔法でお湯を作り出してそれを浴槽に満たせば良いだけなのでお手軽だ。


 スレイ宅の浴槽は普通の家庭の物よりも広い。

 元はギルドが所有し管理していた家で、本来なら何人ものパーティーメンバーで使うための家なので、それに応じて部屋の数も多い。

 そのため必然的に共同で使う場所も大きくなるので、風呂などはちょっとした大浴場になっており十人単位で入ってもなんら問題はないだろう。


「さてさて、掃除はアラクネたちがやってくれてるし、お湯を沸かしますか」


 そんな浴槽にお湯を満たすのは家に設置してある魔石ではすぐに魔力が切れてしまうが、そこは魔法使いであるスレイたちが自分で生成すればいい。

 お湯で浴槽を満たしたスレイは、浴槽のお湯の温度を確認するべく手を入れて温度を確認する。


「ちょっと熱いか………いや、水浴びで冷えた体にはちょうどいいか」


 ノクトも一緒に入るので細かい温度調整は任せようと考えたスレイは、みんなを呼びに行くべく立ち上がったその時浴槽と脱衣所を仕切る扉が開いた。

 待ちきれずに様子を見に来たのかと思い、入ってきた人物に向けてスレイが声を掛ける。


「ごめん、すぐにでるから──って、うぇええっ!?」


 驚きの割に声がうわずってしまったスレイの視線に映ったのは、タオルも巻かずにまさに一糸まとわぬ姿のライアだった。


「……大丈夫、問題ないが」

「問題ないわけないだろ」


 恥ずかしさと呆れからどんな表情を撮っていいかわからなかったスレイは、取り敢えず空間収納から取り出したコートをライアの肩へかけた。


「……なにするの?」

「なにするもなにも、少しは隠せ」

「……これからお風呂なのに?」

「人が用意してるのに裸で来るな。少しは羞恥心を覚えて」


 なるべくライアの身体をみないように脱衣所へと移動したスレイは、そのまま部屋を出ようとするとライアから呼び止められた。


「……スレイは、はしたない女の子は嫌い?それとも私の裸、見飽きちゃった?」

「そんなことはないけど、我慢する身にもなってくれよ」

「……それじゃあ、我慢する必要はない。押し倒してくれても問題ない。むしろウェルカム!」

「はいはい、それじゃあ風邪を引く前にちゃっちゃと風呂入っちゃって。コートはボクが出たら洗濯かごの中にでも入れといて」


 脱衣場を出てしばらく歩いたスレイは壁に手をついてうなだれていた。

 ダメだあの娘、発情期はとうの昔に終わっているはずなのになんでこんなにもエロい娘になってしまった。っと、ライアのナチュラルエロっ娘化が進んでいることに愁傷を感じていた。

 これって旅の途中でライアの両親を見つけて、こんなふしだらな娘にしてしまったら殺されるのではないだろうかと心配になった。

 そもそもの話しライアは捨て子だと聞いたが、理由はわからないが元々数の少ない少数部族である竜人族が子供を捨てるなど思い浮かばない。

 こればっかりは本人たちに聞いてみる以外がないのかもしれないな、そう結論をつけたスレイはそう言えばともう一つの疑問を口にした。


「リーフたちどこ行った?」


 たった一人ライアが風呂場に来た理由はなんだったのだろうかと思っていると、リーフたちがそろって毛布を被ってきた。ついでにライアの衣服を手にもって。


「スレイ殿、お願いですからライア殿に羞恥心か恥じらいの二つの言葉を教え込んでください」

「お願いしますお兄さん。でないと、そのうちにマジで外でも脱ぎ出すかもしれません」

「スレイさま、どうかライアさまを犯罪者にだけはしないでくださいね」


 問題はかなり深刻化していたようだった。


 ⚔⚔⚔



「えっ、魔物の調査ですか?」


 この日、スレイたちがギルドに行くとなぜか早々にこの街のギルマスに、スレイだけが呼び出しを食らい、ギルマスの執務室に連れていかれると、そこで聞かされたのがスレイを指名した依頼だった。

 スレイの向かい側に座っているのがこの街のギルドマスターのジャルナ、お歳六十歳のおばあさんだったが、見た目のことだけを言えば完全にヤクザの極妻だった。


「お前さんの腕を見込んで頼みたいんだが、自信がないなら別のに回すが」

「いえ、別に受けるのは構わないんですけど、いきなり調査と言われてビックリしただけです」

「そうかい。だがまぁ、あえて付け加えさせてもらうと、お前さんに頼みたいのは、正確には魔物の研究家の屋敷の調査とそいつの研究していた魔物の資料を取ってきてもらいたい。魔物の調査は建前さ」


