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授業の終わりと、見知らぬ客人

 ミーニャの始めての実戦魔法訓練の授業にて、まさか授業の講師が自分の魔法の先生であるクレイアルラと、兄のスレイとその嫁になる予定のユフィだっただけでなく、始めての授業で実戦稽古をしたあげく授業に出ていた全員を倒した。

 それも魔法学園の授業で、しかも実戦魔法訓練と言う名前のはずなのに魔法ではなく闘気を使って倒していたのを、ミーニャはしっかりとその目で──みんなはわからないと思うけど──見ていた。

 ついでにミーニャもスレイから攻撃を受け、それも慣れないグラビティーを受けたせいで身体の節々が痛んだため、自分で治癒魔法をかけていたのだが、その際にミーニャはいろいろと言いたい言葉を飲み込んでスレイのことをジッと睨めつけていたのだった。


 授業の初っぱなで生徒たちを倒したスレイは、闘気による発勁を受けて神経を麻痺し昏倒していた生徒たちの治療に当たっていた。

 もちろん治療に当たっているのはスレイだけではなく、ユフィとクレイアルラも治療しているのだが、スレイの元には女子生徒が、ユフィとクレイアルラの元には男子生徒が多く集まっており、スレイに色目を使ってくる女子生徒や、ユフィとお近づきになろうと思い口説こうとする男子生徒を見た。

 だがスレイもユフィもその生徒に殺気を放って追っ払っていた。ついでにクレイアルラに変な目を向けた生徒には、二人から特大の殺気を放って追っ払っていた。

 この二人の行動についてクレイアルラは咎めようとしたが、次々にくる患者を前に言えるわけもなかった。


 生徒たちの治療を終えたスレイとユフィは自然と近くによると、二人の殺気を受けて少し離れたところにいる生徒たちには聞こえないような声で話し合っていた。


「ねぇねぇスレイくん。今どんな気持ちなのかな、若い女の子に色目を向けられてたけど、もしかして鼻の下伸ばしてたなんてしてないよね~?」

「そんなことあるわけないじゃないか。ボクは愛するきみたち以外に見惚れるなんてことはないよ。それよりも、ユフィも治療に来てた子たちに口説かれてたようだけど?」

「私スレイくん以外に口説かれてもなびかない自信あるよ~。だってね、私の身も心も全部スレイくんにあげてもいいって思ってるし、実際に私の初めてスレイくんにあげちゃったんだから、責任とってお嫁さんにしてもらわないといけないからね~」

「そういう話しをこういうところでしないでください。あとちゃんとユフィだけじゃなくて、みんなと結婚しますから」


 っと、こんな会話をしているスレイとユフィ、ナチュラルに甘い空気をかもしだした二人に、あわよくばっと思っていた生徒たちが煮え湯を飲まされたらしく、男子生徒たちからは殺意の眼差しを向けられるスレイだったが完全にむし、っと言うよりも全く気付いていない様子だった。

 ついでにクレイアルラも二人に自重と言う言葉を送ってあげようかとも思ったが、先に生徒たちの様子を確認しておかなければならないため──ついでに言っておくと、つい四日前にも同じことをしたのであとで説教は確定していた──、後にしておこうと思った。


 しばらくしてイチャつく──本人たちからしたら普通に話していただけ──のをやめたスレイとユフィは、クレイアルラの横に控えるように立っていた。


「それではみなさん、今日はお疲れ様でした。少し早いですが今日の授業はここまでとしますが、次回の授業は場所を変更して行います。場所については後日連絡が行くと思います。それではみなさん、これで終わります」


 クレイアルラが頭を下げると、スレイとユフィも頭を下げて訓練場を出ると、他の生徒たちが動き出すよりも先にミーニャが駆け出し、スレイたちに声をかけた。


「ちょっと待ってよ、お兄ちゃん!」

「ミーニャ、ここではお兄ちゃんじゃなくて、スレイ先生って呼びなさい」

「そんなことよりも、なんで先生なんてやってるの!冒険者のお仕事はどうしたの?もしかしてノクトちゃんたちもここにいるの!?」


 一気に捲し立ててくるミーニャにスレイは困惑しているが、ここにいればそのうち他の生徒たちも来るので、変に囲まれてはいけないっと思い、どこかいい場所は無いかと考えていると、ユフィがミーニャに話しかける。