 ジャルナの話を聞いたスレイの表情が強ばった。


「屋敷の調査と資料を盗ってくるって完全に犯罪者のそれじゃないですか。嫌ですよボクは、人様のお家に不法侵入して窃盗なんて、憲兵に捕まって犯罪として投獄されるなんて、あそこのご飯すっごく不味いんですから」

「なんだい、牢屋に入るような経験があるのかい、その歳で?」

「呼ばれて登城したはずなのに、お抱えの騎士たちに喧嘩を吹っ掛けられたので素直に買って全滅させたら、いつの間にか反逆罪とか理由をつけられて投獄されて、結局のところ無罪放免で無事出所しました」


 簡単に説明したスレイの投獄された理由を聞いて、ジャルナは目を細めながら引いた顔をしていた。


「………まぁ、お前さんが心配してるようなことはないから安心しなさい。その研究家ならすでに逮捕済みでな、森にとはいえ作られた魔物を放ったんだそれ相応の罰が下るんだが、一つだけ問題があってな」

「問題ですか?話しを聞いている限りではそんなこと無さそうですけど」

「それがあるんさ。そいつの逃がした魔物の資料だ。証拠も合ってすぐに逮捕は出来たんだが、なにせ魔物の数が多くて資料を見ない限り把握できなくてね」

「それで屋敷の調査と研究資料をとってこいなんて依頼をだしたんですね」

「まぁそういうわけなんだが、そいつの研究所が森の奥な上に、研究所の中には魔物に警護させてて中に入れないと来た」

「よくそんなやつ逮捕できたな」

「簡単さ、街に買い出しに来たところを付けて一人になったところを捕まえた」


 なんとも間抜けな捕まりかただった。

 詳しく聞いてみると、正直に言ってバカとしか言い様のない捕まりようだったらしく、なんでも女性騎士の渾身の色仕掛でホイホイ付いていって、そのまま手枷をかけられてしまったそうだ。もう一度言おうバカじゃねぇか。


「その依頼を受けますが、ボクの仲間は連れていっても構いませんか?」

「やめといた方がいいぞ。その研究家、スライムだけじゃなくてローパーや、触手生物なんかも育てていたらしいんだが、そいつら、女を見ると別の意味で襲うらしいんだ」

「あの、そいつもしかして、エロい目的のために魔物を育ててたってことはないですよね?」

「否定はできんな。まぁ魔物は殺処分が確定しているからな、殺してくれても構わんし最悪研究所を焼いてしまっても構わん」

「………わかりました。それじゃあ今からでも行ってきますよ」


 ジャルナに頭を下げて部屋を出たスレイは、依頼書の貼られたボードの前にたむろっていたユフィたちに声をかけて、ギルドマスターから受けた依頼についての説明をする。


「あのスライム、そんな人が作ってたんですか斬りますか」

「……変態研究家の家、潰しに行くなら手伝う」

「殺るなら殺りに行きましょう。最大級の火力で灰も残しません」

「この二刀の刃があの悪しき魔物を切り裂きましょう」


 口元は笑っているのに目は笑っていないリーフ、いつもは眠たそうな目がキツくつり上げらたライア、黒いオーラを撒き散らしているノクト、辻斬りのような顔をしているラピス。