「ミーニャちゃん。ここじゃなんだしさ食堂にでも行こっか。あそこなら私たちも入れるしゆっくりと話すことができるでしょ?スレイくんもそれでいいかな?」

「あぁ。ありがとうユフィ。なぁミーニャ、そこでも構わないか?」

「………ちゃんと話してくれるならいいよ」

「それじゃあ決まりだね。ルラ先生もごいっしょにいかがですか?」

「私は遠慮しておきます。これより診療所に帰って明日の診察の準備と、午後からは魔物討伐の依頼がありまして、ゆっくりしている時間がありません」


 そう言ってクレイアルラはそそくさと帰っていってしまった。



 それからスレイとユフィは食堂──っと言うよりも見た目からして完全にカフェテリアなんだよな──でお茶を飲んでミーニャのことを待っている。この時間は授業のない子が友達と話していたり、授業で出された課題をやっている子、本を読んでいる子、果てにはカップルなのかイチャ付きながら嫉妬の眼差しを受けている子たちもいた。

 そんな食堂で待っているとしばらくしてミーニャが来て、ミーニャと一緒に友人のリフィルがいたことにいささか驚いた。


「ミーニャ、その子ってさっきの授業に出てた娘だよね?もしかしてミーニャの友達なのかな?」

「そうだよ。リフィルって言って寮で同室の娘なの」

「リフィルって言います、お兄さん……じゃなかった、スレイ先生」

「妹の友達に先生って呼ばれるのはあれだし、今は授業でもないから先生はよしてね」


 緊張した様子で返事をしているリフィルを横目に、二人を座らせたスレイはすぐにやって来たカフェテリア──もうそれでいい気がした──の店員、等ではなくまさかのメイドゴーレムだった。

 これにはさすがのユフィも驚いたが、それ以上にスレイは大変興奮した様子で食い入るような視線をメイドゴーレムに向けていた。


「ねぇねぇ、やっぱりスレイくんってメイドさん好きなの?言ってくれれば私たちも着てあげてもいいんだけど?」

「いやいやちょっと待ってくださいよユフィさん。ボクは別にメイドは好きじゃないよ。ボクはただメイドゴーレムに見惚れてただけさ、だってよく見てみろ、あの細い手足の中にいったいどんな武器を備えているのか………いや~興味深いな」

「スレイくん、メイドさんをなんだと思ってるのかな?」

「メイドと言ったらスカートの中にナイフを仕込んでたり、鞄に銃器仕込んで要人警護に要人暗殺をする人」


 そうスレイが平然とした顔で答えると、一拍置いてユフィといつものツッコミメンバーの変わりにミーニャとリフィルがスレイにツッコミを入れた。


「「「違う、そんなメイドはどこにも存在しない!」」」


 嘘だろ!?スレイに顔が驚愕の表情で固まっていた。ユフィが、そう言えばっと前にウルレアナの騎士学校で指導者をしてたときに、死霊山に行ったことがあったがあの時リュージュ家のメイドさんたちも森に入り、かなり大きな獲物を飼ってきていたのを思いだし、あながちスレイの言っていることは間違いじゃないのかもしれないなっと思った。


「ねぇ兄さんもお姉ちゃんも、そんなことはいいからさっきの説明してよ」


 ミーニャがそう言うと、スレイとユフィがお互いの顔を見合わせてそうだなっと頷きあうと、ミーニャに簡単にここで教師をする理由について説明している。もちろん話していい内容と、そうでない内容もあるのでしっかりとそこの線引きをして話していたが、察しのいいミーニャは大体理解できていた。


「そう言うことなら仕方ないけど、ちゃんと私にも教えてよ。ビックリするじゃない?」

「ごめんね~、私たちも色々と忙しかったからすっかり話すの遅れちゃってたの」

「それは知ってるけど………ところで、ノクトちゃんたちはどうしてるの?ギルドでお仕事してるの?」

「今はラピスのランク上げを手伝ってるはずだな」


 みんな実力はあるがパーティー内で最高ランクのスレイとユフィがいないため、みんなの実力ではすぐに片付いてしまうような依頼しかないが、もしもの時のためにすぐに連絡が来てもいいようにしていたが、それも杞憂だった。


「それじゃあ私たちは帰るね」

「うん、またね」

「あの、さようなら。スレイさん、ユフィさん」


 スレイは帰る前にリフィルの方を見ながら、ミーニャの兄としてこれだけが言っていかなければいけないな、そう思ってリフィルに話しかける。


「リフィルだったね、これからもミーニャの友達でいてあげてね。ミーニャってしっかりしているけど、意外と寂しがりやなところがあるし、こっちはまだ来て日が浅いからさ」

「ちょ、ちょっと兄さん!リフィルになんてこと教えてるの!それに私が寂しがりやって、そんなことないからね、変なこと言わないでよ!?」


 本人はそう言っているが、スレイとユフィはミーニャが寂しがりやなところがあるのを知っており、恥ずかしさからか顔を赤くして反論しているミーニャを、ほほえましい物でも見るような目で見ているのであった。

 それからスレイとユフィが帰っていった後、カフェテリアに残されたミーニャは疲れたよっと言いたげに、大きなため息をつきながら目を伏せていると、隣に座っていたリフィル小さな声で笑っているのを見て、半目になりながらジト目を向けているミーニャが、伏せたまま呻き声のような声を出した。


「リフィル~、私の恥ずかしい話を聞いてそんなに楽しいの?もしそうなら怒るよ?」

「いや、そうじゃなくてさ、あんたのお兄ちゃん本当にあんたのことを大事にしてるんだなって思ってさ。いい兄妹だなって」

「ありがとう………でっ、いったい私から何を聞きたいの?」

「ちぇっ、鋭いな~。………いやさ、さっき何となく聞きそびれたんだけど、スレイさんとユフィさんって付き合ってるってのは分かったけど、ノクトさん?って誰なの?」

「兄さんの婚約者の一人だよ。ユフィお姉ちゃんとノクトちゃん以外にもあと二人いるし、今もう一人居候の娘がいるけど、もしかしたらその娘もって思ってるけど」

「はぁ~、スレイさんってやっぱりモテるんだ」

「兄さんは超が付くほどの鈍感だけどね。前にノクトちゃんたちから聞いたけど、アプローチかけても全く気づいてもらえなかったくらいらしいから」

「そいつはまた………」


 リフィルの反応を横目にミーニャは、先程スレイから恥ずかしい話しをリフィルに聞かれた腹いせに、兄スレイの恥ずかしい話──っと言うよりも、ノクトとライアから聞いたスレイの鈍感ストーリーだが──を、リフィルに話してあげようかっと思いながら口を開き始めたのだった。



「ヘッ、クシュ」


 空を飛びながらスレイは大きなくしゃみをした。


「大丈夫?風邪でも引いちゃった?」

「いや、そんなはずはないんだけど………なんだろ?」


 日は出てるため寒くはない、風邪でもなさそうなのでなぜくしゃみが出たのかわからないスレイは、竜翼から風の魔力での飛行に切り替えると、ローブを脱いでいつものコート姿に変えると再び竜翼を出して空を駆け回る。


 なぜ二人が空を飛んでいるかと言うと、ただ単に空の方が速いからで今日の仕事はもう終わったため、これから明日受ける依頼を探しにギルドにでも行こうか、と言う話しになったのでこうしてギルドまでの道のりを飛んでいるのだ。


「ねぇ、明日どんな依頼受けるの?」

「魔物の討伐にしようかとも思ったけど、せっかく二日もあるし泊まり掛けの依頼を受けるのもいいかもな」

「そうなると、やっぱり護衛依頼?確かにそれもいいかも、ラピスちゃんもいるし無理は出来ないもんね」


 件のラピスだが、ギルドで新たに来た捜索願いや、スレイたちが出したラピスの情報提供の依頼にはなにも来ていない。

 ラピス預かってから、まだ二週間ほどだがやはり情報が来ないのは不安になり、定期的にスレイが魔眼を使って魂を見ているが、やはりその事にラピスも不安を感じているのか暗い色をしていた。

 それを思い出したスレイは、なにかラピスのためにしてあげれることはないか、そう考えているとユフィがなにかを察したように話しかけてきた。


「今、ラピスちゃんのためになにか出来ることはないかって思った?」

「君はエスパーかなにかなのかな?」

「長年の感です……まぁ、ラピスちゃんが元気ないのはみんなも知ってたし、だから今日の夕食は豪勢に行こうと思います!」


 確かにこういうときは食べたりしてるのかもしれないので、スレイとユフィは予定を変更し近所の店で夕食の食材を買って家に帰った。


 食材の入った袋をもって家に帰ったスレイとユフィは、見知らぬおばあさんが二人、家の前の門にいた。


「誰だろう」

「見かけない人だな」


 スレイとユフィは家の前にいる不審者、ではなく家の前の柵の前をうろうろして少し離れたところから見ていると、背伸びをして家の中の様子を見ようとしている。完全に怪しいっと思った二人は、怪しいおばあさんたちに近づいていき、もしもの時のためにとスレイは袖口にナイフを仕込んでおくことにした。


「あの、すみません。うちになにかご用でしょうか?」


 スレイが声をかけると、おばあさん二人が振り返りハッとした顔をしたと思うと、いきなりおばあさんの一人が目の前にいたスレイの手を取り、もう一人のおばあさんが後ろにいたユフィの方に行きその手を取った。


「あなたがスレイね!わぁ~、髪の色とその目元、あの娘そっくりだわ」

「さすがは、あの娘の娘ね~若い頃のあの娘そっくりよ!」


 ペタペタと顔を触られるスレイとユフィは、この二人が誰なのか察した、


「もしかしなくても………そうだよな?」

「うん。多分、私たちのおばあちゃん」


 っと、スレイとユフィが困惑した顔のままそう告げた。

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