 四人ともあの研究家の犠牲者とも言えなくはないので、こうなるのも当たり前かもしれないがなんだが反応が過敏な気がした。

 もしかしたらマッドスライム以外にも魔物がいたのかもしれないが、聞くに聞けない雰囲気なのでスレイとユフィはあえて聞かないことにした。

 だってみんななんだか暗黒面にでも落ちた。

 あの宇宙にいる正義の戦士のような顔をして、完全にうら若き女の子のして良いような顔をしていない。


「みんなも行きたいみたいだけど今回はボク一人で行くから、みんなはおとなしく留守番をしているか別の依頼を受けに行って」

「「「「えぇ~!?」」」」

「私、みんながここまで息ぴったりになるようなところ始めてみたよ」


 ユフィが意外そうな顔をしてみんなのことを横目で見ながら、スレイの方に視線を向ける。


「なんでスレイくんだけなの?」

「みんなを連れてくと施設は吹っ飛びそう」

「潰しに行くんだよね?」

「証拠も消したら意味ないからね」


 確かにやりそうだと、今もノクトたちなら確実に潰しに行くだろいと想像が固くなかった。


「それじゃあ、なんで私はダメなの?」

「ボクにキレたユフィを止める力はない。後、ボクがキレたら何するかわからないから」


 恋人が目の前で触手の魔物に嬲られる姿など見た暁には、この世界を滅ぼす勢いで暴れたくはないと冗談めいた口調でスレイが言うと、みんなは少し考えた。


「「「「止めてください!わりとガチで世界が滅ぼせる魔法が使えるから、もう無理についていくとは言いませんから!」」」」

「みなさま、そんなに必死になって止めるようなことなのですか!?冗談ではなく!?」


 すがり付くようにしてスレイのことを止めに入ったユフィ、ノクト、リーフ、ライア。


 だってみんな知ってるもの、わりとマジで本気を出せば街一つどころか国一つを消し飛ばしたり、いつの間にか真上に現れて光の柱で人を消すことの出来る特大の殲滅用の魔法の存在を。

 一度暴走すればすべてを飲み込むまで止まることのできない、まさに超危険な魔法を使うことの出来るスレイだ。


 その事をまだ知らないラピスは、ユフィたちがそんなに必死になって止める理由がなんなんのか、気になってしかたがないようだが、そこは聞かない方が良いだろうとユフィたちがあえて言わないことにした。

 だってそのうちに見る機会が有るかもしれないからだ。


「分かってくれて良かったよ。それじゃあ、みんなの仇を取りにでも行ってきますね」


 そう言って一人でギルドを出たスレイ、聞いた話しによるとユフィたちはこれからショッピングに行くそうなのだが、なんでも買いに行くのはスレイの服、どうやら黒以外を着せたいらしい。


 そんなわけで一人街を出たスレイは、いつものように竜翼を広げてギルドマスターのジャルナから受け取った地図で方角を確認しながら、件の研究家の研究所の場所を目指して飛んでいた。

 飛んでいる最中、スレイはふとあることを思い出した。


「そう言えば、最近じゃボク一人だけで依頼を受けるってことしてなかったよな」


 冒険者になった時にはユフィの体調の悪い日などは一人で魔物討伐に行ったりしたが、最近ではユフィだけでなくノクトやリーフ、それにライアにラピスと、一人で依頼に行くようなことはなく誰かと一緒に行くことがほとんどだった。

 久しぶりの一人での依頼、楽しくはないがやはりたまには一人で悠々自適に空を飛んで依頼の場所に向かった。


 なんてことのないことだが、たまにはみんなではなく一人で依頼に行くと言うのも良いのかもしれないな、っと考えながら背中の翼をはためかせると、しばらくして地図に書かれた場所を見つけ地面に降り立つ。

 そこからは徒歩で目的地に歩いていく。

 しばらくして研究家と銘打ったボロ屋敷を見たのだが、本当にここなのかと目を疑いながらもそこに近付こうとしたスレイだったが、頭の中に危険を知らせる警鐘が鳴り響いたのと同時に、頭で考えるよりも先に身体が動くと地面を蹴り後ろに下がった。


「──ッ、危っぶねぇな!?」


 スレイが飛び退くと同時に足元の地面から石の棘のような物が現れた。

 あのままもう一歩前に踏み出していたら確実に串刺しになっていただろうが、驚くのはこれからだった。

 なんと飛び出してきた石の刺が歪んだと思ったら、形を変えてスレイの方に飛んできたのだ。


「なんだ、スライムかなにかか?」


 腰の剣を抜いて飛んできた刺を切り裂くべく振り抜いたが、刺はグニャリと歪んで斬れなかった。


「─────────ッ!」


 斬れないことに息を詰まらせたスレイだったが、別に斬れないからと言って倒せないわけではない。スレイは向かってくる刺をかわしながら、魔力を手に集める。


「───イルミネイテッド・ヘリオース!」


 斬れないならな蒸発させてやればいい。

 奥の建物には届かないほど射程を狭めて撃ったヘリオースは、奇妙な岩の刺を消し飛ばすと、刺を消し去り次の攻撃が来ないうちに走り出したスレイは、竜眼を発動し視界を広げさらに視力を強化すると魔眼を使って敵の場所を探る。

 そして、すぐにスレイは目的の物を見つけて魔道銃を抜き翼を広げて飛び上がり、真上から棘の飛び出して来た地面に向けて魔法を放った。


「そこか!───インフェルノ・ブラスト!」


 地面に向けて魔法を放つと、小さな爆発が発生し爆炎が巻き起こる。しばらくして爆炎が消えると、爆破の影響で地面が抉られその中に半透明の土色の物体があった。


「地面と同化するスライムか、始めてみたけど防犯用でここに放ってたのか………」


 研究所に入る前からこれとは、どうやら面白いことになりそうだと思ったスレイが小さく笑みを浮かべるのだった。

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